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2007年09月26日

「有能なナースは世界を目指す!」

私、看護師になるまえにトータルで2年ほど、海外をフラフラしていたことがあります。いわゆるバックパッカーというやつなのですが、行く先々では驚くほどたくさんの日本人看護師バックパッカーと出会いました。

当時、私は看護師になろうなんて思ってもいませんでしたから、別に医療系のニオイをかぎつけては声をかけていた、なんてことはありません。 ← このまえ行った自衛隊横須賀基地ではそんな感じでしたが(笑)

たまたま安宿などで出会って話をしていて、あ、この人おもしろいなと感じたり、活き活きしていて素敵だなと思って、深く話をしてみると「実は、私、日本で看護婦してたんですよ」なんていう人が、とても多かったんです。

最初は偶然かなと思いました。でも長く旅を続けていくうちに、次第に「これは偶然なんかじゃない」と確信するようになりました。

だって、ホントそうなんですよ。私が旅先で出会った日本人で、いまだに交流が続いている人って、ほとんどが看護婦か薬剤師さんです。

ふつうのOLと違って資格職ですから、再就職に困らないというのも長期旅の看護職者が多い理由のひとつかもしれません。

それも看護師という仕事の強みなのだと思います。生活に困るようなぎりぎりのお給料だったら、他のことに目を向ける余裕なんかも出てこないですよね、きっと。

とにかく海外で出会ったナースたちは活き活きとしていました。

バックパッカーの世界ってそうなのですが、長旅になると疲れてきたり退廃していく人も少なくない中、貪欲なまでにいろんな物事にチャレンジして、新しい世界に飛び込んでいくという姿勢は看護師に多い特徴だったと思います。

ある意味、日頃のストレスを発散していたのかもしれませんが、そうした海外での経験を後日、形にしている人もたくさんいます。

私の知り合いの中でも、そのまま現地でナースの資格を取って永住してしまった人や、医療通訳になったり、ライターとして活躍したりという人が何人もいます。最近でも、とあるハリウッド映画のエンドロールに知り合いナースの名前を見つけました。ロケ現場の救護所専属看護師として働いていたそうです。

そんな旅先で出会った魅力的なナースに影響されて、私も看護の世界に飛び込んでみたわけですが、正直、看護学校時代や、働きはじめてからも、「なんか違う」、と感じています。

あの海外で知り合った看護師のようなアグレッシブで、なにかを開拓していこうというような空気が日本の看護界からはまったく感じられないんです。

自分自身を看護の世界に置いてみて、時がたつにつれて、ようやく私が最初に海外で出会ったナースたちの影響で抱くようになった「看護師像」というのは、ある意味特殊なものだったんだなと気付くようになりました。

看護師の中でも、あえて海外に行こう! と思うような人たちはほんの一握り。
いや、そう夢に思い描く人は多いかもしれないけど、実際に行動を起す人は少ない。

看護の仕事は過酷だしストレスも多いでしょうけど、楽といえば楽。
一度資格さえ取ってしまえば、贅沢さえ言わなければそこそこの生活ができるのですから。

そんななか、わざわざ海外に飛び出そうというのは、相当勇気というか決断がいることだと思います。パワーもいります。そういう自分の中のハードルを乗り越えた人たちだからこそ、あそこまでの積極的な行動力があったのだろうなと思うんです。



最近、とある人から聞いたのですが、産業心理学とか組織心理学という領域があるそうです。それによると各職種毎の組織の作り方や意識の持ち方には特徴があるそうで、専門職というのは、その職域内でピラミッドをつくって、自分たちの世界の中で上へ上がろうとするシステムを作りやすいのだそうです。自分たちの世界の中で自己完結しているというか、他の世界に評価基準を求めないというのも特徴のひとつ。

そういう世界では、上が作った基準や目標を目指すことにはただならぬ興味を示すけど、自分たちではなにかをつくり出そうとか、新しい価値基準を開拓しようという意識に弱く、全体がコントロールされやすく、組織としては強固な結束になる。

日本の看護界もまさにそうですよね。

これは言い過ぎかもしれませんが、古風な日本の看護の枠に収まりきらなかったオリジナリティのある人、リベラルな人たちが海外へ流出していったのでは??

昔読んだ片岡義男のエッセイに、有能な日本人はみんなやがて日本を離れてしまう、というような話があったのを思い出しました。

◆  ◆  ◆  ◆  ◆


なんでいきなりこんな話をしたのかというと、このまえ職場の親しい友達(ナースです。年下ですけど)が今度、仕事を辞めて海外に行くことを考えているという話を聞かされたから。

いままで一緒に勉強会を開いたり、業務改善・企画を立ち上げて活動したりと、今の自分にはなくてはならない存在だっただけに、正直ショックでした。

でもよく考えたら、海外に行きたいという話は、なんでも応援しなくちゃいけないなという気持ちになってきました。だって私が看護師になろうと思った原点はそういうところだったのですから。そんなことを考えながら、ツラツラと綴ってみました。

まとまりのない文章で恐縮ですが、これからなにか新しいことをはじめようという人への応援メッセージになれば、幸いです。

与えられたレールを忠実になぞるのも道
自分で切り開いていくのもまた道

自分の固定概念をひっくり返す、そのきっかけとしての海外経験は絶大です。
そこでなにが見えてくるのか? 掛けてみるのもおもしろいですよ。

海外へ行くことに限ったことではありませんが、なんにしても理由なんか後から自然についてくるものですから、まずは思いきってみるのはどうでしょう?

せっかく看護師免許という自由へのパスポートを手にしているわけですから、それを活用しない手はありませんよね。
posted by Metzenbaum at 00:20| Comment(24) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月23日

X線、CT、MRI ―ナースが診る画像の知識

掲示板で何度かリクエストをもらっているものの、私自身が勉強不足で取り上げられていない「課題」に画像診断があります。

X線やCT、MRI、造影など、手術室のシャーカステンにはいろいろな写真が架けられます。それらが読めたらいいなとは、オペ室ナースなら誰もが思うはず。

私自身、画像診断については看護学校での放射線科の講義以外は誰からも教わったことはありません。病院内の勉強会でもそういうのは開かれたことないみたいだし、いずれは独学しなくてはと思っていたのですが、雑誌「月刊ナーシング」2007年10月号にちょうど良い特集記事がありました。

月刊ナーシング2007年10月号
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「特集:ケアに活かす画像の知識」

きっと、ホントの基本の基本しか書かれていないのだと思いますが、画像の知識がほぼゼロの私はちょうど良い内容でした。なにせCTの輪切りは頭方向から見ているのか足方向から見ているのか、そんな基本的なことすら知らなかったほどですから(^^ゞ

私も含めてまったくの初心者にはお勧めの特集記事です。
いま書店に並んでいる最新刊なので、興味がある方は本屋に行った際にチェックしてみてください。
posted by Metzenbaum at 21:50| Comment(3) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月29日

「JNTEC」ナース向け外傷初期看護コース本格始動!

看護師向けの外傷標準化プログラム、JNTECがいよいよ本格稼働するという情報が入ってきました。

JNTECはこれまで5-6回のテストコースが日本各地で開催されていましたが、いよいよ公式コースとしてスタートするようです。

今年の11月10日(土)〜11日(日)に第一回のJNTECプロバイダーコースが大阪で開催されるとのこと。

それに先だってJNTEC公式テキストが出版されました。


外傷初期看護ガイドラインJNTEC教科書
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日本救急看護学会公式テキスト
『外傷初期看護ガイドラインJNTEC』

監修:日本救急看護学会
編集協力:日本臨床救急医学会

●A4判 ●定価3,990円(本体3,800円+税) 
●ISBN978-4-89269-573-5 ●8月下旬発売予定
●へるす出版


募集の方も、すでに日本救急看護学会公式ウェブではじまっています。


第1回JNTECプロバイダーコース受講者募集
・日時: 平成19年11月10日(土) 14:15〜18:15
             11日(日)  8:45〜18:30
・場所: 第1日<座学> ホテル阪急エキスポパーク(大阪府吹田市千里万博公園1-5)
    第2日<実技> 大阪市立大学(大阪市阿倍野区旭町1-4-3)
・受講対象資格: 看護師経験年数3年以上(内救急看護分野2年)
・受講費: 【日本救急看護学会会員】 18,000円(1.5日コース)  5,000円(座学のみ)
       【非学会員】        28,000円(1.5日コース)  8,000円(座学のみ)
・応募人数: 1.座学と実技 36名    2.座学のみ 70名
・受付期間: 平成19年8月27日(月)〜9月7日(金)



JNTECってなに? という方は過去記事 『JNTEC(標準外傷看護コース)とは?』 をご覧下さい。

posted by Metzenbaum at 01:28| Comment(5) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月14日

アウトドアで看護ボランティア

登山客向けに夏だけ山小屋にオープンする診療所があるのですが、そこに看護ボランティアとして参加してきました。

基本的には登山者しか来ないような山奥にある診療所ですから、行くまでがタイヘン。職場の同僚と二人で山道を歩いていったのですが、診療所に着くまでの時間、なんと11時間! がんばったと思います。(笑)

3000m近い高所ですから、景色もまた格別。高山植物も咲き乱れているし、雪渓は残っているし、道中きつかったけど、楽しくもありました。

肝心の診療活動ですが、ハイシーズンだからひっきりなしに患者さんが来るのかなと思いきや平穏無事で軽傷者が1日5名程度な感じ。幸い滞在中はずっと医師免許を持った人がいたので(その人もボランティアです)不安なこともありませんでしたが、もしナースである自分たちしかいないところに重傷者が運ばれてきたらどうしよう!? という思いはありました。

日頃は病院の中で、スタッフと器材、医薬品に囲まれて仕事をしていますが、人里離れた場所に身を置くことでいろいろと気付かされる点があります。

やっぱり思うのは勉強の必要性ですね。

それも最先端の医療知識ではなく、もっと古典的というか根元的なこと。

だいたいの場合は、医療ではなく応急手当のレベルで対応できることが多いのですが、医療従事者はいわゆる応急手当を学ぶ機会があまりありません。(=学校のカリキュラムには組まれていないという意味)

まずはこの辺をしっかり押さえておかないと恥ずかしいなと思いました。そういった意味では救急医学の本を勉強するよりは、まずは市民向けの応急処置読本が必要でしたね。後は日本ではあまり勉強する機会がない高山病の知識、これは最近受講した日本旅行医学会のセミナーで教わってきたばかりでちょっとばかり自信があった部分でした。

幸い、私がいる間は高山病(山酔い)症状の人はいませんでしたが、ちょっとまえには重度の高山病で肺水腫になった人がいてヘリコプターで麓の病院まで搬送されたそうです。

そういう僻地に行って感じるのは、頭の中にどれだけ引き出しを持っているか、つまり自分の知識・経験の量が思いっきり試されるなという点。今度行くときまでにはコレとコレとコレを勉強しようとか、否が応でもモチベーションが高まってくるのを感じます。

完全な山岳世界なので誰でも行かれるというわけでもありませんが、救急医療に興味がある人には、医療の原点を考えるという意味でもぜひお薦めしたい体験でした。
posted by Metzenbaum at 01:26| Comment(3) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月06日

看護師のスキルアップ&資格取得

今日は看護学士取得のために通っている(?)放送大学の単位認定試験最終日でした。

今期の予定は10教科、20単位。

一夜漬け&当日勉強で臨みましたが、手応え的には16単位はいけそう。
あわよくば20単位。いずれにしても前期・後期を合わせて学位授与機構申請に必要な31単位はクリアできそうです。

単位認定試験があったり、当直明け・週末にAHAのBLS講習にインスト参加したり、別の勉強会に参加したりでメチャクチャ多忙だったこの1-2ヶ月。

せっかくコメントを下さった皆さんには、まだお返事できていなくてゴメンナサイ。そちらにも少しずつ対応していくつもりでいます。




さて、今日の話のメインテーマは「看護師のスキルアップ&資格取得」です。

いまとある方面から 「『ナースのスキルアップと資格』ということで一緒に本を書きませんか?」 という話を頂いています。

資格 ― キライな話ではないので基本的には乗り気満々なんですが、具体的にどんな話を書こうかと思うと、とたんに行き詰まってしまうので困っています。

よく看護雑誌などでも「資格取得でキャリアアップ!」みたいな特集が組まれていることがあります。それみたいにいろんな資格の概要を羅列して、ところどころに資格取得者の体験談をはさむ、みたいな内容だったら話は簡単です。

でもそんなのありふれているし、それってはっきりいっておもしろくない!

で、いろいろ考えていったところ、致命的な点に気付いてしまいました。



ナースが目指す資格・取る資格って意味があるの??

すごく根本的な話になってしまうのですが、「資格を取る」という行為にはいったいどんな意味があるのでしょう?

もちろん看護師という仕事は看護師免許がなければできないわけで、看護師免許は持っているというのが大前提です。看護師免許の有無でいったらあるなしでは大違い。

でもすでに資格職である看護師が、さらになにか資格取得を取ったらどうなるのか?

もしかしたら、なんにも変わらない、んじゃないかな。

そんな気がしてきてしまいました。

◆ 認定看護師制度の問題点

ナースがスキルアップとして目指す資格の代表と言えば、日本看護協会の認定看護師制度があります。救急認定看護師とかWOCとかですね。

認定を取るのはかなりタイヘンです。まずは養成所への入学試験があって、6ヶ月のフルタイム研修、その後修了試験に合格してようやく認定取得。

6ヶ月のフルタイムの研修というのがネックで、うちの病院の場合は休職扱い(無給)での参加になります。で、念願の資格を取って帰ってきたらどうなるのかというと、基本的にはもとの部署に配属。給料は変わらず、でも認定看護師としての病院全体の仕事は増える、通常勤務のあとの自分の時間として。。。。

最近では、手術看護の認定看護師も新設されて、私も興味はなくはないのですが、今活動している認定看護師さんたちの実状を見ていると、正直、魅力は感じません。なぜならあまりに病院の待遇が低すぎるから。

WOCなどは、医師からも一目置かれたりと院内の地位は高いと思います。でも勤務条件がぜんぜん追いついていないのが現状。

6ヶ月の研修は仕事を休職扱いでいく、つまり無賃です。それでいて学費はかかるし、その間の生活費、交通費、実習施設への謝礼など、出費はバカになりません。単純に考えて半年間の給料がないというだけで数百万円の経済的損失です。それに加えて出費を考えたら年間所得分くらいはマイナスになってしまうんじゃないでしょうか?

つまり認定看護師の認定は5-600万円の投資が必要ということになりますが、果たしてそれに見合うだけのモノがあるのか?

もちろん自分自身の勉強として、これ以上の機会はないと思います。自信につながりますし、院内で裁量権を持って動けるようになるというのも組織の中では大きなことかもしれません。認定取得を機に研究者として大成してその後アカデミックな方面に進むという人も少なからずいるのは事実です。

しかし、対価として数百万となると、単純な向上心だけで済む話ではありませんよね。病院勤務の上での待遇の低さは問題だと思いません?

単純に経済効果で計ること抵抗を感じる方がいるかもしれませんが、でも現実問題としては重要です。

社会人として自律している人間が、ましてや家庭を持っているような人であれば人生設計を考えると思いますが、その中でトータル的に考えて認定を取ることがメリットになるのか? 今の私にはYESとは言えません。

最近、法律の改正で、認定看護師・専門看護師がいることを病院広告に載せていいことになりました。また国立病院などを中心に認定看護師に手当てを出すような動きが出てきているという話も聞いています。それがどの程度なのかはわかりませんが、認定看護師の待遇は、今後は是正されていくとは思いますが、現状の認定看護師制度は看護師個人の積極的な自主性と献身性の上にしか成り立っていないズサンな制度だと思います。

看護協会がいうように、本当に看護界を引っ張っていくリーダーとして活躍して欲しいのであれば、それなりの処遇を与えなければ続きません。今後に期待したいと思います。

◆ 資格取得=自己啓発!?

誰もが憧れる看護界の大きな「資格」であっても、こんな根本的な問題がはらんでいるのですが、看護師が目指す資格のほとんどは似たり寄ったりで、「メリット」を考えてみると、自己啓発だったり自分に自信がつくとかその程度のものがほとんどな気がします。(そもそも看護師免許の業務独占範囲が強烈なのでそれ以上のものはあり得ないというのも事実ですが)

もちろん自分の勉強のために、資格取得を目指す、多いにけっこうです。私もかつて資格取得に燃えていた時代があって、闇雲にいろいろな資格に手を出しました。(最近も救急関係の認定には力が入っていますが)ですから気持ちは分かります。

ただ実益として役立つ資格って、この世界にはないのかなとふと思ってしまうんです。そのガンバリを評価するシステムがほしい!

州にもよりますが、アメリカではICU・ER・OR以外の一般ナースがACLS認定を取ると時給が$2上がるという話を聞きました。(ICU・ER・ORナースはそもそもACLS認定がなければ働けない)

時給で$2って大きいですよね。

日本では看護師たるもの仕事の評価を金銭に求めてはいけない、という雰囲気をなんとなく感じますが、業界のレベルアップには必要な効果だと私は思っています。

ナースの世界は、ただでさえ一般企業と違って昇格といった目標がたちにくい業界だからこそ、そうした資格に着目するというのは悪い発想ではないと思うのですが、現実、ほとんど見あたりません。

ということで冒頭の話に戻りますが、看護師が狙うキャリアアップに関して書こうと思うと、どうしても自己啓発の世界になってしまっておもしろくない!

投資に見合うだけの実益がある資格といえば、助産師でしょうか? 1年間の学生生活と実務のハードさ、責任の重さを考えたら疑問符は残りますが、認定看護師よりは堅実な気がします。(分野で考えたら比較になりませんが)

臨床工学技士や救急救命士なども1年の研修で国家試験受験資格が取れますが、このあたりは看護師免許の範疇なのであまり意味はないか。。。

ただ平成3年8月15日以前に看護学校を卒業した人であれば、専門学校に通わなくても救急救命士国家試験の受験資格があるので、興味がある人はがんばってみるのもいいかも。救急救命士はもともと看護師の下位資格でしたが、最近の傾向をみると大元である看護師独占業務の範疇を越えて救命士独自に業務拡大していく方向性が見られています。今のうちに救命士免許を取っておくと既得権として将来的には、看護師ではできないことでも可能になる時代がくるかも!?

それとなにより、私を含め専門学校卒業のナースにとっては、学位授与機構でとる看護学士の学位がいちばん現実的に意味がある資格かもしれません。私の勤務する病院ではまだ前例がないようなので、わかりませんが、学位が取れた暁には給料、上がるかなぁ。

呼吸療法認定士、ME検定、ケアマネージャー、受胎調整実地指導員、滅菌技士、etc.

