2009年01月10日

2009年

皆様、たいへんご無沙汰しております。

2008年も終わり、新しい年が始まってしまいました。

さて昨年はというとこのブログの休止宣言を出させてもらったりもしましたが、私にとって激動の1年でした。

もともとひとつのことに熱中するととことんはまる方でしたが、昨年は心肺蘇生法のインストラクターとして独立して、その立場を確立するために奔走していた年でした。

勤務先の病院での活動にとどまらず、市民団体を立ち上げて市民向け心肺蘇生法普及に取り組んだり、アメリカまでインストラクター修行にいったり、新たに日本救急医学会のICLSインストラクターやアメリカ心臓協会のACLSインストラクターとしても歩き出しましたし。

主たる関心事が手術室看護からBLS/ACLS普及へとシフトしてきて、だんだんと自分の中の時間配分が変わってきました。

以前は休日ともなれば、あちこちの大手本屋をはしごして、手術室看護関連の本をあさっていたのですが、昨年後半は休日のほとんどはBLS/ACLS講習への参加でブログ記事を書くような時間もほとんどとれずという状況でした。

手術室看護については、決して「極めた」なんて思ってはいません。
今の職場で抱えている"テーマ"はいくつもあるのですが、どうしてもそこに割く時間が減っていて、このブログを読んでくださっている皆さんには申し訳なく思っています。

2008年はがむしゃらに蘇生関係の講習依頼があると無条件で受けてしまっていましたが、2009年度は、少しセーブして、もうすこしバランスがとれた1年にできればいいなと思っています。
posted by Metzenbaum at 19:37 | Comment(3) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2008年03月23日

4月から手術室へ配属になる看護師の皆さまへ

4月からもオペ室に残留できることが決まりました。

オペ室という特殊な場所で働いていても、所詮は病院の中で働く看護師というコマのひとつ。

いつどの部署に異動になるかわからない不安定な立場ですが、少なくともあと1年は継続して手術室看護と関われることになりました。

振り返れば、このブログを立ち上げたのが2006年3月20日。

もう2年になるんですね。

ここであれこれ書きつつ、また皆さんからのコメント・ご質問を頂きつつ私自身も多いに勉強をさせていただきました。



さて、もうすぐ4月。

新しく手術室に配属になるナース1年生さん、また院内ローテーションで異動してくる看護師さんたちを迎える季節になりました。

オペ室への異動がきまった方たちは、今頃、どんな勉強をしよう! と気持ちを落ち着けつつ悩んでいるところなんじゃないでしょうか?

手術室看護入門としておすすめの参考書などは、過去記事でずいぶんと取り上げました。

新人必読!−オペナーシング4月号『手術室看護師一年生ステップアップマニュアル』
手術室を知るために〜オススメの本「手術室の中へ―麻酔科医からのレポート」
オペナース:器械出しに役立つ参考書 『外科手術基本テクニック』


季節柄毎年新入職員には勧めているのですが、手術室看護の専門雑誌 Ope Nursing(オペナーシング)の4月号iconはぜひ目を通しておいてほしいと思います。

おそらく職場に配属になればどこのオペ室でも部署購入していると思いますが、毎年オペナーシング誌の4月号、5月号あたりは新人オペナース向けに、「これだけは!」という点が要領よくまとまっていますので、今後の仕事の概観・また基礎固めに、なにはともあれ読むべき内容となっています。


それと関係ありませんが、今日、大手書店で2時間ばかり本・雑誌を物色してきたのですが、Nursing BUSINESS(ナーシングビジネス)誌の最新号で手術室看護の専門性について興味深い記事がありました。

アメリカの麻酔専門看護師へのインタビューや、日本での今後の手術室看護の専門性の行方に関して最新の知見があれこれ載ってました。

周術期の専門資格はあってもいいけど、術中麻酔管理を行なうような資格制度は日本では産まれ得ないだろうという意見が書かれていました。

興味がある方は書店で手にとってご覧下さいな。
posted by Metzenbaum at 01:21 | Comment(18) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2008年03月14日

江原啓之氏が看護大で教鞭を!?

休止宣言後も皆さんからの温かいメッセージ、ありがとうございました。
個別にお返事はできませんが、感謝しています。

さて、年度末も近づいて、そろそろ私の勤務するオペ室でも退職者が発表になり、もうじき、院内異動者の発表もあるはずです。

例年、発表自体は3月末日の一週間前くらいなのですが、どうやら異動者には2週間前くらいには伝えられている模様。

今のところ、私の元に話はありませんので、きっと来年度もオペ室にいられるんでしょう。

また中堅どころがごそっと抜けてしまって、大変な1年になりそうです。


手術室看護とは関係ありませんが、いますごく気になっているニュースがこれ。

『江原啓之「大学教授」就任 スピリチュアルではなく「生命倫理」教える』
http://www.j-cast.com/2008/02/26017112.html

うーん、看護の視点という意味では、近いものというか通じるものはある気がするんですけど、微妙ですねぇ。

看護専門学校あたりが、文化イベントとして単発講師を依頼するなら、わからなくもないけど、看護大学が、正式な講義として、しかも「客員教授」扱いというのはどうなんでしょう。

まあ、仏教看護ビハーラを日本文化に根ざした看護として応援(?)している私としては理解を示さなくもないのですが、この話の場合、裏に泥臭い思惑が渦巻いていそうで、単純には頷けません。

日頃、看護は科学です! とピシャッと言いきるようなバリバリの理論家の方たちはどのように捉えているのかなぁ、と興味があるところです。
posted by Metzenbaum at 01:55 | Comment(1) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2008年02月28日

休止宣言

突然で申しわけありませんが、ブログ「オペナース養成講座」を休止いたします。

せっかくたくさんの皆さまがコメントを下さるのに、私の方できちんと対応できないのが状態が私としては、つらいというか、たいへん申し訳なく思っていました。きちんとお返事をするように努力をしていたのですが、それも次第に状況が許さなくなってきて今日に至ります。

これから新年度を向けて、新たにオペ室に配属になる方たちのために、ポジティブなメッセージを送りたいという気持ちはやまやまなのですが、こなさなければならない課題が山積で、このままではどれもが中途半端で終ってしまいそうで、、、

記事の更新は、スローペースながら続けていくつもりです。
でもコメント欄への対応は、、、難しいと思います。

コメント機能を停止することも考えたのですが、よければ皆さんで手術室看護についてのコミュニティと使っていただければ、ということで残しておきます。

身勝手で申しわけありませんが、どうぞよろしくお願いいたします。


追伸:

決して日々の漫然とした雑務に追われているわけではありません。

このブログサイトをはじめてから、自分でも驚くほどの不思議な巡り合わせ、チャンスが巡ってくるようになりました。

ここから始まったいくつかのクリエイティブな新しい試み、そこにしばらく力を投入してみたいと思っています。
posted by Metzenbaum at 23:53 | Comment(9) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2008年02月10日

テレビドラマのロケ in オペ室

今日はうちのオペ室でTVドラマの撮影をやってました。

私は自宅待機のon call番。
オペがなくても現場案内で出動する予定だったのですが、運悪くロケの時間のずいぶんまえに緊急手術の連絡が!

それもほぼドンピシャで撮影とかぶる時間。

というわけで、その時間、うちのオペ室では片やけっこう状態の悪い方の緊急手術、別の部屋ではロケ隊が入っての手術場面の撮影、となんだかヘンなことになっていました。

撮影自体は小一時間で終ったので、オペ業務への支障は全くなかったのですが、オペ室の廊下には、ニセモノオペナースの姿がチラホラと。

後で、撮影のフォローで入っていた同僚看護師に聞くと、やっぱりいろいろおかしなところがあったみたいです。

手術室入口から、オペルームまでストレッチャーを押していく麻酔科医。

なぜか滅菌ガウンを着て、滅菌手袋をしている。。。。

「間違ってますよって言わなかったの?」と私。
「だって、どこまで口を挟んでいいのかわからなかったから、、、、」

あまりに間違いだらけで、一度言い出したらきりがなくなっちゃう感じだったみたい。

でも、麻酔科医が全麻導入でマスク換気する場面だけは、どうしてもと思いアドバイスをしたそうです。

ただ顔にフェイスマスクを当ててるだけだったので、EC法のマスクフォールドを指導したとか。そんな彼女はBLSインストラクター。さすがです。

いちおう医療監修ということで看護師さん(?)が来ていたみたいですが、オペとか麻酔のことはぜんぜん知らないみたい。

まあ、そんなもんなんでしょうね。

医龍みたいにこだわったドラマならともかく、ただのドラマのワンシーンですから。

でもだったら、その医療監修の人の仕事っていったいなんなの?

