2016年11月21日

医師の指示受けず救急隊員が「特定行為」・・・ナースの無責任さ!?

ナースの責任が問われそうな事件がありました。



温度差、というんですかね。

医師の指示でしか医行為が行えないという点では、看護師も救急救命士も同じですが、病院内というブラックボックスで守られている看護師と、メディカルコントロール下で検証の対象となる救急救命士の違い。

そんな認識が看護師に薄かったんだろうなと思った次第です。

看護師は「臨時応急の処置」ということで、緊急時には医師の指示がなくても診療の補助として医行為を行えることが保助看法で規定されていますが、すべての業務が緊急時とも言える救急救命士業務にはそのような例外事項はありません。

病院内であれば、日ごろ顔が見える主治医との関係性の中で、看護師の医行為について、比較的敷居が低いのが現状ですが、救急救命士が置かれているメディカルコントロールの世界観はまた別の話。


そもそも看護師で、看護師免許と救急救命士免許の関係性や位置づけについて理解している人ってほとんどいないですよね。

まったく別の専門職種と思っていて、救急救命士が看護師免許の範囲内で規定された資格であることすら知らない人が多いです。

戦争法案の関係もあって、救急救命士の業務拡大が目立つ昨今ですが、免許をもった立場である以上、看護師も自分が行う行為の法的根拠は把握しておくべきですし、今回のような軽薄でズサンな対応も問題として認識すべきだと思います。





posted by Metzenbaum at 00:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | ope室以外の医療ネタ
2014年05月21日

「医は仁術」展 東京上野国立科学博物館

東京上野の国立科学博物館で開催されている「医は仁術」展。

江戸時代の医療技術展という、ちょっと変わった企画。

ドラマ「仁」の世界、そんな企画展です。(といいつつも、私は、仁、見てなかったのですが)

今の日本は西洋医学が主流ですが、歴史的に見ても、全身麻酔を世界に先駆けて実現したのは日本の華岡青洲ですし、東洋とも西洋ともつかない不思議な文化を培ってきた日本の医学史。

期待ほどではありませんでしたが、まあ、面白かったです。

「医は仁術」展


このブログでも過去になんども古い手術器具とか、外国の医療史博物館の話題は取り上げてきましたが、そんな延長でこの展覧会のことも取り上げてみました。

展示物はというと、かつての医学書や図譜が中心。

私の好きな昔の医療器具はそれほどなかったです。

展示として目を引くのは昔の解剖図譜。

刑場で首を切られて、そのまま解体されていく場面の絵巻物(?)が、これでもか! というくらいに並んでいます。基本、筆で書かれた「絵」なのですが、リアルな解剖場面とはまた違う生々しさがありました。

医療者じゃない人とデートで行くのは避けたほうがいいかな。

問題ありで今は日本から根絶された「人体の不思議展」、カップルで来ている人が多かったけど、あんな気軽な感じとはちょっと違って少しヘビーな印象。

ターヘル・アナトミアに代表されるように江戸時代の医学といえば、刑場で腑分けがシンボル的な印象はありますが、どうもそのあたりのイメージ先行な構成だった印象は否めません。

あと、医学的な監修がどうのこうのという企画展でもないため、基本コンセプトは極めて素人チック。

このあたりが鼻につく医療者もいるかもしれません。

そもそもタイトルである「医は仁術」ってやつ。

その意味するところは損得なしに人を助ける心、みたいな論調のようで、まあ、医療者を志す初心としては大切だし、いいと思うんですが、良くないなと思ったのが、展示の一番最後にある無声動画のアニメーション。

ギネの医者をしているお母さん。親子で遊園地に行っている時も緊急呼び出し。娘の誕生日でも仕事優先。それで娘がグレてヤンキーに。そんな中、お母さんが脳出血(?)で他界。娘はグレたことを後悔。そこで幻想の世界で、生きていた頃のママの病院での仕事ぶり、人々から感謝されている姿を見て、涙する、みたいなアニメ。そこに妻や母親を犠牲にして全身麻酔薬を開発した華岡青洲とか、無料の診療所を設置した江戸時代に人の姿などを重ねている、という構成になっています。