資格の話は書いているときりがないのですが、とりあえずこんなところで。

結論は、自己評価ではなく、きちんとした社会的他者評価としてナースのがんばりを評価する制度がほしい、ということ。認定看護師制度の評価がはじまっているのを手始めに今後の動きに期待したいところです。

posted by Metzenbaum at 00:29| Comment(9) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月22日

登山医学セミナーに参加

土曜日の今日は、東京で開かれた「登山医学セミナー」というのに参加してきました。

日本旅行医学会の主催で、今日の演目は、

1.落雷の仕組みと対応
2.登山における骨折の対応
3.無線の使い方
4.山へ持参する医薬品とファーストエイド
5.山の遭難事故と法的責任

という感じ。昨日の金曜日の演題には毒蛇咬傷や高山病の話があったので聞きたかったのですが、残念ながら仕事の関係で今日のみの参加となりました。

今の仕事(手術室看護)とはまったく関係ない勉強会ですが、ネイチャーガイドになりたかったという夢を捨て切れていない(?)私にはとっても刺激的でためになるセミナーでした。

参加者は医師、看護師、旅行業界人が中心だったようですが、フロアからの質問を聞いていると、サービス業として客の安全を守るというのはたいへんなことなんだなということがひしひしと伝わってきました。

最近は何かと訴訟になる時代。Dr.のように専門職として完全に裁量権が確保されている職種ならいいですけど、ナースが病院という指示系統下からはずれて添乗員として働く場合はタイヘン。

専門的な判断と処置が要求されるわりには、(法的に)自分で行えることがあまりに少ないという現状。こうしたらいいとわかるのに、医師の指示がないからできないというジレンマ。法律を考えると、素人が期待するほどにはナースって動けないんですよね。

趣味のアウトドアと医療の仕事をどこかで関連づけて何かできないかなとは夢に思い描くのですが、やっぱり現実はきびしいようです。

のほほんとオペ室にこもっているのがいちばん楽なのかも、と思った1日でした。
posted by Metzenbaum at 01:35| Comment(2) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月30日

『船舶衛生管理者』 医療従事者以外で唯一注射ができる資格!?

さて問題です。数ある国家資格の中で、手技として人間に「注射」をすることが許されている資格はいくつありますか?

えーと、まず医師でしょ。それから看護師。最近では救急救命士も点滴していいんだっけ? あと臨床検査技師も採血目的なら針を刺していいんだよね....。

ということでいくつあげられたでしょうか?

私も正確な答えは知りませんが、ふつうに考えたらおそらく4つじゃないかな。

・医師
・歯科医師
・看護師(保健師、助産師、准看護師)
・救急救命士

ところがです。実はもうひとつすごい大穴的な資格があるんです。

それが「船舶衛生管理者」。要は船の医務室(保健室)の管理者が持っていなければいけない免許で、船医が乗るほどの規模ではない船舶で、実質的に船医の役割をする人。この人たちには薬剤投与が認められていて、養成課程の中では筋注と皮下注の練習も正式カリキュラムとして組まれているんです。

え、ウソでしょ? 救急救命士が挿管ひとつするのに大騒ぎしているのに、と思ってしまいますが、ホントの話。

例えば船舶衛生管理者を正式に養成している「福井県立小浜水産高等学校」のウェブサイトにはこんな記述があります。

「授業だけではまかなえない部分は医師(内科医・外科医)に来ていただき直接講習を行ってもらっています。そこでは実際に注射を打ってみたりとか現場の医療の技術を学びます。」

あと「船舶衛生管理者講習を受講して」というレポートも参考になります。

◆ トンデモ本!?くらいの驚き 「船舶衛生管理者教本」

船舶衛生管理者教本「船舶衛生管理者」講習会のテキストである「船舶衛生管理者教本」を見ると、目を疑うようなすごいことがたくさん書かれていておもしろかったです。

止血法のページでは、結紮止血法なんてことまで書かれてます。「コッヘルなどの止血鉗子で出血している血管をはさみ、吸収糸で結紮止血する」とか、創傷処置として「縫合は止血の有力な手段であり、傷の治りも早く機能障害も少なくて済むので積極的に縫合閉鎖する」なんていって傷口の縫い方を図説してあったり。

で、実際に船舶衛生管理者免許を持っている知り合いによると、縫合はサメの皮を使って練習をしたんだって。

◆ 緊急医療の本質の試金石とはならないのか?

こんな話を聞くと、日頃、医師法の縛りの強さを感じている我々医療従事者からすると、「そんなのアリ!?」と思いません?

船という他に手段がない特殊な状況下を想定した資格ですので、緊急避難という側面が大きく出ているのだと思いますが、それだったら無医村の離島で働く看護師だって同じだし、その場でやらなければ助からない処置(甲状輪状靱帯穿刺や緊張性気胸の脱気)を現場で救急隊員や救急救命士が行なうのも同列のことじゃないでしょうか?

救急救命士資格創設のとき、そんな危険な行為を医師以外に認めることはできないと大きく反対され、非常に厳しい条件付きでようやく認可されましたが、当時、船の上では医療資格とは言えないようなとても簡単な研修と試験で取れる船舶衛生管理者には同じようなことが堂々と許されていたのです。

こうした既成事実があるのだから、緊急医療の在り方、必要性という点では前例があったと言えると思うのですが、私の知るかぎり、救急医療の業務拡大を巡ってこの船舶衛生管理者資格が俎上に上がったことはないと思います。(こうした指摘をするのはもしかしたらこのブログ記事が初かも)

そもそも船舶衛生管理者資格は国土交通大臣が発行するもので、医療行政を司る厚生労働省管轄ではありません。縦割り行政でお互いに関知していないのかもしれませんが、看護師・救急救命士の業務拡大を巡って慎重論を唱えている厚生労働省は、船舶衛生管理者資格をどう考えているのでしょうか? 非常に気になるところです。

読めば読むほど目から鱗の船舶衛生管理者教本。実はいまはインターネット上でも読むことができます。興味がある方はぜひ目を通してみてくださいね。薬剤の項目なんか知識がある我々が読むと、ホントにこんなのを使わせていいの? と思うような薬がズラッと並んでいて眩暈を起しそうになるくらい。

◆ 「船舶衛生管理者」資格を取るには...
看護師には許されていない創の縫合まで許されている船舶衛生管理者資格、これはぜひ取りたい! なんて思った人、いませんか?

実は看護師免許を持っていれば、国土交通大臣が行なう国家試験を受けなくても認定で船舶衛生管理者資格を取ることができるんです。さらに言えば看護師免許を持っていなくても「衛生看護学士」の資格でもOK。看護大を出て国家試験を落ちた人でも、放送大学+学位授与機構でもOKってこと。なんだか不思議ですよねぇ。
posted by Metzenbaum at 01:06| Comment(9) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月28日

私見:救急救命士と看護師の業務拡大

本業である手術室ネタを書かずに雑談続き2007年ですが、今日は救急医療の現実と看護師・救急救命士の業務拡大についてお話ししようと思います。

病院前外傷観察処置プログラムJPTECを受講したという話を以前に書きました。それに引き続いてアメリカ外傷外科学会認定資格になっているITLS(International Trauma Life Support)という外傷コースも受けてきたのですが、それを通して考えさせられる点がいっぱいありました。

◆ 業務拡大の雛形としてのITLS(BTLS)

ITLS(旧称BTLS)は日本のJPTECの雛形となったアメリカの救急隊員(パラメディック)向けに作られた外傷コースです。アメリカでは、現場で行なわなければならない医療処置があるという点にいち早く目を留めて、パラメディック制度を導入、救急隊員を訓練してきました。つまり救急隊員に医療行為を認めた先進国といわれています。

ITLSプログラムでは、気管挿管はもちろん、気管切開や緊張性気胸の脱気、骨髄輸液など、日本では医師以外には認められていない高度な救命処置トレーニングも行ないます。JPTECが日本の法律に整合性を持たせたものであるのに対して、ITLSはアメリカ国内とまったく同じカリキュラムを日本で受講できるのが大きな特徴です。

そういった高度な救命処置(Advanced Skill)の手技的なものはもちろんですが、シュミレーショントレーニングのなかで、傷病者と接触してから病院搬送までの、どの時点でそうした処置を行なうべきか、という判断も非常に重要になってきます。

そんなトレーニングを受けてきて思ったのは、やっぱり甲状輪状靱帯穿刺や緊張性気胸の脱気などは病院到着を待ってたら間に合わないよなという点でした。確かに医師以外が行なうにはリスクが高いという点もありますが、あの訴訟社会のアメリカで現実に救急隊員が業務として行なっているという事実を考えると、本当の必要性とリスクを天秤にかけた上で適正な判断が行なわれている証拠ではないか、とも思うのです。

◆ コメディカルの業務拡大を阻むもの

コメディカルの業務拡大を議論するとき、筆頭に反対するのが日本医師会。医師たちがこれまで「お医者さま」と崇められていたのは、ひとえに「医療行為」という天下の宝刀があったからです。そうした既得権と特権性を死守しようという動きが、日本の救急医療を締め付けていました。

それと看護師に関しては、日本看護協会も業務拡大には慎重な動きを見せています。「看護師にそこまで責任を負わせることはできない」として、例えば麻酔科学会から上がった麻酔看護師導入案を潰しましたし、看護師による産婦への内診や静脈注射に関しても一悶着あったのはご存じのとおり。(看護師を守るという職能団体としての役割もわからなくもないのですが)

看護師の仕事は「診療の補助」と「療養上の世話」ですが、看護師独自に行える「療養上の世話」偏重主義がここでも見え隠れしているような気がしてなりません。医療行為に関しては本来は医者の仕事なんだから、医者の方で勝手にやってよ的な態度が感じられるのです。言ってみれば採血すらしない大学病院看護師の姿を本来の理想としているような。

でも以前、別項でも書きましたが、看護師は医師の他に医療行為が認められている唯一(原則論的には)の存在です。そこから医療行為を否定してしまったら、社会的には大きな損失なんじゃないかなと思います。

さきほどの救急隊の話に戻りますが、医師が救急現場に出ていくほどのマンパワーがないのであれば、それにかわる医療行為を行える存在が必要になります。

今のところ、新設された救急救命士制度がその枠にはまっていますが、救命士自体は医療資格でありながら、消防組織の中でしかフルに活躍できない不思議な資格ですし、救急車内と現場でないと活動ができないという致命的な制約も抱えています。

◆ 法律からみた救急救命士と看護師の関係

現在の方向性としては、アメリカのパラメディックに習って救急救命士の業務拡大という方向性で日本は動いていますが、私は少々疑問に感じています。というのは日本の法律の原則では医師以外に医療行為に手を出せるのは看護師だけと規定されているからです。

「診療の補助」は看護師の独占業務です。ですから救急救命士をはじめとしたコメディカルの法律を見ると必ず書いてあります。「保助看法の規定によらず○○を行なうことができる」みたいなことが。つまりはこれはいずれのコメディカルの業務も本来は看護師しか認められていない行為だけど、この部分に関しては特別にやってもいいよということ。


つまり法律的には看護師免許は救急救命士免許の内容を含む上位資格のはずなのに、最近の救命士業務拡大に看護師はおいていかれているのはなぜ??と思ってしまうのです。まあ、薬剤投与などはナースは日常業務としてふつうにやってますし、基本的には医師の指示と適切なスキルと経験があれば、ナースに関してはオールマイティ、救命士と違って法律的に明確な制限はないんですけどね。

私としてはプレホスピタルは救命士に任せればいいというのではなく、もっとナースが現場に出ていけるような形が発展していけばなぁ、と思っています。そういった意味でドクターカーやフライトナース、DMATなどの今後の発展に期待したいところです。

今現在は、社会通年としてナースや救命士に許されていない甲状輪状靱帯穿刺や脱気、骨髄輸液なども近いうちに解禁されるようになるんじゃないかな。ただそのときは救命士だけではなく、現場に出るナースのことも考えて制度を整えてほしいと思うのです。ナースのことを忘れないで! それが正直な思い。そういった意味でITLSコースは日本の未来予想図的なものを感じられて楽しかったです。

看護師の業務拡大に関しては、看護界の重鎮、日野原重明氏が興味深いことを書いています。

 新時代の看護師に求められるもの バイタルサインを突破口に
 「ナースの仕事は,ナース自身が変えていく!」


要はどんどん法律を破って既成事実を作ってしまいなさい、ということ。救急救命士の創設には在宅での訪問看護師が作った既成事実が大きく影響を与えましたし、救命士の気管挿管解禁も秋田の救命士の英断が契機となりました。

悪法も法ではありますが、こういう事実を考えると、法律ってなんなんだろう? とわからなくなってきます。

どうもまとまりのない雑感になってしまいましたが、いったんここで終わりにして、次回はこの続きとして看護師ですらできない"縫合処置"などが認められている不思議なコメディカル免許(?)のお話しをしたいと思います。「え? そんなすごい資格があったの??」と誰もが唖然とするはず。救急救命士の業務拡大を考える際に、これを知っていると今までの議論がバカバカしくなること請け合いです。お楽しみに。
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2007年02月25日

英語で勉強すること

ここのところ、なんだか英語漬けの日々が続いています。
実は今度、医療従事者向けに一次救命処置を教えるアメリカ心臓協会 AHA の BLSインストラクター・コースを受講することが決まりまして、今そのために英語版のテキストを読み込んでいるところなんです。

もともとアメリカで生まれて、世界中に拡がっていったAHA の BLS(Basic life support) と ACLS(Advanced Cardiac Life Support) のコース。最近日本でもメジャーになってきました。受講生向けのプロバイダーマニュアルの旧版は日本語になりましたが、去年からはじまった新しいガイドライン2005コース用のマニュアルはまだ英語版のみ。

まあ、ガイドライン2005になって、手技もアルゴリズムもシンプルになりましたので正直テキストは読まなくてもぜんぜん大丈夫。G2005を受講した人は必ず英語版テキストを買っているはずですが、マジメに通読したという人はほとんどいないんじゃないかな(^^;

◆ AHAインストラクター、切っても切れない英語環境

そんなこんなではありますが、今度はAHA BLSインストラクターになろうというからには、さすがにそんなわけにはいかず、受講者からの質問に答えられるようになるためにもテキストはしっかり読み込んでおかなければ、ということで、英語版テキストに取り付いています。

幸い、先々月にAHA国際ガイドライン2005の原著は日本語訳されたので、そっちをしっかり読んでおけば、理解にはさほど問題はないのですが、でもやっぱり読むのには時間はかかってしまいます。BLS for Healthcare Provider G2005 は薄い本なんですけどね。今年中にはヘルスケアプロバイダー向けマニュアルの日本語版が出るということで、もうちょっと先延ばしにすれば英語の苦労は少しは軽減されるんでしょうけど、せっかく巡ってきたインストラクターコース受講の機会ですから、がんばろうと思います。

インストラクター向けのマニュアル、これも英語です。Instructor Manualに関しては日本語化の出版予定はないのだとか。。。AHAのインストラクターになる人は医師が中心なので、英語でも問題ないはずということなんでしょうね。市民向け のHeartsaver AED コース用のインストラクター・マニュアルに関しては日本語化という話も出ているそうです。

ということで、今後 American Heart Association(AHA)と関わっていく以上、5年毎にガイドラインと教育プログラムの改定があって、その度に英語教材に立ち返らないといけません。まあ、英語とは切っても切れない関係というのは宿命なのでしょう。

英語の文章というだけで、尻込みしてしまいがちですが、実は英語の論文とか実用書というのはかなり読みやすいです。ヘンに回りくどい言い方はしないし、言いたいことをズバッと伝えるという英語のシンプルさ全開ですので。分野ごとの専門用語はありますが、それさえクリアしてしまえば、たぶんハリーポッターを原著で読むよりは数段簡単だと思います。

◆ 英語を通して拡がる世界

ここで最近よく話題にしている大学教育の話にシフトさせてしまいますが、私が大学で学んでよかったなぁと思うのは英語についてです。はっきり言って高校まで学ぶ英語と大学での英語はぜんぜん別物だと思っています。

高校までの英語の勉強は英語を学ぶこと自体が目的になっています。しかし大学教育の中では、「英語を学ぶ」のではなく、「英語で学ぶ」というように考え方が切り替わってきます。専門分野に関する最新の文献を原著で読んで研究に役立てる。あくまでも英語はツールであって、情報源にアプローチするための手段に過ぎないというように意識がシフトされていくんですね。

必要があって英語を利用する、という発想がもてるようになるというか。私自身は英語の基礎だとか文法だとかはよく分かっていません。でも中学生時代に培った英語の基礎の基礎(語順だとか修飾の関係)なんかが頭に残っていれば、単語と単語をつなげて内容は理解できることに気付くようになりました。

学校英語しか知らないと、英文を読むときについ逐語訳したがりますが、それは大きな間違い。知っている単語だけを拾って意味を推察できればいいんです。そう考えると気が楽になって、英語を毛嫌いすることもなくなるんじゃないかな。

実際、英語のテキストに載っている物語なんかは読めなくても、例えばディズニーランドに行ったとき英語のパンフレットなんかを手に取ってみてください。たぶん内容は充分理解できるはず。そうやって手近なところから英文になれていくと、だんだん自信がついてきますよ。要は毛嫌いしているだけで、ふつうに中学・高校で英語を勉強していれば、本人は自覚していなくてもそれなりの英語の理解は身についているものですから。

例えばロシアを旅行中に「水」がほしかったらどうしましょう? 困っちゃいますよね。でも英語だったら、とりあえずwaterって言えませんか? それだけでもある意味、すごいことだと思いません? フランス語で、トイレどこ? とは言えませんが、英語ならなんとかなりそうでしょ?
なにかとコンプレックスばかり先に立つけど、平均的日本人は英語ができない、なんてことは決してないと私は思っています。(スイマセン、なんだか話がずれてきちゃいました)


医学界で重要な国際ガイドライン(心肺蘇生だったりとかCDCなど)の改定板は英語で発表されること多く、いまはインターネットのおかげでリアルタイムに情報を手に入れることができます。だからこそ英語に抵抗がないという点は意味を持ってくると思うんです。日本語訳をまっていたら平気で1年くらいの遅れを取ってしまいますからね。私自身、英語で発表された文献の内容をインターネットでいち早く日本語で伝える記事を書いたところ、業界で注目されて出版社から原稿依頼をいくつか頂いたなんて経験も実際にあります。

看護界では、英語の文献活用はまだあまりされていないように感じます。今後、学術畑に行きたいとか、学会等で名前を売りたいと思ったら、英語資料の活用をお勧めします。もうちょっとしたら看護界も他の理系学会並みに英語が浸透してくると思います。いまならまだ英語文献が情報源というだけで一歩先にいけますし希少性もあって、ねらい目ですよ(笑)

手術室関連でいうと、アメリカ周手術期看護協会(AORN:http://www.aorn.org/)のウェブサイトで、比較的新しい情報ソースを見ることができます。

もうひとつおまけの話ですが、英語で英語を勉強するというのも英語嫌いをなくすためのひとつの方法。私が使っていたのは English Grammar in Use という、たぶん知っている人は知っている超定番の英語自己学習書&問題集。最初、人からこれを薦められたときは、英語がわからないから勉強するのに、英語で英文法を理解するっていったいどういうこと? と疑問でしたが、例文がいっぱいで、誤解しやすいところはしつこいくらいに強調して書かれているので、意外なほどわかりやすかったです。下手に小難しい日本語の文法用語(仮定法過去だとか現在完了とか)がないぶん、かえってすんなり頭に入ってくるかんじ。英語で学ぶための入門書としてもいいと思います。
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2006年11月27日

JNTEC(標準外傷看護コース)とは?

先日、プレホスピタルの外傷標準化コースJPTECを受けてきましたという話を書きました。そこでもチラッと触れた看護師のための外傷治療標準化コース「JNTEC」について簡単に紹介しようと思います。

◆ ガイドライン、標準化プログラムとは?