ナゾです。
posted by Metzenbaum at 00:06 | Comment(3) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2008年01月30日

手術室の等身大の看護を表現する

去年の暮れからの怒濤の忙しさも一段落。
なんだか急に力が抜けてしまったみたいで、いまいち勢いに欠ける私ですが、すっかりこちらの方は放置状態でごめんなさい。

書き込み下さった皆さんには、少しずつお返事を返していきたいと思っています。

今は学士(看護学)取得のために入学した放送大学の後期試験期間の真っ最中です。先週の日曜日に2教科受験してきて、今週末も土日とも試験。一日にいくつも詰め込んでしまったから、計画的にテキスト読まなくちゃと思いつつ、このまま当日を迎えるんだろうなぁ。

それが終れば、大学は中退して、学位授与機構への学位申請に入ります。
卒論相当のレポート、これもそろそろ手を付けないと、、、


こんな無駄話ばかりかいていても仕方ないので、ちょっとばかりマジメな手術室看護ネタをひとつ。

このブログの永遠のテーマで、これまで何度も取り上げている「手術室に看護があるのか?」という話しの続きです。

病院の教育システムの中に、ケースレポート(事例検討)を課しているところが多いと思いますが、皆さんは手術室看護師として、どんなテーマを選びましたか?

手術室って患者さんとの関わり時間が短いから難しいよねぇ、、、

なーんて思いませんでしたか?

うちの病院では2年目の看護師に必須課題で、毎年そんな話になるのですが、私、思うんです。

そんな悩まなくたってオペ室でふだんしている等身大の「看護」を取り上げればいいのに、、、って。

皆さん、日々の仕事で「看護」、してますよね?

患者さんから、ありがとう、といわれることは少ないかも知れないけど、手術室の中で「やっぱり看護師がいないとダメじゃん」と思う場面が多々あると思いません?


そんな等身大の看護を、レポートで表現してくれたナースが私の身近な同僚でいたんです。

これまで何十年も、病棟看護を意識した「感動的な出来事」を追いかけ続けてきた当院オペ室のケースレポートの中で、ついにホントのオペ室看護を表現してくれた人が現れた! と私は驚くと同時にうれしかったです。

その人がどんなことを書いたのかというと、、、


特殊体位での手術で、患者本人からの訴えをもとに安楽な体位の固定に特に気を付けて関わったけど、術後、本人はケロッとしていて、体位についての術前に心配を口にしたことをすっかり忘れていたという事例。

不自然な体位になることをすごく気にしていて、もともとあった患部とは関係ない体の痛みが術後に増強したらどうしようとあんなに心配していたのに、術後訪問では、「え、そんなこと言いましたっけ、何でもないですよ」と軽く流されて、あの私の努力はいったい、、、と思ってしまったそうです。

命に関わる大きな手術で、医師たちは手術を成功させるために体位への妥協は許さなかった、そこを敢えて医師に意見してまで安楽さを確保したのに、、、


まあ、正直な思いだと思います。

でもこんなことってザラにありますよね。
患者さんが麻酔で意識を失った後のことはなにもわからないわけですから、そこで私たちがいくらどんなにがんばってもダイレクトには患者さんには伝わらない。

手術が終って目が覚めて、体位による苦痛がなにも出現せず、術前の心配さえも忘れてしまうというのは、考えてみれば私たちの実践した看護が大成功に終ったことの証拠とは言えないでしょうか?

見たことない人はイメージしずらいかもしれませんが、腹臥位とか側臥位、ジャックナイフ位なんて、場合によってはびっくりするような不自然な体位で長時間固定しますからね。

体位固定なんて、ふだんルーチンワーク的に何気なくやっていることですが、もしクッションでの除圧などをしないで、単純に側臥位でオペをしたらどうなるか、、、、

下手すると医師たちは、体位そっちのけでさっさと手洗いに行ってしまったりします。ナースたちの細やかな気遣いがあってこそ、患者さんはごく普通の状態で退室できると思うのです。

そんなふだんのオペ室の専門業務にあえて着目して書いてくれた、そのナースを私はすばらしいと思いました。

実際のところ、最初そういうテーマで書きたいとオペ室内の年輩格スタッフに相談したときは、あまり好ましい顔はされなかったようです。

なぜなら今まで歴代の2年生が書いてきたテーマとはずいぶん違うものだったから。

逆風の雰囲気の中、彼女は強い意志で「書きたい」と言い切りました。

ケースレポートといえば、術前訪問のこととか、麻酔導入前の20分くらいの関わりや、術後訪問のことを取り上げるのがメインでした。

でも考えて見れば、私たちの業務のほとんどは術中にあるわけです。そこに目を向けなかったというのは考えてみれば変な話です。

そう思いませんか?

彼女のそのレポートは、オペ室スタッフの意識の持ち方に大きな楔を打ってくれるものだったと思っています。

きっと彼女は手術室看護に真っ正面から向き合って、自信と誇りを持って取り組んでくれるいい看護婦さんになると信じてます。
posted by Metzenbaum at 23:42 | Comment(3) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2008年01月04日

2007年を振り返って

(12/31に書き出した原稿が、1/4に仕上がりました(^^ゞ
         スローペースで、臨場感まるでナシですね、ごめんなさい)


さて、大晦日ですね。
去年の年末は急患対応の病院内待機でオペ室に相方とふたり、テレビを見ながら過ごしていました。

今年は珍しく自宅です。

年末ともなるとなにかと1年を振り返るモードになってしまうもの。

私にとって2007年は激動の年でしたね。

◆ BLSに明け暮れた1年 AHA-BLSインストラクター/応急手当普及員として

なんといっても3月にAHA-BLSインストラクターとなったのが大きな転機だったと思います。資格を取って以来、今日まで自分の費やしてきた時間の半分くらいはアメリカ心臓協会(AHA)とBLSがらみのことだったかもしれません。

インストラクターとしてのヘルスケアプロバイダー講習への参加も十数回。半年ちょっとで、自分一人で講習を開催できるまでに成長できるとは思いもしませんでした。

AHAとの関わりは、単にAHA公式コースでインストラクションができるようになったという以上に大きな収穫がありました。

本業として勤務している病院内での蘇生教育プログラム作りにも主導的な役割を果たすことができましたし、成人教育の手法を学べたことも職場手術室での指導に大きな意味があったと思っています。

あとは、英語の勉強にもなったかな。
AHAはアメリカ心臓協会というだけあって、資料は全部英語です。最近主なテキストやビデオ教材は日本語化されましたが、内部資料は英語only。誰が訳したのだか日本語になるとなにかと嘘偽りが多い(!?)この内部資料、AHAの神髄を知るためには英語原典をあたることは欠かせません。こんなにまで必要に迫られて英語資料にとりついているのは、10年前に海外放浪していたとき以来です。

AHA-BLSインストラクター資格以外にも、消防の「応急手当普及員」資格も取得しました。これは3日間の講習を受ければ誰でも取れる資格なのですが、意外と重宝しています。

私は、医療従事者向けに専門的な心肺蘇生技術を伝える以外に、地域住民の皆さんにも広く心肺蘇生技術を知ってもらいたいと思っています。

AHA-BLSインストラクター資格は、今のところ日本のBLSに関しては最高峰の資格だと思うのですが、残念ながらAHAの公式コースはみんな英語のビデオ教材(DVD)を使うので、日本で市民向けコース(Family & Friends)を開くのはかなり無理があります。