家族をないがしろにして、家庭崩壊に至る産婦人科の女医家族。

それを仁術とからに結びつけるのは浅はかすぎないかい? と思ってしまいます。

命に関する責任のある仕事をしているのは尊い。それは否定しません。

しかし、OFFの日まで、子どもの誕生日を蹴ってまで仕事に行かなくちゃいけないというのは、仁術なんかじゃなくて、ただの労働システムの不備だと思うんですよね。

医者の世界はそれが当たり前なのは知っています。でもそれをあたりまえと思っちゃいけない。

看護師ではそのようなことは基本ありません。(オペ室は近いものがありますが)

なぜなら、交代勤務で雇用人数が確保されており、チーム制が敷かれているからです。

日本の医者はなぜそれができないかって、医者の人数が少ないから。

でもそれは国のせい。医者が増えすぎないようにコントロールしているのは国ですからね。
厚生省の医師需給見通しに基づいて閣議決定されるのが全国の医学部定員。

人間としてあたりまえの労働条件を叶えるためには、医師を増やす、つまり医学部の定員を増やす必要があるのにそれを規制して増やさないのは国の施策。

理由は知りませんけど、そうやって医者をこき使うシステムの不備を「仁術」とやらで、美談化する風潮は受け入れられません。

この「医は仁術」展、きっとコンセプトは一般受けする内容と思いますが、医療従事者の方たちはどう感じたでしょうか?




posted by Metzenbaum at 23:51 | Comment(1) | TrackBack(0) | ope室以外の医療ネタ
2013年04月08日

学生時代のレポート 『自殺、医療拒否、尊厳死』

今、書いている本のネタ探しで昔のハードディスクの奥を探っていたら、学生時代に書いたレポートがわんさかと。その中から1本をご紹介します。何の授業のレポートだかはわかりませんが、『自殺、医療拒否、尊厳死』というタイトルがついてました。

生命倫理かな? 文化人類学なんて言葉も出てきてるけど、そんな授業はなかった気がするし、、社会学?

10年以上前に書いたものですが、医療者として考えたい「生きる意味」について、参考になりましたら。



『自殺、医療拒否、尊厳死』

Quality of lifeという言葉をよく聞く。生きながらえることだけに意味があるのではなく、その質こそ重要という考え方で、いま現在それを否定する声はあまり聞かれない。

医療界でもQOLという言葉は日常的に使われて、ごくあたりまえのものになっている感がある。しかし現実はどうかというと、根底部分の古い体質はまったく変わらず、小手先だけQOLに終始している気がしてならない。

いうまでもなくQuality of lifeのQuality(質)は、ひとそれぞれ個別の価値観によるものである。どういうふうに生きたいか、なにをもって幸福と感じるかは人それぞれによって違う。その価値観は他人が冒してはいけない『尊厳』を持っている。

しかし日本の社会では、QOLといいながらも「常識」という名の価値観を押し付けてはいないだろうか。

ことに死をタブー視する風潮は、私には不思議に思える。QOLといいながらも死の問題が絡んできた場合、世論は冷静な判断力を欠き、固執した観念と感情論に終始している気がする。

自ら死を選ぶ行為は許されないのだろうか? 死んでしまっては元も子もないというのはもっともなことだとは思う。しかし死を内包した決断は許されないのかといったらそんなことはない。

たとえば冒険家と言われる人たちがいる。彼らは積極的に死ぬつもりはなくても、ある意味死へ近づく歩みをしている。もしかしたら死ぬかもしれない。それは自分の積極的な行動によって引き起こされる結果だ。(河野平市氏が北極で亡くなったのは記憶に新しい)

このことからも示唆されるように、人には死にもまして優先しすべき事柄というのが存在しうる。いまでもときどきみられる宗教団体の集団自殺も歴史的にみれば珍しくない。日本でもキリシタン迫害で死を選んだ人が少なからずいた。

宗教を含め、しばしば信条のために死を選ぶことは、これまでもよく見られた。実は現在でもそういった事件は少なくない。「あいつはバカだ」「気が振れていたんだ」、そういって一笑に付すことは簡単だが、その裏にある個人の価値観を理解しようとする姿勢が医療者にとってとても重要であると思う。

