倒れた人にAEDを使ったら通りすがりの看護師に怒られた、という内容です。
ご本人が拡散希望と書いているので、そのまま引用しましたが、下記のような内容です。(今後、ご本人がTweetを消去することがあれば、こちらも削除します)
これ本当に拡散希望なんだけど、昨日横浜駅で急性アル中でぶっ倒れてる人がいたから助けに入ったんだけど、徐脈で意識レベル低下してたからとりあえずAED使ったら通りすがりのBBA看護師に「AEDなんか使うな??そんなの点滴すれば治るでしょ??すぐ剥がして??」って言われて(続く)【リンク】
(続き)「何も分かんないの?」的スタンスで言うだけ言って去っていったんだけど、別にAEDって貼ってもすぐ電気流れるわけじゃ無いし必要なかったらちゃんと「使わなくてOK」って言ってくれるから確認の為でも使った方がいいんだよ。こっちだって100%必要だと思って使ってねえよ(続く)【リンク】
(続き)急性アル中でもし吐物が詰まって気管閉塞してたら?それで心停止に繋がったら?AEDはそれをちゃんと「確認」してくれる機械なんです。むやみやたらに電気ショックしません。なのにただ見ただけで必要無いっていうのはおかしいんじゃないの?看護師なのに大丈夫?って思って(続く)【リンク】
(続き)道で倒れて専門的な機械が無い場所で、AEDは万が一の為の装置なんです。もしそれでその人が死んだらどうするの?死んだ人も点滴で治るの?違うだろ。本当に腹立ちました。みんなは今回のおばさんのこんな言葉に惑わされず、迷わずAED使ってほしい。ダラダラと失礼しました。【リンク】
H/N: 水玉みよこは柄まで通ってる
twitterアカウント:@mizutama345
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これをもとに「まとめサイト」がいくつも立ち上がり、「正しい知識を持つ」ことが肝心ですね、とか、看護師なのに老害! などと多くの声が寄せられています。
文面を見るかぎり、この通りすがりの看護師というのが、言うだけ言って、何もしないで去っていったという点で、確かにひどいなという印象です。
でも、だからといって、言っていることが間違っているかといえば、あながち間違いではありません。特にAEDが必要ない、という部分は紛れもなく正解です。
先入観で「悪」と決めつけているのか、誰も気づいていないようです。Twitter世論では完全に抜けている部分なので、少々書かせていただきます。
結論からいうと、「徐脈で意識レベル低下」という状態の人にAEDを装着するべきではありません。AEDは心停止、つまり生命徴候がない人に装着するものだからです。
徐脈というのは脈拍が遅い状態のことを指します。つまり、このケースは脈は触れますので、少なくとも心停止ではありません。(原文で徐脈という言葉が使われていますが、Twitter投稿された筆者の方も実は新人の看護師さんだそうです。医療者以外は脈拍を確認することは推奨されてません)
AEDの添付文書(取扱説明書)にも「明らかに生きている人に使っちゃダメだよ」って書いてあります。
こちらは、旭化成が扱っているZollというメーカーのAEDの添付文書です。
【禁忌・禁止】
<適用対象(患者)>
対象患者が以下の状態の場合は、本品を使用しないでください。
・意識がある場合
・呼吸している場合
・脈拍を触知できる、又は血流を示す他の兆候がある場合
添付文書とは、薬事法に基づいて作成が義務付けられた公文書です。AEDのような医療機器の他、薬剤にも付いています。薬剤で言ったら用法・容量が定められている大元の書類で、どんな人には使ったらいけないという「禁忌」が明示されています。
AEDは家電とは違います。本来は医師しか使用が許されない高度管理医療機器ですから、薬と同じで、使用条件が厳密に定められています。先ほどは取扱説明書という言い方をしましたが、添付文書に書かれている条件は、家電の取扱説明書とは比較にならない厳しいものであるという点は、おわかり頂けますよね?
その添付文書で、AEDは、意識がある場合や呼吸をしている場合、脈拍がある場合は使用したらいけない、禁忌ですよ、と書かれているわけです。
メーカーと薬事法が定めるところでダメといってるわけですから、誰がなんといおうと、「脈がある人にAED装着してもいい」とは、私は言えません。
Twitter世論では、一部の医師も含めて「いいんじゃない?」と言っていますが、その根拠はどこにあるのでしょうか?