いまでこそACLSやICLSと言った循環器系の急変に対する標準化教育プログラムが普及してきましたが、標準化教育プログラムという新しい概念が日本に定着したのは、このACLSが草分けだったと思います。

急変時にどう対処・行動したらもっともシンプルかつ安全か。それを徹底的に追及して誰もがその基準に従って行動すれば最大公約数的に有効な効果を上げることができる。それが標準化プログラムの発想です。

実際、ACLSの標準化によって世界的に大きな効果を上げていることから、昨今様々な新しい標準化プログラムが策定されつつあります。JPTECもその一つですし、脳卒中初期診療コースのISLS (Immediate Stroke Life Support)なんてものもあります。

◆ 外傷標準化コースの系譜

日本でもACLSが行き渡り、次に注目されている標準化プログラムの代表が「外傷」に関するものといえるかもしれません。

ACLS同様、外傷標準化プログラムも元もとはアメリカで生まれたものです。
アメリカにおいて医師向けのATLS(Advanced Trauma Life Support)というコースが制定され、それに整合性を持たせた救急隊員(EMT)向けコースのBTLS(Basic trauma life support)が作られ、さらにはそれらに合わせてナース向けの外傷コースが作られました。

つまり救急現場から病院初療室(ER)まで、救命士 ⇒ ナース ⇒ 医師とスムーズな流れで外傷治療に当たれる体制が整えられたというわけです。

今の日本もこの流れにそって整備が進められています。医師向けのJATECはすでに歴史は長く、救急隊員向けのJPTECは正式に発足してから数年。で、次なるコースがナース向けのJNTECというわけです。

◆ JNTECとは

JNTEC (Japan Nursing for Trauma Evaluation and Care)は、日本救急看護学会と日本臨床救急医学会が中心となって現在開発が進められている看護師対象の「病院内標準外傷看護コース」です。2006年10月現在、非公式のテストコースが4回ほど開催され、その都度、内容の再検討を繰り返して、本コース開催に向けて準備が進められているところです。いちおうテストコースは5回を目途に一区切りと言うことなので、正式な発足はそう遠くないはずです。現在、学会認定の申請中だそうです。

内容的にはすでに出来上がっているJATECとJPTECとのマッチングを重視し、事故現場からER〜医師による治療開始までが一貫した流れで行えるように、という点がポイントになっています。

具体的な内容はまだ確定になっていないため部分的にしか公表されていません。青写真的には、救急からのホットライン入電から、情報収集、受容れ準備、初期観察を行ない、必要な処置をしつつ医師に引き継ぐという内容だとか。

先日、私は救急隊員向けのJPTECプロバイダーコースを受講してきましたが、JPTECもJATECも医療的(cure)な側面が強く、とかくメンタル面でのフォローが後回しにされがちな部分があるような気がします。その点、JNTECは一貫性を持たせるとはいえ、「看護」の一環ですので、看護の視点をどう取り入れるのかが重要なポイントになりそうです。

JNTEC開発に関わっている方の話を聞く機会がありましたが、そうした「看護の視点」の具体的な入れ方については、検討中ということで言葉を濁していましたが、家族へのフォローなども入れていくような雰囲気でした。そういえば心肺蘇生のガイドライン2000では、蘇生中に家族を立ち会わせることの意義について書かれていましたね。日本の現場ではなかなか議論されることはなかった気がしますが、JNTECの中ではそのあたりも突っ込んで検討されているのかなぁなんて個人的には勝手に思っています。

◆ 「胸腔ドレイン挿入」「輪状甲状靱帯間膜穿刺」

今のところ、JNTECのスキル練習の中には「胸腔ドレイン挿入」「輪状甲状靱帯間膜穿刺」の実技も含まれているそうです。胸腔ドレインは緊張性気胸のときの脱気、輪状甲状靱帯間膜穿刺は気道が開通しない場合の外科的気道確保ですが、もちろん今の日本のナースには法的に認められていない医療行為です。

これらの実技練習を行なうことの意義について、JNTECでは実際に必要事項を観察し、処置を行なうことで「必要物品の準備を含む外傷ケア環境の調整ができる」という点を挙げています。その点ACLSと同じですね。ACLSでは看護師も気管挿管を行ないますしね。でも、実際問題このあたりで医師の中からは「けしからん」という意見もなくはないようです。

今の日本の法律では看護師や救急救命士には認められていない行為とはいえ、「胸腔ドレイン挿入」「輪状甲状靱帯間膜穿刺」は救急現場ではきわめて緊急性が高い処置で、現場で行なわなければ間に合わないという可能性も多分にあります。

そのため、医療系のドラマでもハイライト的な場面としてよく使われています。例えば最近の例ではテレビドラマ「Ns.あおい」の中で主人公が緊急避難的に静脈留置針で気胸の脱気を行なって問題になっている場面がありましたね。さらには今放送されている「Dr.コトー診療所2006」の中では、ナースが釣りの浮きを使って輪状甲状靱帯間膜穿刺を行なっていました。

今日本が真似ようとしているアメリカの救急医療体制の中では、これらの医療行為はパラメディック(救急救命士)が現場で行なう処置になっています。救急隊員向けのBTLSコース(日本でもアメリカとまったく同じコースが受講できます)では、プレホスピタルの重要なスキルのひとつとして教えられています。

はっきり言ってしまえば、日本の医師法の制約はかなり厳しいです。法律が、というより自分たちの特権性を死守しようとする医師会の圧力が、と言った方がいいのかも。これはAEDの市民解禁や救急救命士誕生にまつわる攻防戦、救命士の業務拡大などにも関係してくる非常に大きな問題なんですけど、あまり深く踏み込んで言及するのは控えます。興味がある人は救急救命士制定に至るまでの経緯が書かれた本を読んでみてください。救急医療と日本の古い体質の問題点がいろいろ見えてきて興味深いです。


さて、いろいろ問題があるにも関わらず、今回、JNTECがあえて「胸腔ドレイン挿入」「輪状甲状靱帯間膜穿刺」を実技に含めようというというあたりに、私は非常に興味深いものを感じています。2004年のAEDの市民への解禁、救急救命士に挿管認定、それに薬剤認定。これまで頑なに死守してきた医師の業務独占神話が崩れつつある昨今。

「胸腔ドレイン挿入」「輪状甲状靱帯間膜穿刺」も将来を見据えてのことなのかな、と勝手に想像しています。国際的に活躍するナースも増えてきて、特に災害現場への派遣という場面を考えると、日本の法律の縛りというのもどれだけの重みがあるのかわからなくなってきます。国際標準で考えたときにどうなのかなという視点ももしかしたら重要になってくるのかもしれません。



以上、私が知っているJNTECの概要と、私の勝手な考えを綴らせてもらいました。念のため強調しておきますが、私は外傷標準化プログラムに特別造詣が深いわけでもなく、ただ興味深く成り行きを見守っている一介の看護師に過ぎません。くれぐれもこの内容が確定した公式なものであるとは考えないでくださいね。

詳細情報は、来年刊行されるメディカ出版のエマージェンシー・ケア誌2007年6月号の特集記事「JNTEC(標準外傷看護コース)を徹底解説」で明らかにされるようです。

[参考文献]:八田秀人:注目を集める外傷初期医療とプレホスピタルケアって何?, Expert Nurse vol.22 No.10, P60,照林社)
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2006年11月26日

ゼネラリストとしての看護師

『ちょっと話は逸れますが、看護師の専門性という話をするときにいつも引っかかることがありまして、それは看護師というのは専門ではなく、汎用を売りとした職業ではないのか、と思うことがあるんです。これについてはちょっと長くなりそうなので、今週末にでも新しい記事として改めて書かせてもらおうと思います。』

なんて話を先日コメント欄に書かせてもらいました。
その続きです。

看護師としてのキャリアアップだとかいう話になると、必ず言われるのが「専門性を高める」という点です。その道のエキスパート、スペシャリストになれ! という方向性ですが、ネコも杓子も「専門性をアップ」だなんて言われると、ヘンクツな私は、ホントにそれでいいの?? と竅った目で考えてしまいます。

そもそも看護の仕事を考えると、専門というよりは何でも屋的な汎用性が求められる業務なのではないかと思うのです。

考えてもみてください。看護師の独占業務から独立していったコメディカル資格の数々を。臨床検査技師、理学療法士、言語聴覚士、臨床工学技師、救急救命士などなど。もともとは医師の他は、看護婦だけでほぼ成り立っていた診療業務のうち、専門性が高い部分は次々と独立していって、最後に残ったのが今の看護師の業務です。

極端にいうと診療補助のうち、残された専門性が低い部分こそが、現代の看護師の仕事とは言えないでしょうか?

なんて書くと刺激的すぎるかもしれませんが、少なくとも、専門ばかり追求しすぎると取りこぼす部分が出てきます。でも、それらも立派な看護師の仕事だよ、と言いたいのです。

専門性を究めることばかりが良いことのように言われがちですが、非専門性(=汎用性)が悪いわけではありません。ビジネスなどでも、スペシャリストとゼネラリストという分け方がありますが、スペシャリストばかりでは会社全体としては仕事が進みませんし、絶対にゼネラリストの存在は必要です。

スペシャリスト集団で構成される病院組織の中で、ゼネラリストとして働くとしたら、どう考えても看護師以外はあり得ません。

何でも屋というと聞こえは悪いですが、看護師の仕事はそういうものであっても良いと思っています。法律的にもそうなのだし。看護師が汎用性を捨てて、専門に走ったら、本来の自己存在を否定することにもなるんじゃない? と私は思っています。最終的にはバランスなんでしょうけど。

業界全体として看護師の専門性を高める方向に向かっていますが、その先にあるものはなんなんでしょう? ホントに今の方向性でいいのかなぁ。そんなことを考えつつ、私は自分の身の振り方を考えています。
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2006年11月19日

看護師にとってのJPTEC(外傷病院前救護ガイドライン)

オペ室の話題からは外れますが、先日、JPTEC(ジェーピーテック)という外傷処置に関する標準化プログラムを受講してきました。

JPTEC ― 救急部門の看護婦さんなら聞いたことあるかもしれませんが、Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care の略で、外傷病院前救護プログラムなどと呼ばれています。

JPTECは本来は看護師向けではなく、救急救命士や救急隊員向けの講習会で、救急現場で怪我人に対してどうアプローチ(観察・処置)したらいいかを標準化したものです。

アウトドア・スポーツをしている私としては、外傷についても一度きちんと勉強したいと思っていました。だって野外でなにかあったときメンバーから頼られるのは看護師の私。なのに何もできないとなったら恥ずかしいじゃないですか。

BLSやACLSで、心疾患に関してはそれなりに自信もつきましたけど、日常生活でもありがちな交通事故とかアウトドアでの事故のときの応急手当って、医療者でありながらどうしたらいいのかという点は意外と勉強する機会がないんですよね。まあ、救急救命士がプレホスピタル Pre Hospital に対して、看護婦はインホスピタル in Hospital の仕事が前提ですから当然といえば当然なんですけど。

そこで今回は消防士さんや救急救命士さんたちに混じってJPTECコースを受講してきました。JPTECプロバイダーコースは、丸一日かけての講習で、そのほとんどは体を動かす実技です。傷病者への近づき方、頸椎保護、全身観察の方法など、いろいろなスキルを練習し、最終的には救急隊の隊長になったつもりで現場到着から病院搬送までの間をシュミレーションしていきます。

◆ ナースにとってのJPTECプロバイダーコース

JPTECプロバイダーコース、正直いってきつかったです。なにがきつかったって、まずはその雰囲気です。もともとは救急隊員(消防官)向けのコースなので、看護師は本来は門外漢。JPTEC受講生の大半は現役の救急隊員(消防士)さんたちで、雰囲気はかなり硬派な感じです。女性が中心の病院内の世界に慣れきった私には異質な世界で戸惑ってしまいました。

まさに異文化体験という感じでしたね。ひとつひとつ指さし確認するのも慣れないし、掛け声や返事はすべて「よし!」というのが消防流。指示は命令口調で、「隊員、頭部保持替われ!」「○○しろ!」と言った具合。

救急救命士は医療資格者とはいえ、あくまで消防職員であって、医療者文化とは別の世界にいる人なんだなと感じた次第です。

それとうちら看護師はあくまで病院の中で働くための教育しか受けていませんので、プレホスピタルで使う資材がぜんぜんわからない。バックマスクや酸素マスク、吸引くらいならいいのですが、バックボードとかヘッドイモビライザーなんて言われてもチンプンカンプン。日頃仕事で使い慣れている人たちからすればなんでもないものでも、看護師にとっては未知のもの。他のみんなが共通認識があってわかっていることが自分だけ知らないというのは精神衛生上ツライです。

あとは指示出しですね。JPTECでは救急隊の隊長になった設定で、隊員と機関員(運転手)に指示を出しつつ救助活動を行ないます。指示がなければ隊員も機関員も自分からは何も動いてくれないので、リーダーとして的確な診断をして、チームを動かしていく能力が期待されます。その点、ナースはふだん指示を受ける側の立場で仕事していますので、このあたりも不得意な部分だなと感じました。

◆ JPTEC講習で得たもの

正直、最後の実技試験はボロボロでした。頭が真っ白になって酸素投与を忘れたり、重要な所見を見落としたり。かろうじて及第点はもらえましたが、ほんとギリギリだったと思います。筆記試験もあって、そっちの方は自信もあって問題なかったはずですが、やっぱり教科書だけでは勉強できない実技が弱かったなと思っています。

でも、JPTECを通して実際にヘルメットのはずし方や脊椎保護を意識した体位変換を体で学ぶ機会が得られたのはよかったと思っています。それに救急現場で何を考え行動しなくてはいけないかというしっかりとした指針を得ることができました。

これまでたまたま遭遇した交通事故の応急救護に当ったことが何度かありますが、そのときに感じた疑問と不安が、このJPTECプロバイダーコースによって解消された気がします。

実際私も経験ありますが、事故現場でけが人に近づくと、「触るな! 救急隊が来るまで動かすな!」と無責任な野次馬から怒鳴られることがあります。いちおう頸椎損傷の疑いについても考えているつもりですが、いざそう強い口調で言われてしまうと、たじろいでしまうのも事実。でも今回JPTECで現場での頸椎保護の実際の方法と観察の手順、処置の優先順位について「標準」とされるやり方を学べましたので、今後は自信を持って傷病者に接することができそうです。

◆ 看護師のための外傷標準化コース JNTEC
ちなみに、いま救急看護学会の方で、JNTECの制定に取り組んでいるそうです。JNTECの N は Nursing の N です。つまり看護師向けの外傷標準化プログラムです。実はすでにプログラムのたたき台は出来上がっていて、去年あたりから通算4回ほどテストコースが開催されています。とあるJNTECプログラム策定に携わっている方の話をチラッと聞く機会がありましたが、まだいろいろ問題が山積みのようで、具体的な内容についてはオフレコにしてほしいと言っていたのが印象的でした。(ということでここでは詳しくは触れません。)

今回、JPTECを受講して思ったのは、やっぱり救急隊員向けだけあって「看護の視点」はほとんど入っていないんですね。ここにナースの視点が入ったらどうなるのか? 今後の正式なJNTEC制定が楽しみなところです。

◆ 看護師としての自分 職場を離れた場所で
私は日頃思っているのですが、看護師の仕事というのはひとつの「職業」ではありますが、職場から離れた場所でも活かすべき技術、果たすべき責任というのもあると思うんですね。医師と看護師というのは医療行為を行なうことが認められている数少ない立場の存在です。

そうした専門知識と技術は「職業」として使う以外にも、必要が求められれば出し惜しみをしてはいけない公共の財産としての側面もあると思っています。医師や助産師と違って看護師には法律的な応召義務の規定こそはありませんが、看護師自身の自覚として、そうした思いを持っていてほしい、と私は考えています。

ナースの知識と技術は社会資源のひとつである。そういった意味で、看護教育の中で心肺蘇生(BLS)は徹底的に教え込むべき技術だと思うし、JPTECで学ぶような外傷アプローチも同じく必要だと思います。

昔からBLSはいちおう看護教育カリキュラムには入っていますが、外傷に関しては皆無。現実を考えると、市民レベルで教えられている応急手当であっても、すべての看護師が実際に行えるかというと相当疑問が残ります。教育カリキュラムにないというのが最大の問題だと思います。

まあ、外傷に対する新しいアプローチ(外傷標準化プログラム)が、日本に導入されたのは2000年頃で、JPTECが発足してからもまだ3年しか経っていないということもあります。でもナースも一市民として社会生活を送る以上、いざというときに動けるように、JPTECのような外傷標準化プログラムの知識は多少なり持ち合わせていた方がいいと私は思うのです。

講習を受けてきたばかりで、JPTECに「かぶれてしまった」のかもしれませんが、今はそう思っています。

◆ JPTECの教科書

JPTECについて勉強しようと思ったら、公式のテキストブックは2種類あります。ひとつは『外傷病院前救護ガイドラインJPTEC』もう一冊は『JPTECプロバイダーマニュアル』です。実際に手に取ってみるとわかりますが、前者は本格的な医学書、後者は実技のためのビジュアルガイド的な感じ。薄っぺらくて値段も安いです。

JPTECプロバイダーマニュアルicon     外傷病院前救護ガイドラインJPTECテキストicon

実際にJPTECプロバイダーコースを受講されるのでしたら、『JPTECプロバイダーマニュアル』もあった方が実技の要点がまとまっていてわかりやすいですが、机上の勉強にはほとんど意味がありません。

ですので、外傷のメカニズムや解剖・生理をしっかりと勉強するならまずは『外傷病院前救護ガイドラインJPTEC』が必携です。おそらく筆記試験もこの本を熟読しないと合格は難しいと思います。最初は救急隊員向けのコースだと思っていたけど、この教科書を見てかなり本格的な中身にびっくり。救急救命士さんならともかく、ふつうの救急隊員さんにはちょっと難しすぎるんじゃない? という気も。看護師の我々にとっても勉強のし甲斐がある内容でした。

◆ JPTECプロバイダー認定カード

最後にちょっと余計な話ですが、丸一日かけて行なわれるJPTECプロバイダーコースを修了し、実技試験と筆記試験に合格すると、JPTEC Provider として認定され、認定証が発行されます。

JPTECプロバイダー認定カード

AHAのACLSコースなどとは違ってその日のうちにカードをもらえたのですが、受け取ってみてガッカリ。なぜって、あまりにちゃっちいんですもん。

どう見てもインクジェットプリンタで手作りしましたというのがミエミエのクォリティーで、用紙はどこにでも売っている手作り名刺用のプリントペーパー(エッジに細かいミシン目が入っているのでわかります)。あまりにお金をケチりすぎじゃありません?(笑)

デザインもきっと誰か素人のスタッフが考えたんだろうなという洗練されていない感じで、いけてません。とくに「認定日より3年間有効。」というあたりがイタイ。なぜこんな位置に書く必要があって、しかも最後に"。"が付いてるの?? モーニング娘。じゃあるまいし(笑)

JPTECは日本救急医学会認定の公認資格で、いちおう全国規模でやってるんだから、もうちょっときちんとしたものにしたらいいのに。これじゃ、まるで草の根でやってる個人勉強会の修了証です。その点だけが残念でした。

スイマセン、最後に余計な話で締めてしまって。
でも内容に関しては、まわりのナースにも勧めたい、実に中身の濃い有益な講習会でした。JPTECが医療者の常識になる日が来るのを期待してやみません。
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2006年10月08日

手術室看護の参考書・文献の探し方

ここのところ、手術室看護に関する勉強方法や、参考書・文献の探し方に関する問い合せをよくいただきます。そこで、私なりの「勉強方法」、特に資料や文献の探し方について書いてみようと思います。病棟看護とちがって、極端に資料数が少ない手術室看護領域。特に術式や器械出しの参考文献に関しては、ちょっとしたコツがあったりします。