末期ガンで尊厳死を選ぶという行為はだいぶ理解されてきたように思う。傍目から見ても苦しそうでどうにかしてあげたいという直接感情に訴えかけるものだからかもしれない。

では、たとえば医療拒否についてはどうだろう? 人それぞれの価値観の多様性ということを医療者は十分に受けとめられているだろうか? ときとして奇抜な理由で治療を拒否する人もいる。有名なところでは宗教上の理由で輸血を拒否するグループが知られている。「神が禁じているから」というのがその理由のすべてであって、医療者が理屈をもって説得に入り込む余地はほとんどない。

そんな場合でも医療者は納得して相手の尊厳を尊重することができるだろうか?

輸血をすれば助かるのは確実なのに、それをしないがために目の前で命がなくなっていくのを見守らなくてはいけない。

それはまったく理解できないことかもしれない。しかし、本人の幸福のために、QOLを考えるなら受けとめなくてはいけない。

幸か不幸か、日本では個別意識が弱い。細かいところにまで常識といわれる価値観が入り込み、宗教的な背景をもたなければ、多様な価値観・信条があるという教育もあまりされていない。

だからこそ、看護教育にも文化人類学が取り入れられているのだろう。今後、病院で働いたときにさまざまな文化背景をもった人と関わっていく可能性がある。自分の価値観・倫理観を確立することは重要でも、それに凝り固まることなく、柔軟にとらえることができるようになっていきたい。


【参考文献】
・本田勝一:「冒険と日本人」、朝日新聞社
・石原明:「医療と法と生命倫理」、日本評論社、1997
・竹田純郎・森秀樹編:「死生学入門」、ナカニシヤ出版、1997
・日野原重明:「現代医学と宗教」、岩波書店、1997



posted by Metzenbaum at 01:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | ope室以外の医療ネタ
2012年09月18日

世界が輸入禁止にしている日本の放射能汚染された食品一覧

前回、諸外国が日本の食品を輸入禁止にしているという事実をお知らせしましたが、リンクした農林水産省のページはどうもいまいちわかりにくいというご意見もあり、あの表をわかりやすくイラスト化してくれているページを見つけました。

諸外国が輸入禁止にしている日本の放射能汚染された食品


『「世界が輸入禁止にしている食品」をチラシにしました』
http://kingo999.blog.fc2.com/blog-entry-854.html


サイト内に詳しい説明と、印刷用のPDFファイルへのリンクもあります。

参考にどうぞ。


posted by Metzenbaum at 13:37 | Comment(17) | TrackBack(0) | ope室以外の医療ネタ
2012年08月25日

諸外国は日本からの食品輸入を規制している【放射能汚染】

こういうこと書くと、また叩かれるんでしょうけど、書きます。

もうすっかり喉元過ぎた感じでみんな忘れてる原発事故。

私たちが口にする食品は、放射能で汚染されました。

程度の差こそあれ、日本国内で放射能汚染されていない食品を手に入れるのが困難という異常事態にあるにも関わらず、それが当たり前になってしまった今日この頃。

日本国内では「安全です」という声しか聞こえず、危険をほのめかすと風評被害だ、デマだと叩かれる空気。

政府やテレビ、新聞が安全だと言ってるから安全なんでしょ? と、私たちは刷り込まれていますが、ぜひ知っておきたいのは、外国の見方。

原発事故のせいで、世界各国は日本の食品輸入を禁止しているという事実を知ってましたか?

この情報は農林水産省のウェブでPDFで公開されています。

http://www.maff.go.jp/j/export/e_info/hukushima_kakukokukensa.html
農林水産省放射能汚染食品の各国輸入規制

諸外国・地域の規制措置(PDF:543KB)」 という部分をクリックするとPDF文書が開きます。

少なくとも、このリストに上がっている国は、日本の食品(産地と種別が細かく指定されています)は危険であると宣言しているわけです。

これも「風評被害」なんでしょうか?

