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2016年07月20日

急性アル中で倒れた人にAEDを使おうとしたら怒られたのは、なぜ?【解説】

ここ数日、Twitter上でAEDに関する話題をよく目にします。

倒れた人にAEDを使ったら通りすがりの看護師に怒られた、という内容です。

ご本人が拡散希望と書いているので、そのまま引用しましたが、下記のような内容です。(今後、ご本人がTweetを消去することがあれば、こちらも削除します)


これ本当に拡散希望なんだけど、昨日横浜駅で急性アル中でぶっ倒れてる人がいたから助けに入ったんだけど、徐脈で意識レベル低下してたからとりあえずAED使ったら通りすがりのBBA看護師に「AEDなんか使うな??そんなの点滴すれば治るでしょ??すぐ剥がして??」って言われて(続く)リンク

(続き)「何も分かんないの?」的スタンスで言うだけ言って去っていったんだけど、別にAEDって貼ってもすぐ電気流れるわけじゃ無いし必要なかったらちゃんと「使わなくてOK」って言ってくれるから確認の為でも使った方がいいんだよ。こっちだって100%必要だと思って使ってねえよ(続く)リンク

(続き)急性アル中でもし吐物が詰まって気管閉塞してたら?それで心停止に繋がったら?AEDはそれをちゃんと「確認」してくれる機械なんです。むやみやたらに電気ショックしません。なのにただ見ただけで必要無いっていうのはおかしいんじゃないの?看護師なのに大丈夫?って思って(続く)リンク

(続き)道で倒れて専門的な機械が無い場所で、AEDは万が一の為の装置なんです。もしそれでその人が死んだらどうするの?死んだ人も点滴で治るの?違うだろ。本当に腹立ちました。みんなは今回のおばさんのこんな言葉に惑わされず、迷わずAED使ってほしい。ダラダラと失礼しました。リンク

H/N: 水玉みよこは柄まで通ってる
twitterアカウント:@mizutama345



これをもとに「まとめサイト」がいくつも立ち上がり、「正しい知識を持つ」ことが肝心ですね、とか、看護師なのに老害! などと多くの声が寄せられています。


文面を見るかぎり、この通りすがりの看護師というのが、言うだけ言って、何もしないで去っていったという点で、確かにひどいなという印象です。

でも、だからといって、言っていることが間違っているかといえば、あながち間違いではありません。特にAEDが必要ない、という部分は紛れもなく正解です。


先入観で「悪」と決めつけているのか、誰も気づいていないようです。Twitter世論では完全に抜けている部分なので、少々書かせていただきます。



結論からいうと、「徐脈で意識レベル低下」という状態の人にAEDを装着するべきではありません。AEDは心停止、つまり生命徴候がない人に装着するものだからです。

徐脈というのは脈拍が遅い状態のことを指します。つまり、このケースは脈は触れますので、少なくとも心停止ではありません。(原文で徐脈という言葉が使われていますが、Twitter投稿された筆者の方も実は新人の看護師さんだそうです。医療者以外は脈拍を確認することは推奨されてません)

AEDの添付文書(取扱説明書)にも「明らかに生きている人に使っちゃダメだよ」って書いてあります。

こちらは、旭化成が扱っているZollというメーカーのAEDの添付文書です。

AED添付文書:意識・呼吸+脈のない人にのみ装着する



【禁忌・禁止】
 <適用対象(患者)>
 対象患者が以下の状態の場合は、本品を使用しないでください。
 ・意識がある場合
 ・呼吸している場合
 ・脈拍を触知できる、又は血流を示す他の兆候がある場合



添付文書とは、薬事法に基づいて作成が義務付けられた公文書です。AEDのような医療機器の他、薬剤にも付いています。薬剤で言ったら用法・容量が定められている大元の書類で、どんな人には使ったらいけないという「禁忌」が明示されています。

AEDは家電とは違います。本来は医師しか使用が許されない高度管理医療機器ですから、薬と同じで、使用条件が厳密に定められています。先ほどは取扱説明書という言い方をしましたが、添付文書に書かれている条件は、家電の取扱説明書とは比較にならない厳しいものであるという点は、おわかり頂けますよね?

その添付文書で、AEDは、意識がある場合や呼吸をしている場合、脈拍がある場合は使用したらいけない、禁忌ですよ、と書かれているわけです。

メーカーと薬事法が定めるところでダメといってるわけですから、誰がなんといおうと、「脈がある人にAED装着してもいい」とは、私は言えません。

Twitter世論では、一部の医師も含めて「いいんじゃない?」と言っていますが、その根拠はどこにあるのでしょうか?

医師なら、医師免許の下に自分の裁量で添付文書を超越した適応をすることも許されますが、看護師の私にはそんな判断はできませんし、ましてや責任を負えない一般の方であれば、法律の範囲内で添付文書に従って使うのが正解と言わざるを得ません。


なんで、意識、呼吸、脈のある人にAEDを装着したらいけないのか、という点については 私のTwitterの過去ログ を辿ってみてください。7月19日〜18日あたりに連投しています。

簡単にいうと、AED設計上の「仕様」としてショック適応判断の限界があり、心電図波形によっては、心停止ではない人に装着した場合でも、誤ってショックが必要と判断してしまう危険性が否定できないからです。

AEDは心電図上での心室頻拍(VT)を検出できますが、それが心停止(つまり無脈性心室頻拍)であるかの判断はできません。だから、人間が生命徴候の有無を判定した上でないと、AEDを装着してはいけないと定めているのです。(最近は各メーカーが工夫して解析性能が上がってますので、過度に心配するほどの頻度ではないと思います。詳しく知りたい方は「AEDの心電図解析と無脈性心室頻拍の判断」(日本心臓財団ウェブ)も参考になります。


最近は一部マスコミも含めて、「人が倒れていたら迷わずAEDを!」といい加減なことを言うケースが目立ちます。以前はきちんと「人が倒れていて意識と呼吸がなければ迷わずAEDを!」だったのですが、いつ、どこから省略されるようになってしまったのか、、、

慌ててしまって、呼吸の確認を忘れた! というのはありだと思います。それは批難されるべきものではありませんし、過失や、責任追求されるものでもありません。それに誤作動の可能性としては決して高いものではないので過度に恐れる必要もありません。

ただ、AEDに興味をもってくれている人なら、ぜひAED装着前には、「反応と呼吸を確認する」ということは知っておいてほしいなと思います。(医療従事者は反応と呼吸に加えて脈拍の確認も求められています)

そこで大事なことを1点。

呼びかけて返事やうめき声、開眼などの反応がないことは確認したけど、呼吸は「よくわからない」という場合は、「ナシ」と判断してもらって大丈夫です。これは蘇生法のガイドラインでも書かれていることなので、ご安心を。

目安は10秒。

10秒間、胸からお腹のあたりの動きを見て、いつもどおりの呼吸をしている、と確信できない場合は、AEDを装着して構いません。

ただし、AEDを装着するということは、心臓マッサージ(胸骨圧迫)も必要な状況ですから、他の人がいれば胸を押してもらう、またAEDの解析後「触っても大丈夫」と言われたら、ただちに胸骨圧迫をするようにしてください。

ところで、公衆の面前で、他人の服を脱がすというのは、すごく勇気のいることだと思いませんか? だから、私だったら、服をはだける前に、きちんと胸から腹をよーく見ます。

わからなければ10秒で「いつもどおりの呼吸なし」と判断していいとガイドラインに書いてあるわけですから、10秒たったら堂々と服をはだけます。

もしなにかの間違えで、あとでトラブルになったとしても、その呼吸確認のプロセスさえしっかりしておけば、規定通りの正しい行動をしたと自信をもって説明ができます。

それに、AEDを装着すべき状況というのは、「心停止状態」ですから、AED手配は急ぐべきですが、AEDが到着するまでの間は胸骨圧迫が行われていなければなりません。

呼吸の有無が正しく判断できなくても、AED到着までの間に胸骨圧迫を行っていれば、もし心停止でなければ痛み刺激に対する反応があるはずですから、AED装着が不要であれば気づける可能性が高まります。



AED使用は決して難しいものではありません。それは事実です。

ただ、イケイケGoGo! の根拠のない勢いだけで不正確な知識が広まるのは、私は問題だと思っています。

広めている人は、AEDの敷居を下げたい、みんなに使ってほしいという思いなのはわかります。

でも、医療器具の使用法なんですから、それなりに根拠をもっていなければいけないと思うのです。


すでに広まってしまっているものはどうしようもありませんので、せめて正しい情報を、と思い、これを書かせてもらいました。

最終的に何が正しいのかは読み手の皆さんに判断していただけたらと思います。

反応確認と呼吸確認を市民に求めるのは酷。誤作動のリスクが低いなら、具合悪そうな人がいたらとりあえずパッドを貼ればいいじゃん、というのもひとつの考え方です。

あえて、そう判断するならなにもいいませんが、少なくともメーカーと国が定めたAEDの使い方ではない、ということは知っておいてほしいです(さらに言えば国際的な使用基準からも外れてます)。知らずに、そう早合点しているとしたら、誰にとっても不本意なことではないでしょうか。



もし、なるほど、と思った人がいたら、ぜひこの記事の拡散をお願いします。




posted by Metzenbaum at 12:22| Comment(7) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月03日

人工呼吸はやっぱり重要ですよ、という報道とプレスリリース

看護職の皆さんは、人並み以上に救命スキル【BLS】に関心が強いと思いますが、皆さんは昨今における人工呼吸の位置づけをどのように理解していますか?

世間一般では、「最近の心肺蘇生法は人工呼吸をしなくてよくなったらしいよ!?」なんて、言われていますが、もしかしたら人様にCPRを教えることがあるかもしれない看護職にとっては、この点、いかがでしょうか?

先日、読売系で興味深い報道がありました。

救急車の到着遅れても…「心肺蘇生」で救命率2.7倍」



倒れるところを目撃された心停止のうち、何もされなかった群にくらべて、救急司令の指示で胸骨圧迫をすると生存退院率が1.5倍に増えて、さらには通りすがりの人が自発的に胸骨圧迫と人工呼吸がなされた場合は生存退院率が2.7倍だった、という内容。

金沢大学の研究者がヨーロッパ蘇生協議会(ERC)の機関誌、Resuscitationに発表したもので、なんで日本の新聞が取り上げたかというと、金沢大学が日本国内の報道機関に向けてプレスリリースを打ったからです。

そのプレスリリースがこちら。

金沢大学プレスリリース「救急車到着に時間を要する地区では人工呼吸を組み合わせて行う心肺蘇生の自発的実施が格段に優れた救命効果をもたらす!」


救急車到着に時間を要する地区では人工呼吸を組み合わせて行う心肺蘇生の自発的実施が格段に優れた救命効果をもたらす!」というタイトルで、PDF(680KB)で誰でも読めます。たった3ページですから、ぜみ皆さん、目を通してみてください。

このプレスリリースの冒頭では、私たち医療従事者に向けて、警鐘ともいうべきメッセージが載っています。

市民に対して蘇生教育を行う立場の医療従事者に人工呼吸の重要性を再認識させる(中略)必要性を示唆する結果となりました。

人工呼吸は、依然大事だから、それを啓蒙するのは医療者の役目だよ、というわけです。


一般の方たちは、NHK報道なんかで、人工呼吸は不要になったと言われれば、それを真に受けてしまいます。

しかし、人が生きるメカニズムと、命を落とすメカニズムをきちんと学んでいる私たち看護師は、細胞の酸素化を考えた時に、胸骨圧迫のみでいい場合と、ダメな場合があるということを理解しています。

そのことを踏まえて、適正に市民向けに健康教育(蘇生教育)を行う必要があるのです。

例えば、

・救急車が到着するまで数十分かかるような場所
・溺水など水難事故が想定される現場の職員
・呼吸原性心停止が多いとされる子どもの急変を想定しているような職業人

などに対して救命法を指導する上では、胸骨圧迫のみの蘇生法では万全とはいえないということです。


マスコミはセンセーショナルなものに飛びついて風評を流布していきますが、きちんと基礎から理解している私たちはその砦となる必要があると、金沢大学の研究は訴えているのです。





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2016年02月04日

ここが変わった! BLS/ALS【G2015】|蘇生科学者になりませんか?

去年の10月に改定された心肺蘇生法のガイドライン。

看護雑誌でもようやく取り上げられるようになったきたようです。

こちらはエキスパートナース誌の2016年1月号

特集記事は、

「ここが変わった! BLS・ALS」です。


ここが変わったBLS/ACLS|エキスパートナース誌


ガイドライン改訂の中身については、すでに JRCガイドライン2015オンライン版 でご存知の方も多いと思います。

分量が膨大でどこから読んでいいかわからないという人は、AHAガイドラインのハイライト というガイドライン変更点がコンパクトにまとまったPDFが無料配信されています。(米国版ガイドライン準拠ですが)

AHAガイドライン・ハイライトは最初から日本語化もされていましたので、こちらだけは目を通したという人も多いかもしれません。



今回、看護雑誌でガイドライン改訂が特集されたということで、看護師にとって、なにが変わるのかという点に注目しましつしたが、エキスパートナースの記事は、なかなかの好印象でした。

まず、基礎情報のおさらいですが、JRC版蘇生ガイドライン2015で変更になったのは大きく下記の点です。

BLS(一次救命処置)
1.死戦期呼吸の判断に迷ったらすみやかにCPRを開始する
2.胸骨圧迫の深さの上限 6cm
3.胸骨圧迫のテンポは100〜120回/分
4.CPR中は100%酸素の根拠性

ALS(二次救命処置)
1.マニュアル除細動の2回目は高エネルギー量で
2.バゾプレシンは非推奨
3.抗不整脈薬の第一選択はアミオダロン
4.低体温療法は32〜36℃

このあたりはガイドラインを見ればわかることですが、今回のエキスパートナース特集記事で特に目を引いたのは、「社会に与える影響と"ナースに期待されること"」という部分。

ガイドラインの変更を総論的にとらえた解説記事としては端的で良かったです。

詳しくは本記事に譲りここでは触れませんが、やっぱりナースにはCPRの質が求められますよ、という点ははっきり言われていますね。ここまでBLSの敷居が下がって、市民がバイスタンダーとして積極的にCPRをして、救命成功がニュースになる時代、医療者が市民と同じ水準のCPR技術でいいとは思いません。

市民救助者は、無我夢中であってもいいと思いますが、医療者は「質の高いCPR」を意識して、コントロールしていきたいものです。



また、これもこのブログでも何度も取り上げている点ですが、世界の蘇生シーンをリードするのは看護師である、という点が今回、初めて活字になったという点が嬉しかったですね。

以前、アメリカ心臓協会(AHA)のナショナル・ファカルティ・オリエンテーションに参加させてもらったことがありますが、AHAという巨大組織のECC(救急心血管治療と心肺蘇生)部門や教育部門を取り仕切っているのは、医師ではなく、看護師でした。

Mary Fran Hazinski女史や、Jo Haag女史は有名ですね。

あの世界の蘇生シーンをリードするAHAのガイドライン改訂の責任者はナースだった、って知ってました?

蘇生科学といったら、私たち日本の看護師は医師の専門領域と考えがちですが、世界を見たら決してそうではないです。


たとえば、の話として、俗語ではありますが、「脳科学者」という言葉が広く知られています。

マスコミに登場する脳科学者たちの多くは医師(医師免許を持っていない)ではありません。脳を語ると言ったら医師でないといけないというイメージもあるかもしれませんが、現実的には生物学や心理学、情報工学分野出身の研究者だったりします。(余談ですが、医学博士であっても非医師が多いです。もちろん、看護師で医学博士の人もたくさんいます)

そういった意味で、今後は、AHAやERC(ヨーロッパ蘇生協議会)のように、看護学をバックグラウンドとしたナースの蘇生科学者というのが出てきてもいいんじゃない? と思います。

蘇生科学者とは名乗ってはいませんが、世界の蘇生シーンで活躍する日本人ナースも実際にはいる点は、先のエキスパートナース誌でも触れられていました。



さて、今回の記事では取り上げられていませんでしたが、米国版やヨーロッパ版のガイドラインでは、病院内心停止というのが大きなキーワードになっています。

院内での心停止は、心室細動による突然のものは多くない、「急」変ではなく、段階的に悪化していくものなんだ、だから予兆に気づいて防げ!、ということが強く打ち出されています。

入院患者の変化に気づけるのは、病棟勤務の看護師をおいて他にありません。

今後はこのような視点でガイドライン改訂を紐解くような解説記事が出てくるんじゃないのかなと期待しています。


そんなわけで、5年ぶりの蘇生ガイドライン改訂。なにが変わった、いう末端的な話ではなく、看護師としてこのガイドライン改訂の意義をどう捉えるかという視点でもぜひ、この先の動向を注目してほしいと思います。







posted by Metzenbaum at 23:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月14日

改定! 蘇生ガイドライン2015 院内急変対応が変わる!

先月、蘇生ガイドライン2015が発表されました。5年ぶりの改定になります。

心肺蘇生法AHAガイドライン2015アップデートハイライト
↑クリックすると、PDFでAHA-G2015改訂
の要点が読めます(無料)


今回の改定は、新ガイドラインというよりは、2010ガイドラインに修正を加えたアップデート版と位置付けられており、AHAとしては前回ほどは大きなリアクションを示していません。

ガイドラインが発表されただけで、教材リリースがまだですから、新しいBLS教育をどのように教えていくのか、その具体的な部分はまだ見えていません。

ガイドラインから推し量るに、おそらく呼吸確認法のあたりが修正されるのではないかと思います。


通報のタイミングと呼吸・脈の確認法

今は、反応と呼吸の確認をした後で通報、それから脈拍確認となっていましたが、G2015では、反応確認のあとに通報して、次に呼吸と脈拍を同時にチェックするという形になりそうです。

一見、G2005に戻ったようにも見えますが、この変更の背後にはスマートフォンの普及が関わっています。

これまでは、初期対応でありがちな一人法では、119番などの通報の間は、傷病者評価や胸骨圧迫等のケアが中断されてしまうという問題がありました。

しかし、スマートフォンの普及により、スピーカー通話機能を使って、呼吸確認や胸骨圧迫などを続けながらも通信指令と会話することが可能となりました。そこで、これまで線形に位置づけられていた通報が同時進行可能いう判断で、初期に持ってくるという修正となりました。


圧迫の深さと速さの上限明示、ナロキソン筋注

胸骨圧迫の深さ(5〜6cm)と速さ(100〜120回/分)の上限が設定された部分も新しいところですが、これは指導上の問題であって、現在のやり方と大きく変わるところではありません。

その他、薬物中毒が疑われる心停止の場合はナロキソン自動注射器で筋注を行うというBLSらしからぬ勧告も出てきていますが、日本では無視していいでしょう。


病院内心停止が区別されるように!