◆ 手術の参考書

まずは各科手術に関する参考書について。
私が特にお薦め! と思った本に関しては過去ログの中で具体的な書名を挙げて紹介しています。
確か 形成外科婦人科手術手技、それから 手術の基本手技 に関する本などを紹介してきました。

いま、整形外科や泌尿器科に関しても、いい本がないかなぁと探しているところなのですが、今のところこれぞという文献には巡り会っていません。

hyojyun_seikei.jpgとりたててお薦めするほどではないのですが、私が各科疾患や術式等で知りたいことがあったら、とりあえず目を通すのは医学書院から出ている標準○○学のシリーズです。( 標準泌尿器科学 とか 標準整形外科学 など)

医学生向けの教科書シリーズなのですが、これを一冊読めばとりあえず各科の総論的な基礎知識は身につきます。医学書というと何十年も前に書かれた本が平気で書店に並んでいることもありますが、この標準シリーズは改定も比較的頻繁に行なわれていますので、内容的にも安心感があるのがいいです。それに基礎系の生理学や病理学にはじまって、放射線科などを含むほぼすべての診療科テキストが揃っているのも嬉しいところ。

標準シリーズは手術の手技書とは違いますので、私たちの手術室での仕事の直接的な参考書とはなりません。でも局所解剖と疾患、治療の基礎知識を固める上ではとっても役立ちます。外科系のすべての科のものを読破するのはたいへんですが、自分が興味があったり、各職場で専門担当になっている科の本は手元に置いといても損はないと思っています。ちなみに私は生理学と泌尿器科、形成外科、それと最近、整形外科を手に入れました。本当はオペ室の蔵書として揃ってたらいいのになと思うのですが。(なにより値段が張りますからねぇ)

ここのところよく質問のある、整形外科手術のプレート固定が詳しく書かれている本というのを探しているのですが、いまだ見つからず。手の外科とか脊椎手術などの専門手技書はよく見かけるのですが、基礎の基礎というのがないんですよねぇ。AO財団の講習会テキストがいいよとは聞くのですが、市販されている本ではないようだし。。。休日のたびに大きめの医学書センターや医大の図書館・購買部(生協)などに足を運んで、あれこれ本を探しているところです。

いずれにしても手術室業務に関しては「ナース向け」の範囲内で参考書を探すのはちょっと無理がある気がします。術式について詳しく知りたいとか、そういうことでしたら、まずは病院の図書室にあるドクター向けの手術手技書・教科書を当たってみること。それでダメなら近隣の大学医学部の図書館へ行くことをお薦めします。病院の図書室担当の人に声をかければ、大学図書館への紹介状等を出してもらえるはずです。

◆ 雑誌記事・論文検索

次は、最新のエビデンスや看護研究で使うような文献の探し方ですが、これらは圧倒的に雑誌や論文の独壇場です。例えば、最近見直されてきている手術時の手洗い方法や、術後消毒とドレッシング材のことを調べようと思ったら、まだあまり成書には書かれていませんので、雑誌類の記事を探す必要があります。

そこで登場するのが、医学中央雑誌です。通称「医中誌」と呼ばれていますが、これは日本国内の医学系雑誌のすべての記事の見出しと概略を載せている膨大な目録です。最近ではCD−ROMの形で発行され、インターネット上でも検索できますのでかなり便利になっています。

検索に使うキーワードの選定にはちょっとしたコツがありますが、まあ、要はインターネット検索と同じ要領で調べると、キーワードと関連のある雑誌記事・論文がズラッとリストアップされる仕組み。全文が読めるわけではなく、タイトルと抄録から推察して、使えそうな文献があれば、改めてその論文を蔵書している図書館に行って、現物を手にとって確認する必要がありますが、とにかく医中誌システム、かなり使えます。これなしに医学文献検索は不可能だろう、というくらいにスグレモノです。

おそらく病院の図書室にあるパソコンには、医中誌CD−ROMがセットされているか、もしくは病院単位で医中誌ウェブ検索(有料)に接続できるように法人契約していると思いますので、病院の図書係の人に聞いてみてください。検索範囲は限られますが、インターネット上で無料体験版もあります。(病院で契約していない場合は、、、、、近隣の大学医学部図書館に行けば、たぶん使わせてくれます。病院の職員証を持っていって医療職であることが証明できれば利用させてくれることが多いですが、要事前確認。)

文献のタイトルとページ数等の情報が得られれば、これまた病院図書係に申請することで関連図書館などから文献複写サービスも受けられます。コピー代と郵送料の実費はかかってしまいますが、遠くの図書館に交通費をかけていくよりは安いです。そういったシステムも積極的に活用していきたいものです。

おそらく看護の学生時代に、そうした文献検索のテクニックは教わったと思いますが、論文作成時に限らず、ちょっとした疑問解決にも積極的に使っていくクセをつけると、ずいぶん世界が拡がりますよ。
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2006年08月18日

21世紀の「読み書きそろばん」 = 検索テクニックを磨こう!

今日は手術室看護にも役立つ情報収集ツールとしてのインターネットの活用について取り上げてみたいと思います。

いまこの文章を読んでくれている人というのは、きっとインターネット検索でたまたま見つけてくれたという人が圧倒的に多いと思います。

皆さん、日頃検索エンジン等を活用されている方が多いと思いますが、私にとってもインターネットは生活にも仕事にもなくてはならないものとなっています。

ちょっと前までは、なにかわからないことがあったら、週末を待って図書館に行っては調べ物をしていましたが、いまはインターネットのお陰で、知りたいことはすぐその場で確認できます。学生時代、必死になって専門図書館で文献検索をしていた時代がウソみたいです。

手術室にいると、日々いろいろな略語や専門用語に苦しめられますが、そんなときもインターネットで即解決。とにかくわからないことがあったら、検索エンジンの窓にフレーズを入れてみると、たいていのことは調べがついてしまいます。

つい先日も、心外の手術に一諸についた後輩から「SFJってなんですか?」と聞かれて、ちょっと困ってしまいました。職場のパソコンに入れてある医学大事典や医療略語辞典で検索しても出てこず。でもインターネットでしらべたら一発でした。

Sapheno Femoral Junction = 大伏在静脈ー大腿静脈接合部


ふつうに「SFJ」という語で検索してしまうと、 『サーファーの立場から環境保護を訴える Surfrider Foundation Japan』 なーんていう関係ないサイトまでわんさかと1,580,000件もヒットしてしまいます。

そこで効率よく目的に辿り着くためには、「絞り込み」を考えた検索フレーズをが重要になってきます。答えからいいますと、今回、私は「SFJ 血管」というキーワードを使いました。

SFJという言葉は、心臓血管外科のストリッピング手術に関係して出てきた言葉なので、血管と関係ありそうだという予測がついていました。ですので、単にSFJで検索するのではなく、スペース記号で区切って、「SFJ 血管」とすることで、「SFJ」と「血管」、ふたつの単語が含まれているページのみヒットするようになるんですね。

これはとっても簡単だけど、とっても重要なポイントです。


関係ありそうな単語を複数並べて検索すると、検索精度が上がる!


これだけは覚えておくといいですよ。

インターネット検索は、関係ないページがたくさん出てきて使い物にならない! なんて声をよく聞きますが、それは単にキーワードの選択がマズイだけ。

どういったキーワードを並べたら、効率よく自分が知りたい情報にたどり着けるか? 要は慣れなんですけど、それが現代社会を生きる上で非常に重要な能力だと思います。

Googleをうまく使うポイント

検索エンジンもいくつもありますが、私が愛用しているのは google です。Yahooを使ってらっしゃる方も多いと思いますが、Yahooは企業の公式サイトを調べたりする場合には便利ですが、辞書的な使い方をするなら、検索結果に人為的操作が入らないGoogleがいちばんです。

その際に覚えておきたいポイントは次の4つ。

1.例: 「手術室 オペ」 … スペース記号で区切って複数のキーワードを入れると、それらすべての語が含まれるページのみヒットするようになる。(and検索といいます)

2.例: 「虫垂炎|アッペ」 … キーワード間を|で区切ると、虫垂炎もしくはアッペというキーワードが含まれるページがすべてヒットする(OR検索といいます)

3.例: 「眼科手術 -白内障」 … このようにすると、眼科手術というキーワードが含まれるページのうち、白内障が含まれるページは除外された結果がでてくる。半角スペースと半角マイナス記号を付けた後の語が除外されます。


まあ、細かい検索テクニックはたくさんあるんですが、上の三つ、もしくは1番だけでも、うまく活用できれば、インターネットの便利さをもっともっと体感できるはず。

検索結果ページへのジャンプは別ウィンドウで開く

検索結果画面のサイトプレビューを見てみて、知りたいことが載ってそうなページへジャンプして内容を確認するわけですが、一発でそのものズバリのページが見つかるとは限りません。

少なくともいくつかのページは見てみることになると思いますが、各ページへジャンプするときは、ふつうにクリックしてしまうと、ウィンドウの画面が切り替わってしまい、最初の検索結果画面に戻ってくるのが面倒くさくなる場合もありますので、別窓(別のウィンドウ)で開く形にすると便利です。

どうやるのかというと、インターネットエクスプローラーの場合は、Shiftキーを押しながら、リンクをクリックすればOK。別窓で当該ページが開きます。ざっと一瞥してみて興味がなければAlt+F4キーを押せばサクッとそのページ窓は消えます。

直感的なマウス操作もいいですけど、慣れてくるとこうしたショートカットキーを使うとサクサクと画面切り替えができてかなり効率的です。

Ctrl+Fキーでサイト内検索

検索結果で開いたページがあまりに長文な場合、自分の探していたキーワードがページ内のどの辺にあるのかを探すのがたいへんな場合があります。そんなときに覚えておくと便利なのがページ内検索です。Ctrlキーを押しながらFキーを押すと、キーワードを入れる小窓が開きます。例えばいま、ここでCtrl+Fを押して、「ブロードバンド」と入力してみてください。文末にあるその部分がハイライトされたでしょ? こんな感じに機能します。一瞥して長文サイトにぶつかった場合に覚えておくと便利な機能です。

Googleのキャッシュ機能を活用する

最近はブログが大はやりで、検索結果がブログ記事ということも少なくありません。また掲示板の書き込み内容がヒットする場合もあります。その場合、問題となってくるのが、検索エンジンに載った時間のタイムラグです。通常、検索エンジンに自動的に登録されるまでに長いと1.5ヶ月程度かかります。つまり掲示板の場合は、最新の内容ではなく1.5ヶ月前の状態で登録されていることになります。

いざその掲示板のページにジャンプしてもすでに当該キーワードを含む書き込みは古くなって過去ログページにお蔵入りしていて読めないという場合がよくあります。

そういうときに役立つのが、Google固有のキャッシュ機能です。これは検索エンジンGoogleが情報収集した時点でのそのページの内容を保存してくれている機能です。検索結果部分をよく見ると、「キャッシュ」と書かれたリンクがありますが、これをクリックすると見ることができます。嬉しいことにキーワード部分が黄色や青色でハイライトされていますので、目的語を探すのもとっても楽。検索結果がブログ記事や掲示板のときは積極的に使いたい機能です。

検索エンジンGoogleのキャッシュ機能

最近、看護大学を卒業したばかりの新人さんたちの話を聞くと、いまでは大学でしっかりと情報収集技術も教わってるみたいですね。

昔は「勉強」というと知識を詰め込むことを指していましたが、情報が溢れているこの時代、記憶するという能力の重要度はだいぶ薄れてきた気がします。インターネットという膨大なデータベースに市民レベルでアクセスできるこの時代、必要な情報を引き出す能力のほうがが非常に重要になっています。

人間、覚えられることには限界があるわけですから、それよりは必要時、必要な情報を取り出して活用する能力の方がよっぽど価値があります。(まあ、どうしても現場でとっさの判断をする場合など、最低限覚えておかないといけない事柄というのはありますけどね。)

気になったことは、できるだけ早いうちに調べて納得する。その積み重ねがやがては自分の中に蓄積される資産となっていきます。そんなわけで、インターネット常時接続の環境にある人は、医学や手術室専門用語なども含めて、なんでも百科事典としてのインターネットをドンドン活用してみてください。せっかくブロードバンド接続をしているなら、使わなきゃ損ですよ。
posted by Metzenbaum at 22:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月07日

昨日買ってきた参考書2冊

昨日、大きな医学書センターが入っている本屋に行ってきました。
そこで見つけてきた本を2冊、ご紹介します。

◆『エキスパートナース』5月号特集〔モニター心電図わかるガイド・・読み方、伝え方、対応法〕

エキスパートナース2006年5月号「モニター心電図わかるガイド・・読み方、伝え方、対応法」ひとつは本、というよりは雑誌ですけど、看護婦にはおなじみの『 エキスパートナース Expert Nurse 』の5月号。

特集記事が「モニター心電図わかるガイド・・読み方、伝え方、対応法」というもので、この特集記事、なかなか良かったです。『エキスパートナース』誌はふだんは立ち読みで済ませるんですけど、思わす即買いしてしまいました。

内容はというと、別冊付録になっている「ニガテ克服! モニター心電図基本マスターブック」の方で、P-QRS-Tの波形の意味など基礎のおさらいをして、本特集の方でありがちな重要な不整脈(ST変化を含む)の意味と対応方法が詳説されてます。

この特集がいいなと思ったのは、心電図の読み方に徹するのではなく、あくまでも急変時対応もしくは急変の前段階をを察知するためのツールとして位置づけられている点。

滅多に見ないような優先度が低い波形のことは触れられていませんし、この波形を見たらどう対応するかという部分が強調して書かれてますので、モニター心電図入門編としては良い作りになっていると思います。まったく初心者だけど、勉強したいと思っていた、そんな人にはかなりお勧めできる特集記事です。

実は来月あたりに、職場内でモニター心電図に関する勉強会を企画しているのですが、その資料にしっかりと取り入れさせてもらおうと思っています。


◆『これだけは知っておきたい 手術室ナーシングQ&A』

or_nursing_qanda.jpgもう一冊は最近出版された手術室関連書で「これだけは知っておきたい 手術室ナーシングQ&A」という本。先月発行されたばかりとあって、最新の内容なので読んでいて非常に安心感のある本です。


つい昨日もブログの話題として取り上げましたが、ここ数年でオペ前の手洗いの方法が大きく変わりましたし、滅菌期限の考え方とか、術後の創消毒など、エビデンスに基づいて見直しをされている事柄がいっぱいあります。

ちょっと古い本なんかを参考にしてしまうと、今となっては明らかな間違いということがとかくありがちで、現場でも非常に混乱になっているんですよね。

その点、この本に書かれていることは最新の内容だから大丈夫という安心感があります。エビデンスレベルということで、その情報の信頼度というか、どの程度根拠性があることなのかという指標が書かれているのもいいです。(心肺蘇生の国際ガイドラインにマネなのか、最近この手の指標をよく見ますね)

内容はというと、外回り業務・器械出し業務問わず、オペ室初心者がひっかかりがちな疑問点を全94問、Q&A形式で書かれてます。内容が気になる方は、次ページに目次を列挙しておくので参考にどうぞ。


(続きを読む)
posted by Metzenbaum at 10:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月25日

看護雑誌からの情報は重要です! 特にオペ室Ns.には。

医療職には、生涯学習が求められると言われています。医師にしても看護師にしても、日々変わりつつある医療事情に付いていくために、日々の自己学習は欠かせないものとなっています。

その点、やっぱり日頃から雑誌類に目を通しておくことは重要かなと思ってます。

◆ 手術看護専門雑誌ならなんと言っても『オペ・ナーシング』

手術室看護専門雑誌オペナーシング ope nursingicon手術室看護に関しては、メディカ出版から、『オペナーシング Ope Nursing』という専門雑誌が出ています。手術室看護をテーマとした雑誌としてはおそらく日本唯一のものだと思います。

皆さんの職場でも部署として定期購読していると思いますが、そうでなければ病院図書室に購読を依頼するなどして、定期的に目を通せるようにしておいた方がいいでしょうね。

病棟業務であれば、たとえ専門領域(診療科)が変わってもさほどやることに違いがありませんが、その点、オペ室は特殊すぎて、病院内の他のスタッフと情報交換できる部分が少ないです。だからこそ、こうした専門誌からの情報が非常に重要になってきます。

特にオペナーシングの毎年4月号iconは、新人オペナース向けの特集が組まれています。最初に新人手術室看護師が押えておきたい知識・技術がまとめてありますので、決して安い雑誌ではないけど4月号くらいは自分用に手元に置いておいてもいいかもしれません。

月刊誌『オペナーシング』に毎号目を通すこと、これはオペ室に配属になった以上、最低限の自己学習だと思っています。(実はこのブログのネタも、振り返ってみれば結構この雑誌からのものが多かったり、、、)

◆ 余裕があったら看護総合雑誌も是非! 実力に差が出ます

私の場合、オペ・ナーシング誌は価格が高い(約1,900円!)ので部署購入のものを昼休みに読ませてもらう形で済ましてます。

それとは別に看護業界全般のことも把握しておきたいと思っているので、看護総合雑誌、これは自分で購入して読むようにしています。その他、個人的な関心から、『エマージェンシー・ケア
icon』(救急看護領域の専門誌)も目を通すようにしていますが、これは本屋での立ち読みがもっぱら(^^;  たまに興味のある号は買ったりしますけどね。

本当は病院図書室に置いてあればいいんですけど、うちの病院には、看護管理とか看護学雑誌といったお堅い管理者向けの雑誌しか扱っていないんですよ。

で、やむなく自腹 or 本屋で立ち読み。

とにかく総合看護雑誌も必ず一冊は目を通すようにしておいた方がいいです。オペ室という閉鎖的な空間に閉じこもっていると、ホント他のことが見えなくなってしまうので、、、。

意外とこの業界も変わるんですよね。特に近年、なんでも「エビデンス」ということが言われていて、看護・医療界ではいろいろなことの見直しがなされています。術後の消毒やドレッシング、褥瘡処置などは、いま劇的に変わっている部分でしょうね。そうした流れに付いていくためにも総合雑誌で、広く浅く看護界を俯瞰しておくことは重要です。

あと、オペ室というと外科の最たるものという感じで、内科系の疾患のことがホントわからなくなってしまいます。内科の看護婦さんと話していると、聞いたこともないような病名がいっぱいで焦ってしまったり。

看護師として普通のことを普通に知っておくためにも、総合誌はいいですね。

看護総合雑誌というと、「エキスパートナース」「ナース専科」「月刊ナーシング」あたりが有名どころでしょうか。私が個人的に好きで定期購読しているのは「月刊ナーシング」。3つ挙げた中ではいちばんお堅い感じがする雑誌で内容が詰まっている感じが気に入っています。

別にこうした中堅雑誌でなくても、学生時代から読んでいた「プチナース」「ナースビーンズ」「ナースカレッジ」でも、とにかく何でもいいと思うんです。オペ室配属になったから病棟の話は関係ないやと思ってしまうのではなく、ぜひ継続して専門分野別ではない看護雑誌のことも忘れないでください。

手術室に配属になって最初のうちは、なにかと余裕がないかもしれませんが、やがてまた病棟に異動になる日のことも見越して、専門知識以外にも看護師としての一般基礎知識は蓄積しておくことをお薦めします。

看護一般雑誌を購読してると、一年後には、そうでないオペ室同期との知識・視野の幅の違いを、自分でもをつくづく実感すると思いますよ。
posted by Metzenbaum at 21:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2007年09月26日