人の健康にひときわ関心が高いはずのナースの皆さん、自分の目で確かめて、考えてみてください。


posted by Metzenbaum at 23:41 | Comment(4) | TrackBack(0) | ope室以外の医療ネタ
2010年12月26日

ホノルルマラソンの医療ボランティア

先日開催されたホノルルマラソン。

AHAインストラクター仲間のナースが、医療ボランティアで参加してきたそうです。

その様子がブログにアップされています。

AMR-PEARSコース ‥Nsインストメモ・・
http://rturismo.blogzine.jp/blog/2010/12/index.html

ボランティアでわざわざ海外まで、と考えるとスゴイですが、でもブログを見ていたら来年は自分も行きたいなぁと思うように、、、、


ボランティア参加の条件は、AHAのBLS for Healthcare providerコースを修了しているBLSプロバイダーであること。


いちおうアメリカなので、アメリカ発行のUSカードが原則のようです。

日本の国際トレーニングセンターで取得したAHAカードと、アメリカ登録の AMR-JAPAN のAHA-USカード、どう違うんですか? とはよく聞かれる質問ですが、こんな程度には違うようです。(笑)
posted by Metzenbaum at 01:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | ope室以外の医療ネタ
2007年08月26日

砕氷船しらせの医務室−自衛隊の中の看護師

休日の今日は、海上自衛隊横須賀基地の一般開放に行ってきました。

護衛艦の中に入れるということで楽しみにしていたのですが、結果的にいちばんおもしろかったのは基地内で垣間見る医療のニオイ(!?)でした。

見学ができる護衛艦の中に並んで、オレンジ色でひときわ船体がおおきな船があって、なにかと思ったら南極観測船(砕氷船)しらせ。(南極観測って自衛隊の管轄だったんですね。てっきり文部省とか通産省だとばかり思っていました。)

砕氷船しらせ

しらせの船内を順路を巡っての見学でしたが、見学コースの中に船内診療所というか医務室がありました。ドアから覗き込むだけでしたが、なんだか嬉しかった〜 歯科用の診察台なんかもしっかり完備されていたし、心電図モニターや除細動器もあったりして、どんな人がここに勤務しているんだろうとあれこれ考えてしまいました。

砕氷船しらせ医務室

砕氷船しらせ医務室にあった除細動器

海上自衛隊の船なので、当然診療スタッフも自衛隊の医官や看護官(っていうのかな?)なんでしょうけど、看護の仕事としてこんな領域もあるんだなと思いました。

無影灯が設置されていて、その下の診療台(?)はテーブルクロスが敷かれていて、なんだか食堂の長テーブルのよう。南極へ向けて何ヶ月も大洋を航海する船ですから、それなりの外科的処置も行える設備はあるんでしょうけど、まさかあの下がオペ台? には正直見えませんでした。

実際のところ、どの程度までの医療処置が行えるのか、スタッフがいればあれこれ聞きたいところだったのですが、残念ながら今回はただ見るだけで終わってしまいました。



基地開放は炎天下での大きなイベントなので、桟橋には救護所が設けられていました。そこには白い自衛隊のユニフォームを着て、赤十字の腕章を付けた救護スタッフの姿が。あの人たちが自衛隊所属の医師や看護師なのかなぁと思ったのですが、小心者の私は声を掛けることもできず、ただ素通りしただけ。

後でもらったパンフレットによると、海上自衛隊には「衛生隊」という部隊があって、看護師・救急救命士・放射線技師・臨床検査技師などは衛生隊の所属になるようです。

パンフレットによると、海上自衛隊の衛生隊員の基本資格は准看護師なんだそうです。

まずはふつうに海上自衛隊に入隊して、一般隊員として勤務。その間に適正を見られて選考に通ると自衛隊横須賀病院准看護学院という2年課程に進学。准看護師免許を取得すると衛生員として勤務ができる。その中からさらに選抜試験に通るとより専門課程に進めて、正看護師、救急救命士、臨床放射線技師、臨床検査技師課程を受けられるのだとか。

つまり海上自衛隊では例えば臨床放射線技師であっても、准看護師免許を持っていて臨床経験もある人ばかりということなんですね。それってある意味心強いかも。確かに船上という限られた人的資源の中に放射線のことしかできない人を置くよりは基礎資格として看護ができるというのは意味があると思います。看護師(准看護師)は医師の指示さえあれば資格的にオールマイティーですからね。