さて、個人が習得すべきテクニカルスキルとしてのBLSはG2010でほぼ完成していて、今回は軽微な調整がされたにすぎない印象ですが、ガイドラインの基本概念としてはかなりダイナミックな改定が行われています。

それは、救命の連鎖が、院内心停止と院外心停止で区別されるようになったことです。

特に 病院内心停止がほかと区別されるようになった、といったほうがいいかもしれません。

これは以前からこのブログでも指摘している点ですが、院内心停止の多くは心臓突然死ではありません。

世間一般では突然の心室細動にフォーカスして心肺蘇生法教育が行われていますが、病院内の心停止事案を解析してみると、そのうち75%以上は心室細動以外が原因であるとACLSプロバイダーマニュアルG2010にも明記されています。



つまり、街中の心停止であれば、急いで通報、AED除細動、CPR継続という流れでいいのですが、病院内では心停止は状態悪化の成れの果てとして発生するので、心停止になる前に危険な徴候に気づいて心停止を予防しなければいけないのです。

このことがガイドライン2015では、病院内の救命の連鎖ということで明示されるようになりました。

AHAガイドライン2015院内心停止の救命の連鎖
AHA-G2015院内心停止のアルゴリズム(G2015ハイライトより)


BLSプロバイダーに求められる心停止予防。どのように?


この重要な概念がBLSヘルスケアプロバイダーコースにどこまでどのように盛り込まれるのかはまったく未知数です。

しかし、下記の概念図を診てもらうと分かる通り、院内心停止を予防するモニタリングをするのはBLSプロバイダーの役割であるとされています。

現実問題、G2000時代と違って、心停止や蘇生の理屈をほとんど教えなくなった現代のBLSプロバイダーにその役割を求めるのは無理じゃない? と思わなくもないのですが、G2015ハイライト日本語版を見る限りはそのようになっています。

院内心停止対応では、心臓が止まってからの対応では不十分で心臓を停めないような予防的関わりが重要である点が打ち出されたのが、ガイドライン2015のBLSでもっとも重要な改訂点ではないかと思います。


ガイドラインの新概念を先取りしていた小児救急領域 PEARS

「心停止してからでは遅い! 予防と生命危機状態の早期発見を!」ということは、小児救急領域では昔からずっと言われていた基本スタンスです。

もともと小児は心臓突然死は多くない、そして予備力が小さく心停止になると救命がほぼ不可能なことから、呼吸のトラブルと循環のトラブルという心停止以前の対応に重きが置かれていました。

それが今回、病院内においては成人傷病者にも適応できると考えが改められたとも言えるかもしれません。

つまり成人を中心とした院内心停止対応が目指す新しい方向性は、小児の急変対応と同じベクトルになったということです。


この部分を扱っているAHA教育プログラムが、小児救急 評価・認識・安定化コース、つまりPEARSプロバイダーコースです。

PEARSプロバイダーコースの中身についてはこれまでも紹介しているので、説明は割愛しますが、ガイドライン2015の主役はPEARSなんじゃないかというのが今回のエントリーのテイク・ホームメッセージです。


小児だけじゃない! PEARSから最新ガイドライン院内急変対応を学ぶ

2008年に開発されて以来、私たちUSインストラクターが独自に日本語化して国内展開していたPEARSですが、いまは大手ITCも手掛けるようになり、先日、ついに日本語テキストが国内販売されるようになりました。

日本語版PEARS受講者テキストは大手ITCの独占販売で、一般書店で流通する形でないのが残念ですが、日本の院内患者安全にとっては大きな一歩が開けたと思います。

このガイドライン2015が発表されたタイミングでG2010-PEARSのテキスト日本語版販売というタイミングがなんとも微妙ですが、G2015教材の中でもPEARSが制作されるのは最後の最後ですから、まだまだ使えます。

PEARSプロバイダーマニュアルG2010日本語版


PEARSの根幹は、ABCDEアプローチという人間の生きるしくみに直結した古典的な部分です。そのため蘇生ガイドラインの改定にはあまり影響されません。水物ではないということです。

そういった意味ではG2005版のPEARSコースもまだまだ現役で使えるくらいですから、数年後にできるかもしれないガイドライン2015正式日本語版を待たずに、さっさといまのG2010版で学んでおくことをお勧めします。







posted by Metzenbaum at 08:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月06日

半ば自己否定に陥ったACLS、G2015ではいかに?

あちこちで耳にする指摘ですが、改めて書いてみます。

病院の急変対応研修といえば、BLSが基本で、一部先進的なところでは二次救命処置(ACLS)を取り入れているところもありますが、その医療安全体制についてAHAのACLS自体が自己否定(?)しているって知ってました?

まず、前提知識の確認です。

私たちは以下のように教わってきました。

『大人が倒れた場合、心電図モニターをつけると心室細動(VF)になっていることが多い。だから早期除細動が重要。BLSでもACLSでも心室細動にフォーカスした"VFハンター"になるべく訓練が必要。』

だからAEDがもてはやされて、猫も杓子も除細動、という教育がされてきました。

しかし、ガイドライン2010版のAHA-ACLSプロバイダーマニュアルを見ると、次のような驚くべき記述があるのです。

「VF/VT以外のリズムは院内心停止の75%以上を占めている」

ACLSプロバイダーマニュアルG2010
(ACLSプロバイダーマニュアル G2010 p.30)

あれ? 成人の心停止のほとんどはVFじゃなかったの?

って思っちゃいますよね。

これまでは「成人の心停止は前触れなく突然に起きるから、BLSが必要であり、ACLSが必要」という論調で"急変対応"が語られていたのは、間違いだった、みたいな驚愕の事実が書かれているわけです。(←この書き方、かなり恣意的です。批判は覚悟の上で。)

実はこの布石は、ひとつまえのガイドライン2005版の「ACLSプロバイダーマニュアル」にも書かれていて、院内心停止の8割くらいに予兆があったという点が示されています。だからこそ、患者急変対応コース for Nursesとかが作られたわけですけど、まあ、その方向性が再確認、強化されたって感じですね。

つまり、VFハンターというICLSの言葉に象徴されるような視座の起き方は、現在となっては不適切という認識にシフトしてきています。

これまでは、VFは突然に起きるものでしたから、心停止後の対応だけを考えていればよかったのですが、そうではなかったとなると、これは病院業界、大変な激震です。

だからこそ、ACLSプロバイダーマニュアルG2010では、次のように述べています。

「医療機関内で文化的な大きな転換が必要とされる」(p.31)

急変対応に関する文化大革命ですよ、と言ってるわけですね。

心停止は不可抗力。

ではなく、心停止は防げるもの、それがG2010では、明確に打ち出されているのです。
それをAHAは痛烈な言葉で表現しています。

「救助の失敗」

下記のように、病院での心停止は防ぎ得るものであるから、心停止になってしまったら、それは救助の失敗である、と。

ACLS Provider Manual G2010
(ACLSプロバイダーマニュアル G2010 p.31)

これ、現場としては痛いですよね。

でも、その潮流はG2010に始まったことではなく、G2005から引き継がれてきたこと。

これが今年10月に発表されるガイドライン2015では、どのように扱われるのか?

そして遅れること2年後くらいに出てくるG2015ACLSプロバイダーコースはどう変遷していくのか?

私たちは病院文化の担い手として、真摯に受け止めたいと思います。



病院内での心停止はBLSでは終わらず、そのままACLSに突入するわけですから、看護師としてACLSのアルゴリズムを知っておくことは必要です(受講が必要、ではなく)。

しかし、それは一般教養というか、たしなみであって、そこを一生懸命勉強するような時代は過去の話。

この先は、AHAでいうなら心停止予防コースPEARSのような、心停止以外の予兆に着目しなくちゃいけない、特にベッドサイドで患者の様態変化に気づける看護職にとっては、という方向性。

院内でも8割は、心室細動ではないとわかってるわけです。

人が死に至る原因は、呼吸障害か循環障害(ショック)。

そして、呼吸障害は、上気道閉塞、下気道閉塞、肺組織病変、呼吸調整機能障害の4つに分類されます。

ショックであれば、循環血液量減少性ショックと血液分布異常性ショックがほとんど。

これらの徴候を知っていれば防げるし、心停止にさせなくて済む。

そんなことが明らかになってるわけですから、そこを学ばないわけにはいかないですよね。

今は、小児分野でしか叫ばれていませんが、これはほぼそのまま大人にも言えます。
こんな方向が、これがますますはっきりしてくるのは間違いないと思います。



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2012年12月30日

ナースのためのファーストエイドの学び方

うれしい限りです。

看護師向け総合雑誌でファーストエイドの特集記事!



今までも看護雑誌では年に何回かはいわゆる急変対応特集が組まれてきましたが、いつも似たり寄ったりで、BLSとかせいぜいACLSの話ばかり。

ごくごく最近では、心停止前の「気づき」が重要ということで、AHA-PEARSとかPALSで言われている急変の早期認識と安定化という話も書かれるようにはなってきましたが、いわゆるファーストエイドに焦点が当てられたのは初めてじゃないかなという気がします。(私の個人的印象です。間違っていたらご指摘ください)

去年だったかおととしだったか、日本救急看護学会がナースのためのファーストエイドコースを開発、そのテキストとして立派な本もリリースされましたが、そちらはどうもイマイチでした。

ファーストエイドという概念を持ってきたことや前書きで書いてあることはとてもいいのですが、中身が伴っていないというか、「それってファーストエイドじゃなくて、研修医向け院内救急マニュアルをパクっただけでしょ」的な。

実は今回の月刊ナーシング誌の特集記事も、ほぼ同じ執筆陣なのですが、今回はビジュアル的に攻めていて、処置だけでなくて、搬送のことなども含めて、実践対応が具体的に書かれているのがいい感じ。

首吊り自殺を発見したときのファーストエイド     ナースのための切創のファーストエイド

鼻血のファーストエイド     トイレで倒れた人を発見した場合のFA


出血とか、嘔吐とか、かなりリアルに撮影を行なっていて、気合い入ってます。リアルな患者、症例の写真じゃないからよろしくね、みたいな注釈が入ってるくらい(笑)

細かい突っ込みどころはちょいちょいありますが、保存版にしてもいいくらいの良い特集記事です。

特に看護の総合雑誌で、こんなファーストエイドの特集が組まれるまでになったんだ、とうれしい限り。私がファーストエイドの必要性を訴え出したのはいつのことだったか。

具体的にAHAのファーストエイド講習を開催しだしたのは2007年か2008年だったと思います。

当時は、まだBLSとACLSが全盛で、心停止前の急変対応という発想はメジャーじゃなかった。

でもその当時から信じていたことが、こんなカタチで現実になってきて、感無量というか、微力ながら社会PRを続けてきてよかったと思った次第です。

今回の特集記事で、主幹の三上剛人さん(救急認定看護師で有名な方です)が書かれている巻頭言から、いくつか引用します。

「それもそのはず、多くの方は応急手当やファーストエイドの教育を重点的に受けてきた覚えがないからです」

「現代看護のなかで応急手当やファーストエイドは『いまさら覚えなくても実践できるはずの古くさい看護技術』と感じられている気がします。病院での医療は、医療技術の進歩、高度医療が優先され、病人、けが人を手当するという原点から少なからず遠ざかっているように思います」

「応急手当は一般市民向けというイメージではなく、私たちにも必要な看護技術の一つであり、市民よりもより専門的に実践していく必要があるものです」




このあたりの言葉をすべてのナースに受け止めてほしいなと思っています。

ナースだけど、交通事故に遭遇してなにも出来なかった。ある意味当然です。ナースはそういう教育は受けていないのだから。この場合、ナースだからできることを考えるのはそもそもの間違い。三上さんは「市民よりも専門的に」とは言うけど、まずは市民としてできることをやりましょ、というのが基本だと思います。最初から医療現場と同じように動こうとするとできるわけないんですから。

ほんとはナースたるもの、市民レベルのファーストエイドくらいは常識的に知った上でナースになるというのが当然なんでしょうけど、残念ながら日本の教育体制はそうなっていないわけですから、個々のナースに危機感を持って学んでほしいなと思う次第。

その上では、今回の特集記事はとてもいい刺激になると思います。

強いて言うなら、ナース向けというなら、どんな症例でも基本となる傷病者アセスメントを体系的に解説してくれるともっとよかったかなと思います。ここでも残念ながら各論の寄せ集めになっちゃってるんですよね。これが日本古来の救急法講習に通じる欠点。

傷病者と対峙したときに見るべき普遍的な視点、つまり傷病者アセスメントというファーストアプローチが抜けているせいで、どう考えても脊椎損傷を疑う優先順位が高いだろうという紙面上の症例でも、頚椎保護の視点がスッポ抜けていたリ。

まあ、そんな点を差し引いても、悪くない記事です。

最後にもしもっとFA学びたいと思ったら、救急看護学会のファーストエイド講習は第一選択には勧めません。まずは市民向けファーストエイド講習からはじめることをお勧めします。救急看護学会のFAは本質的にはファーストエイドじゃないのでご注意を。

以下、これまでこのブログで書いた関連記事をリンクしておきます。参考にしてください。



ナースにも必須のファーストエイド
http://or-nurse.seesaa.net/article/178283160.html
ナースにとってのファーストエイド
http://or-nurse.seesaa.net/article/190820699.html
アウトドアで看護ボランティア
http://or-nurse.seesaa.net/article/51303125.html
登山医学セミナーに参加
http://or-nurse.seesaa.net/article/48826683.html


【その他、別ブログで書いた関連記事】
 相当ボリュームがありますので、正月休み、ゆったり時間の読み物にどうぞ♪

ファーストエイド・非心停止対応関連記事(全27記事)
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/category/14911652-1.html

ウィルダネス・ファーストエイド(高度な野外救急法)関連記事(全16記事)
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/category/8237256-1.html



posted by Metzenbaum at 13:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月29日

蘇生教育はナースのもの

AHAインストラクター仲間のナースが、トレーニングサイトを立ち上げました。

ナースが作った松戸ECCトレーニングサイト

ナースがナースのために作った急変対応教育機関、松戸ECCトレーニングサイトです。

皆さんもAHA講習を受けたときは〇〇トレーニングサイトってところに受講に行ったと思うのですが、あれをナースだけで作っちゃった、という話です。

とかくこの世界、医師を中心にナースはサポート隊みたいな雰囲気、ありますよね。まるで病院業務の延長みたいに。

でも、急変対応、特にBLSなんて、完全にナースのものだって思いません?

ベッドサイドにいて急変に気づいて初動対応するのは医師ではなくてナースなんだし、医師は呼ばれてきて蘇生の途中から参加するだけ。

BLSの主体はナースなのに、それを指導するのがナース主体になっていない不思議さ。

ナースじゃないと気付けないポイントはたくさんあるし、ナースじゃないと現場を伝えられないということもある。

なにより、受講者の意識が違いますよね。偉い先生に教えを請いにいく。ACLSなんて特にそんな空気、ありません? でも松戸ECCトレーニングサイトでは、ACLSでもインストラクターはナースがメイン。今のところ、医師は直接は介在していません。

そんなナースが等身大でまなべる環境、日本ではあまりなかった気がします。

なにより、このニュースで私が皆さんに伝えたいのは、ナースだけでもこれだけのことができるんだよ、ということ。

医師に依存しすぎるの、辞めにしません? 特にBLSなんかはナースが自信を持って教えていくべきだし、医師がいなくてもナースだけで十分やっていけます。

日本救急医学会(ICLSをやっている団体です)で数年前に制定されたBLSコースは日本版ガイドライン準拠の唯一の医療者向けBLSプログラムですが、なぜか、ディレクターは医師でないとダメ、というスタンスをかたくなに貫いていますが、意味不明。故に全国でもほとんど開催されていません。

マンパワー的にも医師だけでやっていこうなんて無理な話。

そういった意味でも、蘇生教育ではナースがもっと前面に出ていく必要があります。

どうしても、医師のサポートのなりがちなナースですが、ナースが主体的にやってもいいんじゃん、という話。

松戸ECCトレーニングサイトでは、AHA-BLSインストラクターの育成から認定までもナースのファカルティ(インストラクター養成責任者)だけで行なっています。

ちなみにあのAHA(アメリカ心臓協会)の、ガイドライン2010編集責任者はナースです。あと、AHA ECCプログラムと呼ばれる、BLS-HCPやACLS、PALSなどのコース開発を行う教育部門の責任者もナースです。

私、一度、シカゴで開かれたAHA ECCプログラムの幹部会(National Faculty Orientation)に参加させてもらったことがあるのですが、演者で目立ったのはやはりナース。医師が思いの外少ないのには驚きました。

AHAは世界の蘇生シーンを動かしている。で、そのAHAを動かしているのは実はナースなのです。


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2012年11月19日

ACLSはBLSに毛が生えた程度のもの

Twitterで書いたことのまとめになりますが、こちらのブログにも残しておきます。

ナース向けの二次救命処置トレーニング構想のヒントとして。

この手の専門家である救急認定看護師さん、こんな方向性でナース向けALSプログラムをさらっと作ってくれませんか?



ナースによるBLSの二人法、一人は胸骨圧迫、もう一人はバッグマスクで人工呼吸。AEDは装着済みでショックは一回施行してる。つまりVFは確認されている。そこにもう一人ナースがいたらどうする?(G2005では輪状軟骨圧迫を教えていたけど)。

V-lineくらいは取るよね。で、そこに医師から電話指示でボスミンIVを取り付ければ、立派なACLS。

ACLSは6人一組とか手動式除細動機を使わないといけないとか、そんなことはぜんぜんない訳で、AHAが作ったACLSのイメージに縛られすぎ! ナースが臨床で行い得る現実の急変対応の中でも、BLSを越えたALSはある。

ナースにはナースなりのACLS(二次救命処置)があるはず。それを提唱できるのはきっとナースだけ。

いつまで医師向け教育プログラムのおこぼれに頼っているの?


posted by Metzenbaum at 13:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月28日

オペ室急変対応シミュレーション 第二弾

今日はオペ室で急変対応シミュレーション・トレーニングを行いました。第二回目。

シナリオはこんな感じ。

麻酔科学会期間中、皮膚科の局所麻酔手術で患者入室直後。
モニターを装着し、患者さんと会話をしながら、皮膚科Dr.を待っている状況。

患者さんと会話中、突然うめき声を上げ、白目を剥いて意識消失しました。

他の部屋では、緊急C/Sでたった一人の麻酔科医は部屋を出られない。

さあ、どうしますか?


代表して5-6名に動いてもらって、残りの人は見学。

見学者には見学の視点をあらかじめ提示しておきます。


・VFの認識から胸骨圧迫開始までの時間はどれくらい?
・VFを認識してから除細動器が到着するまでの時間&ファーストショックまでの時間
・質の高いCPRを行えているか、特に中断時間
・リーダーの指示は明確か?
・指示を受けた人は復唱しているか?
・役割分担ができているか?
・etc.