ハートセイバーAED(Heartsaver AED)という比較的市民向けに近い内容のコースがあって、DVDとテキストがこの1月に日本語化されます。しかしこれはアメリカで職業訓練に位置づけられているコースなので、公式修了カードが発行されます。ですからカード発行手数料を含めて受講料がけっこうかかってしまいます。そのため誰でも気軽に受けられるという純粋な意味で「市民向け」ではないんですよね。

そこで登場するのが、AHAを離れた消防の応急手当普及員資格。これさえ持っていれば、総務省消防庁が定める「普通救命講習」というのを公式に開くことができます。消防長と私個人の連名で公的な修了証も発行することができるんです。

3時間程度で教えなくてはいけない内容はきっちりと決まっていますが、教える方法・やり方は自由。自分でデモンストレーションをしてもいいし、ビデオ教材を利用してもいいし。

地域の市民向けにCPRコースを開くなら、これだなと思っています。
すでにミニコースを一回開いているのですが、近いうちに町内会で募集広告を出して、普通救命講習を開催しようと思っています。(AHAインストラクターは自分がデモンストレーションをする機会はありませんので、いい意味で刺激になります。)

さらに言えば、いま私の勤務先の病院でも、地域還元ということで、近隣の住民相手にCPR講習を開くという青写真ができてきています。そこでもおそらく応急手当普及員資格が役立つはずです。

AHAコース以外で教えるときにAHAインストラクターという身分を語るのはなにかと問題になるようなので、そういった意味で、日本の国家資格であっていつ何時でも堂々と語れる「応急手当普及員」を名乗れるのは日本では大きいと思います。公民館を借りたり、コミュニティーセンター等で指導する際にも話が通りやすいですし。

消防を所轄する自治体によっては応急手当普及員が単独では普通救命講習を開けない地域もあります(東京消防庁管轄とか)。仮にそうであっても、地域に根ざした普及活動をしていくなら「応急手当普及員」という名義だけでもなにかと便利に使えるはずです。

◆ 看護学士取得を目指して

2007年度の大きな出来事といえば、学士(看護学)の学位取得を目指して通信制大学に入学したということも外せません。最近はめっきりここでの話題しては取り上げなくなってしまいましたが、順調にいってますよ♪

1月末にある単位認定試験が終れば、大学はいったん退学して、独立行政法人 学位授与機構への学位申請に入ります。卒論相当のレポートを書かなくちゃいけないので、3月頃からちょっと忙しくなるかな。

これも勤務先の病院としては前例がないため、職員課との交渉になりますが、病院での待遇が大卒扱いになれば占めたもの。病院の中で多いに宣伝してやろうと思っています。

◆ 手術室看護についてセミナー講師

なんの役職にも就いていない一介の手術室看護師に過ぎない私ですが、どういうわけだか私個人指名で、講演依頼をいただき、はるばる新幹線に乗って行ってきました。

とある医療メーカーの院内勉強会で、約2時間の講演。
テーマは「手術立ち会いをする医療機器メーカー担当者向けの手術室基礎知識と骨折手術の実際」。

日頃病院内の勉強会では喋ったり、プレゼンテーションをすることはなにかとありましたが、そんな対外的な仕事ははじめてのこと。

私自身、とても勉強になりました。

そんな大きなチャンスを下さったメーカー担当者の方には、ただただ感謝です。



あと、細かいところでは、本の企画の取材を受けたり、最近はとんと減ったフリーライターとしての仕事が数本、出版社にいくつか出した単行本の企画書のうち医療系ネタが脈あり、といったところでしょうか。

とにかく今年はいろんな大きな出会いがあり、思いもよらないチャンスがたくさん巡ってきた年でした。正直、かなり忙しかったです。体がふたつ3つほしいくらい。思い立ったら吉日とばかりに、手当たり次第で、自分を追いつめていたかも。

でもこうして1年経ってみると、そのがんばりの成果ははっきり出たと思います。ホント10月過ぎくらいからは睡眠時間4時間で土日も出かけっぱなしで、私ってまだ若いんだなとヘンに自分で感心したくらい(笑)



さて、来年の目標、、、

最大の目標は、出版社から前向きな返事をもらっている本の企画をものにすること。

今までいくつかボツになってきたから今度こそは。

あとはBLSインストラクター/応急手当普及員としてもっともっと経験を積んで、自分のライフスタイルを確立すること。

ICLS/ACLSインストラクター資格取得も上半期の目標。こっち方面では院内にシュミレーションラボセンターを立ち上げたいという野望も含めて。

最近、病院のなかで個人的にこじんまりとBLSヘルスケアプロバイダーコースを開催させてもらっています。いまは既成事実作りみたいな感じですが、今後は病院内の正式な職員教育のひとつとして、月何回かの定期開催に持っていきたい、というのも目標ですね。


さて、2008年度のこの先1年。どんなことができるのか、自分でも楽しみです。
posted by Metzenbaum at 21:51 | Comment(4) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2007年11月27日

更新停滞気味

ここ1ヶ月ほど、相当に多忙です。
いままで地道に積み重ねてきたものが一気に開花したかのように、
いろいろな出来事、ビッグチャンスが舞い込んできています。

いままで夢として思い描いていた構想が、どんどん形になっていく感じ。

体がひとつなのがうらめしく、時間が24時間なのが悔しいくらい。

ということで、しばらくは落ち着くまで、あまりこちらの方には
書き込みはできないかもしれません。

いろいろ、コメントを下さっている皆さん、ごめんなさい。
posted by Metzenbaum at 02:56 | Comment(2) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2007年11月08日

「循環停止」…ドラマ医龍ネタ

先週のリクエストにお答えして、ドラマ「医龍」の話題を今週もお届けしたいと思います。主に医療とは関係ない人向けに書きますので、おおざっぱというか、ある意味不正確です。どうぞそのあたりの突っ込みはご容赦くださいね。

今日のテーマは「循環停止」という言葉。

心臓の手術をするときは、心臓が動いていると邪魔なので心臓を止めちゃいます。心臓を停める、つまり言ってみれば死んだ状態にしてしまうわけですが、後で生き返ってくれないと困りますので、それなりの工夫はします。

心臓の動きは止めたいけど、全身への血液の流れはそのままにしたい―。それを実現するのが人工心肺と呼ばれる装置です。

心臓近くの太い血管にチューブを入れて、静脈から体内の血液を全部吸い出して、人工心肺装置の中で酸素を混ぜ込んであげて、別のチューブから動脈に血液を送りだしてあげる。

そうすると心臓が停まっていても、脳などの体の臓器はちゃんと生き続けます。手術が終ったらちゃんと心臓に血液を流してあげて、必要なら電気ショックを掛ければ、ちゃんとまた自分で動き出してくれます。

ふつうはそうやって心臓の手術を行なうのですが、今回の医龍の中では「循環停止」という方法で心臓(厳密には大動脈ですけど)の手術を行なっていました。

この循環停止というのはなにかというと、心臓を停めるのではなく、全身の血液の流れすべてを停めてしまうというとんでもない方法。

よくこのブログの中でも、私、心肺蘇生法の話を書いてますが、まさにそんな突然の心停止したときの状態とおんなじです。心停止から5分もすると社会復帰率が50%まで落ちてしまう、早くAEDで除細動してあげなくちゃ! という状態とおんなじなんです。

そんな状態にしちゃって大丈夫なの?? という話になりますが、血液の流れがとまっていちばんダメージを受けやすいのは脳。脳は数分間、血流が途絶えて酸素不足になっただけで、簡単に壊れてしまいます。

血流が停まっても、脳組織になるべくダメージがいかないようにするにはどうしたらいいか?