とはいえ、准看護師養成課程が廃止に向かうこの時代に、准看が標準資格というのはどうなのかなという疑問も残ります。

これが海上自衛隊ではなく、陸上自衛隊とか航空自衛隊だとまた事情は違ったりするんでしょうか? 確か陸上自衛隊では、看護師免許を持っている人を対象に採用枠があったような気がします。

看護師として働く上での職場としての自衛隊。

なんだかちょっと興味が湧いてきました。
posted by Metzenbaum at 01:04 | Comment(9) | TrackBack(0) | ope室以外の医療ネタ
2007年06月12日

針刺し事故

このまえ、「針刺し」をやってしまいました。

患者さんの心拍が下がって、急いでアトロピンをシリンジに吸おうとしたら、アンプルを持っている指をブスッと。

これまで縫合針では何度かありましたが、注射針で自分を指してしまったのは初めて。

やっぱり慌ててるとダメですね。


注射針での針刺しというと、リキャップのことがよく言われますが、考えてみると、1ml程度の小さなアンプルから薬液を吸うときも、動作的にはほとんどリキャップとおんなじ。

むしろリキャップより口が小さくて危ないのかも。

でもアンプルから薬液を吸う動作についてはあまり問題にされているのを聞いたことがないよなぁ。

アンプルから薬液を吸い取るときは、採血などと違って、血液汚染された針ではないから、問題ないということなんでしょうか?

アトロピンとかエフェドリン、ボスミンなどは、小さいアンプルながら急いで使うことが多いだけに、針刺し事故がたくさん起きていそう。

あ、そっか、だからエピクイックとか、プレフィルタイプの薬剤ができてきたのか。。。

スイマセン、ひとり納得でお終いです(^^;
posted by Metzenbaum at 10:24 | Comment(16) | TrackBack(1) | ope室以外の医療ネタ
2007年05月06日

「患者様」でいいの?―朝日新聞記事

2007年5月2日付の朝日新聞夕刊の一面に、

 「患者様」でいいの?

という記事が載っていたのを見た方いらっしゃいますか?

このブログでも「患者様って言い方、おかしいよねぇ〜」という話を取り上げましたが、ついに新聞ネタにまでなったか! という思いで読ませてもらいました。

あいにく夕刊で、事件性もない記事のせいかネット状の asahi.com には掲載されていないのが残念なのですが、リード部分だけ引用させてもらうとこんな感じ。


「患者様」という呼び名が病院ですっかり定着した。しかし、好きで病気になったわけでもないのに、違和感を感じる人もいる。もともと患者の立場を尊重した医療の実現などを意識して使われ始めた言葉だが、「日本語としておかしい」という指摘もあり、「患者さん」に戻す病院が出てきた。


そうですよね、やっぱりそれがふつうのカンカクだと思います。そのうち、「昔、患者様なんて信じられない言い方をしていた時代があったんだよ」なんて笑い話みたいに言う日がくるのかもしれませんね。

「患う者」というそもそもがマイナスイメージの言葉に、様という敬称を付けるのは滑稽だよねと以前のブログの中で私は書きましたが、同じようなことを国語学者の金田一春彦氏が言っていたそうです。

閉鎖された医療業界。こんなふうに外部からポンッと問題提起されると、意外とササッと流されていくんじゃないかな。今後の医療関係の雑誌記事などの動向を見守っていきたいと思います。


追記:
asahi.comのサイト内をもう一度検索したら、見つかりました!
タイトルはちょっと違ったけど内容は同じです。

「患者様」ちょっと違和感 「患者さん」に戻す病院も
posted by Metzenbaum at 19:46 | Comment(5) | TrackBack(0) | ope室以外の医療ネタ
2007年04月15日

「日本旅行医学会第6回大会」に行ってきました

4月14日、15日に開かれた「日本旅行医学会」の大会に行ってきました。

旅行医学ってなによ? って感じかもしれませんが、これがなかなかおもしろい集まりで、会員は医師・看護師、それにフライトアテンダント(いわゆるスチュワーデスさんですね)と旅行添乗員。そう、医療関係者だけではないんです。

ねぇ、おもしろいでしょ?