医師なら、医師免許の下に自分の裁量で添付文書を超越した適応をすることも許されますが、看護師の私にはそんな判断はできませんし、ましてや責任を負えない一般の方であれば、法律の範囲内で添付文書に従って使うのが正解と言わざるを得ません。
なんで、意識、呼吸、脈のある人にAEDを装着したらいけないのか、という点については 私のTwitterの過去ログ を辿ってみてください。7月19日〜18日あたりに連投しています。
簡単にいうと、AED設計上の「仕様」としてショック適応判断の限界があり、心電図波形によっては、心停止ではない人に装着した場合でも、誤ってショックが必要と判断してしまう危険性が否定できないからです。
AEDは心電図上での心室頻拍(VT)を検出できますが、それが心停止(つまり無脈性心室頻拍)であるかの判断はできません。だから、人間が生命徴候の有無を判定した上でないと、AEDを装着してはいけないと定めているのです。(最近は各メーカーが工夫して解析性能が上がってますので、過度に心配するほどの頻度ではないと思います。詳しく知りたい方は「AEDの心電図解析と無脈性心室頻拍の判断」(日本心臓財団ウェブ)も参考になります。
最近は一部マスコミも含めて、「人が倒れていたら迷わずAEDを!」といい加減なことを言うケースが目立ちます。以前はきちんと「人が倒れていて意識と呼吸がなければ迷わずAEDを!」だったのですが、いつ、どこから省略されるようになってしまったのか、、、
慌ててしまって、呼吸の確認を忘れた! というのはありだと思います。それは批難されるべきものではありませんし、過失や、責任追求されるものでもありません。それに誤作動の可能性としては決して高いものではないので過度に恐れる必要もありません。
ただ、AEDに興味をもってくれている人なら、ぜひAED装着前には、「反応と呼吸を確認する」ということは知っておいてほしいなと思います。(医療従事者は反応と呼吸に加えて脈拍の確認も求められています)
そこで大事なことを1点。
呼びかけて返事やうめき声、開眼などの反応がないことは確認したけど、呼吸は「よくわからない」という場合は、「ナシ」と判断してもらって大丈夫です。これは蘇生法のガイドラインでも書かれていることなので、ご安心を。
目安は10秒。
10秒間、胸からお腹のあたりの動きを見て、いつもどおりの呼吸をしている、と確信できない場合は、AEDを装着して構いません。
ただし、AEDを装着するということは、心臓マッサージ(胸骨圧迫)も必要な状況ですから、他の人がいれば胸を押してもらう、またAEDの解析後「触っても大丈夫」と言われたら、ただちに胸骨圧迫をするようにしてください。
ところで、公衆の面前で、他人の服を脱がすというのは、すごく勇気のいることだと思いませんか? だから、私だったら、服をはだける前に、きちんと胸から腹をよーく見ます。
わからなければ10秒で「いつもどおりの呼吸なし」と判断していいとガイドラインに書いてあるわけですから、10秒たったら堂々と服をはだけます。
もしなにかの間違えで、あとでトラブルになったとしても、その呼吸確認のプロセスさえしっかりしておけば、規定通りの正しい行動をしたと自信をもって説明ができます。
それに、AEDを装着すべき状況というのは、「心停止状態」ですから、AED手配は急ぐべきですが、AEDが到着するまでの間は胸骨圧迫が行われていなければなりません。
呼吸の有無が正しく判断できなくても、AED到着までの間に胸骨圧迫を行っていれば、もし心停止でなければ痛み刺激に対する反応があるはずですから、AED装着が不要であれば気づける可能性が高まります。
AED使用は決して難しいものではありません。それは事実です。
ただ、イケイケGoGo! の根拠のない勢いだけで不正確な知識が広まるのは、私は問題だと思っています。
広めている人は、AEDの敷居を下げたい、みんなに使ってほしいという思いなのはわかります。
でも、医療器具の使用法なんですから、それなりに根拠をもっていなければいけないと思うのです。
すでに広まってしまっているものはどうしようもありませんので、せめて正しい情報を、と思い、これを書かせてもらいました。
最終的に何が正しいのかは読み手の皆さんに判断していただけたらと思います。
反応確認と呼吸確認を市民に求めるのは酷。誤作動のリスクが低いなら、具合悪そうな人がいたらとりあえずパッドを貼ればいいじゃん、というのもひとつの考え方です。
あえて、そう判断するならなにもいいませんが、少なくともメーカーと国が定めたAEDの使い方ではない、ということは知っておいてほしいです(さらに言えば国際的な使用基準からも外れてます)。知らずに、そう早合点しているとしたら、誰にとっても不本意なことではないでしょうか。
もし、なるほど、と思った人がいたら、ぜひこの記事の拡散をお願いします。
ただ、脈に関しては素人にはさっぱりなので、意識も呼吸も無ければ使用ってことでいいのですよね。
https://twitter.com/tos
と思ったところで下記記事には日本救急医学会のコメントとしてこのように記載されていました
まだまだ議論は続きそうですね
日本救急医学会は、「AEDは問いかけに反応がなく、呼吸がない場合に使用します」とした上で、
「(投稿者のケースのように)アルコール飲酒中だったとしても、疑われる原因は何であれ、反応がない、あるいは反応がないことが疑わしい場合はAEDの使用を考慮していただいて構いません」
と答えた。
http://news.livedoor.com/article/detail/11805079/
心停止ではAEDが意味がある事とない事がありますよ。
無脈性心室頻拍と心室細動の時だけ有効。
この区別は、ACLSを受講している人とか、
専門性が高い人しかをわからないので、個人的にはとりあえずAEDをつけてもいいと思います。
機械が心電図解析を勝手に判断してくれます。
パットだけならそんなに高くないですしね。
講習でもちゃんと指導されており、脈拍は状態により判断が辛い事と確認した場合の時間ロスが蘇生に関し悪影響を与えるとの事でした。
また、緊急を要する場合はAEDの心電図スキャンを用いて心室微細動を判断するのもアリです、医療従事者であっても判断に迷う場合に使用する事は恥ずべき事では有りません。
これを防ぐためにはショック不要のメッセージ後に電源を切る必要があります。
また、本人が動く、他人が自分の体を揺する等で容易に心室細動と誤認します。
アルコール入っていればこちらの言うことは聞いてくれませんので可能性は高いかと。