前回やったときは、除細動器の定位置がオペ室の端っこのリカバリールームで、取りに行くのに不便という問題点に気づきました。そこで今はオペ室のほぼ真ん中に置き場所変更しています。

そのこともあって、除細動器到着時間が格段に早くなりました。

しかし、残念ながら、除細動器が到着してから、除細動のショックをかけるまでに3分以上のタイムロス。

除細動器のセッティング・使い方がわからず、というありがちなパターン。

普段はパドルが取り付けてある除細動器。今回は医師がなかなかこられないということで、手動式除細動器のAEDモードを使うことになったのですが、パッドを装着するためにコネクタを付け替える必要があり、その準備にもたついてしまったのでした。

このあたりは、シナリオ終了後のデブリーフィングで、チームを組んでいた当人たちも見学者たちも、問題として指摘していて、すぐその場で全員で除細動器のAEDモードの使い方の復習。

自分たちで問題を認識して、その上での解決策としての取り組みですから、一方的な講義としての「除細動器のAEDモード使用勉強会」などと違ってしっかり身についたはず。

中には知識としては知っている人もいましたが、実際に触ってみるのは初めてで、やってみないとわからないという点も実感していただけたようです。


一方、前回はVFを認識しても、胸骨圧迫というアクションになかなかつながらず、胸骨圧迫開始まで何分もかかっていたような感じでしたが、今回はすばらしかった。VFです、除細動器と応援を! と叫んだ第一発見者はすぐにCPR開始。10秒も経っていませんでした。

さらにすばらしかったのは、応援が着たら、まっさきに胸骨圧迫を代わってもらって、全体が見通せる場所に一歩引いたこと。

このあたりは、確実に前回のシミュレーション訓練が活きています。


こうやって、自分たちでしっかりできているところを再認識して、さらに課題を見つけて取り組んでいく急変対応シミュレーション&デブリーフィング&スモールグループ・ディスカッション、とっても有効です。

最後のディスカッションの検討課題は、

・オペ室急変対応の上で必要なスキル・知識は何ですか?
・どうやったらそれを習得できますか?
・あなたは明日から何を行っていきますか?

というもの。

最終的に主催者が言いたかったメッセージはすべて、参加者の言葉として出てきました。

一方的に講義をするという従来の勉強会スタイルからの脱却。

そんなところも感じてもらえたんじゃないかなと期待しています。



皆さんのオペ室では、急変対応トレーニングを行っていますか?

外部講習としてACLSを受講してきました、というのでは不十分ということは、実際の仕事場でシミュレーションをしてみないとわかりません。

ぜひお勧めします。




posted by Metzenbaum at 00:52| Comment(2) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月16日

ナースにとってのファーストエイド

ファーストエイドに関する記事、第二弾を書こうと思いながら、ずいぶん時間が空いてしまいました。

前回は 日本救急看護学会オフィシャルのファーストエイド についてご紹介しましたが、今回はそれをややクリティカルに掘り下げてみようと思います。

まず、率直にいうと、「日本救急看護学会のファーストエイド」は、ファーストエイドとは違うな、と思います。

ファーストエイドでないとすると、じゃあ、なにか?

むしろ「ナース向け院内急変対応」プログラム、といった方が妥当ではないかと。


ファーストエイドといえば普通は病院外での応急手当を指します。

日本救急看護学会も「場所や状況を問わずに発生する様々な救急・急変時に、専門的な救急処置が開始されるまでの間、看護職として適切な緊急・応急処置ができる」ことを目指すとしており、いちおう病院外も考えてはいるようです。

しかし、実際の中身を見ると、ほとんどが病院内での急変対応に終始していて一番知りたい病院外でのバイスタンダーとしての活動については触れられていないのが残念。

たとえば、アナフィラキシーに関するページでは、、

「気管挿管が遅れないよう、ただちに医師を呼び、早期の気管挿管、ファイバーによる挿管、輪状甲状靭帯穿刺、切開を考慮、準備する」
「リザーバー付き酸素マスク10リットル/分以上の高濃度酸素を投与する」
「喘鳴音が聴取されれば喘息同様の治療も考慮し、β2刺激薬(硫酸サルブタモールなど)の吸入を行う」

などと書かれています。

部分抜粋ではありますが、どうみてもファーストエイドじゃないですよね。

他のページでも、平気で「モニター装着」「末梢静脈ラインを確保」などと書かれていて、普通に院内急変対応マニュアルになっています。


おそらく「ファーストエイド」という言葉の使い方が間違っている、というか、少なくとも私と日本救急看護学会のファーストエイドの定義・認識が違っているんでしょうね。

ちなみにファーストエイドに関しては国際的な定義があります。(日本語は私の勝手な訳です)

We define first aid as the assessments and interventions that can be performed by a bystander (or by the victim) with minimal or no medical equipment.

ファーストエイドは、バイスタンダーもしくは傷病者自身によって行われる最小限ないしは医療器具を用いないで行われるアセスメントと介入(処置)と定義づける


これは International First Aid Science Advisory Board が制定したファーストエイド国際ガイドライン2010の定義です。

International First Aid Science Advisory Board には、日本からも Resuscitation Council of Asia(≒日本蘇生協議会)として代表者が参加していますので、当然、日本もこのガイドラインに批准するはずです。(G2010のドラフト版には含まれていませんでしたが)

ですから、やっぱり日本救急看護学会の「ファーストエイド」は、ちょっと違う気がするんですよね。


かといって、日本救急看護学会の「ファーストエイド」がダメと言っているわけでは決してありません。

研修医向けの当直マニュアルとか救急外来対応マニュアルみたいな本はたくさんありますが、そういった総合的な本のナース向けってあまりなかったと思うからです。

そういった意味で、病院内のナース向け総合急変対応マニュアルとしては、とてもよくできたテキストだとおもいます。



でも、本当の意味でファーストエイド、つまり病院外で身ひとつで出来ることを知りたい方は、医学書以外に目を向けたほうがいいかもしれません。

そこで現時点、お勧めの独習用のファーストエイドテキストはは次の3冊。

いずれも翻訳本ですが、やっぱりファーストエイドは欧米のものが優れています。どれもきちんと傷病者評価法(アセスメント)について記述されている点がポイント。日本の応急処置の本は、処置ばかりで傷病者の総合的な観察について書かれていないことが多いので。市民向けの本ではありますが、医療者としてはここは是非おさえておきたいところです。PALSやPEARS、JPTECなどと同じ流れで書かれています(でも、あくまで市民向けの本です、あちらでは)。

アトラス応急処置マニュアル 原書第9版
※3冊の中ではいちばん新しい内容。イギリスの本なのでERCガイドライン2005準拠。

ファーストエイドとCPR―NSC標準救急法マニュアル
※CPRに関しては内容はAHA-G2000で古いもののFAの内容としては随一

こどものファーストエイド―こどものケアを行うすべての人のために
※傷病者評価では定評のあるPALSやPEARSを作った米国小児科学会(AAP)の本。



次回、内容を詳しくご紹介します。



posted by Metzenbaum at 00:23| Comment(4) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月04日

ガイドライン2010 新しい心肺蘇生法

ナースとしては是非押えておきたい情報。

心肺蘇生法ガイドラインが改定されて、最新版のガイドライン2010に!


今度の新しい蘇生法では、呼吸確認や人工呼吸のウェイトがかなり下がりました。

「見て聞いて感じて」の呼吸確認法は削除されて、目視だけの呼吸確認。

「大丈夫ですか?」と声をかけると同時に胸と腹の動きを見て、さらっと呼吸の確認。

気道確保もしません。

それで明らかに正常な呼吸をしているとき以外は、緊急通報とAED手配をしてから胸骨圧迫を開始。

30回押した段階で、準備ができていれば気道確保して人工呼吸2回。

そうでなければ胸骨圧迫を応援が来るまで続けます。

ということで、これまでは、

気道確保 → 人工呼吸 → 胸骨圧迫

だったのが、

胸骨圧迫 → 気道確保 → 人工呼吸

の流れに変りました。

このことをA-B-Cから、C-A-Bへ、なんて言ったりもします。

G2005:気道確保(Airway) → 人工呼吸(Breathing) → 胸骨圧迫(Chest Compression)
G2010:胸骨圧迫(Chest Compression) → 気道確保(Airway) → 人工呼吸(Breathing)

病院でガイドライン2010の話題が出ていたら、「あ、CABに変ったんですよね」とかサラッというと通っぽいです(笑)


なんでかっていうと、理由は簡単。

蘇生に一番重要な胸骨圧迫がなるべく早く、多くの人にとって開始しやすいように、ということで、このように改められました。

ABCだと人工呼吸という心的障壁が入り口に立ちはだかってしまいます。

それに気道確保だって、日頃他人の体に触り慣れていない人には抵抗があるものです。

倒れたときに頭から血を流していることもあるでしょうし、そうでなくても、おじさまの頭やあごに触るのに抵抗があるという乙女も多いかも知れませんし。

だから、傷病者の素肌に触れて顔を近づける気道確保と呼吸確認は廃止。

これで、いちばん抵抗がない、だけどいちばん有効な胸骨圧迫がサクッと始められるわけです。

ガイドライン2010の中でも、この方法を推奨しているのは日本とアメリカ。

特にアメリカのガイドラインを作ったAmerican Heart Association(アメリカ心臓協会)は、この方法が広まれば社会として救命率に大きな変化が現れるに違いないと言っています。

この方法が普及するには1-2年はかかると思います。

結果がでるのが楽しみです。
posted by Metzenbaum at 23:31| Comment(4) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月15日

エピペンとAEDと医師法違反

昨日の夜中、Twitterでつぶやいたことのまとめ。


エピペン(アドレナリン自己注射器)を学校教職員は使うことができる、ということはだいぶ知られてきた。でもその根拠を調べてみると、意外と希薄。「学校教職員が臨時応急的に使うのは反復継続の意志がないものと解されるので医師法違反には該当しないと思われる」みたいな感じ。それだったら一般市民なら誰だって使ってOKってことじゃん。

医師免許を持っていない人が医療行為を行うと医師法違反になると思われがちだけど、実は医師法が禁じているのは医行為ではなく「医業」。医業とは医行為を反復継続の意志を持って行うこと。だから市民が行うその場限りの医行為は医師法違反にならない。

だから、アナフィラキシーで意識がもうろうとした人に一般市民がエピペンを代わりに注射してあげても、少なくとも医師法違反にはならない。学校教職員宛に出した文部科学省の通達はそれを再確認しただけ。。。なんだよなぁ。

ある意味お役所の後ろ盾文書のあるかないかくらいの違いだけで、たぶん、学校教職員以外の一般市民がエピペンを使っても違法性は棄却されるはず。ただ後ろ盾文書がないから、送検される可能性はある。裁判で無罪になって、その後日本の市民救急法に新たな1ページが開かれる!? でも社会人としては間違いなくリスキーだよね。

さっきから医師法違反に限定して書いているけど、それ以外に傷害罪を問われる可能性もあるので注意!




医師法解釈の「反復継続の意志」というのは非常にやっかい。AEDだって一般市民がたまたま使うのは無条件にOKなのに、看護師は業務で行う以上、反復継続の意志があると見なされるから医師の指示なしに使うと医師法違反。あまり知られていないけど。

だから、病院でAEDを配備するなら、包括指示や院内規則で「急変時はナースはAEDを使用して救命にあたる」と明記しておくのが、正しい手続き。

素人が使う分には制限がなくて、免許を持っていると使えないというのは、おかしな話。「私はナースなのでAEDは使えません! 素人のあなたがボタンを押してください!!」みたいな。バカバカしいけど、それが日本の法律。

聖路加の日野原重明氏が、「看護師よ、保助看法を破れ!」といっていたけど、エピペンを含めた応急処置も誰かが既成事実を作らないと変わらないんだろうな。

posted by Metzenbaum at 10:23| Comment(1) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月30日

内科系疾患標準化コースAMLS

ハワイに着いて3日目。

ACLSインストラクターの更新講習を終えて、この日は一日フリー。

前回来たときは、4日間、ずっと講習でホテルと講習会場の往復以外はナンにもなかったので、今回はあえて1日フリーの日を作ってみました。

別に買い物とかは興味がないので、散歩がてらハワイ大学の医学部キャンパスへ、プラプラと。


ハワイ州立大学医学部キャンパス


ホノルルからアラモアナショッピングセンターに向けて歩いて、海岸沿いをてくてく。

ショッピングセンターを越えて、さらに30分ほど歩いた左側に医学部キャンパスがあります。

2年前に来たときは、ACLSインストラクターとしてのモニター試験という教育実習が、この医学部キャンパスの階段教室でありました。

インストラクターとしてのデビュー戦みたいなもので、緊張ながら、一緒にインストラクターになった3人の仲間と、2日間、どうにかコース開催をしたものです。

時間的に学食は終わっていたので、購買部の医学書センターへ。

小さいながらも一通りの方がそろっていて、日頃手にとってみることができない、FCCS、PHTLS、AMLSなどのアメリカの医療標準化コースのテキストをパラパラと。

で、結局AMLSのテキストを買ってきました。

AMLSの英語版テキスト


AMLSは Advanced Medical Life Support の略で、アメリカの救急隊員向けの内科系の初期対応教育プログラム。

この手の講習は日本だと AHA の ACLS が有名ですが、アメリカでは色々な団体が色々な内容の標準化コースをやっています。

AHAのACLSは Cardiac ですから主に循環器系の急変対応を学ぶコース。命に関わる心臓疾患への対応はこれでいいのですが、そうでない場合や意識がある人への対応方法はあまり含まれていません。

ACLSは医療従事者の常識はありますが、実はそれだけでは不十分。

ということで、アメリカの医療標準化教育はおおむねこんな図式になっています。

1.内科系標準化コース・・・・AMLS
2.外傷系標準化コース・・・・PHTLS、ITLS
3.循環器系標準化コース・・・・ACLS

ここまでやっておけば、ケガから病気、心停止まで一通りの判断と処置ができるという構造。ちなみにBLSが入っていないのは、医療従事者になる以前の常識だから。みんな学生のうちに実習が始まる前に習得する内容です。


日本を振り返ってみてみると、循環器系はAHA-ACLSとか日本救急医学会のICLSでだいぶ浸透しています。

外傷系もJATEC、JPTEC、JNTEC や 米国系の ITLS がそこそこ認知されている。

でも内科系の統合プログラムってないんです。

一応ISLSが脳卒中ということで内科系ではありますが、あまりに特化されて過ぎていて、なんだか病態・原因がわからない患者へのアプローチ法は学べません。

でも、本当はそこが一番重要なんですよね。

なんか様子がおかしい。そう思ったときに、何を観察して、どう評価して、どう対応するのか。すべての急変の入り口を学ぶコースが日本にはありません。

いちおう外傷系コースでは、初期評価、一次評価、二次評価といった大事な点が含まれていますが、でも前提は外傷。内因性へのアプローチは相当弱い。

なので、やっぱりAMLSのような内科系総合アプローチを学ぶコースは必須だと思うんです。


実は今回のハワイでの夏期集中セミナーには、AMLS2日間コースもありました。

そこへの受講も勧められていたのですが、これまで私の周りで受講しているのはACLSのファカルティクラスのドクターばかりで、そのドクターたちがけっこう骨があったと感想を漏らされていたので躊躇していました。

でも今回、日本から来ているナースの受講生が何名かいました。

それを見て私も受けておくんだったなぁとちょっと後悔。

でもまあ、今回とこれまでにプロバイダーになった人たちを対象に、今年インストラクターコースがあるそうです。

おそらく今回、受講していた看護師の方たちも、インストラクターへの道を進まれるのだと思います。

来年あたりかな。

日本でも公認のAMLSコースを開けるようになる予定、ということなので、そのときは第一期受講者になるべく、今回、予習用に英語版テキストを購入、というわけです。



こうしてアメリカのシステマチックに整理された医療の学びの体系をみると、日本はまだまだだなぁと感じます。アメリカのシステムのおもしろいところは、あまり医師・看護師・救命士と分けられていないところにあります。

さらにはウィルダネス・ファーストエイドという市民向けの野外救急法も、医療者向け外傷コースと親和性があるように作られていて、AVPUスケールの意識レベルの評価や報告システムなどもそのまま病院に引き継げるような教え方がされていたり。


勉強になります。
posted by Metzenbaum at 10:27| Comment(2) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月27日

出張って楽しい!

今、ハワイに来ています。

hawaii-view.jpg

夏休み、ということなんですけど、別に観光に来たわけではなく、AHA-ACLSインストラクター資格更新手続きのため。

私の持っているACLSインストラクター資格は、ハワイで取得して現地のトレーニングセンター登録なので、更新の度にこっちに来なくちゃいけない運命。

最初、初回認定の時は実技試験もあって、時間も苦労もひとしおでしたが、更新はそこまでは大変じゃないので、2年おきにハワイに通うのも良いかなと思ってます。


今回、ACLSインストラクター更新コースを担当したのは、患者の航空搬送を仕事にしている救急救命士さん。

ハワイでのACLSインストラクターコース

ACLSインストラクターコースを開催したり、インストラクターの資格更新を認定できるAHA資格はACLSファカルティといいます。

日本でACLSファカルティといえば、循環器の教授クラスだったり、医師の中でも大御所ばかりですが、ここアメリカでは救命士や看護師がACLSファカルティとして活躍しています。

私が最初にACLSインストラクター認定してくれたのも看護師さん。まあ、看護師といっても今日本でも話題になっているナース・プラクティショナー資格を持っているスーパーナースでしたが。



今回のハワイもそうですが、AHAのインストラクターになってから、インストラクターとしての泊まりがけの仕事が多くなりました。

トレーニングセンターからの派遣ということで、「出張」というケースも多く、6月にはBSインストラクターコースで東京に1泊、8月初めには長崎で市民向けファーストエイド講習で2泊3日、11月には American Heart Association のガイドライン改定オリエンテーションでアメリカ・シカゴへ4泊5日、12月は会議で東京に1泊、1月はBLSインストラクターコースで北海道へ2泊3日。

ナースの仕事って学会発表でもしないと基本的に出張なんてないから、公費で泊まりがけで出かけるのって、なんだかワクワクして楽しいんですよね。(出張が日常茶飯事のビジネスマンには、うんざりなのかもしれませんが)

これまでバックパッカーでテントを背負っての旅とか車中泊しかしてこなかったから、ちゃんとしたホテル(ビジネスホテルですが)に泊まれるのも新鮮でうれしい!


それにしても、これから年末にかけては泊まりがけが多すぎて、病院がどこまで認めてくれるかちょっと心配。ただでさえ年次有給休暇の残りが少ないから、病院としての出張扱いにどう持ち込むかが課題です。

posted by Metzenbaum at 22:20| Comment(3) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月15日

オペ室での急変対応シミュレーション

先日、勤務先の手術室で急変対応シミュレーションを行いました。

大腿骨頸部骨折後の患者。

抜管後、さてモニター外してベッド移動しようかというときに、なにやら様子がヘン。頻脈になって酸素飽和度も低下。

どうしたんだろう? と思っているうちに、なぜかいきなりVF。

そこにいるのは麻酔科医と看護師2名だけ。

さあ、どうしますか?