主に海外旅行の安全を医学的に考える学術団体で、扱っているテーマは、ロングフライト症候群、高山病、熱帯病(感染症)、僻地医療などなど。日本の看護学校や病院では教わらないようなこと、でも決して縁遠い話ではないことばかりが目白押し。

学生時代には数ヶ月単位で海外バックパッカー旅行を繰り返していた私としては、非常に興味があるところだったのですが、ようやく重い腰をあげて今年初めて大会に顔を出してみました。

いや〜、おもしろかったですね。私が学生時代以来温めていた「視点」が、こんなにまでしっかりと学問として語られる場があったとは、、、

今年の大会テーマは、

「小児の旅行医学」ー親子の深い絆と思い出のために

ということで、海外旅行に子どもを連れていきたいけど、いざというときはどうしたらいいの? という最近では特にありがちなテーマに焦点を絞っての演題が続きました。

ハワイや香港での医療体制の紹介や、食物アレルギーの現状とアドレナリン自己注射を海外に持ち出すときの注意や、薬の管理、小児喘息の特殊性、海外での保険についてなどなど。

海外からの発表もあって、スイスの「空飛ぶ救急車」REGAの運用の実際などは非常に興味深かったです。

海外旅行のために、というのが最大のテーマですが、周辺事情としては僻地での救急医療体制や災害医療、国際支援とも密接につながっている内容ですし、医療関係者に限らず、旅行関係者などの視点も入っている点がとても大きな特色となっている感じでした。

学生時代からの海外への視点と、最近のマイブーム救急医療がここにきてつながってきた気がします。いろんな示唆を得られた貴重な体験でした。

今日のところは総花的な感想を書きましたが、明日あたりに「日本旅行医学会第6回大会」を通して考えたことを少し掘り下げて書いてみようと思います。メインテーマは「ERCガイドライン2005」です。
posted by Metzenbaum at 21:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | ope室以外の医療ネタ
2007年01月01日

患者「様」という言い方、おかしいと思います

このまえから「輸液の話」第二段を書き始めているのですが、どうも気分が乗らず。
新年早々雑談からスタートです。

今日のテーマは「患者様」という呼び方について。
最初、この患者様という言い方を聞いたとき、ふざけて言ってるのか!? と思いました。
慇懃無礼というか、こんなミスマッチなイメージの言葉、定着するはずはないと思っていたら、いつの間にか全国に広まっていきましたね。

昔ほどの違和感はないけど、今でもやっぱりヘンな言葉だと思っています。

私が感じるこの違和感はなんなのか? それをどう説明したらいいかと悩んでしまうのですが、やっぱり「ミスマッチ」ということに尽きると思うんですよね。

「様」をつけることで、相手を目上に持っていこうという意図なんでしょうけど、だったらそもそも「患者」というマイナスなニュアンスの言葉自体を変えなくちゃ意味がないんじゃないの? と思います。

患(わずら)う者、ですよね。そんな表現をする以上、そこには「どうぞお助け下さい」とすがるようなイメージがあるとは思いませんか? そうであるなら、いくら「様」をつけて上位イメージをつけようとしても、これは滑稽でしかありません。助けて欲しいとすがるわけだから、助けて進ぜようという医療者が優位に立つスタンスが自然に生まれるのは当然のこと。これじゃ根本的に相手に「様」をつける意味ないじゃん、と思うのです。

患者という言葉はあくまでも状態を表わすだけの客観的な言葉であるはずです。決して呼称ではありません。例えば似たような言葉で「障害者」という言葉があります。これは「障害を持っている」という人の状態を表わすだけであって、決して呼びかけには使いません。「そこの障害者!」なんて呼びかけたら完全に差別発言ですよね。それじゃ、障害者様と呼べばいいのかというと、どう考えてもそれはおかしい。

それとおんなじだと思うのです。なぜか患者さんを患者さまに変えることでお茶を濁したけど、実は「さま」でも「さん」でもどうでもよくて、問題は「患者」という部分にあると思います。あくまでも医療サービスを受けにきているだけの人なのだから、「お客さま」でいいと思うし、そこに商売気が感じられて不適切というのであれば、福祉の世界のように「利用者さん」という言い方の方がいいんじゃないでしょうか。

病院を利用する人にもいろいろいます。例えば人間ドックで検診を受けに来る人は、基本的に健康ですから「患者」じゃありませんよね。その部署ではどんなふうに呼んでいるのでしょう? 出産を控えた人も患者じゃありません。産婦さん? 赤ちゃんを産んだばかりの人は褥婦さん?