簡単です。体を冷やして冬眠させてあげればいいんです。体を冷やせば組織の代謝が低下して低酸素の影響を受けにくくなります。それを人為的にやってやるのが、心外手術の「循環停止」です。

ドラマの中では膀胱温で20℃まで落とせ! とか言ってましたよね。

そうしてやると、40分程度は、体の血流を停めても大丈夫になります。

実際のところ、最近はこの循環停止をさせてまで行なう手術というのは少なくなってきているようです。私自身は3回しか経験したことがありません。(うちの施設が心外にあまり力を入れていないだけなのかもしれませんが)

ドラマの中では、簡単に体温が下がってましたが、実際は人工心肺装置を接続してから、体温を落としはじめて、実際に循環停止まで持っていくには1時間半か2時間くらいかかってます。その間は、医者も器械出しナースも何もやることなく、ただボーっと時間を待つだけ(笑)

ダメージを受けやすい心筋と脳を守るのが需要ですから、循環停止中は頭の回りに氷入りの袋をいっぱい当てて脳を守ると同時に、小さなアイスノンみたいなのを心臓の下に敷き込んだりとものものしい体勢で臨みます。

循環停止中の患者さんの体は室温より低くなってますから、手を触れるとまるで人間ではないみたいななんとも言えない感覚です。

さらにたいへんなのは、手術が終ってもとの体温に戻すとき。これにも1-2時間は必要です。ですので循環停止をするだけで、すごい時間がかかってしまいます。手術自体はそんなたいへんでないとしても、とにかく時間がかかるので担当する看護師としても相当な覚悟がいる手術なんです。

以上、循環停止のお話しでした。

(人工心肺と心臓手術についてもう少し詳しく知りたい方は、聖路加病院の先生が書いている「開心術について」というページがわかりやすくてよかったですよ。)


ついでに、これに関連して旬な話題をひとつ。

いまアメリカのオーランドで Ress (Resuscitation Science Symposium) という蘇生に関する国際学会が開かれています。そこで話題になっていて、次期ガイドライン2010でもエビデンスレベルが上がりそうなのが「低体温」に関する研究だったりします。

日本では例の胸骨圧迫のみのCPRの論文を提出した長尾先生が積極的に取り組んでいるようですが、心停止で病院に運ばれてきたら、まずはなにより胸骨圧迫をしながら体外循環を取り付けて低体温にしてやる。そうやって代謝を落として心筋・脳細胞を保護してやりつつ、本治療を開始するというというわけです。

数年前だったか、冬の東北の海だか湖に落ちた人が、死亡診断されて霊安室に安置されていたところ息を吹き返したという事件(?)があったのを覚えている人、いますか?

それとおんなじで、低体温が秘める救命の可能性。
BLSの範疇ではありませんが、興味深いことだなと思っています。
posted by Metzenbaum at 23:53 | Comment(7) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2007年11月03日

ドラマ「医龍」から〜 臨床工学技士って何者?

ここのところ、本業以外の活動が忙しくてなかなかこちらに時間が取れていないのですが、昨日放映されていたドラマ「医龍」の感想を含めて、臨床工学技士さんをテーマに少しばかり。

前々回あたりから、医龍の中で医療スタッフとしての 臨床工学技士 にスポットが当っていますね。テレビドラマでは初じゃないでしょうか?

臨床工学技士 ―病院の中では通称「MEさん」なんて呼ばれていますが、彼らは国家資格を持ったれっきとした医療スタッフの一員です。

医用工学ということで Medical Engineering を略して、ME(ミー、じゃないです。エム・イーと読みます)といってますが、英名は Clinical Engineering Technologist なので、正確に言うならCE(シー・イー)という方が正しいです。

さて、そのMEさんこと臨床工学技士はなにをする職種かというと、

「厚生労働大臣の免許を受けて、臨床工学技士の名称を用いて、医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作及び保守点検を行うことを業とする者」(臨床工学技士法)

です。

で、生命維持管理装置とはなにかというと、これまた臨床工学技士法では、

「人の呼吸、循環又は代謝の機能の一部を代替し、又は補助することが目的とされている装置」

と定義されています。

いちばんの代表格は心臓手術のときに使う人工心肺装置(体外循環)の操作でしょうか。おそらくMEさんにとっては花形の仕事に相当すると思います。

その他、人工透析装置の操作、オペ室でいうなら自己血回収装置(セルセーバー)や筋電図モニターのセッティングなどでお世話になってます。

あとは心カテ室でアブレーション/除細動器の操作や、人工呼吸器の保守点検などなど、医療機器のメンテナンスやトラブル解決に力を発揮するのがMEさんたちです。

◆ 手術に立ち会う臨床工学技士の仕事 ― 人工心肺操作

今回のドラマ医龍の中では、MEさんが手術に立ち会って電気メスのセッティングをしていましたね。

オペ室事情を知らない方はサラッと流し見したかもしれませんが、オペ室のナースにとってはかなり苦笑いな場面じゃありませんでした?

なんでアッペ(虫垂炎)の手術にわざわざMEが立ち会って、電気メスの設定なんかするの??

「落ち着いて設定しなおせ!」

なんて、なんだか小難しい操作が必要な印象を与える場面設定でしたが、電気メスの設定は、ただダイヤルをまわして出力(ワット数)を合わせるだけ。普通はMEさんを呼ぶまでもなく外回り業務の看護師が日常的にやっていることです。

「40−40」という設定値を言っていましたが、アレはまあ確かに妥当な数字。切開モード40W、凝固モード40Wという意味で、開腹手術などではおおむねこんな出力でやってます。(電メスの切開・凝固ってなに? という方は過去記事 『意外と知らない電気メスの話』 を見てみてくださいね。)

医師から特別な指示がなければ、診療科や手術部位にもよりますけど、普通は30〜40Wくらいに設定しておくかな。


臨床工学技士にとって花形の仕事は、なんといっても人工心肺の操作。看護師免許・准看護師免許でも人工心肺の操作は行えますが、こればかりはさすがに手を出そうとは思いません。

病院によっては、専門の臨床工学技士を使わずに医師が人工心肺をまわすところもあるようですが、ナースが操作するってところもあるのかな?(学会認定資格である 「体外循環技術認定士」 の受験条件には、経験3年以上の看護師・准看護師も含まれているので、きっとあるのでしょう)

私の施設でのMEさんの仕事ぶりを見ていると、心臓血管外科医たちから絶大な信頼を得ているんだなということを感じます。人工心肺を流れる血液から血液ガスデータを取って、その数字を見ながら電解質の補正をするのは臨床工学技士の仕事。

これは医師の指示の下、ということになっていますが、包括的指示とでも言うのでしょうか。実際のところ、臨床工学技士の判断で、薬のアンプルを切って、ときには用意していた輸血を人工心肺に戻したり。

気心知れた優秀なMEさんの存在なしには、人工心肺をまわす心臓手術は行えないんだなぁというのを強く感じます。

心臓手術の予定や詳細は、手術室より先にME科の方に連絡がいきますし、なぜかオペ終了時には、MEさんたちには心外Dr.からのおごりで夕食の出前が届いていて、器械出し、外回りのナースにはなんにもナシ(笑)

まあ、ナースは20名以上いて、器械出しの休憩交代もありますが、MEさんはほんの数名。心臓手術になると、休憩も取らずにずっと人工心肺の前に張り付いていますからね。負担がぜんぜん違うのは重々承知。

臨床工学技士という国家資格は恐らく医療資格の中ではいちばん新しい職種で、まだ出来たばかり。数が少なくていつでも人手不足。

緊急CABG(心臓バイパス手術)とか、緊急透析・心カテがあるために夜間・休日も on call 体制があるようですが、ほんの数人でまわすから月の半分近くは on call という劣悪な環境のなか、よくがんばっているなと思います。

そのせいか、最近、またMEさんがひとり辞めてしまったそうです。

医師の勤務体制も異常だけど、MEさんも含めて病院の勤務体制、どうにかならないもんでしょうか。
posted by Metzenbaum at 01:08 | Comment(10) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2007年10月14日

疑問:医用画像の著作権・倫理規定

今日は皆さんにお聞きしたい素朴な疑問があっての書き込みです。
医療系の話を書いていると、例えば心電図の波形などを画像として貼り付けたい、なんてこともあるわけですけど、それって法的に、倫理的にいいのでしょうか?