というシナリオ。

ハートシムをオペ台に寝かせて、心電図波形をサイナス・タキからVF、さらにはサイナス・タキのPEAに変化させて、オペ室ナースに動いてもらいました。

ナースステーションには別に3名のナースがいて、計ナース5名プラス麻酔科医1名で対応する展開。

役割がない人には、オブザーバーとして、それぞれのスタッフの動きを追いかけて観察してもらい、後でみんなでデブリーフィング。


すごく勉強になりました。

オペ室スタッフには、私がBLSを仕込んでいますので、理想的な状況では動けるようになっています。

しかしこのようなリアルな状況だと、やはり勝手が違くて中々うまくいかない。


手動式の除細動器の電源コードが絡まってすぐに持ち出せないとか、オペ室内は配線だらけで除細動器をベッドサイドに近づけられない、麻酔科に言われた薬がたまたまカートになくて、どこに取りに行こう? というトラブルがあったりとリアルな問題点が次々と浮き彫りになっていきました。

手動の除細動器の使い方がわからないとか、アルゴリズムを知らない、というのはこの際は問題にせず、今回のメインテーマにしたのはチームダイナミクス。

中でも、

・クローズドループコミュニケーション
・明確な指示
・明確な役割分担
・自己の限界の認識
・建設的介入

あたりをポイントとして、デブリーフィングを行っていきました。

そうしたらみんな気づいているんですよね。

今回、VFの発生から最初の除細動まで8分もかかってしまった理由がノンテクニカルスキルに起因しているってことが。

私が誘導しなくても、自らいろいろ語ってくれました。

「ナースステーションに行って『急変です!』しか言わなかったから、人は来たけど除細動器を持ってくる人が誰もいなかった」

「除細動器を持ってきたけど、リーダーは薬剤準備の指示を出していたから、「持ってきました!」って言い出せなかった」

たいていのトラブルがチームダイナミクスのポイントで説明できる点ばかり。

仮にアルゴリズムなんて知らなくても、チーム蘇生の概念さえわかっていれば、そうとうスムーズに行くということは誰もが納得して終えることができました。


一般的にACLSは蘇生を成功させるためのツールの一つとしてチームダイナミクスを用い、ノンテクニカルスキルのトレーニングを行います。

しかし、ナースにとってはもしかしたらアルゴリズムなんかより、このノンテクニカルスキルトレーニングコースとしての意味の方が大きいかも知れないと思いました。

急変対応という題材を使って、ノンテクニカルスキルトレーニングを行う。ACLSをそう割り切っちゃっても良いかも。

最近、病院の安全対策室から、ノンテクニカルスキル・トレーニングのいい教材はない? と相談されているのですが、ACLSからこの部分だけを切り抜いて、こんなシミュレーション訓練を行うのがかなり有効なのでは? と感じ、ACLSの新しい可能性を感じ始めた今日この頃です。
posted by Metzenbaum at 01:41| Comment(4) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月29日

手術室での急変対応シミュレーション(ACLS)

久々にマジメなオペ室ネタです。

手術中の突然のVF(心室細動)、皆さんのところではどのように対応していますか?

私の勤務する手術室ではあまり頻度が高いことではなく、過去5年間に2回ほど(年間約6,000件のオペをしている手術室です)。

私自身は心停止に当たったことはなく、過去の2回も私が勤務ではなかったときなので、伝え聞くだけなのですが、手術室での救命処置(BLS+ACLS)は、一筋ならではいかないなという印象があります。

病院内勉強会や、AHA ACLS、日本救急医学会のICLSなどで、病院内での急変対応シミュレーション教育は進んでいますが、手術室の場合、いろいろ特殊なことがありすぎて、それらのコースを受講しただけではなかなか対応は難しいと思います。(突っ込んで言えば、それはどこの部署でも同じかもしれませんが)

手術室の特徴、問題になることをいくつか列挙してみます。

 ・既にVラインが取れていて、多くの場合は挿管されている
 ・執刀医と麻酔科医、リーダーシップを誰が取るか
 ・清潔野をどうするか、胸骨圧迫の問題、除細動器パドルの問題
 ・特殊体位(腹臥位、側臥位、坐位、など)

これらの問題を考えると、手術室は手術室で、ある程度基準を作るとか、話し合いをして患者急変シミュレーショントレーニングをしておくことは不可欠と思います。

ただ手術室では、外科系のすべての科が関わっていますので、これらを含めたコンセンサス作りはなかなか困難です。

基本は、麻酔科と手術室看護師である程度話し合いをし、それを各科へ打診するということになるでしょうか。


手術中に突然VF(心室細動)になった場合、取り急ぎ必要なのは胸骨圧迫の開始です。開腹手術などの場合は、胸部は清潔なドレープがかかっていますから、助手(第三助手)の外科医が胸骨圧迫を開始するというのが現実的かなと思います。

手術操作を止めることができるならいいですが、そうでなければ執刀医と第一助手は止血など、手術を中断できるところまで処置を進める必要があります。

止血操作など手術操作が進むなら、器械出し看護師はその補助に当たるべきですが、手術操作が止っていれば胸骨圧迫の交代要員となれます。

除細動器が届いたら、パドルをどうするかが問題。

皆さんのところでは清潔野で使える滅菌パドルの準備をしていますか?

清潔野で除細動をするとしても、たとえば開腹手術の場合、パドルを当てる位置はドレープの下に隠れています。

ドレープをはがして、隙間から奥へ手を入れなければパドルを当てることは不可能。

かといって、不潔野からパドルを当てるにしても、清潔野を維持しようと思ったら、結構困難です。それにドレープの下に盲目的に手を差し入れた場合、感電という点でちょっと心配。

確実なのはドレープをはがして、裸体状態にするべきですが、手術は一時中止というある意味大きな判断が必要です。執刀医がそういう判断を素早くしてくれればいいですが、麻酔科側としてそう強く言えるかどうか。

器械出しナースとしてできることは、術野を覆うための覆布やドレープシールを準備することでしょうか。

手術室での急変時の難しい点として、手術進行というシビアな状況をコントロールする執刀医と、全身管理を行う麻酔科医、どっちがリーダーシップを取るか、どこまでお互いの領域に踏み込んで進言・決断をするかというところにあると思います。

リーダーさえ決まれば、手術室ナースはそれに従って行動、また医師たちの注意から漏れた細かい配慮を行っていけばいいのですが、リーダーが決まるまでが結構重要かとも思います。

手術室外回り看護師の大事な役割は、手術進行の全体的なコーディネート。

リーダーが決定せず、判断や指示系統がはっきりしないときには、オペ室ナースとして本領発揮かもしれません。

「先生、○○しましょうか?」
「○○はどうしましょうか?」

そんな感じの「建設的介入」によって、処置進行の促し、決定の促しができます。

そのためにはACLSの基本的な知識が不可欠です。

急変時には誰もが焦ります。

中でもリーダーとしての役割が期待される医師たちの重圧は大きいものと思います。

ましてや執刀医と麻酔科医という力関係の微妙な立場を考えれば、中間的に間を取り持つのはナースの仕事ではないでしょうか?

そのためにも、ACLSの基本的対応を理解し、手術の場面でどのようにそれを適応するかを考えることは大切だと思います。


皆さんの施設では、そんな防災訓練とも言うべき急変シミュレーションを行っていますか?
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2009年11月12日

AHA PEARS(患者急変対応コース)、東京初開催

AHAのBLSとACLS、そして小児二次救命処置のPALSは有名ですが、
PEARSプロバイダーコースというのがあるのはご存じでしたか?

知る人ぞ知るPEARSプロバイダーコース。

AHA PEARS ペアーズ・プロバイダー修了カード(患者急変対応)

こんな修了カードです。

見たことある人は、まずいないと思います。

というのは日本ではこれまで4回しか開催されたことがなく、日本でこのカードを持っている人はたぶん5−60人しかいません。


PEARSは、正確に書くとP.E.A.R.S。

略語です。

何の略かというと、Pediatric Emergency Assessment, Recognition, and Stabilization.



簡単に言えばAHAのBLSとACLSには含まれない患者急変の初期評価と対応の仕方を身につける実践コースです。

「ちょっとおかしいぞ!」という直感的な「気づき」をどのように判断して診断につなげていくか、そしてどのように必要な救命処置やドクターコールを行うかという、いわばBLS以前のスキルを身につけるコースです。

ベテランの人は経験的に身につけていることですが、それを体系づけて学ぶという教育は日本にこれまでありませんでした。いわばベテランの勘所を短時間で効率よく身につけちゃおうという画期的なコンセプト。

部署にもよりますが、正直、心停止でBLS/CPRが必要な場面というのは意外と多くはありません。そうなる以前に気づいて対処すればどうにかなるということの方が多いはず。

日常業務でありがちな身近な緊急事態での対応を学べるナースにとってはうってつけのプログラムと言っていいと思います。

Pearsの P は"pediatrics"のPで、小児という意味です。しかしなにも子どもの急変に限らず、ナースが患者と接する際の診断的なアプローチの仕方を、AHA得意のDVD教材とディスカッションで学んでいきます。


そんなPEARS Providerコースが、こんど東京で初めて開催されます。

  • BLSとACLSだけでは納得できなかった方
  • 小児科ナース
  • PALSに興味があるけど受講の踏ん切りがつかなかった方
  • 日本のAHA関連団体では発行していない本場ハワイのAHAカードを手にしたい方
  • etc.

興味がある方は、この機会をお早めにどうぞ。

PEARS Provider Course
主催: American Medical Respons, Hawaii
企画: 日本医療教授システム学会(JSISH)
会場: 東京/日本橋プラザ
日時: 11月27日(金) 10:00〜16:30
受講料: 35,000円(教科書、昼食込み)

→  詳細・申し込みはこちらから


長いページですが、下から4つめにPEARSプロバイダーコースの概要と申し込みページへのリンクがあります。

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2009年11月08日

AHA US BLS/ACLSインストラクターとしての活動

久々の更新になります。

ここ1-2年、私のもっぱらの関心事はBLS/ACLSのインストラクターとしての活動。

手術室の仕事そっちのけで、休みのほとんどを費やしてきました。

挙げ句の果て、やっぱり本場の世界を知らなくちゃ、ということで渡米、アメリカで American Heart Association のBLS Instructor と ACLS Instructor 資格を取得するまでになりました。

いまは、アメリカ・ハワイ州にあるAHAナショナル・トレーニングセンターの所属として、主に日本でBLSとACLSの教育活動に携わっています。

そんな最近の私の活動について少しご紹介したいと思います。



いま、日本ではAmerican Heart Associationと契約を結んで、ライセンス発行ができる団体が7つあります。

 ・日本蘇生協議会(Japan Resuscitation Council)
 ・日本小児集中治療研究会(Japanese Society of Pediatric Intensive and Critical Care)
 ・日本ACLS協会(Japan ACLS Association)
 ・日本循環器学会(Japanese Circulation Society)
 ・国際救急救命協会(International Emergency Medical Association)
 ・福井県済生会病院(Fukui-Ken Saiseikai Hospital)
 ・日本BLS協会(Japan BLS Association)

皆さんがお持ちのBLSやACLSのプロバイダーカードの裏面には、上のいずれかの団体名が英語で印字されているはずです。

しかし、私が日本で開催して発行するAHA BLSプロバイダーカードの裏面はこんな感じになっています。

AHA USプロバイダーカード

目立つのが Hawaii Region という文字。

そうなんです、私はハワイ州にあるAHAナショナルトレーニングセンターの所属なので、私が主催したAHA BLSコースは、開催場所が日本国内であってもハワイからカードが発行されます。

いま、日本にもたくさんのAHA BLSインストラクターという人たちがいますが、日本国内のAHA提携団体(上の7つの団体です)でインストラクター資格を取得した人は、原則的に日本国内でしか活動できません。

しかしアメリカでインストラクター資格を取った人には、アメリカ合衆国内はもとより、日本を含め世界中でAHAコースを開催できる権限が認められている、のです。

自由度は高いですが、日本を中心に活動しようと思ったら、これがなかなか大変。書類は全部英語ですし、すべての手続きをハワイ相手にやるので、正直言って苦労の方が多いです。

しかし、AHAをはじめ、蘇生教育はガイドラインの改定によって5年おきに変わります。そうした世界の最先端に触れていられるのは、アメリカ本国のトレーニングセンターと関わっているからだと思うのです。特にガイドライン2010が目前と迫っている今、USインストラクターであることに大きな価値を見出しています。

蘇生ガイドライン2010が発表されるのが、2010年10月。

それを元に、ガイドライン2010版のBLSヘルスケアプロバイダーコースの教材(インストラクターマニュアル、コースDVD、受講者用テキスト)が完成するのがおそらく2011年6月。

最初はもちろん英語です。

これが正式に日本語訳されるのは、おそらく2012年春過ぎでしょう。

ということで、日本でガイドライン2010版のBLSコースが開催されるまでは、あと2−3年はかかりそうです。

そんな中でもいち早く最新ガイドラインに則ったコースを展開するのはおそらくUSインストラクターでしょう。早ければ英語版リリースから数ヶ月遅れくらい、つまり2011年夏過ぎくらいにはぼちぼちと開催できるのではないかと思います。

私も、新しい英語版コースがリリースされたら、アメリカに行って情報収集してくることになりそうです。


基本はインストラクターの個人活動が中心で、日本のAHA関連団体のように「トレーニングサイト」のような活動拠点を作らなかったため、いまいち認知度が低いAHA USインストラクターですが、今年から、全体を取りまとめるホームページができたりして、少し組織的に動くようになってきました。



これまでは、USインストラクターの勤務病院とか、口コミでしか受講できなかったアメリカ本国ナショナルトレーニングセンターのAHAコースが、公募で開催されるようにもなってきています。

アメリカTC発行のプロバイダーカードと日本のITCカード、裏面のカード発行元が違うだけで基本的には等価なものなんですが、海外留学とかアメリカで働きたい! なんていう場合にはやっぱりアメリカ発行のカードの方が通りが良いようです。

そもそもアメリカの病院人事部の人とか、日本でもITCがあってAHA資格が取れるって知らない人が多いですし。

カードだけを見ると、わざわざアメリカに行ってとってきたようにも見えるUSインストラクター発行のプロバイダーカード。

つまらないことはありますが、話しの種にでも、興味がある方は、機会を見つけてUSインストラクター主催のAHAコースを受講してみてください。

アメリカ本場の雰囲気を味わえるはずです。

今のところ、埼玉、東京、神奈川、福井、岡山、鹿児島を中心に公募コースを開いています。

ちなみに東京開催の日程はこんな感じです。

● BLS for Healthcare Provider
東京都文京区/東京メトロ丸ノ内線 茗荷谷駅徒歩5分
12月12日(土)→ 詳細
12月19日(土)→ 詳細

● ACLS Provider Course (一日コース)
東京都文京区/東京メトロ丸ノ内線 茗荷谷駅徒歩5分
11月15日(日)→ 詳細

● PALS Provider Course(2日間)
東京都文京区/東京メトロ丸ノ内線 茗荷谷駅徒歩5分
12月19日(土)〜 20日(日)→ 詳細

● PEARS Provider Course
東京/日本橋プラザ
11月27日(金)10:00〜16:30 → 詳細


いずれもアメリカ合衆国ハワイ州の修了カードが発行されるコースです。

最後、ちょっと宣伝でした。

posted by Metzenbaum at 23:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月07日

近況

この3−4日、出張のBLSヘルスケアプロバイダーコースに、メディカルラリースタッフ参加、ICLSインストラクターと盛りだくさん。

充実しているといえばそうなんですけど、AHA関係だけでもこなさなければいけないデスクワークが山積み。

メールの返信も溜めに溜めまくって、関係者の皆さま、ごめんなさい! です。

AHA-PALSプロバイダーコース受講も内定しているので、テキスト買って勉強しなくちゃだし、ACLSインストラクターも早々にブースを任されることになりそうで、その勉強も、、、、

本職でも9月から新規就職の方のプリセプターもしているし、看護研究やらなんやら。

看護学士取得のための論文が終ったと思ったけど、息つくヒマがないです。

まあ、忙しいっていうのは幸せなことなのかも知れませんね。




そんな合間を縫って行ってきた3年に1度の現代美術の祭典「横浜トリエンナーレ」。

横浜トリエンナーレ立ち上げ以来ずっと楽しみにしていましたが、今年はなんだかグロな感じの作品が多くてちょっと意外でした。まあ、生命の根元を問う作品ということで評価はしますが、かなり刺激的だったかなぁ。

日頃、手術の介助をしたりしていて、血みどろは慣れてますが、最初やられそうになりました。

もし横浜トリエンナーレに行かれる方は、「15歳未満制限」の作品にはご注意を!
posted by Metzenbaum at 21:30| Comment(4) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月11日

AHA-ACLSインストラクターコースを受講してきました

ACLSインストラクターコースを受けてきました。

アメリカ心臓協会AHAのACLSプロバイダーコースで教える指導員になるための資格取得コースです。

これまでもAHAのBLSインストラクターとしては活動していましたが、やっぱりBLSとACLSでは違いますね。

医学的な内容の難しさは当然なのですが、教え方/指導方法、アプローチの仕方がBLSとACLSではぜんぜん違うので多いに戸惑いでした。

講師の先生(AHAの業界用語ではファカルティ faculty と呼んでます)が言ってましたが、BLSは体を使う体育、ACLSは知的ゲームなんて言ってましたが、確かにそんな感じ。

AHAのBLSコース(ヘルスケアプロバイダー/ハートセイバー)はビデオの流れに身を任せて勢いで指導できますが、ACLSはそういうわけにはいかず、かなり頭を使います。

なにより教材設計というか、AHAが考えた教育デザインをよく理解しておかないと、ドツボにハマリまくりで収拾つかなくなってしまいそう。

そんなポイントを学ぶためのコースでした。

AHAのACLSインストラクターに認定されるためには、あとはモニター評価という実技試験が待っています。

実際のACLSプロバイダーコースにインストラクター候補としてスタッフ参加して、実際に指導にあたって、それを上位インストラクターに評価してもらいます。

それでOKになってようやくACLSインストラクターカードが発行されるという流れ。

ただでさえコース開催数が少なくて、しかも2日に渡るコースだけに、なかなか実戦経験を積むチャンスがなさそうで、晴れて正式ACLSインストラクターになれるのはいつのことになるやら。

新しい世界に手を染めてしまった自分をちょっとだけ、うらめしく思いながらも、あせらず研鑽していきたいと思います(^^)
posted by Metzenbaum at 10:22| Comment(9) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2016年07月20日