まあ、基本的には個人を呼ぶなら「佐藤さま」みたいに固有名詞で呼べばいいんでしょうけどね。問題は「患者様各位」みたいな病院利用者一般向けの案内表示くらいなのかもしれません。


もうこれだけ浸透している「患者さん」という言い方を私は否定しません。

でも「患者様」はどこか間違っていると思う。「様」という敬称を付けたいのであれば、そんな子ども騙しみたいな小細工でごまかすのではなく、原点に戻って「患者」という言葉をきちんと考えて下さい、と言いたいです。
posted by Metzenbaum at 18:11 | Comment(15) | TrackBack(0) | ope室以外の医療ネタ
2006年10月27日

香港医学博物館レポート

先週末から、遅い夏休みをとって香港に行っていました。
香港医学博物館」をというちょっとマイナーな博物館にも足を延ばしてみたので、
たまには気分を変えてレポート風に書いてみたいと思います。

香港医学博物館 Hong Kong Museum of Medical Sciences の看板

香港島の中心地、上環駅から歩いて15分ほどの高台に 香港醫學(医学)博物館 はあります。近くにはアンティーク屋や露天のガラクタ屋が軒を連ねる Cat Street などがありますが、あたりは観光地というよりは庶民の下町といった感じの町並みでした。

元検疫検査所だった建物を改装して作られた博物館は、茶色いレンガ造りでとても風情のある感じ。ノスタルジックな洋館です。

香港といえば1997年の中国返還まで長くイギリスの植民地でした。もともとあった漢方や鍼灸を中心とした中国医学と西洋医学が折り混ざっていた場所でもあります。西洋医学に関する資料館・博物館は世界各地にありますが、香港医学博物館のように、東洋医学と西洋医学が重なった流れを追っているあたりはとても珍しいそうです。

纏足のX線写真香港醫學博物館でひときわ目を引くのは纏足(てんそく)に関する展示かもしれません。

纏足というのはかつて中国で行なわれていた体型矯正(?)文化のひとつで、女性の足を矯正して小さくするというもの。幼少のころに無理矢理足をヒモで締め上げて、通常であれば20数センチになる足を10センチくらいにしてしまうものですが、その纏足のX線写真が展示されていました。

まるで馬の蹄のようになっていたんですね。どう考えたって不自然です。当然うまく歩けるわけもなく、虐待的な要素が強いため、現在は法律で禁止になっている過去の文化です。私もここに行くまで纏足がなんたるかを知らなかったのですが、纏足の歴史的背景や「纏足の作り方」などを紐解いてみると非常に痛々しいものがありました。かつてはそれが「正しいこと」として常識的に行なわれていたことを考えると、常識ってなに? と考えさせられます。

西洋医学の部分では、かつて使われていた医療器具がいくつか展示されていました。私が注目したのは昔の手術台や無影灯、麻酔器など。へぇ、こんなものまで展示されているんだと、オペ室看護師としてなんだかうれしくなってしまいました。

手術器械としてはなぜか鉗子分娩に使う児頭鉗子が並べてありました。そういう特殊な器具ではなく、もっと一般的な手術器械を見たかったなぁ、と思うのは個人的な希望。ペアンとかコッヘルなんかは昔から変わってなかったりするのかな。

その他、昔使っていた頸椎のハロベストだとか、竹でできたシーネなんかもありましたね。竹製というのがいかにも中国っぽい感じです。



陶器でできた昔の解剖台オペ台の他には、白い陶器でできた解剖台なんてものもありましたね。ちょうど解剖室が地下部分にあって、建物自体の古めかしい雰囲気とあいまって、ひとりで入っていくにはちょっとドキドキする感じがしました。