「有能なナースは世界を目指す!」

私、看護師になるまえにトータルで2年ほど、海外をフラフラしていたことがあります。いわゆるバックパッカーというやつなのですが、行く先々では驚くほどたくさんの日本人看護師バックパッカーと出会いました。

当時、私は看護師になろうなんて思ってもいませんでしたから、別に医療系のニオイをかぎつけては声をかけていた、なんてことはありません。 ← このまえ行った自衛隊横須賀基地ではそんな感じでしたが(笑)

たまたま安宿などで出会って話をしていて、あ、この人おもしろいなと感じたり、活き活きしていて素敵だなと思って、深く話をしてみると「実は、私、日本で看護婦してたんですよ」なんていう人が、とても多かったんです。

最初は偶然かなと思いました。でも長く旅を続けていくうちに、次第に「これは偶然なんかじゃない」と確信するようになりました。

だって、ホントそうなんですよ。私が旅先で出会った日本人で、いまだに交流が続いている人って、ほとんどが看護婦か薬剤師さんです。

ふつうのOLと違って資格職ですから、再就職に困らないというのも長期旅の看護職者が多い理由のひとつかもしれません。

それも看護師という仕事の強みなのだと思います。生活に困るようなぎりぎりのお給料だったら、他のことに目を向ける余裕なんかも出てこないですよね、きっと。

とにかく海外で出会ったナースたちは活き活きとしていました。

バックパッカーの世界ってそうなのですが、長旅になると疲れてきたり退廃していく人も少なくない中、貪欲なまでにいろんな物事にチャレンジして、新しい世界に飛び込んでいくという姿勢は看護師に多い特徴だったと思います。

ある意味、日頃のストレスを発散していたのかもしれませんが、そうした海外での経験を後日、形にしている人もたくさんいます。

私の知り合いの中でも、そのまま現地でナースの資格を取って永住してしまった人や、医療通訳になったり、ライターとして活躍したりという人が何人もいます。最近でも、とあるハリウッド映画のエンドロールに知り合いナースの名前を見つけました。ロケ現場の救護所専属看護師として働いていたそうです。

そんな旅先で出会った魅力的なナースに影響されて、私も看護の世界に飛び込んでみたわけですが、正直、看護学校時代や、働きはじめてからも、「なんか違う」、と感じています。

あの海外で知り合った看護師のようなアグレッシブで、なにかを開拓していこうというような空気が日本の看護界からはまったく感じられないんです。

自分自身を看護の世界に置いてみて、時がたつにつれて、ようやく私が最初に海外で出会ったナースたちの影響で抱くようになった「看護師像」というのは、ある意味特殊なものだったんだなと気付くようになりました。

看護師の中でも、あえて海外に行こう! と思うような人たちはほんの一握り。
いや、そう夢に思い描く人は多いかもしれないけど、実際に行動を起す人は少ない。

看護の仕事は過酷だしストレスも多いでしょうけど、楽といえば楽。
一度資格さえ取ってしまえば、贅沢さえ言わなければそこそこの生活ができるのですから。

そんななか、わざわざ海外に飛び出そうというのは、相当勇気というか決断がいることだと思います。パワーもいります。そういう自分の中のハードルを乗り越えた人たちだからこそ、あそこまでの積極的な行動力があったのだろうなと思うんです。



最近、とある人から聞いたのですが、産業心理学とか組織心理学という領域があるそうです。それによると各職種毎の組織の作り方や意識の持ち方には特徴があるそうで、専門職というのは、その職域内でピラミッドをつくって、自分たちの世界の中で上へ上がろうとするシステムを作りやすいのだそうです。自分たちの世界の中で自己完結しているというか、他の世界に評価基準を求めないというのも特徴のひとつ。

そういう世界では、上が作った基準や目標を目指すことにはただならぬ興味を示すけど、自分たちではなにかをつくり出そうとか、新しい価値基準を開拓しようという意識に弱く、全体がコントロールされやすく、組織としては強固な結束になる。

日本の看護界もまさにそうですよね。

これは言い過ぎかもしれませんが、古風な日本の看護の枠に収まりきらなかったオリジナリティのある人、リベラルな人たちが海外へ流出していったのでは??

昔読んだ片岡義男のエッセイに、有能な日本人はみんなやがて日本を離れてしまう、というような話があったのを思い出しました。

◆  ◆  ◆  ◆  ◆


なんでいきなりこんな話をしたのかというと、このまえ職場の親しい友達(ナースです。年下ですけど)が今度、仕事を辞めて海外に行くことを考えているという話を聞かされたから。

いままで一緒に勉強会を開いたり、業務改善・企画を立ち上げて活動したりと、今の自分にはなくてはならない存在だっただけに、正直ショックでした。

でもよく考えたら、海外に行きたいという話は、なんでも応援しなくちゃいけないなという気持ちになってきました。だって私が看護師になろうと思った原点はそういうところだったのですから。そんなことを考えながら、ツラツラと綴ってみました。

まとまりのない文章で恐縮ですが、これからなにか新しいことをはじめようという人への応援メッセージになれば、幸いです。

与えられたレールを忠実になぞるのも道
自分で切り開いていくのもまた道

自分の固定概念をひっくり返す、そのきっかけとしての海外経験は絶大です。
そこでなにが見えてくるのか? 掛けてみるのもおもしろいですよ。

海外へ行くことに限ったことではありませんが、なんにしても理由なんか後から自然についてくるものですから、まずは思いきってみるのはどうでしょう?

せっかく看護師免許という自由へのパスポートを手にしているわけですから、それを活用しない手はありませんよね。
posted by Metzenbaum at 00:20 | Comment(24) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ
2007年09月23日

X線、CT、MRI ―ナースが診る画像の知識

掲示板で何度かリクエストをもらっているものの、私自身が勉強不足で取り上げられていない「課題」に画像診断があります。

X線やCT、MRI、造影など、手術室のシャーカステンにはいろいろな写真が架けられます。それらが読めたらいいなとは、オペ室ナースなら誰もが思うはず。

私自身、画像診断については看護学校での放射線科の講義以外は誰からも教わったことはありません。病院内の勉強会でもそういうのは開かれたことないみたいだし、いずれは独学しなくてはと思っていたのですが、雑誌「月刊ナーシング」2007年10月号にちょうど良い特集記事がありました。

月刊ナーシング2007年10月号
icon
「特集:ケアに活かす画像の知識」

きっと、ホントの基本の基本しか書かれていないのだと思いますが、画像の知識がほぼゼロの私はちょうど良い内容でした。なにせCTの輪切りは頭方向から見ているのか足方向から見ているのか、そんな基本的なことすら知らなかったほどですから(^^ゞ

私も含めてまったくの初心者にはお勧めの特集記事です。
いま書店に並んでいる最新刊なので、興味がある方は本屋に行った際にチェックしてみてください。
posted by Metzenbaum at 21:50 | Comment(3) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ
2007年08月29日

「JNTEC」ナース向け外傷初期看護コース本格始動!

看護師向けの外傷標準化プログラム、JNTECがいよいよ本格稼働するという情報が入ってきました。

JNTECはこれまで5-6回のテストコースが日本各地で開催されていましたが、いよいよ公式コースとしてスタートするようです。

今年の11月10日(土)〜11日(日)に第一回のJNTECプロバイダーコースが大阪で開催されるとのこと。

それに先だってJNTEC公式テキストが出版されました。


外傷初期看護ガイドラインJNTEC教科書
icon
日本救急看護学会公式テキスト
『外傷初期看護ガイドラインJNTEC』

監修:日本救急看護学会
編集協力:日本臨床救急医学会

●A4判 ●定価3,990円(本体3,800円+税) 
●ISBN978-4-89269-573-5 ●8月下旬発売予定
●へるす出版


募集の方も、すでに日本救急看護学会公式ウェブではじまっています。


第1回JNTECプロバイダーコース受講者募集
・日時: 平成19年11月10日(土) 14:15〜18:15
             11日(日)  8:45〜18:30
・場所: 第1日<座学> ホテル阪急エキスポパーク(大阪府吹田市千里万博公園1-5)
    第2日<実技> 大阪市立大学(大阪市阿倍野区旭町1-4-3)
・受講対象資格: 看護師経験年数3年以上(内救急看護分野2年)
・受講費: 【日本救急看護学会会員】 18,000円(1.5日コース)  5,000円(座学のみ)
       【非学会員】        28,000円(1.5日コース)  8,000円(座学のみ)
・応募人数: 1.座学と実技 36名    2.座学のみ 70名
・受付期間: 平成19年8月27日(月)〜9月7日(金)



JNTECってなに? という方は過去記事 『JNTEC(標準外傷看護コース)とは?』 をご覧下さい。

posted by Metzenbaum at 01:28 | Comment(5) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ
2007年08月14日

アウトドアで看護ボランティア

登山客向けに夏だけ山小屋にオープンする診療所があるのですが、そこに看護ボランティアとして参加してきました。

基本的には登山者しか来ないような山奥にある診療所ですから、行くまでがタイヘン。職場の同僚と二人で山道を歩いていったのですが、診療所に着くまでの時間、なんと11時間! がんばったと思います。(笑)

3000m近い高所ですから、景色もまた格別。高山植物も咲き乱れているし、雪渓は残っているし、道中きつかったけど、楽しくもありました。

肝心の診療活動ですが、ハイシーズンだからひっきりなしに患者さんが来るのかなと思いきや平穏無事で軽傷者が1日5名程度な感じ。幸い滞在中はずっと医師免許を持った人がいたので(その人もボランティアです)不安なこともありませんでしたが、もしナースである自分たちしかいないところに重傷者が運ばれてきたらどうしよう!? という思いはありました。

日頃は病院の中で、スタッフと器材、医薬品に囲まれて仕事をしていますが、人里離れた場所に身を置くことでいろいろと気付かされる点があります。

やっぱり思うのは勉強の必要性ですね。

それも最先端の医療知識ではなく、もっと古典的というか根元的なこと。

だいたいの場合は、医療ではなく応急手当のレベルで対応できることが多いのですが、医療従事者はいわゆる応急手当を学ぶ機会があまりありません。(=学校のカリキュラムには組まれていないという意味)

まずはこの辺をしっかり押さえておかないと恥ずかしいなと思いました。そういった意味では救急医学の本を勉強するよりは、まずは市民向けの応急処置読本が必要でしたね。後は日本ではあまり勉強する機会がない高山病の知識、これは最近受講した日本旅行医学会のセミナーで教わってきたばかりでちょっとばかり自信があった部分でした。

幸い、私がいる間は高山病(山酔い)症状の人はいませんでしたが、ちょっとまえには重度の高山病で肺水腫になった人がいてヘリコプターで麓の病院まで搬送されたそうです。

そういう僻地に行って感じるのは、頭の中にどれだけ引き出しを持っているか、つまり自分の知識・経験の量が思いっきり試されるなという点。今度行くときまでにはコレとコレとコレを勉強しようとか、否が応でもモチベーションが高まってくるのを感じます。

完全な山岳世界なので誰でも行かれるというわけでもありませんが、救急医療に興味がある人には、医療の原点を考えるという意味でもぜひお薦めしたい体験でした。
posted by Metzenbaum at 01:26 | Comment(3) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ
2007年08月06日

看護師のスキルアップ&資格取得

今日は看護学士取得のために通っている(?)放送大学の単位認定試験最終日でした。

今期の予定は10教科、20単位。

一夜漬け&当日勉強で臨みましたが、手応え的には16単位はいけそう。
あわよくば20単位。いずれにしても前期・後期を合わせて学位授与機構申請に必要な31単位はクリアできそうです。

単位認定試験があったり、当直明け・週末にAHAのBLS講習にインスト参加したり、別の勉強会に参加したりでメチャクチャ多忙だったこの1-2ヶ月。

せっかくコメントを下さった皆さんには、まだお返事できていなくてゴメンナサイ。そちらにも少しずつ対応していくつもりでいます。




さて、今日の話のメインテーマは「看護師のスキルアップ&資格取得」です。

いまとある方面から 「『ナースのスキルアップと資格』ということで一緒に本を書きませんか?」 という話を頂いています。

資格 ― キライな話ではないので基本的には乗り気満々なんですが、具体的にどんな話を書こうかと思うと、とたんに行き詰まってしまうので困っています。

よく看護雑誌などでも「資格取得でキャリアアップ!」みたいな特集が組まれていることがあります。それみたいにいろんな資格の概要を羅列して、ところどころに資格取得者の体験談をはさむ、みたいな内容だったら話は簡単です。

でもそんなのありふれているし、それってはっきりいっておもしろくない!

で、いろいろ考えていったところ、致命的な点に気付いてしまいました。



ナースが目指す資格・取る資格って意味があるの??

すごく根本的な話になってしまうのですが、「資格を取る」という行為にはいったいどんな意味があるのでしょう?

もちろん看護師という仕事は看護師免許がなければできないわけで、看護師免許は持っているというのが大前提です。看護師免許の有無でいったらあるなしでは大違い。

でもすでに資格職である看護師が、さらになにか資格取得を取ったらどうなるのか?

もしかしたら、なんにも変わらない、んじゃないかな。

そんな気がしてきてしまいました。

◆ 認定看護師制度の問題点

ナースがスキルアップとして目指す資格の代表と言えば、日本看護協会の認定看護師制度があります。救急認定看護師とかWOCとかですね。

認定を取るのはかなりタイヘンです。まずは養成所への入学試験があって、6ヶ月のフルタイム研修、その後修了試験に合格してようやく認定取得。

6ヶ月のフルタイムの研修というのがネックで、うちの病院の場合は休職扱い(無給)での参加になります。で、念願の資格を取って帰ってきたらどうなるのかというと、基本的にはもとの部署に配属。給料は変わらず、でも認定看護師としての病院全体の仕事は増える、通常勤務のあとの自分の時間として。。。。

最近では、手術看護の認定看護師も新設されて、私も興味はなくはないのですが、今活動している認定看護師さんたちの実状を見ていると、正直、魅力は感じません。なぜならあまりに病院の待遇が低すぎるから。

WOCなどは、医師からも一目置かれたりと院内の地位は高いと思います。でも勤務条件がぜんぜん追いついていないのが現状。

6ヶ月の研修は仕事を休職扱いでいく、つまり無賃です。それでいて学費はかかるし、その間の生活費、交通費、実習施設への謝礼など、出費はバカになりません。単純に考えて半年間の給料がないというだけで数百万円の経済的損失です。それに加えて出費を考えたら年間所得分くらいはマイナスになってしまうんじゃないでしょうか?

つまり認定看護師の認定は5-600万円の投資が必要ということになりますが、果たしてそれに見合うだけのモノがあるのか?

もちろん自分自身の勉強として、これ以上の機会はないと思います。自信につながりますし、院内で裁量権を持って動けるようになるというのも組織の中では大きなことかもしれません。認定取得を機に研究者として大成してその後アカデミックな方面に進むという人も少なからずいるのは事実です。

しかし、対価として数百万となると、単純な向上心だけで済む話ではありませんよね。病院勤務の上での待遇の低さは問題だと思いません?

単純に経済効果で計ること抵抗を感じる方がいるかもしれませんが、でも現実問題としては重要です。

社会人として自律している人間が、ましてや家庭を持っているような人であれば人生設計を考えると思いますが、その中でトータル的に考えて認定を取ることがメリットになるのか? 今の私にはYESとは言えません。

最近、法律の改正で、認定看護師・専門看護師がいることを病院広告に載せていいことになりました。また国立病院などを中心に認定看護師に手当てを出すような動きが出てきているという話も聞いています。それがどの程度なのかはわかりませんが、認定看護師の待遇は、今後は是正されていくとは思いますが、現状の認定看護師制度は看護師個人の積極的な自主性と献身性の上にしか成り立っていないズサンな制度だと思います。

看護協会がいうように、本当に看護界を引っ張っていくリーダーとして活躍して欲しいのであれば、それなりの処遇を与えなければ続きません。今後に期待したいと思います。

◆ 資格取得=自己啓発!?

誰もが憧れる看護界の大きな「資格」であっても、こんな根本的な問題がはらんでいるのですが、看護師が目指す資格のほとんどは似たり寄ったりで、「メリット」を考えてみると、自己啓発だったり自分に自信がつくとかその程度のものがほとんどな気がします。(そもそも看護師免許の業務独占範囲が強烈なのでそれ以上のものはあり得ないというのも事実ですが)

もちろん自分の勉強のために、資格取得を目指す、多いにけっこうです。私もかつて資格取得に燃えていた時代があって、闇雲にいろいろな資格に手を出しました。(最近も救急関係の認定には力が入っていますが)ですから気持ちは分かります。

ただ実益として役立つ資格って、この世界にはないのかなとふと思ってしまうんです。そのガンバリを評価するシステムがほしい!

州にもよりますが、アメリカではICU・ER・OR以外の一般ナースがACLS認定を取ると時給が$2上がるという話を聞きました。(ICU・ER・ORナースはそもそもACLS認定がなければ働けない)

時給で$2って大きいですよね。

日本では看護師たるもの仕事の評価を金銭に求めてはいけない、という雰囲気をなんとなく感じますが、業界のレベルアップには必要な効果だと私は思っています。

ナースの世界は、ただでさえ一般企業と違って昇格といった目標がたちにくい業界だからこそ、そうした資格に着目するというのは悪い発想ではないと思うのですが、現実、ほとんど見あたりません。

ということで冒頭の話に戻りますが、看護師が狙うキャリアアップに関して書こうと思うと、どうしても自己啓発の世界になってしまっておもしろくない!

投資に見合うだけの実益がある資格といえば、助産師でしょうか? 1年間の学生生活と実務のハードさ、責任の重さを考えたら疑問符は残りますが、認定看護師よりは堅実な気がします。(分野で考えたら比較になりませんが)

臨床工学技士や救急救命士なども1年の研修で国家試験受験資格が取れますが、このあたりは看護師免許の範疇なのであまり意味はないか。。。

ただ平成3年8月15日以前に看護学校を卒業した人であれば、専門学校に通わなくても救急救命士国家試験の受験資格があるので、興味がある人はがんばってみるのもいいかも。救急救命士はもともと看護師の下位資格でしたが、最近の傾向をみると大元である看護師独占業務の範疇を越えて救命士独自に業務拡大していく方向性が見られています。今のうちに救命士免許を取っておくと既得権として将来的には、看護師ではできないことでも可能になる時代がくるかも!?

それとなにより、私を含め専門学校卒業のナースにとっては、学位授与機構でとる看護学士の学位がいちばん現実的に意味がある資格かもしれません。私の勤務する病院ではまだ前例がないようなので、わかりませんが、学位が取れた暁には給料、上がるかなぁ。

呼吸療法認定士、ME検定、ケアマネージャー、受胎調整実地指導員、滅菌技士、etc.