急性アル中で倒れた人にAEDを使おうとしたら怒られたのは、なぜ?【解説】

ここ数日、Twitter上でAEDに関する話題をよく目にします。

倒れた人にAEDを使ったら通りすがりの看護師に怒られた、という内容です。

ご本人が拡散希望と書いているので、そのまま引用しましたが、下記のような内容です。(今後、ご本人がTweetを消去することがあれば、こちらも削除します)


これ本当に拡散希望なんだけど、昨日横浜駅で急性アル中でぶっ倒れてる人がいたから助けに入ったんだけど、徐脈で意識レベル低下してたからとりあえずAED使ったら通りすがりのBBA看護師に「AEDなんか使うな??そんなの点滴すれば治るでしょ??すぐ剥がして??」って言われて(続く)リンク

(続き)「何も分かんないの?」的スタンスで言うだけ言って去っていったんだけど、別にAEDって貼ってもすぐ電気流れるわけじゃ無いし必要なかったらちゃんと「使わなくてOK」って言ってくれるから確認の為でも使った方がいいんだよ。こっちだって100%必要だと思って使ってねえよ(続く)リンク

(続き)急性アル中でもし吐物が詰まって気管閉塞してたら?それで心停止に繋がったら?AEDはそれをちゃんと「確認」してくれる機械なんです。むやみやたらに電気ショックしません。なのにただ見ただけで必要無いっていうのはおかしいんじゃないの?看護師なのに大丈夫?って思って(続く)リンク

(続き)道で倒れて専門的な機械が無い場所で、AEDは万が一の為の装置なんです。もしそれでその人が死んだらどうするの?死んだ人も点滴で治るの?違うだろ。本当に腹立ちました。みんなは今回のおばさんのこんな言葉に惑わされず、迷わずAED使ってほしい。ダラダラと失礼しました。リンク

H/N: 水玉みよこは柄まで通ってる
twitterアカウント:@mizutama345



これをもとに「まとめサイト」がいくつも立ち上がり、「正しい知識を持つ」ことが肝心ですね、とか、看護師なのに老害! などと多くの声が寄せられています。


文面を見るかぎり、この通りすがりの看護師というのが、言うだけ言って、何もしないで去っていったという点で、確かにひどいなという印象です。

でも、だからといって、言っていることが間違っているかといえば、あながち間違いではありません。特にAEDが必要ない、という部分は紛れもなく正解です。


先入観で「悪」と決めつけているのか、誰も気づいていないようです。Twitter世論では完全に抜けている部分なので、少々書かせていただきます。



結論からいうと、「徐脈で意識レベル低下」という状態の人にAEDを装着するべきではありません。AEDは心停止、つまり生命徴候がない人に装着するものだからです。

徐脈というのは脈拍が遅い状態のことを指します。つまり、このケースは脈は触れますので、少なくとも心停止ではありません。(原文で徐脈という言葉が使われていますが、Twitter投稿された筆者の方も実は新人の看護師さんだそうです。医療者以外は脈拍を確認することは推奨されてません)

AEDの添付文書(取扱説明書)にも「明らかに生きている人に使っちゃダメだよ」って書いてあります。

こちらは、旭化成が扱っているZollというメーカーのAEDの添付文書です。

AED添付文書:意識・呼吸+脈のない人にのみ装着する



【禁忌・禁止】
 <適用対象(患者)>
 対象患者が以下の状態の場合は、本品を使用しないでください。
 ・意識がある場合
 ・呼吸している場合
 ・脈拍を触知できる、又は血流を示す他の兆候がある場合



添付文書とは、薬事法に基づいて作成が義務付けられた公文書です。AEDのような医療機器の他、薬剤にも付いています。薬剤で言ったら用法・容量が定められている大元の書類で、どんな人には使ったらいけないという「禁忌」が明示されています。

AEDは家電とは違います。本来は医師しか使用が許されない高度管理医療機器ですから、薬と同じで、使用条件が厳密に定められています。先ほどは取扱説明書という言い方をしましたが、添付文書に書かれている条件は、家電の取扱説明書とは比較にならない厳しいものであるという点は、おわかり頂けますよね?

その添付文書で、AEDは、意識がある場合や呼吸をしている場合、脈拍がある場合は使用したらいけない、禁忌ですよ、と書かれているわけです。

メーカーと薬事法が定めるところでダメといってるわけですから、誰がなんといおうと、「脈がある人にAED装着してもいい」とは、私は言えません。

Twitter世論では、一部の医師も含めて「いいんじゃない?」と言っていますが、その根拠はどこにあるのでしょうか?

医師なら、医師免許の下に自分の裁量で添付文書を超越した適応をすることも許されますが、看護師の私にはそんな判断はできませんし、ましてや責任を負えない一般の方であれば、法律の範囲内で添付文書に従って使うのが正解と言わざるを得ません。


なんで、意識、呼吸、脈のある人にAEDを装着したらいけないのか、という点については 私のTwitterの過去ログ を辿ってみてください。7月19日〜18日あたりに連投しています。

簡単にいうと、AED設計上の「仕様」としてショック適応判断の限界があり、心電図波形によっては、心停止ではない人に装着した場合でも、誤ってショックが必要と判断してしまう危険性が否定できないからです。

AEDは心電図上での心室頻拍(VT)を検出できますが、それが心停止(つまり無脈性心室頻拍)であるかの判断はできません。だから、人間が生命徴候の有無を判定した上でないと、AEDを装着してはいけないと定めているのです。(最近は各メーカーが工夫して解析性能が上がってますので、過度に心配するほどの頻度ではないと思います。詳しく知りたい方は「AEDの心電図解析と無脈性心室頻拍の判断」(日本心臓財団ウェブ)も参考になります。


最近は一部マスコミも含めて、「人が倒れていたら迷わずAEDを!」といい加減なことを言うケースが目立ちます。以前はきちんと「人が倒れていて意識と呼吸がなければ迷わずAEDを!」だったのですが、いつ、どこから省略されるようになってしまったのか、、、

慌ててしまって、呼吸の確認を忘れた! というのはありだと思います。それは批難されるべきものではありませんし、過失や、責任追求されるものでもありません。それに誤作動の可能性としては決して高いものではないので過度に恐れる必要もありません。

ただ、AEDに興味をもってくれている人なら、ぜひAED装着前には、「反応と呼吸を確認する」ということは知っておいてほしいなと思います。(医療従事者は反応と呼吸に加えて脈拍の確認も求められています)

そこで大事なことを1点。

呼びかけて返事やうめき声、開眼などの反応がないことは確認したけど、呼吸は「よくわからない」という場合は、「ナシ」と判断してもらって大丈夫です。これは蘇生法のガイドラインでも書かれていることなので、ご安心を。

目安は10秒。

10秒間、胸からお腹のあたりの動きを見て、いつもどおりの呼吸をしている、と確信できない場合は、AEDを装着して構いません。

ただし、AEDを装着するということは、心臓マッサージ(胸骨圧迫)も必要な状況ですから、他の人がいれば胸を押してもらう、またAEDの解析後「触っても大丈夫」と言われたら、ただちに胸骨圧迫をするようにしてください。

ところで、公衆の面前で、他人の服を脱がすというのは、すごく勇気のいることだと思いませんか? だから、私だったら、服をはだける前に、きちんと胸から腹をよーく見ます。

わからなければ10秒で「いつもどおりの呼吸なし」と判断していいとガイドラインに書いてあるわけですから、10秒たったら堂々と服をはだけます。

もしなにかの間違えで、あとでトラブルになったとしても、その呼吸確認のプロセスさえしっかりしておけば、規定通りの正しい行動をしたと自信をもって説明ができます。

それに、AEDを装着すべき状況というのは、「心停止状態」ですから、AED手配は急ぐべきですが、AEDが到着するまでの間は胸骨圧迫が行われていなければなりません。

呼吸の有無が正しく判断できなくても、AED到着までの間に胸骨圧迫を行っていれば、もし心停止でなければ痛み刺激に対する反応があるはずですから、AED装着が不要であれば気づける可能性が高まります。



AED使用は決して難しいものではありません。それは事実です。

ただ、イケイケGoGo! の根拠のない勢いだけで不正確な知識が広まるのは、私は問題だと思っています。

広めている人は、AEDの敷居を下げたい、みんなに使ってほしいという思いなのはわかります。

でも、医療器具の使用法なんですから、それなりに根拠をもっていなければいけないと思うのです。


すでに広まってしまっているものはどうしようもありませんので、せめて正しい情報を、と思い、これを書かせてもらいました。

最終的に何が正しいのかは読み手の皆さんに判断していただけたらと思います。

反応確認と呼吸確認を市民に求めるのは酷。誤作動のリスクが低いなら、具合悪そうな人がいたらとりあえずパッドを貼ればいいじゃん、というのもひとつの考え方です。

あえて、そう判断するならなにもいいませんが、少なくともメーカーと国が定めたAEDの使い方ではない、ということは知っておいてほしいです(さらに言えば国際的な使用基準からも外れてます)。知らずに、そう早合点しているとしたら、誰にとっても不本意なことではないでしょうか。



もし、なるほど、と思った人がいたら、ぜひこの記事の拡散をお願いします。




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2016年07月03日

人工呼吸はやっぱり重要ですよ、という報道とプレスリリース

看護職の皆さんは、人並み以上に救命スキル【BLS】に関心が強いと思いますが、皆さんは昨今における人工呼吸の位置づけをどのように理解していますか?

世間一般では、「最近の心肺蘇生法は人工呼吸をしなくてよくなったらしいよ!?」なんて、言われていますが、もしかしたら人様にCPRを教えることがあるかもしれない看護職にとっては、この点、いかがでしょうか?

先日、読売系で興味深い報道がありました。

救急車の到着遅れても…「心肺蘇生」で救命率2.7倍」



倒れるところを目撃された心停止のうち、何もされなかった群にくらべて、救急司令の指示で胸骨圧迫をすると生存退院率が1.5倍に増えて、さらには通りすがりの人が自発的に胸骨圧迫と人工呼吸がなされた場合は生存退院率が2.7倍だった、という内容。

金沢大学の研究者がヨーロッパ蘇生協議会(ERC)の機関誌、Resuscitationに発表したもので、なんで日本の新聞が取り上げたかというと、金沢大学が日本国内の報道機関に向けてプレスリリースを打ったからです。

そのプレスリリースがこちら。

金沢大学プレスリリース「救急車到着に時間を要する地区では人工呼吸を組み合わせて行う心肺蘇生の自発的実施が格段に優れた救命効果をもたらす!」


救急車到着に時間を要する地区では人工呼吸を組み合わせて行う心肺蘇生の自発的実施が格段に優れた救命効果をもたらす!」というタイトルで、PDF(680KB)で誰でも読めます。たった3ページですから、ぜみ皆さん、目を通してみてください。

このプレスリリースの冒頭では、私たち医療従事者に向けて、警鐘ともいうべきメッセージが載っています。

市民に対して蘇生教育を行う立場の医療従事者に人工呼吸の重要性を再認識させる(中略)必要性を示唆する結果となりました。

人工呼吸は、依然大事だから、それを啓蒙するのは医療者の役目だよ、というわけです。


一般の方たちは、NHK報道なんかで、人工呼吸は不要になったと言われれば、それを真に受けてしまいます。

しかし、人が生きるメカニズムと、命を落とすメカニズムをきちんと学んでいる私たち看護師は、細胞の酸素化を考えた時に、胸骨圧迫のみでいい場合と、ダメな場合があるということを理解しています。

そのことを踏まえて、適正に市民向けに健康教育(蘇生教育)を行う必要があるのです。

例えば、

・救急車が到着するまで数十分かかるような場所
・溺水など水難事故が想定される現場の職員
・呼吸原性心停止が多いとされる子どもの急変を想定しているような職業人

などに対して救命法を指導する上では、胸骨圧迫のみの蘇生法では万全とはいえないということです。


マスコミはセンセーショナルなものに飛びついて風評を流布していきますが、きちんと基礎から理解している私たちはその砦となる必要があると、金沢大学の研究は訴えているのです。





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2016年02月04日

ここが変わった! BLS/ALS【G2015】|蘇生科学者になりませんか?

去年の10月に改定された心肺蘇生法のガイドライン。

看護雑誌でもようやく取り上げられるようになったきたようです。

こちらはエキスパートナース誌の2016年1月号

特集記事は、

「ここが変わった! BLS・ALS」です。


ここが変わったBLS/ACLS|エキスパートナース誌


ガイドライン改訂の中身については、すでに JRCガイドライン2015オンライン版 でご存知の方も多いと思います。

分量が膨大でどこから読んでいいかわからないという人は、AHAガイドラインのハイライト というガイドライン変更点がコンパクトにまとまったPDFが無料配信されています。(米国版ガイドライン準拠ですが)

AHAガイドライン・ハイライトは最初から日本語化もされていましたので、こちらだけは目を通したという人も多いかもしれません。



今回、看護雑誌でガイドライン改訂が特集されたということで、看護師にとって、なにが変わるのかという点に注目しましつしたが、エキスパートナースの記事は、なかなかの好印象でした。

まず、基礎情報のおさらいですが、JRC版蘇生ガイドライン2015で変更になったのは大きく下記の点です。

BLS(一次救命処置)
1.死戦期呼吸の判断に迷ったらすみやかにCPRを開始する
2.胸骨圧迫の深さの上限 6cm
3.胸骨圧迫のテンポは100〜120回/分
4.CPR中は100%酸素の根拠性

ALS(二次救命処置)
1.マニュアル除細動の2回目は高エネルギー量で
2.バゾプレシンは非推奨
3.抗不整脈薬の第一選択はアミオダロン
4.低体温療法は32〜36℃

このあたりはガイドラインを見ればわかることですが、今回のエキスパートナース特集記事で特に目を引いたのは、「社会に与える影響と"ナースに期待されること"」という部分。

ガイドラインの変更を総論的にとらえた解説記事としては端的で良かったです。

詳しくは本記事に譲りここでは触れませんが、やっぱりナースにはCPRの質が求められますよ、という点ははっきり言われていますね。ここまでBLSの敷居が下がって、市民がバイスタンダーとして積極的にCPRをして、救命成功がニュースになる時代、医療者が市民と同じ水準のCPR技術でいいとは思いません。

市民救助者は、無我夢中であってもいいと思いますが、医療者は「質の高いCPR」を意識して、コントロールしていきたいものです。



また、これもこのブログでも何度も取り上げている点ですが、世界の蘇生シーンをリードするのは看護師である、という点が今回、初めて活字になったという点が嬉しかったですね。

以前、アメリカ心臓協会(AHA)のナショナル・ファカルティ・オリエンテーションに参加させてもらったことがありますが、AHAという巨大組織のECC(救急心血管治療と心肺蘇生)部門や教育部門を取り仕切っているのは、医師ではなく、看護師でした。

Mary Fran Hazinski女史や、Jo Haag女史は有名ですね。

あの世界の蘇生シーンをリードするAHAのガイドライン改訂の責任者はナースだった、って知ってました?

蘇生科学といったら、私たち日本の看護師は医師の専門領域と考えがちですが、世界を見たら決してそうではないです。


たとえば、の話として、俗語ではありますが、「脳科学者」という言葉が広く知られています。

マスコミに登場する脳科学者たちの多くは医師(医師免許を持っていない)ではありません。脳を語ると言ったら医師でないといけないというイメージもあるかもしれませんが、現実的には生物学や心理学、情報工学分野出身の研究者だったりします。(余談ですが、医学博士であっても非医師が多いです。もちろん、看護師で医学博士の人もたくさんいます)

そういった意味で、今後は、AHAやERC(ヨーロッパ蘇生協議会)のように、看護学をバックグラウンドとしたナースの蘇生科学者というのが出てきてもいいんじゃない? と思います。

蘇生科学者とは名乗ってはいませんが、世界の蘇生シーンで活躍する日本人ナースも実際にはいる点は、先のエキスパートナース誌でも触れられていました。



さて、今回の記事では取り上げられていませんでしたが、米国版やヨーロッパ版のガイドラインでは、病院内心停止というのが大きなキーワードになっています。

院内での心停止は、心室細動による突然のものは多くない、「急」変ではなく、段階的に悪化していくものなんだ、だから予兆に気づいて防げ!、ということが強く打ち出されています。

入院患者の変化に気づけるのは、病棟勤務の看護師をおいて他にありません。

今後はこのような視点でガイドライン改訂を紐解くような解説記事が出てくるんじゃないのかなと期待しています。


そんなわけで、5年ぶりの蘇生ガイドライン改訂。なにが変わった、いう末端的な話ではなく、看護師としてこのガイドライン改訂の意義をどう捉えるかという視点でもぜひ、この先の動向を注目してほしいと思います。







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2015年11月14日

改定! 蘇生ガイドライン2015 院内急変対応が変わる!

先月、蘇生ガイドライン2015が発表されました。5年ぶりの改定になります。

心肺蘇生法AHAガイドライン2015アップデートハイライト
↑クリックすると、PDFでAHA-G2015改訂
の要点が読めます(無料)


今回の改定は、新ガイドラインというよりは、2010ガイドラインに修正を加えたアップデート版と位置付けられており、AHAとしては前回ほどは大きなリアクションを示していません。

ガイドラインが発表されただけで、教材リリースがまだですから、新しいBLS教育をどのように教えていくのか、その具体的な部分はまだ見えていません。

ガイドラインから推し量るに、おそらく呼吸確認法のあたりが修正されるのではないかと思います。


通報のタイミングと呼吸・脈の確認法

今は、反応と呼吸の確認をした後で通報、それから脈拍確認となっていましたが、G2015では、反応確認のあとに通報して、次に呼吸と脈拍を同時にチェックするという形になりそうです。

一見、G2005に戻ったようにも見えますが、この変更の背後にはスマートフォンの普及が関わっています。

これまでは、初期対応でありがちな一人法では、119番などの通報の間は、傷病者評価や胸骨圧迫等のケアが中断されてしまうという問題がありました。

しかし、スマートフォンの普及により、スピーカー通話機能を使って、呼吸確認や胸骨圧迫などを続けながらも通信指令と会話することが可能となりました。そこで、これまで線形に位置づけられていた通報が同時進行可能いう判断で、初期に持ってくるという修正となりました。


圧迫の深さと速さの上限明示、ナロキソン筋注

胸骨圧迫の深さ(5〜6cm)と速さ(100〜120回/分)の上限が設定された部分も新しいところですが、これは指導上の問題であって、現在のやり方と大きく変わるところではありません。

その他、薬物中毒が疑われる心停止の場合はナロキソン自動注射器で筋注を行うというBLSらしからぬ勧告も出てきていますが、日本では無視していいでしょう。


病院内心停止が区別されるように!