病理標本もいくつか展示してあって、脳内出血を起した脳や、結石がたまった膀胱、腹部大動脈瘤などがホルマリン固定されていました。こうした人体標本も日本の博物館等ではなかなか見ないものかもしれません。(最近でこそ「人体の不思議展」なんてものもありますけど)

おもしろかったのは中国に伝わる医学書の一部がパネルとして展示されていたあたり。骨折の整復方法などが図説してあって、おそらく経験則から成立したものだと思うのですが、今の整形外科の徒手整復の教科書に書いてあることとほとんど同じだったり。

博物館としては、展示品目が少なかったり、イマイチぱっとしない感じではありますが、医療従事者が見る上ではなかなか興味深い場所でした。いちおう日本語のガイドブックにも紹介されていますので、香港にいって時間があったらチラッと覗いてみてもおもしろいかもしれません。香港の地下鉄はわかりやすいし、地下鉄の上環駅から歩いて15分くらいなので気軽に行けますよ。オペナースだったらそこその楽しめるはず。視点が他の人と違うはずですから(笑) たぶん観光ツアーに組まれるような場所ではないだろうなぁ。

posted by Metzenbaum at 23:33 | Comment(2) | TrackBack(0) | ope室以外の医療ネタ
2006年09月05日

「除菌」ってなんですか?

最近、という程でもないけど、テレビを見ていて気になる言葉がある。
それは、

 『除菌』

食器洗い洗剤から、部屋のニオイ取りのスプレーまで、テレビをつけていると"除菌"という言葉を聞かない日はない。

私はオペ室/中央材料室の看護師として、滅菌や消毒に関しては、人並み以上には知ったつもりでいる。でも私は「除菌」という言葉の意味・定義を知らない。

いったい、除菌ってなに??

少なくとも医学用語ではないと思う。教科書には載ってないもん。
化学メーカーが無知な素人相手に考え出した宣伝文句か〜、と私は勝手に理解している。

その昔、抗菌グッズというのがやたらと流行った時期があった。個人が使うボールペンまで抗菌にしてなんの意味があるの? それにそもそも抗菌っていったいなによ?? サルファ剤でも塗布してあるのか? と思ったが、意味も分からず世の中で流行ったのは事実。まあ、すぐに廃れたけど。またそんなヘンな衛生ブームの再来か? と思っているのだけど、それは俗世間の話だけでは終わらなかった。

最近、私のいる手術室では床拭き用として「除菌」を呼び物とした家庭用化学洗剤を導入するようになったのだ。かつては消毒薬(次亜塩素酸ナトリウム)を使って床拭きをしていたけど、床面の消毒は意味がないという認識から、ただの水拭きに変わった直後の話だった。

どうして変わったの? と、化学洗剤導入を決めた手術室の感染対策の責任者に聞いたところ「除菌効果があるからこっちの方がいいのよ」、だそうな。

あ、あの、主任、、、「除菌」っていったいなんですか??
消毒がナンセンスだからあんなに揉めつつも水拭きに変えたんじゃないんですか??

看護婦の、しかも消毒や殺菌・感染にもっとも詳しいはずの人から「除菌」という非科学的な言葉が出てきたときは思わず固まってしまった。少なくとも医学では除菌なんて言葉は教わったことはないはずだし、正式な言葉でもないでしょう。

除菌について、消毒ほどの効果はないけど、ある程度の消毒効果があるものというように理解していたようですけど、、、、そうなんですか?

消毒が不要なものに対して除菌をする意味ってなに?

そのあたりは突っ込んでみましたけど、筋の通った回答はなし。

看護婦の多くは家庭の主婦という側面を持っていることが多いとは思うけど、そこはきっちり分けてほしいところだよなと思ってしまいました。

床掃除に化学洗剤を使う理由 ―― 界面活性剤でその方が汚れが落ちるでしょ? とでも言ってくれればいいのに、根拠のない宣伝文句「除菌」に期待しているなんて、私としてはとっても複雑です。
posted by Metzenbaum at 23:59 | Comment(10) | TrackBack(0) | ope室以外の医療ネタ