資格の話は書いているときりがないのですが、とりあえずこんなところで。

結論は、自己評価ではなく、きちんとした社会的他者評価としてナースのがんばりを評価する制度がほしい、ということ。認定看護師制度の評価がはじまっているのを手始めに今後の動きに期待したいところです。

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2007年07月22日

登山医学セミナーに参加

土曜日の今日は、東京で開かれた「登山医学セミナー」というのに参加してきました。

日本旅行医学会の主催で、今日の演目は、

1.落雷の仕組みと対応
2.登山における骨折の対応
3.無線の使い方
4.山へ持参する医薬品とファーストエイド
5.山の遭難事故と法的責任

という感じ。昨日の金曜日の演題には毒蛇咬傷や高山病の話があったので聞きたかったのですが、残念ながら仕事の関係で今日のみの参加となりました。

今の仕事(手術室看護)とはまったく関係ない勉強会ですが、ネイチャーガイドになりたかったという夢を捨て切れていない(?)私にはとっても刺激的でためになるセミナーでした。

参加者は医師、看護師、旅行業界人が中心だったようですが、フロアからの質問を聞いていると、サービス業として客の安全を守るというのはたいへんなことなんだなということがひしひしと伝わってきました。

最近は何かと訴訟になる時代。Dr.のように専門職として完全に裁量権が確保されている職種ならいいですけど、ナースが病院という指示系統下からはずれて添乗員として働く場合はタイヘン。

専門的な判断と処置が要求されるわりには、(法的に)自分で行えることがあまりに少ないという現状。こうしたらいいとわかるのに、医師の指示がないからできないというジレンマ。法律を考えると、素人が期待するほどにはナースって動けないんですよね。

趣味のアウトドアと医療の仕事をどこかで関連づけて何かできないかなとは夢に思い描くのですが、やっぱり現実はきびしいようです。

のほほんとオペ室にこもっているのがいちばん楽なのかも、と思った1日でした。
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2007年03月30日

『船舶衛生管理者』 医療従事者以外で唯一注射ができる資格!?

さて問題です。数ある国家資格の中で、手技として人間に「注射」をすることが許されている資格はいくつありますか?

えーと、まず医師でしょ。それから看護師。最近では救急救命士も点滴していいんだっけ? あと臨床検査技師も採血目的なら針を刺していいんだよね....。

ということでいくつあげられたでしょうか?

私も正確な答えは知りませんが、ふつうに考えたらおそらく4つじゃないかな。

・医師
・歯科医師
・看護師(保健師、助産師、准看護師)
・救急救命士

ところがです。実はもうひとつすごい大穴的な資格があるんです。

それが「船舶衛生管理者」。要は船の医務室(保健室)の管理者が持っていなければいけない免許で、船医が乗るほどの規模ではない船舶で、実質的に船医の役割をする人。この人たちには薬剤投与が認められていて、養成課程の中では筋注と皮下注の練習も正式カリキュラムとして組まれているんです。

え、ウソでしょ? 救急救命士が挿管ひとつするのに大騒ぎしているのに、と思ってしまいますが、ホントの話。

例えば船舶衛生管理者を正式に養成している「福井県立小浜水産高等学校」のウェブサイトにはこんな記述があります。

「授業だけではまかなえない部分は医師(内科医・外科医)に来ていただき直接講習を行ってもらっています。そこでは実際に注射を打ってみたりとか現場の医療の技術を学びます。」

あと「船舶衛生管理者講習を受講して」というレポートも参考になります。

◆ トンデモ本!?くらいの驚き 「船舶衛生管理者教本」

船舶衛生管理者教本「船舶衛生管理者」講習会のテキストである「船舶衛生管理者教本」を見ると、目を疑うようなすごいことがたくさん書かれていておもしろかったです。

止血法のページでは、結紮止血法なんてことまで書かれてます。「コッヘルなどの止血鉗子で出血している血管をはさみ、吸収糸で結紮止血する」とか、創傷処置として「縫合は止血の有力な手段であり、傷の治りも早く機能障害も少なくて済むので積極的に縫合閉鎖する」なんていって傷口の縫い方を図説してあったり。

で、実際に船舶衛生管理者免許を持っている知り合いによると、縫合はサメの皮を使って練習をしたんだって。

◆ 緊急医療の本質の試金石とはならないのか?

こんな話を聞くと、日頃、医師法の縛りの強さを感じている我々医療従事者からすると、「そんなのアリ!?」と思いません?

船という他に手段がない特殊な状況下を想定した資格ですので、緊急避難という側面が大きく出ているのだと思いますが、それだったら無医村の離島で働く看護師だって同じだし、その場でやらなければ助からない処置(甲状輪状靱帯穿刺や緊張性気胸の脱気)を現場で救急隊員や救急救命士が行なうのも同列のことじゃないでしょうか?

救急救命士資格創設のとき、そんな危険な行為を医師以外に認めることはできないと大きく反対され、非常に厳しい条件付きでようやく認可されましたが、当時、船の上では医療資格とは言えないようなとても簡単な研修と試験で取れる船舶衛生管理者には同じようなことが堂々と許されていたのです。

こうした既成事実があるのだから、緊急医療の在り方、必要性という点では前例があったと言えると思うのですが、私の知るかぎり、救急医療の業務拡大を巡ってこの船舶衛生管理者資格が俎上に上がったことはないと思います。(こうした指摘をするのはもしかしたらこのブログ記事が初かも)

そもそも船舶衛生管理者資格は国土交通大臣が発行するもので、医療行政を司る厚生労働省管轄ではありません。縦割り行政でお互いに関知していないのかもしれませんが、看護師・救急救命士の業務拡大を巡って慎重論を唱えている厚生労働省は、船舶衛生管理者資格をどう考えているのでしょうか? 非常に気になるところです。

読めば読むほど目から鱗の船舶衛生管理者教本。実はいまはインターネット上でも読むことができます。興味がある方はぜひ目を通してみてくださいね。薬剤の項目なんか知識がある我々が読むと、ホントにこんなのを使わせていいの? と思うような薬がズラッと並んでいて眩暈を起しそうになるくらい。

◆ 「船舶衛生管理者」資格を取るには...
看護師には許されていない創の縫合まで許されている船舶衛生管理者資格、これはぜひ取りたい! なんて思った人、いませんか?

実は看護師免許を持っていれば、国土交通大臣が行なう国家試験を受けなくても認定で船舶衛生管理者資格を取ることができるんです。さらに言えば看護師免許を持っていなくても「衛生看護学士」の資格でもOK。看護大を出て国家試験を落ちた人でも、放送大学+学位授与機構でもOKってこと。なんだか不思議ですよねぇ。
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2007年03月28日

私見:救急救命士と看護師の業務拡大

本業である手術室ネタを書かずに雑談続き2007年ですが、今日は救急医療の現実と看護師・救急救命士の業務拡大についてお話ししようと思います。

病院前外傷観察処置プログラムJPTECを受講したという話を以前に書きました。それに引き続いてアメリカ外傷外科学会認定資格になっているITLS(International Trauma Life Support)という外傷コースも受けてきたのですが、それを通して考えさせられる点がいっぱいありました。

◆ 業務拡大の雛形としてのITLS(BTLS)

ITLS(旧称BTLS)は日本のJPTECの雛形となったアメリカの救急隊員(パラメディック)向けに作られた外傷コースです。アメリカでは、現場で行なわなければならない医療処置があるという点にいち早く目を留めて、パラメディック制度を導入、救急隊員を訓練してきました。つまり救急隊員に医療行為を認めた先進国といわれています。

ITLSプログラムでは、気管挿管はもちろん、気管切開や緊張性気胸の脱気、骨髄輸液など、日本では医師以外には認められていない高度な救命処置トレーニングも行ないます。JPTECが日本の法律に整合性を持たせたものであるのに対して、ITLSはアメリカ国内とまったく同じカリキュラムを日本で受講できるのが大きな特徴です。

そういった高度な救命処置(Advanced Skill)の手技的なものはもちろんですが、シュミレーショントレーニングのなかで、傷病者と接触してから病院搬送までの、どの時点でそうした処置を行なうべきか、という判断も非常に重要になってきます。

そんなトレーニングを受けてきて思ったのは、やっぱり甲状輪状靱帯穿刺や緊張性気胸の脱気などは病院到着を待ってたら間に合わないよなという点でした。確かに医師以外が行なうにはリスクが高いという点もありますが、あの訴訟社会のアメリカで現実に救急隊員が業務として行なっているという事実を考えると、本当の必要性とリスクを天秤にかけた上で適正な判断が行なわれている証拠ではないか、とも思うのです。

◆ コメディカルの業務拡大を阻むもの

コメディカルの業務拡大を議論するとき、筆頭に反対するのが日本医師会。医師たちがこれまで「お医者さま」と崇められていたのは、ひとえに「医療行為」という天下の宝刀があったからです。そうした既得権と特権性を死守しようという動きが、日本の救急医療を締め付けていました。

それと看護師に関しては、日本看護協会も業務拡大には慎重な動きを見せています。「看護師にそこまで責任を負わせることはできない」として、例えば麻酔科学会から上がった麻酔看護師導入案を潰しましたし、看護師による産婦への内診や静脈注射に関しても一悶着あったのはご存じのとおり。(看護師を守るという職能団体としての役割もわからなくもないのですが)

看護師の仕事は「診療の補助」と「療養上の世話」ですが、看護師独自に行える「療養上の世話」偏重主義がここでも見え隠れしているような気がしてなりません。医療行為に関しては本来は医者の仕事なんだから、医者の方で勝手にやってよ的な態度が感じられるのです。言ってみれば採血すらしない大学病院看護師の姿を本来の理想としているような。

でも以前、別項でも書きましたが、看護師は医師の他に医療行為が認められている唯一(原則論的には)の存在です。そこから医療行為を否定してしまったら、社会的には大きな損失なんじゃないかなと思います。

さきほどの救急隊の話に戻りますが、医師が救急現場に出ていくほどのマンパワーがないのであれば、それにかわる医療行為を行える存在が必要になります。

今のところ、新設された救急救命士制度がその枠にはまっていますが、救命士自体は医療資格でありながら、消防組織の中でしかフルに活躍できない不思議な資格ですし、救急車内と現場でないと活動ができないという致命的な制約も抱えています。

◆ 法律からみた救急救命士と看護師の関係

現在の方向性としては、アメリカのパラメディックに習って救急救命士の業務拡大という方向性で日本は動いていますが、私は少々疑問に感じています。というのは日本の法律の原則では医師以外に医療行為に手を出せるのは看護師だけと規定されているからです。

「診療の補助」は看護師の独占業務です。ですから救急救命士をはじめとしたコメディカルの法律を見ると必ず書いてあります。「保助看法の規定によらず○○を行なうことができる」みたいなことが。つまりはこれはいずれのコメディカルの業務も本来は看護師しか認められていない行為だけど、この部分に関しては特別にやってもいいよということ。


つまり法律的には看護師免許は救急救命士免許の内容を含む上位資格のはずなのに、最近の救命士業務拡大に看護師はおいていかれているのはなぜ??と思ってしまうのです。まあ、薬剤投与などはナースは日常業務としてふつうにやってますし、基本的には医師の指示と適切なスキルと経験があれば、ナースに関してはオールマイティ、救命士と違って法律的に明確な制限はないんですけどね。

私としてはプレホスピタルは救命士に任せればいいというのではなく、もっとナースが現場に出ていけるような形が発展していけばなぁ、と思っています。そういった意味でドクターカーやフライトナース、DMATなどの今後の発展に期待したいところです。

今現在は、社会通年としてナースや救命士に許されていない甲状輪状靱帯穿刺や脱気、骨髄輸液なども近いうちに解禁されるようになるんじゃないかな。ただそのときは救命士だけではなく、現場に出るナースのことも考えて制度を整えてほしいと思うのです。ナースのことを忘れないで! それが正直な思い。そういった意味でITLSコースは日本の未来予想図的なものを感じられて楽しかったです。

看護師の業務拡大に関しては、看護界の重鎮、日野原重明氏が興味深いことを書いています。

 新時代の看護師に求められるもの バイタルサインを突破口に
 「ナースの仕事は,ナース自身が変えていく!」


要はどんどん法律を破って既成事実を作ってしまいなさい、ということ。救急救命士の創設には在宅での訪問看護師が作った既成事実が大きく影響を与えましたし、救命士の気管挿管解禁も秋田の救命士の英断が契機となりました。

悪法も法ではありますが、こういう事実を考えると、法律ってなんなんだろう? とわからなくなってきます。

どうもまとまりのない雑感になってしまいましたが、いったんここで終わりにして、次回はこの続きとして看護師ですらできない"縫合処置"などが認められている不思議なコメディカル免許(?)のお話しをしたいと思います。「え? そんなすごい資格があったの??」と誰もが唖然とするはず。救急救命士の業務拡大を考える際に、これを知っていると今までの議論がバカバカしくなること請け合いです。お楽しみに。
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2007年02月25日

英語で勉強すること

ここのところ、なんだか英語漬けの日々が続いています。
実は今度、医療従事者向けに一次救命処置を教えるアメリカ心臓協会 AHA の BLSインストラクター・コースを受講することが決まりまして、今そのために英語版のテキストを読み込んでいるところなんです。

もともとアメリカで生まれて、世界中に拡がっていったAHA の BLS(Basic life support) と ACLS(Advanced Cardiac Life Support) のコース。最近日本でもメジャーになってきました。受講生向けのプロバイダーマニュアルの旧版は日本語になりましたが、去年からはじまった新しいガイドライン2005コース用のマニュアルはまだ英語版のみ。

まあ、ガイドライン2005になって、手技もアルゴリズムもシンプルになりましたので正直テキストは読まなくてもぜんぜん大丈夫。G2005を受講した人は必ず英語版テキストを買っているはずですが、マジメに通読したという人はほとんどいないんじゃないかな(^^;

◆ AHAインストラクター、切っても切れない英語環境

そんなこんなではありますが、今度はAHA BLSインストラクターになろうというからには、さすがにそんなわけにはいかず、受講者からの質問に答えられるようになるためにもテキストはしっかり読み込んでおかなければ、ということで、英語版テキストに取り付いています。

幸い、先々月にAHA国際ガイドライン2005の原著は日本語訳されたので、そっちをしっかり読んでおけば、理解にはさほど問題はないのですが、でもやっぱり読むのには時間はかかってしまいます。BLS for Healthcare Provider G2005 は薄い本なんですけどね。今年中にはヘルスケアプロバイダー向けマニュアルの日本語版が出るということで、もうちょっと先延ばしにすれば英語の苦労は少しは軽減されるんでしょうけど、せっかく巡ってきたインストラクターコース受講の機会ですから、がんばろうと思います。

インストラクター向けのマニュアル、これも英語です。Instructor Manualに関しては日本語化の出版予定はないのだとか。。。AHAのインストラクターになる人は医師が中心なので、英語でも問題ないはずということなんでしょうね。市民向け のHeartsaver AED コース用のインストラクター・マニュアルに関しては日本語化という話も出ているそうです。

ということで、今後 American Heart Association(AHA)と関わっていく以上、5年毎にガイドラインと教育プログラムの改定があって、その度に英語教材に立ち返らないといけません。まあ、英語とは切っても切れない関係というのは宿命なのでしょう。

英語の文章というだけで、尻込みしてしまいがちですが、実は英語の論文とか実用書というのはかなり読みやすいです。ヘンに回りくどい言い方はしないし、言いたいことをズバッと伝えるという英語のシンプルさ全開ですので。分野ごとの専門用語はありますが、それさえクリアしてしまえば、たぶんハリーポッターを原著で読むよりは数段簡単だと思います。

◆ 英語を通して拡がる世界

ここで最近よく話題にしている大学教育の話にシフトさせてしまいますが、私が大学で学んでよかったなぁと思うのは英語についてです。はっきり言って高校まで学ぶ英語と大学での英語はぜんぜん別物だと思っています。

高校までの英語の勉強は英語を学ぶこと自体が目的になっています。しかし大学教育の中では、「英語を学ぶ」のではなく、「英語で学ぶ」というように考え方が切り替わってきます。専門分野に関する最新の文献を原著で読んで研究に役立てる。あくまでも英語はツールであって、情報源にアプローチするための手段に過ぎないというように意識がシフトされていくんですね。

必要があって英語を利用する、という発想がもてるようになるというか。私自身は英語の基礎だとか文法だとかはよく分かっていません。でも中学生時代に培った英語の基礎の基礎(語順だとか修飾の関係)なんかが頭に残っていれば、単語と単語をつなげて内容は理解できることに気付くようになりました。

学校英語しか知らないと、英文を読むときについ逐語訳したがりますが、それは大きな間違い。知っている単語だけを拾って意味を推察できればいいんです。そう考えると気が楽になって、英語を毛嫌いすることもなくなるんじゃないかな。

実際、英語のテキストに載っている物語なんかは読めなくても、例えばディズニーランドに行ったとき英語のパンフレットなんかを手に取ってみてください。たぶん内容は充分理解できるはず。そうやって手近なところから英文になれていくと、だんだん自信がついてきますよ。要は毛嫌いしているだけで、ふつうに中学・高校で英語を勉強していれば、本人は自覚していなくてもそれなりの英語の理解は身についているものですから。

例えばロシアを旅行中に「水」がほしかったらどうしましょう? 困っちゃいますよね。でも英語だったら、とりあえずwaterって言えませんか? それだけでもある意味、すごいことだと思いません? フランス語で、トイレどこ? とは言えませんが、英語ならなんとかなりそうでしょ?
なにかとコンプレックスばかり先に立つけど、平均的日本人は英語ができない、なんてことは決してないと私は思っています。(スイマセン、なんだか話がずれてきちゃいました)


医学界で重要な国際ガイドライン(心肺蘇生だったりとかCDCなど)の改定板は英語で発表されること多く、いまはインターネットのおかげでリアルタイムに情報を手に入れることができます。だからこそ英語に抵抗がないという点は意味を持ってくると思うんです。日本語訳をまっていたら平気で1年くらいの遅れを取ってしまいますからね。私自身、英語で発表された文献の内容をインターネットでいち早く日本語で伝える記事を書いたところ、業界で注目されて出版社から原稿依頼をいくつか頂いたなんて経験も実際にあります。

看護界では、英語の文献活用はまだあまりされていないように感じます。今後、学術畑に行きたいとか、学会等で名前を売りたいと思ったら、英語資料の活用をお勧めします。もうちょっとしたら看護界も他の理系学会並みに英語が浸透してくると思います。いまならまだ英語文献が情報源というだけで一歩先にいけますし希少性もあって、ねらい目ですよ(笑)

手術室関連でいうと、アメリカ周手術期看護協会(AORN:http://www.aorn.org/)のウェブサイトで、比較的新しい情報ソースを見ることができます。

もうひとつおまけの話ですが、英語で英語を勉強するというのも英語嫌いをなくすためのひとつの方法。私が使っていたのは English Grammar in Use という、たぶん知っている人は知っている超定番の英語自己学習書&問題集。最初、人からこれを薦められたときは、英語がわからないから勉強するのに、英語で英文法を理解するっていったいどういうこと? と疑問でしたが、例文がいっぱいで、誤解しやすいところはしつこいくらいに強調して書かれているので、意外なほどわかりやすかったです。下手に小難しい日本語の文法用語(仮定法過去だとか現在完了とか)がないぶん、かえってすんなり頭に入ってくるかんじ。英語で学ぶための入門書としてもいいと思います。
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2006年11月27日

JNTEC(標準外傷看護コース)とは?

先日、プレホスピタルの外傷標準化コースJPTECを受けてきましたという話を書きました。そこでもチラッと触れた看護師のための外傷治療標準化コース「JNTEC」について簡単に紹介しようと思います。

◆ ガイドライン、標準化プログラムとは?