本や雑誌などで実際の患者さん心電図波形が載ってたりしますが、あれってその患者さんに許可を取って掲載しているのかな? 例えば何万人に一人というような特殊な症例だと、個人が特定されてしまう可能性があるので問題になるかもしれないけど、ありふれた不整脈だったら関係ない?

著作権法でいう著作物の定義は、

「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」

ってことは、無機質な心電図波形は著作権法的には問題はなさそう。

だったら本から心電図波形の部分を勝手にコピーして使っても大丈夫?



X線写真の使用はどうだろう? 写真といえば写真だけど、そこに肖像権はある?
ホームページ上に無造作に貼られているような写真であっても、そこに著作権はしっかりあるらしい。

X線も同じ「写真」だとしたら、それはカメラマン(= 臨床放射線技師)の著作物??



心電図やX線写真とか、医療画像の二次利用に関して、なにか倫理規定とか判例とかあるんでしょうか??

ご存じの方、いましたら教えていただけるとうれしいです。
posted by Metzenbaum at 14:09 | Comment(5) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2007年10月13日

「医龍」がまたはじまりましたね。

おととい、フジテレビ系列のドラマで「医龍2」がはじまりました。

仕事から帰ってきたのが9時半過ぎだったので後半1/3くらいしか見られなかったのですが、あいかわらず見所満載でおもしろかったですねぇ(^^)
途中からみたものでストーリーはぜんぜんわかりませんでしたが、手術場面のリアルさは、いままでのドラマにない意気込みを感じさせます。

今回も思ったのですが、私がこのドラマを見ていて妙にツボにはまるのは、「容赦のない専門用語の羅列」にあるんじゃないのかなと思いました。

病態とか手術の術式とか、ドラマの進行上、視聴者がわかっていた方がいいことは登場人物が説明したり、CGでの解説が流れたりしますが、それ以外にもかなり本格的な専門用語が多用されているんですよね。

もうちょっとうろ覚えになってしまってますが、確か3枝CABGの最中に弁の腱索が切れてしまうという緊迫した場面がありました。

このあたりの緊張感はドラマの雰囲気で伝わったと思うのですが、いったい何が起きたのか、という説明は専門用語ばかりで見ている人にはわからなかったんじゃないかと思います。

カニュレーション、pump-on、MVR

「カニュレーション準備!」なんて言葉を聞いて、えっ、いままで3枝バイパスをoff-pumpでやってたの? と思ったし、5分で内胸と大網のグラフト採取終了?? とか、現場を知っているからそのすごさというか絵空事具合がよく分かるというか(笑)

もちろんドラマなので非現実的な部分はありますが、一般向けの解説を挟まないような小さな部分までこだわって、ホントのオペの流れに合わせてあるんだなというディレクターのこだわりがとてもよく伝わってきます。

いったいこのドラマは誰向けにつくっているの??

と思ってしまうくらい、細部までこだわったクォリティーです。

そのあたりのすごさは、きっと医療職でも限られた人しかわからないんじゃないかな。

日頃、心臓手術に関わっているオペ室ナースと、臨床工学技士(ME/CE)、麻酔科医、それに心外の手術を知っている医者くらい?

きっと、一般市民と、一般医療従事者、さらには心外手術に関わる医療者とで見る視点がぜんぜん違ってくるドラマなんじゃないかなと思います。

ちなみに過去に書いた医龍の感想はこちらです。

『オペ看』から見たドラマ"医龍"
ドラマ「医龍」から・・・麻酔科医って何者?
形成外科医の"巧の技"「Z形成」について
posted by Metzenbaum at 09:01 | Comment(13) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2007年10月06日

アンティークの手術器具

遅い夏休みを終えて帰ってきました。

仕事のことは忘れて海外をフラフラっとしてきたのですが、旅先でもなぜか仕事関係のことが気になってしまうというか、気付いてしまうのが悲しいところ。

今回も旅先で、オペナースならではの発見をしてきましたのでご報告です。


とあるアンティーク・ショップに立ち寄ったときの話です。
ロイヤルコペンハーゲンやスージークーパーなどの洋食器やアクセサリーが並ぶ店内に、こんなものが置かれている一角がありました。

アンティークの手術器具:穿頭器

手術室にお勤めの方ならわかりますよね?(画像をクリックすると拡大表示されます)

そうです、手回しの穿頭(せんとう)器。

脳外科の手術で使う頭蓋骨に穴を開ける手回し式のドリルです。
ガリガリと頭に穴を開けて、中にたまった血を抜いたり、はたまた線鋸(せんきょ)で3つの孔をつなげて、骨をかぱっと外して脳腫瘍を取ったり。

何年前のものかはわかりませんが、木の箱に入っていかにも重厚そうな感じ。見た感じ基本的な構造は今も硬膜下血腫手術に使われているものとほとんど変わらないようでした。(これが使われていた当時、穿頭ではなく開頭手術まで行なわれていたかはわかりませんが…)

値札の価格は日本円にして約5万円。

たぶん今ふつうに新品の穿頭器一式を買っても、数十万円はすると思いますので、まあ安いのかな。単に古道具と考えればどうだろうという気はするけど、ヴィンテージ/アンティークとしての価値は、、、、あるのかな? 正直、わからないです。

欧系の国のアンティーク屋とか博物館に行くと、こういう手術器具のコーナーがしっかりあったりするんですよね。アンティーク・コレクターのジャンルとして「医療器具」というのがあるのかもしれません??

このコーナーには、他には鼻鏡とか鑷子、鉗子などが雑多に置かれていました。なかでも目立つ位置に展示されていたのは鉗子分娩に使う児頭鉗子。

児頭鉗子はアンティーク医療器具の代表格なのかなというくらいに、他でもよく見かけます。確かに独特な形をしていて、これなんなんだろう?? と気になるシェイプではありますが。(『香港医学博物館レポート』の中で児頭鉗子の写真を載せてます)

博物館の医療器具展示にしてもいつも気になるのは、鼻鏡の横に児頭鉗子があったり、並べ方が支離滅裂なところ。きっと、単に「昔の医療器具」というおおざっぱなくくりで、学芸員さんもあまり使い道がわかっていないんでしょうね。

せっかくだったら、婦人科手術の器械セットとか、耳鼻科セット、みたいにきちんと並んでいたらいいのに、と思ってしまうのは手術室看護師の悲しい性なのかもしれません。
posted by Metzenbaum at 21:08 | Comment(4) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2007年09月10日

本屋は知の宝庫

昨日の日曜日は、1日中、本屋巡りをしていました。

私にとって本屋巡りは貴重な情報源。

昔は図書館大好き人間だったのですが、引っ越しをして近場にあった大きな図書館がなくなってしまったので、最近は月1回くらいのペースで大手本屋をはしごするのが日課ならぬ月課となっています。

広い本屋の中で立ち寄るコーナーはその時々の興味でぜんぜん違います。

最近の、というか今回の本屋巡りのテーマは「労働基準法」と「放射線」でした。

オペ室の労働環境についてはこのブログでも何度か取り上げていますが、近々また待遇改善を求めて上層部に働きかけをしようと計画中。そのための下調べで「労働法がわかる本」みたいなものを片っ端から目を通してきました。

同じテーマの入門書を、立ち読みとはいえ何冊も目を通すとそれなりにその世界のことがわかってくるものなんですよね。一冊買うのではなく、あえて類似書にたくさん目を通す。これが新しい世界にアプローチするいい方法なんだと、私は思っています。

図書館ではなく、本屋というのがちょっとセコイですけど、新しい情報も含めて仕入れるという点では本屋に勝るものはないと思います。


もうひとつは「放射線」というのは、これも病院の労働条件がらみなのですが、最近私の病院では"危険手当"が廃止されてしまったんです。これまでX線TV(いわゆるイメージです)を使う手術に入るとわずかながらの危険手当てが出ていたのですが、突然の廃止宣言。なんでも月間に100mSVを超える量の放射線を浴びないかぎり出ないことになったのだとか。

その100mSVという量が私にはどの程度のものなのかトンと想像もつきません。

ホントに100mSVを浴びていないことはどうやって証明するの? 放射線管理区域内で作業の従事する以上フィルムバッジの装着は法律で義務づけられているんじゃないの?