さて、個人が習得すべきテクニカルスキルとしてのBLSはG2010でほぼ完成していて、今回は軽微な調整がされたにすぎない印象ですが、ガイドラインの基本概念としてはかなりダイナミックな改定が行われています。

それは、救命の連鎖が、院内心停止と院外心停止で区別されるようになったことです。

特に 病院内心停止がほかと区別されるようになった、といったほうがいいかもしれません。

これは以前からこのブログでも指摘している点ですが、院内心停止の多くは心臓突然死ではありません。

世間一般では突然の心室細動にフォーカスして心肺蘇生法教育が行われていますが、病院内の心停止事案を解析してみると、そのうち75%以上は心室細動以外が原因であるとACLSプロバイダーマニュアルG2010にも明記されています。



つまり、街中の心停止であれば、急いで通報、AED除細動、CPR継続という流れでいいのですが、病院内では心停止は状態悪化の成れの果てとして発生するので、心停止になる前に危険な徴候に気づいて心停止を予防しなければいけないのです。

このことがガイドライン2015では、病院内の救命の連鎖ということで明示されるようになりました。

AHAガイドライン2015院内心停止の救命の連鎖
AHA-G2015院内心停止のアルゴリズム(G2015ハイライトより)


BLSプロバイダーに求められる心停止予防。どのように?


この重要な概念がBLSヘルスケアプロバイダーコースにどこまでどのように盛り込まれるのかはまったく未知数です。

しかし、下記の概念図を診てもらうと分かる通り、院内心停止を予防するモニタリングをするのはBLSプロバイダーの役割であるとされています。

現実問題、G2000時代と違って、心停止や蘇生の理屈をほとんど教えなくなった現代のBLSプロバイダーにその役割を求めるのは無理じゃない? と思わなくもないのですが、G2015ハイライト日本語版を見る限りはそのようになっています。

院内心停止対応では、心臓が止まってからの対応では不十分で心臓を停めないような予防的関わりが重要である点が打ち出されたのが、ガイドライン2015のBLSでもっとも重要な改訂点ではないかと思います。


ガイドラインの新概念を先取りしていた小児救急領域 PEARS

「心停止してからでは遅い! 予防と生命危機状態の早期発見を!」ということは、小児救急領域では昔からずっと言われていた基本スタンスです。

もともと小児は心臓突然死は多くない、そして予備力が小さく心停止になると救命がほぼ不可能なことから、呼吸のトラブルと循環のトラブルという心停止以前の対応に重きが置かれていました。

それが今回、病院内においては成人傷病者にも適応できると考えが改められたとも言えるかもしれません。

つまり成人を中心とした院内心停止対応が目指す新しい方向性は、小児の急変対応と同じベクトルになったということです。


この部分を扱っているAHA教育プログラムが、小児救急 評価・認識・安定化コース、つまりPEARSプロバイダーコースです。

PEARSプロバイダーコースの中身についてはこれまでも紹介しているので、説明は割愛しますが、ガイドライン2015の主役はPEARSなんじゃないかというのが今回のエントリーのテイク・ホームメッセージです。


小児だけじゃない! PEARSから最新ガイドライン院内急変対応を学ぶ

2008年に開発されて以来、私たちUSインストラクターが独自に日本語化して国内展開していたPEARSですが、いまは大手ITCも手掛けるようになり、先日、ついに日本語テキストが国内販売されるようになりました。

日本語版PEARS受講者テキストは大手ITCの独占販売で、一般書店で流通する形でないのが残念ですが、日本の院内患者安全にとっては大きな一歩が開けたと思います。

このガイドライン2015が発表されたタイミングでG2010-PEARSのテキスト日本語版販売というタイミングがなんとも微妙ですが、G2015教材の中でもPEARSが制作されるのは最後の最後ですから、まだまだ使えます。

PEARSプロバイダーマニュアルG2010日本語版


PEARSの根幹は、ABCDEアプローチという人間の生きるしくみに直結した古典的な部分です。そのため蘇生ガイドラインの改定にはあまり影響されません。水物ではないということです。

そういった意味ではG2005版のPEARSコースもまだまだ現役で使えるくらいですから、数年後にできるかもしれないガイドライン2015正式日本語版を待たずに、さっさといまのG2010版で学んでおくことをお勧めします。







posted by Metzenbaum at 08:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS)
2015年03月06日

半ば自己否定に陥ったACLS、G2015ではいかに?

あちこちで耳にする指摘ですが、改めて書いてみます。

病院の急変対応研修といえば、BLSが基本で、一部先進的なところでは二次救命処置(ACLS)を取り入れているところもありますが、その医療安全体制についてAHAのACLS自体が自己否定(?)しているって知ってました?

まず、前提知識の確認です。

私たちは以下のように教わってきました。

『大人が倒れた場合、心電図モニターをつけると心室細動(VF)になっていることが多い。だから早期除細動が重要。BLSでもACLSでも心室細動にフォーカスした"VFハンター"になるべく訓練が必要。』

だからAEDがもてはやされて、猫も杓子も除細動、という教育がされてきました。

しかし、ガイドライン2010版のAHA-ACLSプロバイダーマニュアルを見ると、次のような驚くべき記述があるのです。

「VF/VT以外のリズムは院内心停止の75%以上を占めている」

ACLSプロバイダーマニュアルG2010
(ACLSプロバイダーマニュアル G2010 p.30)

あれ? 成人の心停止のほとんどはVFじゃなかったの?

って思っちゃいますよね。

これまでは「成人の心停止は前触れなく突然に起きるから、BLSが必要であり、ACLSが必要」という論調で"急変対応"が語られていたのは、間違いだった、みたいな驚愕の事実が書かれているわけです。(←この書き方、かなり恣意的です。批判は覚悟の上で。)

実はこの布石は、ひとつまえのガイドライン2005版の「ACLSプロバイダーマニュアル」にも書かれていて、院内心停止の8割くらいに予兆があったという点が示されています。だからこそ、患者急変対応コース for Nursesとかが作られたわけですけど、まあ、その方向性が再確認、強化されたって感じですね。

つまり、VFハンターというICLSの言葉に象徴されるような視座の起き方は、現在となっては不適切という認識にシフトしてきています。

これまでは、VFは突然に起きるものでしたから、心停止後の対応だけを考えていればよかったのですが、そうではなかったとなると、これは病院業界、大変な激震です。

だからこそ、ACLSプロバイダーマニュアルG2010では、次のように述べています。

「医療機関内で文化的な大きな転換が必要とされる」(p.31)

急変対応に関する文化大革命ですよ、と言ってるわけですね。

心停止は不可抗力。

ではなく、心停止は防げるもの、それがG2010では、明確に打ち出されているのです。
それをAHAは痛烈な言葉で表現しています。

「救助の失敗」

下記のように、病院での心停止は防ぎ得るものであるから、心停止になってしまったら、それは救助の失敗である、と。

ACLS Provider Manual G2010
(ACLSプロバイダーマニュアル G2010 p.31)

これ、現場としては痛いですよね。

でも、その潮流はG2010に始まったことではなく、G2005から引き継がれてきたこと。

これが今年10月に発表されるガイドライン2015では、どのように扱われるのか?

そして遅れること2年後くらいに出てくるG2015ACLSプロバイダーコースはどう変遷していくのか?

私たちは病院文化の担い手として、真摯に受け止めたいと思います。



病院内での心停止はBLSでは終わらず、そのままACLSに突入するわけですから、看護師としてACLSのアルゴリズムを知っておくことは必要です(受講が必要、ではなく)。

しかし、それは一般教養というか、たしなみであって、そこを一生懸命勉強するような時代は過去の話。

この先は、AHAでいうなら心停止予防コースPEARSのような、心停止以外の予兆に着目しなくちゃいけない、特にベッドサイドで患者の様態変化に気づける看護職にとっては、という方向性。

院内でも8割は、心室細動ではないとわかってるわけです。

人が死に至る原因は、呼吸障害か循環障害(ショック)。

そして、呼吸障害は、上気道閉塞、下気道閉塞、肺組織病変、呼吸調整機能障害の4つに分類されます。

ショックであれば、循環血液量減少性ショックと血液分布異常性ショックがほとんど。

これらの徴候を知っていれば防げるし、心停止にさせなくて済む。

そんなことが明らかになってるわけですから、そこを学ばないわけにはいかないですよね。

今は、小児分野でしか叫ばれていませんが、これはほぼそのまま大人にも言えます。
こんな方向が、これがますますはっきりしてくるのは間違いないと思います。



posted by Metzenbaum at 18:49 | Comment(3) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS)
2012年12月30日

ナースのためのファーストエイドの学び方

うれしい限りです。

看護師向け総合雑誌でファーストエイドの特集記事!



今までも看護雑誌では年に何回かはいわゆる急変対応特集が組まれてきましたが、いつも似たり寄ったりで、BLSとかせいぜいACLSの話ばかり。

ごくごく最近では、心停止前の「気づき」が重要ということで、AHA-PEARSとかPALSで言われている急変の早期認識と安定化という話も書かれるようにはなってきましたが、いわゆるファーストエイドに焦点が当てられたのは初めてじゃないかなという気がします。(私の個人的印象です。間違っていたらご指摘ください)

去年だったかおととしだったか、日本救急看護学会がナースのためのファーストエイドコースを開発、そのテキストとして立派な本もリリースされましたが、そちらはどうもイマイチでした。

ファーストエイドという概念を持ってきたことや前書きで書いてあることはとてもいいのですが、中身が伴っていないというか、「それってファーストエイドじゃなくて、研修医向け院内救急マニュアルをパクっただけでしょ」的な。

実は今回の月刊ナーシング誌の特集記事も、ほぼ同じ執筆陣なのですが、今回はビジュアル的に攻めていて、処置だけでなくて、搬送のことなども含めて、実践対応が具体的に書かれているのがいい感じ。

首吊り自殺を発見したときのファーストエイド     ナースのための切創のファーストエイド

鼻血のファーストエイド     トイレで倒れた人を発見した場合のFA


出血とか、嘔吐とか、かなりリアルに撮影を行なっていて、気合い入ってます。リアルな患者、症例の写真じゃないからよろしくね、みたいな注釈が入ってるくらい(笑)

細かい突っ込みどころはちょいちょいありますが、保存版にしてもいいくらいの良い特集記事です。

特に看護の総合雑誌で、こんなファーストエイドの特集が組まれるまでになったんだ、とうれしい限り。私がファーストエイドの必要性を訴え出したのはいつのことだったか。

具体的にAHAのファーストエイド講習を開催しだしたのは2007年か2008年だったと思います。

当時は、まだBLSとACLSが全盛で、心停止前の急変対応という発想はメジャーじゃなかった。

でもその当時から信じていたことが、こんなカタチで現実になってきて、感無量というか、微力ながら社会PRを続けてきてよかったと思った次第です。

今回の特集記事で、主幹の三上剛人さん(救急認定看護師で有名な方です)が書かれている巻頭言から、いくつか引用します。

「それもそのはず、多くの方は応急手当やファーストエイドの教育を重点的に受けてきた覚えがないからです」

「現代看護のなかで応急手当やファーストエイドは『いまさら覚えなくても実践できるはずの古くさい看護技術』と感じられている気がします。病院での医療は、医療技術の進歩、高度医療が優先され、病人、けが人を手当するという原点から少なからず遠ざかっているように思います」

「応急手当は一般市民向けというイメージではなく、私たちにも必要な看護技術の一つであり、市民よりもより専門的に実践していく必要があるものです」




このあたりの言葉をすべてのナースに受け止めてほしいなと思っています。

ナースだけど、交通事故に遭遇してなにも出来なかった。ある意味当然です。ナースはそういう教育は受けていないのだから。この場合、ナースだからできることを考えるのはそもそもの間違い。三上さんは「市民よりも専門的に」とは言うけど、まずは市民としてできることをやりましょ、というのが基本だと思います。最初から医療現場と同じように動こうとするとできるわけないんですから。

ほんとはナースたるもの、市民レベルのファーストエイドくらいは常識的に知った上でナースになるというのが当然なんでしょうけど、残念ながら日本の教育体制はそうなっていないわけですから、個々のナースに危機感を持って学んでほしいなと思う次第。

その上では、今回の特集記事はとてもいい刺激になると思います。

強いて言うなら、ナース向けというなら、どんな症例でも基本となる傷病者アセスメントを体系的に解説してくれるともっとよかったかなと思います。ここでも残念ながら各論の寄せ集めになっちゃってるんですよね。これが日本古来の救急法講習に通じる欠点。

傷病者と対峙したときに見るべき普遍的な視点、つまり傷病者アセスメントというファーストアプローチが抜けているせいで、どう考えても脊椎損傷を疑う優先順位が高いだろうという紙面上の症例でも、頚椎保護の視点がスッポ抜けていたリ。

まあ、そんな点を差し引いても、悪くない記事です。

最後にもしもっとFA学びたいと思ったら、救急看護学会のファーストエイド講習は第一選択には勧めません。まずは市民向けファーストエイド講習からはじめることをお勧めします。救急看護学会のFAは本質的にはファーストエイドじゃないのでご注意を。

以下、これまでこのブログで書いた関連記事をリンクしておきます。参考にしてください。



ナースにも必須のファーストエイド
http://or-nurse.seesaa.net/article/178283160.html
ナースにとってのファーストエイド
http://or-nurse.seesaa.net/article/190820699.html
アウトドアで看護ボランティア
http://or-nurse.seesaa.net/article/51303125.html
登山医学セミナーに参加
http://or-nurse.seesaa.net/article/48826683.html


【その他、別ブログで書いた関連記事】
 相当ボリュームがありますので、正月休み、ゆったり時間の読み物にどうぞ♪

ファーストエイド・非心停止対応関連記事(全27記事)
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/category/14911652-1.html

ウィルダネス・ファーストエイド(高度な野外救急法)関連記事(全16記事)
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/category/8237256-1.html



posted by Metzenbaum at 13:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS)
2012年11月29日

蘇生教育はナースのもの

AHAインストラクター仲間のナースが、トレーニングサイトを立ち上げました。

ナースが作った松戸ECCトレーニングサイト

ナースがナースのために作った急変対応教育機関、松戸ECCトレーニングサイトです。

皆さんもAHA講習を受けたときは〇〇トレーニングサイトってところに受講に行ったと思うのですが、あれをナースだけで作っちゃった、という話です。

とかくこの世界、医師を中心にナースはサポート隊みたいな雰囲気、ありますよね。まるで病院業務の延長みたいに。

でも、急変対応、特にBLSなんて、完全にナースのものだって思いません?

ベッドサイドにいて急変に気づいて初動対応するのは医師ではなくてナースなんだし、医師は呼ばれてきて蘇生の途中から参加するだけ。

BLSの主体はナースなのに、それを指導するのがナース主体になっていない不思議さ。

ナースじゃないと気付けないポイントはたくさんあるし、ナースじゃないと現場を伝えられないということもある。

なにより、受講者の意識が違いますよね。偉い先生に教えを請いにいく。ACLSなんて特にそんな空気、ありません? でも松戸ECCトレーニングサイトでは、ACLSでもインストラクターはナースがメイン。今のところ、医師は直接は介在していません。

そんなナースが等身大でまなべる環境、日本ではあまりなかった気がします。

なにより、このニュースで私が皆さんに伝えたいのは、ナースだけでもこれだけのことができるんだよ、ということ。

医師に依存しすぎるの、辞めにしません? 特にBLSなんかはナースが自信を持って教えていくべきだし、医師がいなくてもナースだけで十分やっていけます。

日本救急医学会(ICLSをやっている団体です)で数年前に制定されたBLSコースは日本版ガイドライン準拠の唯一の医療者向けBLSプログラムですが、なぜか、ディレクターは医師でないとダメ、というスタンスをかたくなに貫いていますが、意味不明。故に全国でもほとんど開催されていません。

マンパワー的にも医師だけでやっていこうなんて無理な話。

そういった意味でも、蘇生教育ではナースがもっと前面に出ていく必要があります。

どうしても、医師のサポートのなりがちなナースですが、ナースが主体的にやってもいいんじゃん、という話。

松戸ECCトレーニングサイトでは、AHA-BLSインストラクターの育成から認定までもナースのファカルティ(インストラクター養成責任者)だけで行なっています。

ちなみにあのAHA(アメリカ心臓協会)の、ガイドライン2010編集責任者はナースです。あと、AHA ECCプログラムと呼ばれる、BLS-HCPやACLS、PALSなどのコース開発を行う教育部門の責任者もナースです。

私、一度、シカゴで開かれたAHA ECCプログラムの幹部会(National Faculty Orientation)に参加させてもらったことがあるのですが、演者で目立ったのはやはりナース。医師が思いの外少ないのには驚きました。

AHAは世界の蘇生シーンを動かしている。で、そのAHAを動かしているのは実はナースなのです。


posted by Metzenbaum at 06:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS)
2012年11月19日

ACLSはBLSに毛が生えた程度のもの

Twitterで書いたことのまとめになりますが、こちらのブログにも残しておきます。

ナース向けの二次救命処置トレーニング構想のヒントとして。

この手の専門家である救急認定看護師さん、こんな方向性でナース向けALSプログラムをさらっと作ってくれませんか?



ナースによるBLSの二人法、一人は胸骨圧迫、もう一人はバッグマスクで人工呼吸。AEDは装着済みでショックは一回施行してる。つまりVFは確認されている。そこにもう一人ナースがいたらどうする?(G2005では輪状軟骨圧迫を教えていたけど)。

V-lineくらいは取るよね。で、そこに医師から電話指示でボスミンIVを取り付ければ、立派なACLS。

ACLSは6人一組とか手動式除細動機を使わないといけないとか、そんなことはぜんぜんない訳で、AHAが作ったACLSのイメージに縛られすぎ! ナースが臨床で行い得る現実の急変対応の中でも、BLSを越えたALSはある。

ナースにはナースなりのACLS(二次救命処置)があるはず。それを提唱できるのはきっとナースだけ。

いつまで医師向け教育プログラムのおこぼれに頼っているの?


posted by Metzenbaum at 13:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS)
2011年07月28日

オペ室急変対応シミュレーション 第二弾

今日はオペ室で急変対応シミュレーション・トレーニングを行いました。第二回目。

シナリオはこんな感じ。

麻酔科学会期間中、皮膚科の局所麻酔手術で患者入室直後。
モニターを装着し、患者さんと会話をしながら、皮膚科Dr.を待っている状況。

患者さんと会話中、突然うめき声を上げ、白目を剥いて意識消失しました。

他の部屋では、緊急C/Sでたった一人の麻酔科医は部屋を出られない。

さあ、どうしますか?


代表して5-6名に動いてもらって、残りの人は見学。

見学者には見学の視点をあらかじめ提示しておきます。


・VFの認識から胸骨圧迫開始までの時間はどれくらい?
・VFを認識してから除細動器が到着するまでの時間&ファーストショックまでの時間
・質の高いCPRを行えているか、特に中断時間
・リーダーの指示は明確か?
・指示を受けた人は復唱しているか?
・役割分担ができているか?
・etc.