いまでこそACLSやICLSと言った循環器系の急変に対する標準化教育プログラムが普及してきましたが、標準化教育プログラムという新しい概念が日本に定着したのは、このACLSが草分けだったと思います。

急変時にどう対処・行動したらもっともシンプルかつ安全か。それを徹底的に追及して誰もがその基準に従って行動すれば最大公約数的に有効な効果を上げることができる。それが標準化プログラムの発想です。

実際、ACLSの標準化によって世界的に大きな効果を上げていることから、昨今様々な新しい標準化プログラムが策定されつつあります。JPTECもその一つですし、脳卒中初期診療コースのISLS (Immediate Stroke Life Support)なんてものもあります。

◆ 外傷標準化コースの系譜

日本でもACLSが行き渡り、次に注目されている標準化プログラムの代表が「外傷」に関するものといえるかもしれません。

ACLS同様、外傷標準化プログラムも元もとはアメリカで生まれたものです。
アメリカにおいて医師向けのATLS(Advanced Trauma Life Support)というコースが制定され、それに整合性を持たせた救急隊員(EMT)向けコースのBTLS(Basic trauma life support)が作られ、さらにはそれらに合わせてナース向けの外傷コースが作られました。

つまり救急現場から病院初療室(ER)まで、救命士 ⇒ ナース ⇒ 医師とスムーズな流れで外傷治療に当たれる体制が整えられたというわけです。

今の日本もこの流れにそって整備が進められています。医師向けのJATECはすでに歴史は長く、救急隊員向けのJPTECは正式に発足してから数年。で、次なるコースがナース向けのJNTECというわけです。

◆ JNTECとは

JNTEC (Japan Nursing for Trauma Evaluation and Care)は、日本救急看護学会と日本臨床救急医学会が中心となって現在開発が進められている看護師対象の「病院内標準外傷看護コース」です。2006年10月現在、非公式のテストコースが4回ほど開催され、その都度、内容の再検討を繰り返して、本コース開催に向けて準備が進められているところです。いちおうテストコースは5回を目途に一区切りと言うことなので、正式な発足はそう遠くないはずです。現在、学会認定の申請中だそうです。

内容的にはすでに出来上がっているJATECとJPTECとのマッチングを重視し、事故現場からER〜医師による治療開始までが一貫した流れで行えるように、という点がポイントになっています。

具体的な内容はまだ確定になっていないため部分的にしか公表されていません。青写真的には、救急からのホットライン入電から、情報収集、受容れ準備、初期観察を行ない、必要な処置をしつつ医師に引き継ぐという内容だとか。

先日、私は救急隊員向けのJPTECプロバイダーコースを受講してきましたが、JPTECもJATECも医療的(cure)な側面が強く、とかくメンタル面でのフォローが後回しにされがちな部分があるような気がします。その点、JNTECは一貫性を持たせるとはいえ、「看護」の一環ですので、看護の視点をどう取り入れるのかが重要なポイントになりそうです。

JNTEC開発に関わっている方の話を聞く機会がありましたが、そうした「看護の視点」の具体的な入れ方については、検討中ということで言葉を濁していましたが、家族へのフォローなども入れていくような雰囲気でした。そういえば心肺蘇生のガイドライン2000では、蘇生中に家族を立ち会わせることの意義について書かれていましたね。日本の現場ではなかなか議論されることはなかった気がしますが、JNTECの中ではそのあたりも突っ込んで検討されているのかなぁなんて個人的には勝手に思っています。

◆ 「胸腔ドレイン挿入」「輪状甲状靱帯間膜穿刺」

今のところ、JNTECのスキル練習の中には「胸腔ドレイン挿入」「輪状甲状靱帯間膜穿刺」の実技も含まれているそうです。胸腔ドレインは緊張性気胸のときの脱気、輪状甲状靱帯間膜穿刺は気道が開通しない場合の外科的気道確保ですが、もちろん今の日本のナースには法的に認められていない医療行為です。

これらの実技練習を行なうことの意義について、JNTECでは実際に必要事項を観察し、処置を行なうことで「必要物品の準備を含む外傷ケア環境の調整ができる」という点を挙げています。その点ACLSと同じですね。ACLSでは看護師も気管挿管を行ないますしね。でも、実際問題このあたりで医師の中からは「けしからん」という意見もなくはないようです。

今の日本の法律では看護師や救急救命士には認められていない行為とはいえ、「胸腔ドレイン挿入」「輪状甲状靱帯間膜穿刺」は救急現場ではきわめて緊急性が高い処置で、現場で行なわなければ間に合わないという可能性も多分にあります。

そのため、医療系のドラマでもハイライト的な場面としてよく使われています。例えば最近の例ではテレビドラマ「Ns.あおい」の中で主人公が緊急避難的に静脈留置針で気胸の脱気を行なって問題になっている場面がありましたね。さらには今放送されている「Dr.コトー診療所2006」の中では、ナースが釣りの浮きを使って輪状甲状靱帯間膜穿刺を行なっていました。

今日本が真似ようとしているアメリカの救急医療体制の中では、これらの医療行為はパラメディック(救急救命士)が現場で行なう処置になっています。救急隊員向けのBTLSコース(日本でもアメリカとまったく同じコースが受講できます)では、プレホスピタルの重要なスキルのひとつとして教えられています。

はっきり言ってしまえば、日本の医師法の制約はかなり厳しいです。法律が、というより自分たちの特権性を死守しようとする医師会の圧力が、と言った方がいいのかも。これはAEDの市民解禁や救急救命士誕生にまつわる攻防戦、救命士の業務拡大などにも関係してくる非常に大きな問題なんですけど、あまり深く踏み込んで言及するのは控えます。興味がある人は救急救命士制定に至るまでの経緯が書かれた本を読んでみてください。救急医療と日本の古い体質の問題点がいろいろ見えてきて興味深いです。


さて、いろいろ問題があるにも関わらず、今回、JNTECがあえて「胸腔ドレイン挿入」「輪状甲状靱帯間膜穿刺」を実技に含めようというというあたりに、私は非常に興味深いものを感じています。2004年のAEDの市民への解禁、救急救命士に挿管認定、それに薬剤認定。これまで頑なに死守してきた医師の業務独占神話が崩れつつある昨今。

「胸腔ドレイン挿入」「輪状甲状靱帯間膜穿刺」も将来を見据えてのことなのかな、と勝手に想像しています。国際的に活躍するナースも増えてきて、特に災害現場への派遣という場面を考えると、日本の法律の縛りというのもどれだけの重みがあるのかわからなくなってきます。国際標準で考えたときにどうなのかなという視点ももしかしたら重要になってくるのかもしれません。



以上、私が知っているJNTECの概要と、私の勝手な考えを綴らせてもらいました。念のため強調しておきますが、私は外傷標準化プログラムに特別造詣が深いわけでもなく、ただ興味深く成り行きを見守っている一介の看護師に過ぎません。くれぐれもこの内容が確定した公式なものであるとは考えないでくださいね。

詳細情報は、来年刊行されるメディカ出版のエマージェンシー・ケア誌2007年6月号の特集記事「JNTEC(標準外傷看護コース)を徹底解説」で明らかにされるようです。

[参考文献]:八田秀人:注目を集める外傷初期医療とプレホスピタルケアって何?, Expert Nurse vol.22 No.10, P60,照林社)
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2006年11月26日

ゼネラリストとしての看護師

『ちょっと話は逸れますが、看護師の専門性という話をするときにいつも引っかかることがありまして、それは看護師というのは専門ではなく、汎用を売りとした職業ではないのか、と思うことがあるんです。これについてはちょっと長くなりそうなので、今週末にでも新しい記事として改めて書かせてもらおうと思います。』

なんて話を先日コメント欄に書かせてもらいました。
その続きです。

看護師としてのキャリアアップだとかいう話になると、必ず言われるのが「専門性を高める」という点です。その道のエキスパート、スペシャリストになれ! という方向性ですが、ネコも杓子も「専門性をアップ」だなんて言われると、ヘンクツな私は、ホントにそれでいいの?? と竅った目で考えてしまいます。

そもそも看護の仕事を考えると、専門というよりは何でも屋的な汎用性が求められる業務なのではないかと思うのです。

考えてもみてください。看護師の独占業務から独立していったコメディカル資格の数々を。臨床検査技師、理学療法士、言語聴覚士、臨床工学技師、救急救命士などなど。もともとは医師の他は、看護婦だけでほぼ成り立っていた診療業務のうち、専門性が高い部分は次々と独立していって、最後に残ったのが今の看護師の業務です。

極端にいうと診療補助のうち、残された専門性が低い部分こそが、現代の看護師の仕事とは言えないでしょうか?

なんて書くと刺激的すぎるかもしれませんが、少なくとも、専門ばかり追求しすぎると取りこぼす部分が出てきます。でも、それらも立派な看護師の仕事だよ、と言いたいのです。

専門性を究めることばかりが良いことのように言われがちですが、非専門性(=汎用性)が悪いわけではありません。ビジネスなどでも、スペシャリストとゼネラリストという分け方がありますが、スペシャリストばかりでは会社全体としては仕事が進みませんし、絶対にゼネラリストの存在は必要です。

スペシャリスト集団で構成される病院組織の中で、ゼネラリストとして働くとしたら、どう考えても看護師以外はあり得ません。

何でも屋というと聞こえは悪いですが、看護師の仕事はそういうものであっても良いと思っています。法律的にもそうなのだし。看護師が汎用性を捨てて、専門に走ったら、本来の自己存在を否定することにもなるんじゃない? と私は思っています。最終的にはバランスなんでしょうけど。

業界全体として看護師の専門性を高める方向に向かっていますが、その先にあるものはなんなんでしょう? ホントに今の方向性でいいのかなぁ。そんなことを考えつつ、私は自分の身の振り方を考えています。
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2006年11月19日

看護師にとってのJPTEC(外傷病院前救護ガイドライン)

オペ室の話題からは外れますが、先日、JPTEC(ジェーピーテック)という外傷処置に関する標準化プログラムを受講してきました。

JPTEC ― 救急部門の看護婦さんなら聞いたことあるかもしれませんが、Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care の略で、外傷病院前救護プログラムなどと呼ばれています。

JPTECは本来は看護師向けではなく、救急救命士や救急隊員向けの講習会で、救急現場で怪我人に対してどうアプローチ(観察・処置)したらいいかを標準化したものです。

アウトドア・スポーツをしている私としては、外傷についても一度きちんと勉強したいと思っていました。だって野外でなにかあったときメンバーから頼られるのは看護師の私。なのに何もできないとなったら恥ずかしいじゃないですか。

BLSやACLSで、心疾患に関してはそれなりに自信もつきましたけど、日常生活でもありがちな交通事故とかアウトドアでの事故のときの応急手当って、医療者でありながらどうしたらいいのかという点は意外と勉強する機会がないんですよね。まあ、救急救命士がプレホスピタル Pre Hospital に対して、看護婦はインホスピタル in Hospital の仕事が前提ですから当然といえば当然なんですけど。

そこで今回は消防士さんや救急救命士さんたちに混じってJPTECコースを受講してきました。JPTECプロバイダーコースは、丸一日かけての講習で、そのほとんどは体を動かす実技です。傷病者への近づき方、頸椎保護、全身観察の方法など、いろいろなスキルを練習し、最終的には救急隊の隊長になったつもりで現場到着から病院搬送までの間をシュミレーションしていきます。

◆ ナースにとってのJPTECプロバイダーコース

JPTECプロバイダーコース、正直いってきつかったです。なにがきつかったって、まずはその雰囲気です。もともとは救急隊員(消防官)向けのコースなので、看護師は本来は門外漢。JPTEC受講生の大半は現役の救急隊員(消防士)さんたちで、雰囲気はかなり硬派な感じです。女性が中心の病院内の世界に慣れきった私には異質な世界で戸惑ってしまいました。

まさに異文化体験という感じでしたね。ひとつひとつ指さし確認するのも慣れないし、掛け声や返事はすべて「よし!」というのが消防流。指示は命令口調で、「隊員、頭部保持替われ!」「○○しろ!」と言った具合。

救急救命士は医療資格者とはいえ、あくまで消防職員であって、医療者文化とは別の世界にいる人なんだなと感じた次第です。

それとうちら看護師はあくまで病院の中で働くための教育しか受けていませんので、プレホスピタルで使う資材がぜんぜんわからない。バックマスクや酸素マスク、吸引くらいならいいのですが、バックボードとかヘッドイモビライザーなんて言われてもチンプンカンプン。日頃仕事で使い慣れている人たちからすればなんでもないものでも、看護師にとっては未知のもの。他のみんなが共通認識があってわかっていることが自分だけ知らないというのは精神衛生上ツライです。

あとは指示出しですね。JPTECでは救急隊の隊長になった設定で、隊員と機関員(運転手)に指示を出しつつ救助活動を行ないます。指示がなければ隊員も機関員も自分からは何も動いてくれないので、リーダーとして的確な診断をして、チームを動かしていく能力が期待されます。その点、ナースはふだん指示を受ける側の立場で仕事していますので、このあたりも不得意な部分だなと感じました。

◆ JPTEC講習で得たもの

正直、最後の実技試験はボロボロでした。頭が真っ白になって酸素投与を忘れたり、重要な所見を見落としたり。かろうじて及第点はもらえましたが、ほんとギリギリだったと思います。筆記試験もあって、そっちの方は自信もあって問題なかったはずですが、やっぱり教科書だけでは勉強できない実技が弱かったなと思っています。

でも、JPTECを通して実際にヘルメットのはずし方や脊椎保護を意識した体位変換を体で学ぶ機会が得られたのはよかったと思っています。それに救急現場で何を考え行動しなくてはいけないかというしっかりとした指針を得ることができました。

これまでたまたま遭遇した交通事故の応急救護に当ったことが何度かありますが、そのときに感じた疑問と不安が、このJPTECプロバイダーコースによって解消された気がします。

実際私も経験ありますが、事故現場でけが人に近づくと、「触るな! 救急隊が来るまで動かすな!」と無責任な野次馬から怒鳴られることがあります。いちおう頸椎損傷の疑いについても考えているつもりですが、いざそう強い口調で言われてしまうと、たじろいでしまうのも事実。でも今回JPTECで現場での頸椎保護の実際の方法と観察の手順、処置の優先順位について「標準」とされるやり方を学べましたので、今後は自信を持って傷病者に接することができそうです。

◆ 看護師のための外傷標準化コース JNTEC
ちなみに、いま救急看護学会の方で、JNTECの制定に取り組んでいるそうです。JNTECの N は Nursing の N です。つまり看護師向けの外傷標準化プログラムです。実はすでにプログラムのたたき台は出来上がっていて、去年あたりから通算4回ほどテストコースが開催されています。とあるJNTECプログラム策定に携わっている方の話をチラッと聞く機会がありましたが、まだいろいろ問題が山積みのようで、具体的な内容についてはオフレコにしてほしいと言っていたのが印象的でした。(ということでここでは詳しくは触れません。)

今回、JPTECを受講して思ったのは、やっぱり救急隊員向けだけあって「看護の視点」はほとんど入っていないんですね。ここにナースの視点が入ったらどうなるのか? 今後の正式なJNTEC制定が楽しみなところです。

◆ 看護師としての自分 職場を離れた場所で
私は日頃思っているのですが、看護師の仕事というのはひとつの「職業」ではありますが、職場から離れた場所でも活かすべき技術、果たすべき責任というのもあると思うんですね。医師と看護師というのは医療行為を行なうことが認められている数少ない立場の存在です。

そうした専門知識と技術は「職業」として使う以外にも、必要が求められれば出し惜しみをしてはいけない公共の財産としての側面もあると思っています。医師や助産師と違って看護師には法律的な応召義務の規定こそはありませんが、看護師自身の自覚として、そうした思いを持っていてほしい、と私は考えています。

ナースの知識と技術は社会資源のひとつである。そういった意味で、看護教育の中で心肺蘇生(BLS)は徹底的に教え込むべき技術だと思うし、JPTECで学ぶような外傷アプローチも同じく必要だと思います。

昔からBLSはいちおう看護教育カリキュラムには入っていますが、外傷に関しては皆無。現実を考えると、市民レベルで教えられている応急手当であっても、すべての看護師が実際に行えるかというと相当疑問が残ります。教育カリキュラムにないというのが最大の問題だと思います。

まあ、外傷に対する新しいアプローチ(外傷標準化プログラム)が、日本に導入されたのは2000年頃で、JPTECが発足してからもまだ3年しか経っていないということもあります。でもナースも一市民として社会生活を送る以上、いざというときに動けるように、JPTECのような外傷標準化プログラムの知識は多少なり持ち合わせていた方がいいと私は思うのです。

講習を受けてきたばかりで、JPTECに「かぶれてしまった」のかもしれませんが、今はそう思っています。

◆ JPTECの教科書

JPTECについて勉強しようと思ったら、公式のテキストブックは2種類あります。ひとつは『外傷病院前救護ガイドラインJPTEC』もう一冊は『JPTECプロバイダーマニュアル』です。実際に手に取ってみるとわかりますが、前者は本格的な医学書、後者は実技のためのビジュアルガイド的な感じ。薄っぺらくて値段も安いです。

JPTECプロバイダーマニュアルicon     外傷病院前救護ガイドラインJPTECテキストicon

実際にJPTECプロバイダーコースを受講されるのでしたら、『JPTECプロバイダーマニュアル』もあった方が実技の要点がまとまっていてわかりやすいですが、机上の勉強にはほとんど意味がありません。

ですので、外傷のメカニズムや解剖・生理をしっかりと勉強するならまずは『外傷病院前救護ガイドラインJPTEC』が必携です。おそらく筆記試験もこの本を熟読しないと合格は難しいと思います。最初は救急隊員向けのコースだと思っていたけど、この教科書を見てかなり本格的な中身にびっくり。救急救命士さんならともかく、ふつうの救急隊員さんにはちょっと難しすぎるんじゃない? という気も。看護師の我々にとっても勉強のし甲斐がある内容でした。

◆ JPTECプロバイダー認定カード

最後にちょっと余計な話ですが、丸一日かけて行なわれるJPTECプロバイダーコースを修了し、実技試験と筆記試験に合格すると、JPTEC Provider として認定され、認定証が発行されます。

JPTECプロバイダー認定カード

AHAのACLSコースなどとは違ってその日のうちにカードをもらえたのですが、受け取ってみてガッカリ。なぜって、あまりにちゃっちいんですもん。

どう見てもインクジェットプリンタで手作りしましたというのがミエミエのクォリティーで、用紙はどこにでも売っている手作り名刺用のプリントペーパー(エッジに細かいミシン目が入っているのでわかります)。あまりにお金をケチりすぎじゃありません?(笑)

デザインもきっと誰か素人のスタッフが考えたんだろうなという洗練されていない感じで、いけてません。とくに「認定日より3年間有効。」というあたりがイタイ。なぜこんな位置に書く必要があって、しかも最後に"。"が付いてるの?? モーニング娘。じゃあるまいし(笑)

JPTECは日本救急医学会認定の公認資格で、いちおう全国規模でやってるんだから、もうちょっときちんとしたものにしたらいいのに。これじゃ、まるで草の根でやってる個人勉強会の修了証です。その点だけが残念でした。

スイマセン、最後に余計な話で締めてしまって。
でも内容に関しては、まわりのナースにも勧めたい、実に中身の濃い有益な講習会でした。JPTECが医療者の常識になる日が来るのを期待してやみません。
posted by Metzenbaum at 22:35 | Comment(20) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ
2006年10月08日

手術室看護の参考書・文献の探し方

ここのところ、手術室看護に関する勉強方法や、参考書・文献の探し方に関する問い合せをよくいただきます。そこで、私なりの「勉強方法」、特に資料や文献の探し方について書いてみようと思います。病棟看護とちがって、極端に資料数が少ない手術室看護領域。特に術式や器械出しの参考文献に関しては、ちょっとしたコツがあったりします。