そんな疑問があったけど、放射線関係の周辺事情と予備知識がないかぎりなにも言えないと思い、本屋で情報リサーチ、というわけです。

これはさすがにテーマが専門的過ぎるだけに、5-6冊に目を通しただけではダメでした。まずは新書で放射線と健康がテーマの本を2冊読んで、それから医学書コーナーに進んだのだけど、やっぱり理解が追いつきません。引き続きの継続テーマになりそうです。


もともと本が好きだからなのかもしれませんが、図書館とか本屋だったら1日中時間を潰すことができる私。

興味がある分野を深めたり、なんとなく手に取った本から新しい世界が開けたり。

インターネットもいいんですけど、きちんとしたモノを、と思ったらやっぱり本・雑誌ですね。最近はインターネットで興味を持って、本屋で深めるというパターンが多いですけど。

ジャーナリスト(?)の立花隆氏が 「ぼくはこんな本を読んできた」icon の中で書いていましたが、興味があるテーマをゼロから勉強して本を一冊書き上げてしまう氏の読書への情熱、すごいなぁと思います。

浮気性でいろんなことに興味を持っては、途中で移り気を起してしまう私ですが、常に何かを追いかけていたいとは思っています。



(続きを読む)
posted by Metzenbaum at 23:46 | Comment(8) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2007年09月02日

自衛隊の「野外手術システム」を見てきました

先日に続いて自衛隊の話題なのですが、戦地や災害現場にいながら、その場で外科手術を行うことができる「野外手術システム」(移動手術車?)というのがあるのをご存じですか?

土曜日に車で伊豆の土肥を通った際に、偶然にもその「移動手術車」に遭遇してしまいました。

この日は9月1日。そう、防災の日です。

静岡県の合同防災訓練が土肥の公園で開かれており、なにげなく立ち寄ったところ、偶然見つけたのが陸上自衛隊の「野外手術システム」でした。

自衛隊には移動できる手術室があるということは知っていましたが、まさかそれを目の当たりにできるとは思わず、かなりはしゃいでしまいました(^^)

陸上自衛隊「野外手術車の内部」

要は大型トレーラーのうしろが手術室になっているという、「動く手術室」です。

野外手術システム全景  野外手術システムの連結部分


「手術室」自体は大型のトラックの荷台に相当する部分に作られています。横幅を確保するために、手術時には横にスライドしてひろがるようになっていて、「へぇ〜」という感じでした。

その他2つの車両がドッキングできるようになっていて、ひとつはICU(リカバリー室)、もうひとつはX線写真の現像や血液検査などが行えるラボになっていました。この日は来ていなかったのですが、もう一台、滅菌処理が行える車両と合わせて4つで野外手術システムが成り立っているようです。

その他、水を積んだタンク車や、発電器を積んだ電源車などが周辺車両として必要になるようです。

内部は見ての通り、フルスペックの手術室になっています。
Cアーム(X線TV)まで完備されていたのにはビックリ。

麻酔器やカートなど、移動時はストラップで固定できるようになっているそうで、現場に到着してからいざ手術を開始するのに時間がかかりそうですが、聞くところによると1時間半程度で準備は完了するのだとか。

「実際に使われたことがあるんですか?」

「いいえ、国内ではありません」

だ、そうです。イラクなど海外で活躍したのが今のところ数少ない晴れ舞台だったみたい。

開腹手術から開頭まで基本的にどんな手術でも行える野外手術ユニット。

こういう大規模なことが行えるのは、特殊任務についている自衛隊衛生隊ならではだよなぁと感じました。

先日の海上自衛隊の看護師の話もそうですが、最近なんだかにわかに自衛隊という特殊な場での医療に興味を感じてきている私でした。
posted by Metzenbaum at 01:08 | Comment(3) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2007年07月23日

超緊急手術 ― 臍帯脱出で帝王切開

今日のテーマは、超緊急手術です。
オペ室に勤務していると、日頃から予定手術以外に入ってくる「緊急手術」には日常的に対応しているはずです。

まあ、ふつうは急患といっても、手術室に連絡があってから入室まで30分とか1時間は余裕がありますし、オペ室的には受け入れOKなのに、家族が到着していないとか、ムンテラがまだとか言って、待たされることもしばしば。

こういう場合は緊急手術というよりは『予定外手術』といったほうがいいくらいに、のんびりしたものが多いのですが、時々ホントに急いで手術をしなければならない急患というのも存在します。

ありがちな術式で急ぐものの代表といえば、やっぱり帝王切開でしょう。

児心音が低下したとか、胎盤早期剥離などで緊急手術症例としていちばん多いのが帝王切開かもしれません。

そんな帝王切開の中でも、超緊急に対応しなければならない症例として「臍帯脱出」があります。臍帯は胎児と母体を継ぐ生命線。臍帯の血行を通して胎児は呼吸をしていますので、臍帯脱出によって臍帯の血流が途絶える=胎児の死を意味します。

こうなると医師なり助産師なりは臍帯がそれ以上出てこないように、膣から手を突っ込んで、かつ臍帯が閉塞しないように押さえながら帝王切開手術をするしかありません。

産科手術の中でもっとも緊急性が高いといわれる臍帯脱出ですが、本来は滅多に起きるような症例ではありません。そこそこ分娩件数がある私の勤務病院でも5年に1回くらいと言われていました。

ところが近年、近隣の病院が相次いで産科を閉鎖したせいか、産科絡みのアヤシイ症例はすべて私の勤務病院に転送されてくるものだからタイヘン。

5年に1回の頻度だった超緊急手術が、今年に入ってすでに2回も発生してしまいました。

そこで困ってしまったのはオペ室です。過去2例はたまたま院内にオペ室スタッフと麻酔科医がいましたので、ことなきを得ましたが、休日のオンコール on call 体制だったらどうなってしまったんだろうという問題が突きつけられました。

私の病院では、平日の夜間は当直ナースが2名、院内待機していますが、土日祝日は原則的に自宅待機。病院から呼び出しがあったら、麻酔科医へ連絡を取りつつ病院へ急行。部屋と器械の準備をして、麻酔科がOKであれば入室連絡を入れるという形になっています。

病院からの呼び出しがあったら30分以内に病院に駆けつけられる場所にいればよいということになっているのですが、スタッフによっては遠方に住んでいて、とても30分では病院に来れないスタッフもいます。

配属2年目でon call番をとるようになるとだいたいは自主的に病院近くに引越す人が多く、それに緊急手術といっても呼び出し後1-2時間しないとDr.や家族の都合でオペ開始できないという場合が多かったのでさほど問題となっていませんでした。

ところが、これまであまり考えなくてよかった超緊急手術がこうも立て続けに起きてしまうと、そんな悠長なことは言ってられなくなります。

30分以内に病院に着けばいいと言ったって、実はこれは明文化された規則ではありません。オペ室内でなんとなく語り継がれている「しきたり」みたいなものでいわば自主基準。

ここが第一の問題点です。待機料として多少のお金はもらっていますので、呼ばれたらいかなくてはいけないのは義務かもしれませんが、時間に関しては就業規則的な取り決めはありませんので、間に合わないところに住んでいる人の場合は「仕方がない」と言わざるを得ない状況。

本当に30分で着く場所にいなければならないのであれば、手術室看護師で入寮を希望する人がいれば優先的に取り合わなければおかしいのですが、そういった措置は一切執られていません(私はそれでやむなく引越しました)し、車通勤のための病院駐車場年間契約もオペ室ナースとはいえ一般職員と同じで順番待ち状態。