前回やったときは、除細動器の定位置がオペ室の端っこのリカバリールームで、取りに行くのに不便という問題点に気づきました。そこで今はオペ室のほぼ真ん中に置き場所変更しています。

そのこともあって、除細動器到着時間が格段に早くなりました。

しかし、残念ながら、除細動器が到着してから、除細動のショックをかけるまでに3分以上のタイムロス。

除細動器のセッティング・使い方がわからず、というありがちなパターン。

普段はパドルが取り付けてある除細動器。今回は医師がなかなかこられないということで、手動式除細動器のAEDモードを使うことになったのですが、パッドを装着するためにコネクタを付け替える必要があり、その準備にもたついてしまったのでした。

このあたりは、シナリオ終了後のデブリーフィングで、チームを組んでいた当人たちも見学者たちも、問題として指摘していて、すぐその場で全員で除細動器のAEDモードの使い方の復習。

自分たちで問題を認識して、その上での解決策としての取り組みですから、一方的な講義としての「除細動器のAEDモード使用勉強会」などと違ってしっかり身についたはず。

中には知識としては知っている人もいましたが、実際に触ってみるのは初めてで、やってみないとわからないという点も実感していただけたようです。


一方、前回はVFを認識しても、胸骨圧迫というアクションになかなかつながらず、胸骨圧迫開始まで何分もかかっていたような感じでしたが、今回はすばらしかった。VFです、除細動器と応援を! と叫んだ第一発見者はすぐにCPR開始。10秒も経っていませんでした。

さらにすばらしかったのは、応援が着たら、まっさきに胸骨圧迫を代わってもらって、全体が見通せる場所に一歩引いたこと。

このあたりは、確実に前回のシミュレーション訓練が活きています。


こうやって、自分たちでしっかりできているところを再認識して、さらに課題を見つけて取り組んでいく急変対応シミュレーション&デブリーフィング&スモールグループ・ディスカッション、とっても有効です。

最後のディスカッションの検討課題は、

・オペ室急変対応の上で必要なスキル・知識は何ですか?
・どうやったらそれを習得できますか?
・あなたは明日から何を行っていきますか?

というもの。

最終的に主催者が言いたかったメッセージはすべて、参加者の言葉として出てきました。

一方的に講義をするという従来の勉強会スタイルからの脱却。

そんなところも感じてもらえたんじゃないかなと期待しています。



皆さんのオペ室では、急変対応トレーニングを行っていますか?

外部講習としてACLSを受講してきました、というのでは不十分ということは、実際の仕事場でシミュレーションをしてみないとわかりません。

ぜひお勧めします。




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2011年03月16日

ナースにとってのファーストエイド

ファーストエイドに関する記事、第二弾を書こうと思いながら、ずいぶん時間が空いてしまいました。

前回は 日本救急看護学会オフィシャルのファーストエイド についてご紹介しましたが、今回はそれをややクリティカルに掘り下げてみようと思います。

まず、率直にいうと、「日本救急看護学会のファーストエイド」は、ファーストエイドとは違うな、と思います。

ファーストエイドでないとすると、じゃあ、なにか?

むしろ「ナース向け院内急変対応」プログラム、といった方が妥当ではないかと。


ファーストエイドといえば普通は病院外での応急手当を指します。

日本救急看護学会も「場所や状況を問わずに発生する様々な救急・急変時に、専門的な救急処置が開始されるまでの間、看護職として適切な緊急・応急処置ができる」ことを目指すとしており、いちおう病院外も考えてはいるようです。

しかし、実際の中身を見ると、ほとんどが病院内での急変対応に終始していて一番知りたい病院外でのバイスタンダーとしての活動については触れられていないのが残念。

たとえば、アナフィラキシーに関するページでは、、

「気管挿管が遅れないよう、ただちに医師を呼び、早期の気管挿管、ファイバーによる挿管、輪状甲状靭帯穿刺、切開を考慮、準備する」
「リザーバー付き酸素マスク10リットル/分以上の高濃度酸素を投与する」
「喘鳴音が聴取されれば喘息同様の治療も考慮し、β2刺激薬(硫酸サルブタモールなど)の吸入を行う」

などと書かれています。

部分抜粋ではありますが、どうみてもファーストエイドじゃないですよね。

他のページでも、平気で「モニター装着」「末梢静脈ラインを確保」などと書かれていて、普通に院内急変対応マニュアルになっています。


おそらく「ファーストエイド」という言葉の使い方が間違っている、というか、少なくとも私と日本救急看護学会のファーストエイドの定義・認識が違っているんでしょうね。

ちなみにファーストエイドに関しては国際的な定義があります。(日本語は私の勝手な訳です)

We define first aid as the assessments and interventions that can be performed by a bystander (or by the victim) with minimal or no medical equipment.

ファーストエイドは、バイスタンダーもしくは傷病者自身によって行われる最小限ないしは医療器具を用いないで行われるアセスメントと介入(処置)と定義づける


これは International First Aid Science Advisory Board が制定したファーストエイド国際ガイドライン2010の定義です。

International First Aid Science Advisory Board には、日本からも Resuscitation Council of Asia(≒日本蘇生協議会)として代表者が参加していますので、当然、日本もこのガイドラインに批准するはずです。(G2010のドラフト版には含まれていませんでしたが)

ですから、やっぱり日本救急看護学会の「ファーストエイド」は、ちょっと違う気がするんですよね。


かといって、日本救急看護学会の「ファーストエイド」がダメと言っているわけでは決してありません。

研修医向けの当直マニュアルとか救急外来対応マニュアルみたいな本はたくさんありますが、そういった総合的な本のナース向けってあまりなかったと思うからです。

そういった意味で、病院内のナース向け総合急変対応マニュアルとしては、とてもよくできたテキストだとおもいます。



でも、本当の意味でファーストエイド、つまり病院外で身ひとつで出来ることを知りたい方は、医学書以外に目を向けたほうがいいかもしれません。

そこで現時点、お勧めの独習用のファーストエイドテキストはは次の3冊。

いずれも翻訳本ですが、やっぱりファーストエイドは欧米のものが優れています。どれもきちんと傷病者評価法(アセスメント)について記述されている点がポイント。日本の応急処置の本は、処置ばかりで傷病者の総合的な観察について書かれていないことが多いので。市民向けの本ではありますが、医療者としてはここは是非おさえておきたいところです。PALSやPEARS、JPTECなどと同じ流れで書かれています(でも、あくまで市民向けの本です、あちらでは)。

アトラス応急処置マニュアル 原書第9版
※3冊の中ではいちばん新しい内容。イギリスの本なのでERCガイドライン2005準拠。

ファーストエイドとCPR―NSC標準救急法マニュアル
※CPRに関しては内容はAHA-G2000で古いもののFAの内容としては随一

こどものファーストエイド―こどものケアを行うすべての人のために
※傷病者評価では定評のあるPALSやPEARSを作った米国小児科学会(AAP)の本。



次回、内容を詳しくご紹介します。



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2010年11月04日

ガイドライン2010 新しい心肺蘇生法

ナースとしては是非押えておきたい情報。

心肺蘇生法ガイドラインが改定されて、最新版のガイドライン2010に!


今度の新しい蘇生法では、呼吸確認や人工呼吸のウェイトがかなり下がりました。

「見て聞いて感じて」の呼吸確認法は削除されて、目視だけの呼吸確認。

「大丈夫ですか?」と声をかけると同時に胸と腹の動きを見て、さらっと呼吸の確認。

気道確保もしません。

それで明らかに正常な呼吸をしているとき以外は、緊急通報とAED手配をしてから胸骨圧迫を開始。

30回押した段階で、準備ができていれば気道確保して人工呼吸2回。

そうでなければ胸骨圧迫を応援が来るまで続けます。

ということで、これまでは、

気道確保 → 人工呼吸 → 胸骨圧迫

だったのが、

胸骨圧迫 → 気道確保 → 人工呼吸

の流れに変りました。

このことをA-B-Cから、C-A-Bへ、なんて言ったりもします。

G2005:気道確保(Airway) → 人工呼吸(Breathing) → 胸骨圧迫(Chest Compression)
G2010:胸骨圧迫(Chest Compression) → 気道確保(Airway) → 人工呼吸(Breathing)

病院でガイドライン2010の話題が出ていたら、「あ、CABに変ったんですよね」とかサラッというと通っぽいです(笑)


なんでかっていうと、理由は簡単。

蘇生に一番重要な胸骨圧迫がなるべく早く、多くの人にとって開始しやすいように、ということで、このように改められました。

ABCだと人工呼吸という心的障壁が入り口に立ちはだかってしまいます。

それに気道確保だって、日頃他人の体に触り慣れていない人には抵抗があるものです。

倒れたときに頭から血を流していることもあるでしょうし、そうでなくても、おじさまの頭やあごに触るのに抵抗があるという乙女も多いかも知れませんし。

だから、傷病者の素肌に触れて顔を近づける気道確保と呼吸確認は廃止。

これで、いちばん抵抗がない、だけどいちばん有効な胸骨圧迫がサクッと始められるわけです。

ガイドライン2010の中でも、この方法を推奨しているのは日本とアメリカ。

特にアメリカのガイドラインを作ったAmerican Heart Association(アメリカ心臓協会)は、この方法が広まれば社会として救命率に大きな変化が現れるに違いないと言っています。

この方法が普及するには1-2年はかかると思います。

結果がでるのが楽しみです。
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2010年09月15日

エピペンとAEDと医師法違反

昨日の夜中、Twitterでつぶやいたことのまとめ。


エピペン(アドレナリン自己注射器)を学校教職員は使うことができる、ということはだいぶ知られてきた。でもその根拠を調べてみると、意外と希薄。「学校教職員が臨時応急的に使うのは反復継続の意志がないものと解されるので医師法違反には該当しないと思われる」みたいな感じ。それだったら一般市民なら誰だって使ってOKってことじゃん。

医師免許を持っていない人が医療行為を行うと医師法違反になると思われがちだけど、実は医師法が禁じているのは医行為ではなく「医業」。医業とは医行為を反復継続の意志を持って行うこと。だから市民が行うその場限りの医行為は医師法違反にならない。

だから、アナフィラキシーで意識がもうろうとした人に一般市民がエピペンを代わりに注射してあげても、少なくとも医師法違反にはならない。学校教職員宛に出した文部科学省の通達はそれを再確認しただけ。。。なんだよなぁ。

ある意味お役所の後ろ盾文書のあるかないかくらいの違いだけで、たぶん、学校教職員以外の一般市民がエピペンを使っても違法性は棄却されるはず。ただ後ろ盾文書がないから、送検される可能性はある。裁判で無罪になって、その後日本の市民救急法に新たな1ページが開かれる!? でも社会人としては間違いなくリスキーだよね。

さっきから医師法違反に限定して書いているけど、それ以外に傷害罪を問われる可能性もあるので注意!




医師法解釈の「反復継続の意志」というのは非常にやっかい。AEDだって一般市民がたまたま使うのは無条件にOKなのに、看護師は業務で行う以上、反復継続の意志があると見なされるから医師の指示なしに使うと医師法違反。あまり知られていないけど。

だから、病院でAEDを配備するなら、包括指示や院内規則で「急変時はナースはAEDを使用して救命にあたる」と明記しておくのが、正しい手続き。

素人が使う分には制限がなくて、免許を持っていると使えないというのは、おかしな話。「私はナースなのでAEDは使えません! 素人のあなたがボタンを押してください!!」みたいな。バカバカしいけど、それが日本の法律。

聖路加の日野原重明氏が、「看護師よ、保助看法を破れ!」といっていたけど、エピペンを含めた応急処置も誰かが既成事実を作らないと変わらないんだろうな。

posted by Metzenbaum at 10:23 | Comment(1) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS)
2010年08月30日

内科系疾患標準化コースAMLS

ハワイに着いて3日目。

ACLSインストラクターの更新講習を終えて、この日は一日フリー。

前回来たときは、4日間、ずっと講習でホテルと講習会場の往復以外はナンにもなかったので、今回はあえて1日フリーの日を作ってみました。

別に買い物とかは興味がないので、散歩がてらハワイ大学の医学部キャンパスへ、プラプラと。


ハワイ州立大学医学部キャンパス


ホノルルからアラモアナショッピングセンターに向けて歩いて、海岸沿いをてくてく。

ショッピングセンターを越えて、さらに30分ほど歩いた左側に医学部キャンパスがあります。

2年前に来たときは、ACLSインストラクターとしてのモニター試験という教育実習が、この医学部キャンパスの階段教室でありました。

インストラクターとしてのデビュー戦みたいなもので、緊張ながら、一緒にインストラクターになった3人の仲間と、2日間、どうにかコース開催をしたものです。

時間的に学食は終わっていたので、購買部の医学書センターへ。

小さいながらも一通りの方がそろっていて、日頃手にとってみることができない、FCCS、PHTLS、AMLSなどのアメリカの医療標準化コースのテキストをパラパラと。

で、結局AMLSのテキストを買ってきました。

AMLSの英語版テキスト


AMLSは Advanced Medical Life Support の略で、アメリカの救急隊員向けの内科系の初期対応教育プログラム。

この手の講習は日本だと AHA の ACLS が有名ですが、アメリカでは色々な団体が色々な内容の標準化コースをやっています。

AHAのACLSは Cardiac ですから主に循環器系の急変対応を学ぶコース。命に関わる心臓疾患への対応はこれでいいのですが、そうでない場合や意識がある人への対応方法はあまり含まれていません。

ACLSは医療従事者の常識はありますが、実はそれだけでは不十分。

ということで、アメリカの医療標準化教育はおおむねこんな図式になっています。

1.内科系標準化コース・・・・AMLS
2.外傷系標準化コース・・・・PHTLS、ITLS
3.循環器系標準化コース・・・・ACLS

ここまでやっておけば、ケガから病気、心停止まで一通りの判断と処置ができるという構造。ちなみにBLSが入っていないのは、医療従事者になる以前の常識だから。みんな学生のうちに実習が始まる前に習得する内容です。


日本を振り返ってみてみると、循環器系はAHA-ACLSとか日本救急医学会のICLSでだいぶ浸透しています。

外傷系もJATEC、JPTEC、JNTEC や 米国系の ITLS がそこそこ認知されている。

でも内科系の統合プログラムってないんです。

一応ISLSが脳卒中ということで内科系ではありますが、あまりに特化されて過ぎていて、なんだか病態・原因がわからない患者へのアプローチ法は学べません。

でも、本当はそこが一番重要なんですよね。

なんか様子がおかしい。そう思ったときに、何を観察して、どう評価して、どう対応するのか。すべての急変の入り口を学ぶコースが日本にはありません。

いちおう外傷系コースでは、初期評価、一次評価、二次評価といった大事な点が含まれていますが、でも前提は外傷。内因性へのアプローチは相当弱い。

なので、やっぱりAMLSのような内科系総合アプローチを学ぶコースは必須だと思うんです。


実は今回のハワイでの夏期集中セミナーには、AMLS2日間コースもありました。

そこへの受講も勧められていたのですが、これまで私の周りで受講しているのはACLSのファカルティクラスのドクターばかりで、そのドクターたちがけっこう骨があったと感想を漏らされていたので躊躇していました。

でも今回、日本から来ているナースの受講生が何名かいました。

それを見て私も受けておくんだったなぁとちょっと後悔。

でもまあ、今回とこれまでにプロバイダーになった人たちを対象に、今年インストラクターコースがあるそうです。

おそらく今回、受講していた看護師の方たちも、インストラクターへの道を進まれるのだと思います。

来年あたりかな。

日本でも公認のAMLSコースを開けるようになる予定、ということなので、そのときは第一期受講者になるべく、今回、予習用に英語版テキストを購入、というわけです。



こうしてアメリカのシステマチックに整理された医療の学びの体系をみると、日本はまだまだだなぁと感じます。アメリカのシステムのおもしろいところは、あまり医師・看護師・救命士と分けられていないところにあります。

さらにはウィルダネス・ファーストエイドという市民向けの野外救急法も、医療者向け外傷コースと親和性があるように作られていて、AVPUスケールの意識レベルの評価や報告システムなどもそのまま病院に引き継げるような教え方がされていたり。


勉強になります。
posted by Metzenbaum at 10:27 | Comment(2) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS)
2010年08月27日

出張って楽しい!

今、ハワイに来ています。

hawaii-view.jpg

夏休み、ということなんですけど、別に観光に来たわけではなく、AHA-ACLSインストラクター資格更新手続きのため。

私の持っているACLSインストラクター資格は、ハワイで取得して現地のトレーニングセンター登録なので、更新の度にこっちに来なくちゃいけない運命。

最初、初回認定の時は実技試験もあって、時間も苦労もひとしおでしたが、更新はそこまでは大変じゃないので、2年おきにハワイに通うのも良いかなと思ってます。


今回、ACLSインストラクター更新コースを担当したのは、患者の航空搬送を仕事にしている救急救命士さん。

ハワイでのACLSインストラクターコース

ACLSインストラクターコースを開催したり、インストラクターの資格更新を認定できるAHA資格はACLSファカルティといいます。

日本でACLSファカルティといえば、循環器の教授クラスだったり、医師の中でも大御所ばかりですが、ここアメリカでは救命士や看護師がACLSファカルティとして活躍しています。

私が最初にACLSインストラクター認定してくれたのも看護師さん。まあ、看護師といっても今日本でも話題になっているナース・プラクティショナー資格を持っているスーパーナースでしたが。



今回のハワイもそうですが、AHAのインストラクターになってから、インストラクターとしての泊まりがけの仕事が多くなりました。

トレーニングセンターからの派遣ということで、「出張」というケースも多く、6月にはBSインストラクターコースで東京に1泊、8月初めには長崎で市民向けファーストエイド講習で2泊3日、11月には American Heart Association のガイドライン改定オリエンテーションでアメリカ・シカゴへ4泊5日、12月は会議で東京に1泊、1月はBLSインストラクターコースで北海道へ2泊3日。

ナースの仕事って学会発表でもしないと基本的に出張なんてないから、公費で泊まりがけで出かけるのって、なんだかワクワクして楽しいんですよね。(出張が日常茶飯事のビジネスマンには、うんざりなのかもしれませんが)

これまでバックパッカーでテントを背負っての旅とか車中泊しかしてこなかったから、ちゃんとしたホテル(ビジネスホテルですが)に泊まれるのも新鮮でうれしい!


それにしても、これから年末にかけては泊まりがけが多すぎて、病院がどこまで認めてくれるかちょっと心配。ただでさえ年次有給休暇の残りが少ないから、病院としての出張扱いにどう持ち込むかが課題です。

posted by Metzenbaum at 22:20 | Comment(3) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS)
2010年08月15日

オペ室での急変対応シミュレーション

先日、勤務先の手術室で急変対応シミュレーションを行いました。

大腿骨頸部骨折後の患者。

抜管後、さてモニター外してベッド移動しようかというときに、なにやら様子がヘン。頻脈になって酸素飽和度も低下。

どうしたんだろう? と思っているうちに、なぜかいきなりVF。

そこにいるのは麻酔科医と看護師2名だけ。

さあ、どうしますか?