◆ 手術の参考書

まずは各科手術に関する参考書について。
私が特にお薦め! と思った本に関しては過去ログの中で具体的な書名を挙げて紹介しています。
確か 形成外科婦人科手術手技、それから 手術の基本手技 に関する本などを紹介してきました。

いま、整形外科や泌尿器科に関しても、いい本がないかなぁと探しているところなのですが、今のところこれぞという文献には巡り会っていません。

hyojyun_seikei.jpgとりたててお薦めするほどではないのですが、私が各科疾患や術式等で知りたいことがあったら、とりあえず目を通すのは医学書院から出ている標準○○学のシリーズです。( 標準泌尿器科学 とか 標準整形外科学 など)

医学生向けの教科書シリーズなのですが、これを一冊読めばとりあえず各科の総論的な基礎知識は身につきます。医学書というと何十年も前に書かれた本が平気で書店に並んでいることもありますが、この標準シリーズは改定も比較的頻繁に行なわれていますので、内容的にも安心感があるのがいいです。それに基礎系の生理学や病理学にはじまって、放射線科などを含むほぼすべての診療科テキストが揃っているのも嬉しいところ。

標準シリーズは手術の手技書とは違いますので、私たちの手術室での仕事の直接的な参考書とはなりません。でも局所解剖と疾患、治療の基礎知識を固める上ではとっても役立ちます。外科系のすべての科のものを読破するのはたいへんですが、自分が興味があったり、各職場で専門担当になっている科の本は手元に置いといても損はないと思っています。ちなみに私は生理学と泌尿器科、形成外科、それと最近、整形外科を手に入れました。本当はオペ室の蔵書として揃ってたらいいのになと思うのですが。(なにより値段が張りますからねぇ)

ここのところよく質問のある、整形外科手術のプレート固定が詳しく書かれている本というのを探しているのですが、いまだ見つからず。手の外科とか脊椎手術などの専門手技書はよく見かけるのですが、基礎の基礎というのがないんですよねぇ。AO財団の講習会テキストがいいよとは聞くのですが、市販されている本ではないようだし。。。休日のたびに大きめの医学書センターや医大の図書館・購買部(生協)などに足を運んで、あれこれ本を探しているところです。

いずれにしても手術室業務に関しては「ナース向け」の範囲内で参考書を探すのはちょっと無理がある気がします。術式について詳しく知りたいとか、そういうことでしたら、まずは病院の図書室にあるドクター向けの手術手技書・教科書を当たってみること。それでダメなら近隣の大学医学部の図書館へ行くことをお薦めします。病院の図書室担当の人に声をかければ、大学図書館への紹介状等を出してもらえるはずです。

◆ 雑誌記事・論文検索

次は、最新のエビデンスや看護研究で使うような文献の探し方ですが、これらは圧倒的に雑誌や論文の独壇場です。例えば、最近見直されてきている手術時の手洗い方法や、術後消毒とドレッシング材のことを調べようと思ったら、まだあまり成書には書かれていませんので、雑誌類の記事を探す必要があります。

そこで登場するのが、医学中央雑誌です。通称「医中誌」と呼ばれていますが、これは日本国内の医学系雑誌のすべての記事の見出しと概略を載せている膨大な目録です。最近ではCD−ROMの形で発行され、インターネット上でも検索できますのでかなり便利になっています。

検索に使うキーワードの選定にはちょっとしたコツがありますが、まあ、要はインターネット検索と同じ要領で調べると、キーワードと関連のある雑誌記事・論文がズラッとリストアップされる仕組み。全文が読めるわけではなく、タイトルと抄録から推察して、使えそうな文献があれば、改めてその論文を蔵書している図書館に行って、現物を手にとって確認する必要がありますが、とにかく医中誌システム、かなり使えます。これなしに医学文献検索は不可能だろう、というくらいにスグレモノです。

おそらく病院の図書室にあるパソコンには、医中誌CD−ROMがセットされているか、もしくは病院単位で医中誌ウェブ検索(有料)に接続できるように法人契約していると思いますので、病院の図書係の人に聞いてみてください。検索範囲は限られますが、インターネット上で無料体験版もあります。(病院で契約していない場合は、、、、、近隣の大学医学部図書館に行けば、たぶん使わせてくれます。病院の職員証を持っていって医療職であることが証明できれば利用させてくれることが多いですが、要事前確認。)

文献のタイトルとページ数等の情報が得られれば、これまた病院図書係に申請することで関連図書館などから文献複写サービスも受けられます。コピー代と郵送料の実費はかかってしまいますが、遠くの図書館に交通費をかけていくよりは安いです。そういったシステムも積極的に活用していきたいものです。

おそらく看護の学生時代に、そうした文献検索のテクニックは教わったと思いますが、論文作成時に限らず、ちょっとした疑問解決にも積極的に使っていくクセをつけると、ずいぶん世界が拡がりますよ。
posted by Metzenbaum at 00:54 | Comment(5) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ
2006年08月18日

21世紀の「読み書きそろばん」 = 検索テクニックを磨こう!

今日は手術室看護にも役立つ情報収集ツールとしてのインターネットの活用について取り上げてみたいと思います。

いまこの文章を読んでくれている人というのは、きっとインターネット検索でたまたま見つけてくれたという人が圧倒的に多いと思います。

皆さん、日頃検索エンジン等を活用されている方が多いと思いますが、私にとってもインターネットは生活にも仕事にもなくてはならないものとなっています。

ちょっと前までは、なにかわからないことがあったら、週末を待って図書館に行っては調べ物をしていましたが、いまはインターネットのお陰で、知りたいことはすぐその場で確認できます。学生時代、必死になって専門図書館で文献検索をしていた時代がウソみたいです。

手術室にいると、日々いろいろな略語や専門用語に苦しめられますが、そんなときもインターネットで即解決。とにかくわからないことがあったら、検索エンジンの窓にフレーズを入れてみると、たいていのことは調べがついてしまいます。

つい先日も、心外の手術に一諸についた後輩から「SFJってなんですか?」と聞かれて、ちょっと困ってしまいました。職場のパソコンに入れてある医学大事典や医療略語辞典で検索しても出てこず。でもインターネットでしらべたら一発でした。

Sapheno Femoral Junction = 大伏在静脈ー大腿静脈接合部


ふつうに「SFJ」という語で検索してしまうと、 『サーファーの立場から環境保護を訴える Surfrider Foundation Japan』 なーんていう関係ないサイトまでわんさかと1,580,000件もヒットしてしまいます。

そこで効率よく目的に辿り着くためには、「絞り込み」を考えた検索フレーズをが重要になってきます。答えからいいますと、今回、私は「SFJ 血管」というキーワードを使いました。

SFJという言葉は、心臓血管外科のストリッピング手術に関係して出てきた言葉なので、血管と関係ありそうだという予測がついていました。ですので、単にSFJで検索するのではなく、スペース記号で区切って、「SFJ 血管」とすることで、「SFJ」と「血管」、ふたつの単語が含まれているページのみヒットするようになるんですね。

これはとっても簡単だけど、とっても重要なポイントです。


関係ありそうな単語を複数並べて検索すると、検索精度が上がる!


これだけは覚えておくといいですよ。

インターネット検索は、関係ないページがたくさん出てきて使い物にならない! なんて声をよく聞きますが、それは単にキーワードの選択がマズイだけ。

どういったキーワードを並べたら、効率よく自分が知りたい情報にたどり着けるか? 要は慣れなんですけど、それが現代社会を生きる上で非常に重要な能力だと思います。

Googleをうまく使うポイント

検索エンジンもいくつもありますが、私が愛用しているのは google です。Yahooを使ってらっしゃる方も多いと思いますが、Yahooは企業の公式サイトを調べたりする場合には便利ですが、辞書的な使い方をするなら、検索結果に人為的操作が入らないGoogleがいちばんです。

その際に覚えておきたいポイントは次の4つ。

1.例: 「手術室 オペ」 … スペース記号で区切って複数のキーワードを入れると、それらすべての語が含まれるページのみヒットするようになる。(and検索といいます)

2.例: 「虫垂炎|アッペ」 … キーワード間を|で区切ると、虫垂炎もしくはアッペというキーワードが含まれるページがすべてヒットする(OR検索といいます)

3.例: 「眼科手術 -白内障」 … このようにすると、眼科手術というキーワードが含まれるページのうち、白内障が含まれるページは除外された結果がでてくる。半角スペースと半角マイナス記号を付けた後の語が除外されます。


まあ、細かい検索テクニックはたくさんあるんですが、上の三つ、もしくは1番だけでも、うまく活用できれば、インターネットの便利さをもっともっと体感できるはず。

検索結果ページへのジャンプは別ウィンドウで開く

検索結果画面のサイトプレビューを見てみて、知りたいことが載ってそうなページへジャンプして内容を確認するわけですが、一発でそのものズバリのページが見つかるとは限りません。

少なくともいくつかのページは見てみることになると思いますが、各ページへジャンプするときは、ふつうにクリックしてしまうと、ウィンドウの画面が切り替わってしまい、最初の検索結果画面に戻ってくるのが面倒くさくなる場合もありますので、別窓(別のウィンドウ)で開く形にすると便利です。

どうやるのかというと、インターネットエクスプローラーの場合は、Shiftキーを押しながら、リンクをクリックすればOK。別窓で当該ページが開きます。ざっと一瞥してみて興味がなければAlt+F4キーを押せばサクッとそのページ窓は消えます。

直感的なマウス操作もいいですけど、慣れてくるとこうしたショートカットキーを使うとサクサクと画面切り替えができてかなり効率的です。

Ctrl+Fキーでサイト内検索

検索結果で開いたページがあまりに長文な場合、自分の探していたキーワードがページ内のどの辺にあるのかを探すのがたいへんな場合があります。そんなときに覚えておくと便利なのがページ内検索です。Ctrlキーを押しながらFキーを押すと、キーワードを入れる小窓が開きます。例えばいま、ここでCtrl+Fを押して、「ブロードバンド」と入力してみてください。文末にあるその部分がハイライトされたでしょ? こんな感じに機能します。一瞥して長文サイトにぶつかった場合に覚えておくと便利な機能です。

Googleのキャッシュ機能を活用する

最近はブログが大はやりで、検索結果がブログ記事ということも少なくありません。また掲示板の書き込み内容がヒットする場合もあります。その場合、問題となってくるのが、検索エンジンに載った時間のタイムラグです。通常、検索エンジンに自動的に登録されるまでに長いと1.5ヶ月程度かかります。つまり掲示板の場合は、最新の内容ではなく1.5ヶ月前の状態で登録されていることになります。

いざその掲示板のページにジャンプしてもすでに当該キーワードを含む書き込みは古くなって過去ログページにお蔵入りしていて読めないという場合がよくあります。

そういうときに役立つのが、Google固有のキャッシュ機能です。これは検索エンジンGoogleが情報収集した時点でのそのページの内容を保存してくれている機能です。検索結果部分をよく見ると、「キャッシュ」と書かれたリンクがありますが、これをクリックすると見ることができます。嬉しいことにキーワード部分が黄色や青色でハイライトされていますので、目的語を探すのもとっても楽。検索結果がブログ記事や掲示板のときは積極的に使いたい機能です。

検索エンジンGoogleのキャッシュ機能

最近、看護大学を卒業したばかりの新人さんたちの話を聞くと、いまでは大学でしっかりと情報収集技術も教わってるみたいですね。

昔は「勉強」というと知識を詰め込むことを指していましたが、情報が溢れているこの時代、記憶するという能力の重要度はだいぶ薄れてきた気がします。インターネットという膨大なデータベースに市民レベルでアクセスできるこの時代、必要な情報を引き出す能力のほうがが非常に重要になっています。

人間、覚えられることには限界があるわけですから、それよりは必要時、必要な情報を取り出して活用する能力の方がよっぽど価値があります。(まあ、どうしても現場でとっさの判断をする場合など、最低限覚えておかないといけない事柄というのはありますけどね。)

気になったことは、できるだけ早いうちに調べて納得する。その積み重ねがやがては自分の中に蓄積される資産となっていきます。そんなわけで、インターネット常時接続の環境にある人は、医学や手術室専門用語なども含めて、なんでも百科事典としてのインターネットをドンドン活用してみてください。せっかくブロードバンド接続をしているなら、使わなきゃ損ですよ。
posted by Metzenbaum at 22:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ
2006年05月07日

昨日買ってきた参考書2冊

昨日、大きな医学書センターが入っている本屋に行ってきました。
そこで見つけてきた本を2冊、ご紹介します。

◆『エキスパートナース』5月号特集〔モニター心電図わかるガイド・・読み方、伝え方、対応法〕

エキスパートナース2006年5月号「モニター心電図わかるガイド・・読み方、伝え方、対応法」ひとつは本、というよりは雑誌ですけど、看護婦にはおなじみの『 エキスパートナース Expert Nurse 』の5月号。

特集記事が「モニター心電図わかるガイド・・読み方、伝え方、対応法」というもので、この特集記事、なかなか良かったです。『エキスパートナース』誌はふだんは立ち読みで済ませるんですけど、思わす即買いしてしまいました。

内容はというと、別冊付録になっている「ニガテ克服! モニター心電図基本マスターブック」の方で、P-QRS-Tの波形の意味など基礎のおさらいをして、本特集の方でありがちな重要な不整脈(ST変化を含む)の意味と対応方法が詳説されてます。

この特集がいいなと思ったのは、心電図の読み方に徹するのではなく、あくまでも急変時対応もしくは急変の前段階をを察知するためのツールとして位置づけられている点。

滅多に見ないような優先度が低い波形のことは触れられていませんし、この波形を見たらどう対応するかという部分が強調して書かれてますので、モニター心電図入門編としては良い作りになっていると思います。まったく初心者だけど、勉強したいと思っていた、そんな人にはかなりお勧めできる特集記事です。

実は来月あたりに、職場内でモニター心電図に関する勉強会を企画しているのですが、その資料にしっかりと取り入れさせてもらおうと思っています。


◆『これだけは知っておきたい 手術室ナーシングQ&A』

or_nursing_qanda.jpgもう一冊は最近出版された手術室関連書で「これだけは知っておきたい 手術室ナーシングQ&A」という本。先月発行されたばかりとあって、最新の内容なので読んでいて非常に安心感のある本です。


つい昨日もブログの話題として取り上げましたが、ここ数年でオペ前の手洗いの方法が大きく変わりましたし、滅菌期限の考え方とか、術後の創消毒など、エビデンスに基づいて見直しをされている事柄がいっぱいあります。

ちょっと古い本なんかを参考にしてしまうと、今となっては明らかな間違いということがとかくありがちで、現場でも非常に混乱になっているんですよね。

その点、この本に書かれていることは最新の内容だから大丈夫という安心感があります。エビデンスレベルということで、その情報の信頼度というか、どの程度根拠性があることなのかという指標が書かれているのもいいです。(心肺蘇生の国際ガイドラインにマネなのか、最近この手の指標をよく見ますね)

内容はというと、外回り業務・器械出し業務問わず、オペ室初心者がひっかかりがちな疑問点を全94問、Q&A形式で書かれてます。内容が気になる方は、次ページに目次を列挙しておくので参考にどうぞ。


(続きを読む)
posted by Metzenbaum at 10:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ
2006年04月25日

看護雑誌からの情報は重要です! 特にオペ室Ns.には。

医療職には、生涯学習が求められると言われています。医師にしても看護師にしても、日々変わりつつある医療事情に付いていくために、日々の自己学習は欠かせないものとなっています。

その点、やっぱり日頃から雑誌類に目を通しておくことは重要かなと思ってます。

◆ 手術看護専門雑誌ならなんと言っても『オペ・ナーシング』

手術室看護専門雑誌オペナーシング ope nursingicon手術室看護に関しては、メディカ出版から、『オペナーシング Ope Nursing』という専門雑誌が出ています。手術室看護をテーマとした雑誌としてはおそらく日本唯一のものだと思います。

皆さんの職場でも部署として定期購読していると思いますが、そうでなければ病院図書室に購読を依頼するなどして、定期的に目を通せるようにしておいた方がいいでしょうね。

病棟業務であれば、たとえ専門領域(診療科)が変わってもさほどやることに違いがありませんが、その点、オペ室は特殊すぎて、病院内の他のスタッフと情報交換できる部分が少ないです。だからこそ、こうした専門誌からの情報が非常に重要になってきます。

特にオペナーシングの毎年4月号iconは、新人オペナース向けの特集が組まれています。最初に新人手術室看護師が押えておきたい知識・技術がまとめてありますので、決して安い雑誌ではないけど4月号くらいは自分用に手元に置いておいてもいいかもしれません。

月刊誌『オペナーシング』に毎号目を通すこと、これはオペ室に配属になった以上、最低限の自己学習だと思っています。(実はこのブログのネタも、振り返ってみれば結構この雑誌からのものが多かったり、、、)

◆ 余裕があったら看護総合雑誌も是非! 実力に差が出ます

私の場合、オペ・ナーシング誌は価格が高い(約1,900円!)ので部署購入のものを昼休みに読ませてもらう形で済ましてます。

それとは別に看護業界全般のことも把握しておきたいと思っているので、看護総合雑誌、これは自分で購入して読むようにしています。その他、個人的な関心から、『エマージェンシー・ケア
icon』(救急看護領域の専門誌)も目を通すようにしていますが、これは本屋での立ち読みがもっぱら(^^;  たまに興味のある号は買ったりしますけどね。

本当は病院図書室に置いてあればいいんですけど、うちの病院には、看護管理とか看護学雑誌といったお堅い管理者向けの雑誌しか扱っていないんですよ。

で、やむなく自腹 or 本屋で立ち読み。

とにかく総合看護雑誌も必ず一冊は目を通すようにしておいた方がいいです。オペ室という閉鎖的な空間に閉じこもっていると、ホント他のことが見えなくなってしまうので、、、。

意外とこの業界も変わるんですよね。特に近年、なんでも「エビデンス」ということが言われていて、看護・医療界ではいろいろなことの見直しがなされています。術後の消毒やドレッシング、褥瘡処置などは、いま劇的に変わっている部分でしょうね。そうした流れに付いていくためにも総合雑誌で、広く浅く看護界を俯瞰しておくことは重要です。

あと、オペ室というと外科の最たるものという感じで、内科系の疾患のことがホントわからなくなってしまいます。内科の看護婦さんと話していると、聞いたこともないような病名がいっぱいで焦ってしまったり。

看護師として普通のことを普通に知っておくためにも、総合誌はいいですね。

看護総合雑誌というと、「エキスパートナース」「ナース専科」「月刊ナーシング」あたりが有名どころでしょうか。私が個人的に好きで定期購読しているのは「月刊ナーシング」。3つ挙げた中ではいちばんお堅い感じがする雑誌で内容が詰まっている感じが気に入っています。

別にこうした中堅雑誌でなくても、学生時代から読んでいた「プチナース」「ナースビーンズ」「ナースカレッジ」でも、とにかく何でもいいと思うんです。オペ室配属になったから病棟の話は関係ないやと思ってしまうのではなく、ぜひ継続して専門分野別ではない看護雑誌のことも忘れないでください。

手術室に配属になって最初のうちは、なにかと余裕がないかもしれませんが、やがてまた病棟に異動になる日のことも見越して、専門知識以外にも看護師としての一般基礎知識は蓄積しておくことをお薦めします。

看護一般雑誌を購読してると、一年後には、そうでないオペ室同期との知識・視野の幅の違いを、自分でもをつくづく実感すると思いますよ。
posted by Metzenbaum at 21:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | 看護師スキルアップ