オペ室ナースの自主的な基準として30分以内とは言ってますが、病院の勤務体制を考えるとまったく緊急対応は想定されていないという現実が露呈している状況です。

これまでのように5年に1回程度であれば、それが休日に起きる可能性はさらに低いわけで、それほど現実的な問題ではないのかもしれません。しかし、昨今の近隣産科閉鎖事情を考えるとどうにかしなくてはいけない状況になってきています。

この点は病院の緊急管理体制として上層部で検討中ということになっていますが、現場を知らない上の人たちの考えることだからどうなることやら。

そこで私の方から、手術室師長を通していくつかの提案を出させてもらいました。

1.休日on call時の30分以内病院到着の明文化
2.手術室看護師の入寮希望は優先的に取り扱う
3.手術室看護師の入寮には期限を設けない
4.手術室看護師の病院駐車場契約を優先的に取り扱う
5.手術室配属者は住居状況を考慮に入れて選定する

併せて、手術室内での超緊急手術に対する意識付けやマニュアル作りにも着手したところです。

文献によると超緊急の臍帯脱出の場合は、きちんとした術野消毒や手洗いを省略するほどに急ぐこともあるようです。おなかにイソジンをぶちまけて、ドレーピングもしないでメスを入れる場合もあるのだとか。連絡があってからの手術準備にしても、こうした緊急度合いによって若干違ってくるものです。そこで産科医からの連絡のときにどの程度の緊急度かを共通の言葉で伝えあう必要性が出てきます。

清潔度が犠牲にされてでも急がなくてはいけない手術がある。

それは私にとって、これまで考えもしなかった視点でした。


考えてみれば、ここまで緊急性を要する手術といえば帝王切開くらいなもの。

だいたいの方が分娩室で内診中などに、超緊急手術適応となるわけですから、わざわざ遠く離れた手術室に搬送するヒマがあったら、分娩室で帝王切開しちゃったら? という気もなきにしもあらず。

こちらに関してはちょっと控えめな感じでいちおう上層部へ報告させてもらいました。

分娩室ならオペ台に使える分娩台があるし、無影灯もあるし、壁の酸素や吸引もOK。必要なのは麻酔器と薬品類、それに手術器械だけ。

室内を陽圧に保つシステムなどはありませんが、ドレープもしないで切開するくらいの緊急度だったらそんな小さなことは気にする必要もありません。

オペ室を使うとなると、オペ室ナース2名と麻酔科医が揃わないと準備からしてはじまりませんが、分娩室に麻酔器と器械さえ常備しておけば、麻酔をかけられる医者さえ捕まればすぐに手術準備が可能。

日頃助産師さんたちは帝王切開の手術に立ち会っているわけですから、多少の訓練さえすれば手術器械の展開なんて簡単ですし、器械出しだって決まりきった動作なので問題なくできるはず。

場合によっては定期的に手術室に器械出しのトレーニングに来てもらってもいいですし。

本当に病院として超緊急手術に対応する心づもりがあるのなら、そういう方向性で考えてみても良いのでは? と提案してみました。

動きが重たい病院組織なので、現実問題、そこまでの英断がなされるとは思いませんが、垣根を越えたそういった視点も大切なのでは? と思う次第です。

皆さんの病院では、超緊急手術への対応策がきちんと練られていますか?
posted by Metzenbaum at 23:50 | Comment(21) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2007年06月21日

医療専門用語のナゾ

今日は医療の専門用語を巡る雑談をひとつ。

どんな職業でもその業界だけで通じる専門用語があると思いますが、医療界ともなると専門用語のオンパレード。

そういえば私が初めて職場に配属になったとき、カンファレンスで飛交う言葉のほとんどが理解できなかったのを思い出します。看護学生としてある程度専門用語は知っているのにオペ室のカンファレンスには太刀打ちできませんでした。

でも、まあだからこそ、飲み屋なんかで仲間と仕事の話なんかも堂々とできるんですけどね。

さて、医療用語の専門用語と一言にいってもいろいろあります。

まずは単に日本語として難しい言葉。

例えば疣贅(ゆうぜい)なんてどうでしょう? 日常語でいえば「イボ」のことですけど、医学専門用語ではこんなにもったいぶった言い方をするんですね。実際、手術申し込み伝票では「疣贅切除」なんてたいそうに書かれてきます。

医学用語が難しいのは、西洋から医学が入ってきたときに昔のお医者さんががんばって日本語化しちゃったからなんでしょうね。絶対日常では使わないような言葉や漢字が平気で生き残っているのが医学界。古典の世界に自分が入り込んでしまったカンカク、興味深いです。

次は外国語。

いまの医療現場で使われる世界共通語は英語です。昔はドイツ語が幅を効かせていたようですが、今はほとんどが英語にとって変わりました。ところが日本でカタカナとして使われている単語に限っては英語/ドイツ語のチャンポンで非常に複雑です。

同じ言葉でもドイツ語読みする場合と英語読みをする場合があって、例えば内視鏡手術で使うトロッカー trocar、これは英語読み由来のカタカナ語ですが、ドイツ語風にトロカール trocart という言い方もいまだに使われています。カタカナで聞いてしまうと、まったく別物のようにも思えますが、原語のスペルに立ち返ってみれば、trocar と trocart。あ、同じ由来なんだなと気付ける場合もあります。

もうひとつ例を挙げると、皮膚接着剤にダーマボンドという商品があります。ボンドというのは接着剤なんだなとわかるにしてもダーマっていったいなんなんでしょう? 実はこれは採皮に使うデルマトームのデルマと同じ。診療科でデルマといえば皮膚科(dermatology)ですよね。dermaをデルマと読むかダーマと読むか。前者がドイツ語、後者が英語なのかなと思うのですが、ウラは取ってません。

ということで、手術室で何気なく使っているカタカナ語の原語を調べてみると、いろいろな気付きがあっておもしろいですよ。

つづいて、略語にまつわる話と、正式な用語ではない独特の言い回しについて書こうと思ったのですが、それは次回のお楽しみに、ということで。
posted by Metzenbaum at 00:10 | Comment(8) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2007年05月20日

標準予防策キャンペーン中! 眼からの血液感染予防

4月から、オペ室の中で「標準予防策キャンペーン」を展開しています。

血液被曝が身近なオペ室ですが、うちのスタッフの意識は意外と低いのが現状。病院機能評価の受審にともなってゴーグル等の感染防護具は準備されているのですが、すっかり埃をかぶっています。

これまでも何回も感染症の有無に関係なくゴーグルをしましょうとか、器械洗いのときはガウンを着ましょうと言ってきたのですが、面倒くさいのか、理解していないのか、イマイチ浸透していませんでした。

4月に新人さんが入ってきて、スタンダード・プリコーションなんて話をしても、誰もそれを実践していないから説得力がないったらありゃしない。

そこでオペ室内の有志で立ち上がり、体液感染から医療者自身の身を守ろう! ということで勝手に啓蒙活動を始めました。

本当はきちんとした勉強会のような形にしたかったのですが、時間がなかったので月一回のカンファレンスで時間をもらって血液感染のリスクについて説明。

看護師だったら知ってて常識だというようなことでも、意外と上の人が「へぇ〜」とか言っててちょっとびっくり。

特にむき出しの粘膜である「眼」からの感染についてはほとんど意識していないようでした。

そのとき効果を発揮したのが次のような新聞報道。


『C型肝炎 女医、手術中に感染 目に血液 出産で母子間でも』


(北海道新聞:2004年5月30日付)

 大阪府内の病院で二○○二年、手術の助手を務めた二十代の女性外科医がC型肝炎ウイルス(HCV)に感染していたことが二十九日、分かった。感染患者の血液が目の粘膜に付着したためとみられ、外科医が翌年出産した赤ちゃんへの母子感染も確認された。

 HCVは主に血液を介して感染し、慢性肝炎から肝硬変、肝がんに進行する恐れがある。針刺し事故のほか手術による医療従事者の感染リスクが指摘されてきたが、国内で表面化するケースは少なく、医療現場で対策の徹底が求められそうだ。

 病院関係者によると、外科医は○二年六月、HCVに感染している乳がん患者の手術で助手を務めた際、患者の血液の飛沫(ひまつ)が誤って目に入った。感染防止用のゴーグルは着用していなかった。
   (中略)
 外科医は昨年四月に出産、赤ちゃんからもHCVが検出され、母子感染が確認された。母子感染は5%前後の確率で起きるとされ、感染を確実に予防する方法はない。
   (後略)


子どもにも肝炎がうつったというのを聞いて「かわいそう〜」という声があちこちから。効果があったようです。

次の日から、新人さんたちは器械出しのときゴーグル着用を義務づけることにして、プリセプターはもちろん私も含め理解あるスタッフによってゴーグル使用を強化。それに習って次第にゴーグル着用する人が多くなってきたのは言うまでもありません。

ナースがゴーグルをつけていると、Dr.たちの反応も違ってくるんですよね。「へぇ、じゃオレもつけようかな」なんて言って医師たちの間にもゴーグル着用の波が拡がってきています。特に整形の医者なんて、ハンマーでガンガン骨を削ったりして日頃から顔に血が飛んだりは日常茶飯事。なんでゴーグルをしなかったのかというと、やはりまわりで誰もそうしていなかったということが大きいんだと思うんです。

いまだにゴーグルを使わないスタッフも多いですけど、少しづつ状勢が変っていっているのは感じています。もうちょっとがんばると、そのうちゴーグルをしていない方がおかしいというくらいにまで持っていけそうです。(アメリカドラマのERなんかを見ていると、みんなゴーグルしてますよね。)

今はあまり強く言っていませんが、外回り業務でも抜管介助の場面やガーゼカウントなどゴーグル&ガウンが必要な場面はあります。まずは器械出しでゴーグル使用率100%を目標にして、少しずつスタンダード・プリコーションを浸透させていきたいと思っています。


ついでに標準予防策に関する今後の展開というか将来像について少し。

アメリカでは、血液感染に関する有料の啓蒙セミナーのようなものがあり、職場としてスタッフに受講を義務づけている場合がよくあるそうです。感染経路やその予防についてレクチャーのあと最後にテストというかアンケートのようなものがあります。

内容はというと「あなたは眼から病気に感染する可能性があることを知り、防護メガネの必要性を理解しましたか? はい/いいえ」みたいな感じ。これらの質問に答えて最後に署名をします。これを職場のスタッフ全員がやるわけです。

それで、いざ血液被曝事故が起きたとします。その際に職場が推奨している標準予防策を講じていなかった場合、血液感染予防講習の修了アンケートが持ち出されて、言われるんだそうです。

「あなたは標準予防策の必要性を理解したと宣言しているのに、それおを実行していなかった。それはあなたの責任だから会社は補償しない」

つまり自己責任の範囲になるので労働災害とは認められないのだとか。

今の日本はそこまでシビアではありませんが、標準予防策を知りながら実行しないというのはこういうことなんです。

手術室という日頃血液に触れることが多い特殊な環境で働いている皆さん。
血液なんてあまりに身近すぎて、感覚が鈍くなっているかもしれませんが、知識ある医療者の自己責任として、どうぞ自分の身を守ることを忘れないでくださいね。



【参考】標準予防策・・・汗を除くすべての体液(血液)は感染源であると考え、それらに触れる可能性がある場合は、ゴーグル、マスク、ガウン、ビニール手袋を着用しましょうという感染予防の考え方。対象患者が病原性ウィルスを持っているかいないかは一切関係ない。
posted by Metzenbaum at 22:42 | Comment(13) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2007年05月18日

オペ前検査、感染症項目の疑問

前から気になっていた疑問をひとつ。

どこの病院でも手術を受ける前には、ルーチンとして感染症の検査を行なっていると思います。ワッセルマン反応にHCV、HBV。病棟からの申し送りでも必ず確認していると思いますが、よく考えてみるとナゾです。

感染症検査をするための同意書って取ってるのかな?

少なくともうちの病院ではそんな書式は聞いたことないです。もしかしたら入院申込書など、オペ室には回ってこない書類の中で包括的に同意を取っているのかもしれないけど。。。。

私が疑問に思うのは、HIVの検査は特別な同意書がないとプライバシーの問題でマズイのに、昔から行なわれているワッセルマン反応、HCV、HBVは、なぜこうも軽々しく扱われているのか、という点です。

以前にどこかの警察本部が、新入職員の健康診断で採取した血液から、無断でHIV検査をしていたことが発覚して新聞沙汰になりました。

HIVはダメでHCV、HBVはなぜいいのか? この点が私には理解できません。

そもそもなんで術前検査として感染症項目が必要なんでしょう?

昔だったら、感染症(+)だったら防護具を変えたり、術後の手術器械・部屋の掃除法を変えるなどしていましたが、いまはマキシマム・プリコーションの時代。感染症の有無に関わりなく、すべての患者の体液(汗を除く)は感染源と見なすことになっています。術前検査で感染症患者を区別する必要はありません。

針刺し事故を起したときの対応を迅速にするため?

まあ、それは一理あるかもしれません。
でもだったら、なぜHIVは検査しない?

中途半端に感染症検査などをするから、いくら職場内で教育活動をしても感染症に対する正しい防護策が広まらないのでは? と私は思うのですが....

肝炎ウィルス(+)だから防護メガネをつけよう、なんて言っている人がまだいます。まあ、つけるのは悪いことではありませんが、感染症(-)とあっても、検査していないHIVは(+)かもしれないし、将来的に未知の感染症が発見されるかもしれないし。

皆さん、どう思われますか?
posted by Metzenbaum at 01:19 | Comment(10) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2007年04月05日

フレッシュな気持ちで新年度スタート

このブログを開設してから、ほぼ1年が経過。
また新しい4月がまわってきました。

去年とおととしは教育担当をしていたので、どんな新しい人がくるのかなぁとある種「構えて」いましたが、今年は完全にフリー状態なので、なんだかお気楽です。

客観的にどんな子が来るのか楽しみ。

新入職員たちは、いまはまだ全体の集合研修中なので、オペ室にはまったく顔を出していません。実際に来るのは来週からなのかな。

実は今週からは、院内ローテーターと呼ばれる部署異動できた人たちがオペ室に来ています。今まではローテーターといっても卒後3年目くらいの人たちが多かったのですが、今年は看護師として自分よりだいぶ先輩に当たる人が異動になってきて、私自身、ちょっと新鮮な気持ちでいます。


今日初めて、その先輩と一緒にオペに入ったり、術前訪問に行ったりしたのですが、自分自身、看護師としての先輩に対してどういうふうにオペ室の仕事を伝えていったらいいか、戸惑ってしまいました。

今まで後輩に対してエラソに話をしていたんだなぁと気付かされたというか、思えば目上の人に対する教育的な関わりは初めてだったかも。

教育的なバックグラウンド、看護界の中で知識も経験も上の人に対して、どのように接するのがいいんだろう? 最近マイブームの成人教育的な手法として、いいところを見つけて誉める! と思うのだけど、目上の人を誉めるっていうのもねぇ、、、とも思うし。

言葉でいうなら、「できている点はきちんと評価してフィードバックし、必要なアドバイスがあればコンストラクティブなフィードバックとして返す」ってことなんだけど、その実際のさじ加減が難しいです。

結局、「自分だったらひとつの方法としてこうしてみるかも」といった控えめな提案でお茶を濁してしまった今日一日でした。

今の職場にすっかり慣れてしまっていたけど、別の視点で自分を見る先輩の登場に、ちょっと襟を正された思いで、フレッシュな新年度を迎えています。
posted by Metzenbaum at 00:37 | Comment(6) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]