というシナリオ。

ハートシムをオペ台に寝かせて、心電図波形をサイナス・タキからVF、さらにはサイナス・タキのPEAに変化させて、オペ室ナースに動いてもらいました。

ナースステーションには別に3名のナースがいて、計ナース5名プラス麻酔科医1名で対応する展開。

役割がない人には、オブザーバーとして、それぞれのスタッフの動きを追いかけて観察してもらい、後でみんなでデブリーフィング。


すごく勉強になりました。

オペ室スタッフには、私がBLSを仕込んでいますので、理想的な状況では動けるようになっています。

しかしこのようなリアルな状況だと、やはり勝手が違くて中々うまくいかない。


手動式の除細動器の電源コードが絡まってすぐに持ち出せないとか、オペ室内は配線だらけで除細動器をベッドサイドに近づけられない、麻酔科に言われた薬がたまたまカートになくて、どこに取りに行こう? というトラブルがあったりとリアルな問題点が次々と浮き彫りになっていきました。

手動の除細動器の使い方がわからないとか、アルゴリズムを知らない、というのはこの際は問題にせず、今回のメインテーマにしたのはチームダイナミクス。

中でも、

・クローズドループコミュニケーション
・明確な指示
・明確な役割分担
・自己の限界の認識
・建設的介入

あたりをポイントとして、デブリーフィングを行っていきました。

そうしたらみんな気づいているんですよね。

今回、VFの発生から最初の除細動まで8分もかかってしまった理由がノンテクニカルスキルに起因しているってことが。

私が誘導しなくても、自らいろいろ語ってくれました。

「ナースステーションに行って『急変です!』しか言わなかったから、人は来たけど除細動器を持ってくる人が誰もいなかった」

「除細動器を持ってきたけど、リーダーは薬剤準備の指示を出していたから、「持ってきました!」って言い出せなかった」

たいていのトラブルがチームダイナミクスのポイントで説明できる点ばかり。

仮にアルゴリズムなんて知らなくても、チーム蘇生の概念さえわかっていれば、そうとうスムーズに行くということは誰もが納得して終えることができました。


一般的にACLSは蘇生を成功させるためのツールの一つとしてチームダイナミクスを用い、ノンテクニカルスキルのトレーニングを行います。

しかし、ナースにとってはもしかしたらアルゴリズムなんかより、このノンテクニカルスキルトレーニングコースとしての意味の方が大きいかも知れないと思いました。

急変対応という題材を使って、ノンテクニカルスキルトレーニングを行う。ACLSをそう割り切っちゃっても良いかも。

最近、病院の安全対策室から、ノンテクニカルスキル・トレーニングのいい教材はない? と相談されているのですが、ACLSからこの部分だけを切り抜いて、こんなシミュレーション訓練を行うのがかなり有効なのでは? と感じ、ACLSの新しい可能性を感じ始めた今日この頃です。
posted by Metzenbaum at 01:41 | Comment(4) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS)
2009年11月29日

手術室での急変対応シミュレーション(ACLS)

久々にマジメなオペ室ネタです。

手術中の突然のVF(心室細動)、皆さんのところではどのように対応していますか?

私の勤務する手術室ではあまり頻度が高いことではなく、過去5年間に2回ほど(年間約6,000件のオペをしている手術室です)。

私自身は心停止に当たったことはなく、過去の2回も私が勤務ではなかったときなので、伝え聞くだけなのですが、手術室での救命処置(BLS+ACLS)は、一筋ならではいかないなという印象があります。

病院内勉強会や、AHA ACLS、日本救急医学会のICLSなどで、病院内での急変対応シミュレーション教育は進んでいますが、手術室の場合、いろいろ特殊なことがありすぎて、それらのコースを受講しただけではなかなか対応は難しいと思います。(突っ込んで言えば、それはどこの部署でも同じかもしれませんが)

手術室の特徴、問題になることをいくつか列挙してみます。

 ・既にVラインが取れていて、多くの場合は挿管されている
 ・執刀医と麻酔科医、リーダーシップを誰が取るか
 ・清潔野をどうするか、胸骨圧迫の問題、除細動器パドルの問題
 ・特殊体位(腹臥位、側臥位、坐位、など)

これらの問題を考えると、手術室は手術室で、ある程度基準を作るとか、話し合いをして患者急変シミュレーショントレーニングをしておくことは不可欠と思います。

ただ手術室では、外科系のすべての科が関わっていますので、これらを含めたコンセンサス作りはなかなか困難です。

基本は、麻酔科と手術室看護師である程度話し合いをし、それを各科へ打診するということになるでしょうか。


手術中に突然VF(心室細動)になった場合、取り急ぎ必要なのは胸骨圧迫の開始です。開腹手術などの場合は、胸部は清潔なドレープがかかっていますから、助手(第三助手)の外科医が胸骨圧迫を開始するというのが現実的かなと思います。

手術操作を止めることができるならいいですが、そうでなければ執刀医と第一助手は止血など、手術を中断できるところまで処置を進める必要があります。

止血操作など手術操作が進むなら、器械出し看護師はその補助に当たるべきですが、手術操作が止っていれば胸骨圧迫の交代要員となれます。

除細動器が届いたら、パドルをどうするかが問題。

皆さんのところでは清潔野で使える滅菌パドルの準備をしていますか?

清潔野で除細動をするとしても、たとえば開腹手術の場合、パドルを当てる位置はドレープの下に隠れています。

ドレープをはがして、隙間から奥へ手を入れなければパドルを当てることは不可能。

かといって、不潔野からパドルを当てるにしても、清潔野を維持しようと思ったら、結構困難です。それにドレープの下に盲目的に手を差し入れた場合、感電という点でちょっと心配。

確実なのはドレープをはがして、裸体状態にするべきですが、手術は一時中止というある意味大きな判断が必要です。執刀医がそういう判断を素早くしてくれればいいですが、麻酔科側としてそう強く言えるかどうか。

器械出しナースとしてできることは、術野を覆うための覆布やドレープシールを準備することでしょうか。

手術室での急変時の難しい点として、手術進行というシビアな状況をコントロールする執刀医と、全身管理を行う麻酔科医、どっちがリーダーシップを取るか、どこまでお互いの領域に踏み込んで進言・決断をするかというところにあると思います。

リーダーさえ決まれば、手術室ナースはそれに従って行動、また医師たちの注意から漏れた細かい配慮を行っていけばいいのですが、リーダーが決まるまでが結構重要かとも思います。

手術室外回り看護師の大事な役割は、手術進行の全体的なコーディネート。

リーダーが決定せず、判断や指示系統がはっきりしないときには、オペ室ナースとして本領発揮かもしれません。

「先生、○○しましょうか?」
「○○はどうしましょうか?」

そんな感じの「建設的介入」によって、処置進行の促し、決定の促しができます。

そのためにはACLSの基本的な知識が不可欠です。

急変時には誰もが焦ります。

中でもリーダーとしての役割が期待される医師たちの重圧は大きいものと思います。

ましてや執刀医と麻酔科医という力関係の微妙な立場を考えれば、中間的に間を取り持つのはナースの仕事ではないでしょうか?

そのためにも、ACLSの基本的対応を理解し、手術の場面でどのようにそれを適応するかを考えることは大切だと思います。


皆さんの施設では、そんな防災訓練とも言うべき急変シミュレーションを行っていますか?
posted by Metzenbaum at 18:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS)
2009年11月12日

AHA PEARS(患者急変対応コース)、東京初開催

AHAのBLSとACLS、そして小児二次救命処置のPALSは有名ですが、
PEARSプロバイダーコースというのがあるのはご存じでしたか?

知る人ぞ知るPEARSプロバイダーコース。

AHA PEARS ペアーズ・プロバイダー修了カード(患者急変対応)

こんな修了カードです。

見たことある人は、まずいないと思います。

というのは日本ではこれまで4回しか開催されたことがなく、日本でこのカードを持っている人はたぶん5−60人しかいません。


PEARSは、正確に書くとP.E.A.R.S。

略語です。

何の略かというと、Pediatric Emergency Assessment, Recognition, and Stabilization.



簡単に言えばAHAのBLSとACLSには含まれない患者急変の初期評価と対応の仕方を身につける実践コースです。

「ちょっとおかしいぞ!」という直感的な「気づき」をどのように判断して診断につなげていくか、そしてどのように必要な救命処置やドクターコールを行うかという、いわばBLS以前のスキルを身につけるコースです。

ベテランの人は経験的に身につけていることですが、それを体系づけて学ぶという教育は日本にこれまでありませんでした。いわばベテランの勘所を短時間で効率よく身につけちゃおうという画期的なコンセプト。

部署にもよりますが、正直、心停止でBLS/CPRが必要な場面というのは意外と多くはありません。そうなる以前に気づいて対処すればどうにかなるということの方が多いはず。

日常業務でありがちな身近な緊急事態での対応を学べるナースにとってはうってつけのプログラムと言っていいと思います。

Pearsの P は"pediatrics"のPで、小児という意味です。しかしなにも子どもの急変に限らず、ナースが患者と接する際の診断的なアプローチの仕方を、AHA得意のDVD教材とディスカッションで学んでいきます。


そんなPEARS Providerコースが、こんど東京で初めて開催されます。

  • BLSとACLSだけでは納得できなかった方
  • 小児科ナース
  • PALSに興味があるけど受講の踏ん切りがつかなかった方
  • 日本のAHA関連団体では発行していない本場ハワイのAHAカードを手にしたい方
  • etc.

興味がある方は、この機会をお早めにどうぞ。

PEARS Provider Course
主催: American Medical Respons, Hawaii
企画: 日本医療教授システム学会(JSISH)
会場: 東京/日本橋プラザ
日時: 11月27日(金) 10:00〜16:30
受講料: 35,000円(教科書、昼食込み)

→  詳細・申し込みはこちらから


長いページですが、下から4つめにPEARSプロバイダーコースの概要と申し込みページへのリンクがあります。

posted by Metzenbaum at 23:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS)
2009年11月08日

AHA US BLS/ACLSインストラクターとしての活動

久々の更新になります。

ここ1-2年、私のもっぱらの関心事はBLS/ACLSのインストラクターとしての活動。

手術室の仕事そっちのけで、休みのほとんどを費やしてきました。

挙げ句の果て、やっぱり本場の世界を知らなくちゃ、ということで渡米、アメリカで American Heart Association のBLS Instructor と ACLS Instructor 資格を取得するまでになりました。

いまは、アメリカ・ハワイ州にあるAHAナショナル・トレーニングセンターの所属として、主に日本でBLSとACLSの教育活動に携わっています。

そんな最近の私の活動について少しご紹介したいと思います。



いま、日本ではAmerican Heart Associationと契約を結んで、ライセンス発行ができる団体が7つあります。

 ・日本蘇生協議会(Japan Resuscitation Council)
 ・日本小児集中治療研究会(Japanese Society of Pediatric Intensive and Critical Care)
 ・日本ACLS協会(Japan ACLS Association)
 ・日本循環器学会(Japanese Circulation Society)
 ・国際救急救命協会(International Emergency Medical Association)
 ・福井県済生会病院(Fukui-Ken Saiseikai Hospital)
 ・日本BLS協会(Japan BLS Association)

皆さんがお持ちのBLSやACLSのプロバイダーカードの裏面には、上のいずれかの団体名が英語で印字されているはずです。

しかし、私が日本で開催して発行するAHA BLSプロバイダーカードの裏面はこんな感じになっています。

AHA USプロバイダーカード

目立つのが Hawaii Region という文字。

そうなんです、私はハワイ州にあるAHAナショナルトレーニングセンターの所属なので、私が主催したAHA BLSコースは、開催場所が日本国内であってもハワイからカードが発行されます。

いま、日本にもたくさんのAHA BLSインストラクターという人たちがいますが、日本国内のAHA提携団体(上の7つの団体です)でインストラクター資格を取得した人は、原則的に日本国内でしか活動できません。

しかしアメリカでインストラクター資格を取った人には、アメリカ合衆国内はもとより、日本を含め世界中でAHAコースを開催できる権限が認められている、のです。

自由度は高いですが、日本を中心に活動しようと思ったら、これがなかなか大変。書類は全部英語ですし、すべての手続きをハワイ相手にやるので、正直言って苦労の方が多いです。

しかし、AHAをはじめ、蘇生教育はガイドラインの改定によって5年おきに変わります。そうした世界の最先端に触れていられるのは、アメリカ本国のトレーニングセンターと関わっているからだと思うのです。特にガイドライン2010が目前と迫っている今、USインストラクターであることに大きな価値を見出しています。

蘇生ガイドライン2010が発表されるのが、2010年10月。

それを元に、ガイドライン2010版のBLSヘルスケアプロバイダーコースの教材(インストラクターマニュアル、コースDVD、受講者用テキスト)が完成するのがおそらく2011年6月。

最初はもちろん英語です。

これが正式に日本語訳されるのは、おそらく2012年春過ぎでしょう。

ということで、日本でガイドライン2010版のBLSコースが開催されるまでは、あと2−3年はかかりそうです。

そんな中でもいち早く最新ガイドラインに則ったコースを展開するのはおそらくUSインストラクターでしょう。早ければ英語版リリースから数ヶ月遅れくらい、つまり2011年夏過ぎくらいにはぼちぼちと開催できるのではないかと思います。

私も、新しい英語版コースがリリースされたら、アメリカに行って情報収集してくることになりそうです。


基本はインストラクターの個人活動が中心で、日本のAHA関連団体のように「トレーニングサイト」のような活動拠点を作らなかったため、いまいち認知度が低いAHA USインストラクターですが、今年から、全体を取りまとめるホームページができたりして、少し組織的に動くようになってきました。



これまでは、USインストラクターの勤務病院とか、口コミでしか受講できなかったアメリカ本国ナショナルトレーニングセンターのAHAコースが、公募で開催されるようにもなってきています。

アメリカTC発行のプロバイダーカードと日本のITCカード、裏面のカード発行元が違うだけで基本的には等価なものなんですが、海外留学とかアメリカで働きたい! なんていう場合にはやっぱりアメリカ発行のカードの方が通りが良いようです。

そもそもアメリカの病院人事部の人とか、日本でもITCがあってAHA資格が取れるって知らない人が多いですし。

カードだけを見ると、わざわざアメリカに行ってとってきたようにも見えるUSインストラクター発行のプロバイダーカード。

つまらないことはありますが、話しの種にでも、興味がある方は、機会を見つけてUSインストラクター主催のAHAコースを受講してみてください。

アメリカ本場の雰囲気を味わえるはずです。

今のところ、埼玉、東京、神奈川、福井、岡山、鹿児島を中心に公募コースを開いています。

ちなみに東京開催の日程はこんな感じです。

● BLS for Healthcare Provider
東京都文京区/東京メトロ丸ノ内線 茗荷谷駅徒歩5分
12月12日(土)→ 詳細
12月19日(土)→ 詳細

● ACLS Provider Course (一日コース)
東京都文京区/東京メトロ丸ノ内線 茗荷谷駅徒歩5分
11月15日(日)→ 詳細

● PALS Provider Course(2日間)
東京都文京区/東京メトロ丸ノ内線 茗荷谷駅徒歩5分
12月19日(土)〜 20日(日)→ 詳細

● PEARS Provider Course
東京/日本橋プラザ
11月27日(金)10:00〜16:30 → 詳細


いずれもアメリカ合衆国ハワイ州の修了カードが発行されるコースです。

最後、ちょっと宣伝でした。

posted by Metzenbaum at 23:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS)
2008年10月07日

近況

この3−4日、出張のBLSヘルスケアプロバイダーコースに、メディカルラリースタッフ参加、ICLSインストラクターと盛りだくさん。

充実しているといえばそうなんですけど、AHA関係だけでもこなさなければいけないデスクワークが山積み。

メールの返信も溜めに溜めまくって、関係者の皆さま、ごめんなさい! です。

AHA-PALSプロバイダーコース受講も内定しているので、テキスト買って勉強しなくちゃだし、ACLSインストラクターも早々にブースを任されることになりそうで、その勉強も、、、、

本職でも9月から新規就職の方のプリセプターもしているし、看護研究やらなんやら。

看護学士取得のための論文が終ったと思ったけど、息つくヒマがないです。

まあ、忙しいっていうのは幸せなことなのかも知れませんね。




そんな合間を縫って行ってきた3年に1度の現代美術の祭典「横浜トリエンナーレ」。

横浜トリエンナーレ立ち上げ以来ずっと楽しみにしていましたが、今年はなんだかグロな感じの作品が多くてちょっと意外でした。まあ、生命の根元を問う作品ということで評価はしますが、かなり刺激的だったかなぁ。

日頃、手術の介助をしたりしていて、血みどろは慣れてますが、最初やられそうになりました。

もし横浜トリエンナーレに行かれる方は、「15歳未満制限」の作品にはご注意を!
posted by Metzenbaum at 21:30 | Comment(4) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS)
2008年05月11日

AHA-ACLSインストラクターコースを受講してきました

ACLSインストラクターコースを受けてきました。

アメリカ心臓協会AHAのACLSプロバイダーコースで教える指導員になるための資格取得コースです。

これまでもAHAのBLSインストラクターとしては活動していましたが、やっぱりBLSとACLSでは違いますね。

医学的な内容の難しさは当然なのですが、教え方/指導方法、アプローチの仕方がBLSとACLSではぜんぜん違うので多いに戸惑いでした。

講師の先生(AHAの業界用語ではファカルティ faculty と呼んでます)が言ってましたが、BLSは体を使う体育、ACLSは知的ゲームなんて言ってましたが、確かにそんな感じ。

AHAのBLSコース(ヘルスケアプロバイダー/ハートセイバー)はビデオの流れに身を任せて勢いで指導できますが、ACLSはそういうわけにはいかず、かなり頭を使います。

なにより教材設計というか、AHAが考えた教育デザインをよく理解しておかないと、ドツボにハマリまくりで収拾つかなくなってしまいそう。

そんなポイントを学ぶためのコースでした。

AHAのACLSインストラクターに認定されるためには、あとはモニター評価という実技試験が待っています。

実際のACLSプロバイダーコースにインストラクター候補としてスタッフ参加して、実際に指導にあたって、それを上位インストラクターに評価してもらいます。

それでOKになってようやくACLSインストラクターカードが発行されるという流れ。

ただでさえコース開催数が少なくて、しかも2日に渡るコースだけに、なかなか実戦経験を積むチャンスがなさそうで、晴れて正式ACLSインストラクターになれるのはいつのことになるやら。

新しい世界に手を染めてしまった自分をちょっとだけ、うらめしく思いながらも、あせらず研鑽していきたいと思います(^^)
posted by Metzenbaum at 10:22 | Comment(9) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS)