2006年12月17日

輸液の話 その1= 濃度と浸透圧

さて、前から若干リクエストもあった輸液の話を書いてみようと思います。
オペ室にいると、輸液(点滴)の管理は麻酔科医が行なうのがふつうのですので、とかくオペナースは無頓着。

私も勉強しよう勉強しようと思いつつも、ずっと先延ばしにしてきた課題でした。決して人様にレクチャーするような知識はないのですが、みんなで一緒に勉強していきましょうというスタンスで輸液についてお話ししようと思います。

◆ 輸液の基本は水分補給

まず、輸液とはなんなのか? ごく基本をいえば水分補給です。ご存じのように人体の体重の60%は水分。水分補給と言えば、ふつうは食べ物や飲物を通して消化管から吸収される分がメインとなります。

ただ手術のときは原則的に胃の中は空っぽにしておかなければいけないし、出血等さまざまな理由で通常より体内の水分が失われますから、その分の水を血管を通して直接身体に入れてあげましょうというのが手術室での輸液の基本です。(実際のところ、麻酔薬等の投与ルートとしても重要ですが)

◆ 濃度が重要 浸透圧の問題

じゃあ、血管に入れる水分は水なら何でもいいのかというと、そういうわけにはいきません。例えば蒸留水。滅菌された純水ですから注射しても良さそうな気もしますけど、ブーッです。

なんでかというと蒸留水は人間の体液に対して濃度が薄いから。蒸留水はなんの混じりけもない水です。それに対して血液などにはいろんな成分が混ざってますから純粋な水より濃度が濃いというのはわかりますよね。

濃度が違うとなにがいけないかというと、例えば赤血球の溶血とか萎縮という問題が出てきます。赤血球は半透膜という水分だけを通す程度の細かい穴があいた膜で覆われています。

濃度が濃い液体の中に赤血球細胞を入れると、赤血球内と外側の濃い液体の濃度が等しくなろうという力(浸透圧)が働いて、赤血球内の水分は外に出ていこうとします。その結果、赤血球はクシャっと潰れてしまいます。反対に薄い液体の中に赤血球を入れると、今度は薄い液体が濃い赤血球内に流れ込んできて、膨張、破裂してしまいます。(これが溶血ですね)

ということで、人間の組織は半透膜でできている部分が多いので、体液と濃度を合わせておかないと、いろいろまずいことが生じてしまいます。わかりやすい例でいうと、ケガしたとき、傷口を真水で洗ったり海水(濃い塩水)で洗うと滲みるのは浸透圧の関係で細胞が障害されることによるものです。

◆ そこで濃度調整

点滴で水分を体内に入れたいけど、純粋な水だと濃度の関係でどうもマズイ。だったら純水になにか混ぜものをして濃さを調整してやればいいのでは?

生理食塩水の点滴ボトルということで、できたのが生理食塩水です。生理食塩水というのはなにも特別な薬品ではありません。簡単に言えば1リットルの水に0.9gの食塩を溶かしただけのものです。つまり0.9%食塩水。この0.9%というのがミソで、食塩の場合、こうするとちょうど体液と同じ濃度になるんですね。

食塩(塩化ナトリウム)の成分である塩化物イオンとナトリウムイオンはどちらももともと血液中(細胞外液)にふつうに含まれている成分ですから、人体には大きな影響はありません。注射して大丈夫です。

もっともシンプルな体液と同じ濃度の液体ということで、生理食塩水は体内に入れる液体の基本とされています。ちなみに生理食塩水のような体液と等しい濃度の液体のことを等張液と言います。

もうひとつ基本的な等張液としては、5%ブドウ糖液があります。この場合は、水にブドウ糖を溶かして濃度を調整したものです。ブドウ糖の場合は食塩との分子量の違いなどから5%にしたときに体液と同じ濃度になります。これも生理食塩水と同様、皮下注でも筋注でも静脈注射でも、どんな形でも体内に入れて大丈夫な液体です。ただし、濃度調整にブドウ糖が使われていますので、エネルギーを持っているという点で、若干体内での動きは異なってきますが。(後ほど説明します)

輸液は目的によっていろいろな種類がありますが、輸液を理解する上では、まずはこの濃度調整=浸透圧を体液に合わせるということの理解が大切だと思います。

この後は、実際に現場で使われている輸液製剤の具体的な話をしていきますが、続きはまた今度。
posted by Metzenbaum at 23:45 | Comment(10) | TrackBack(0) | 外回り/麻酔看護
この記事へのコメント
こんにちは
早速リクエストの輸液が載っていたので嬉しかったです。職場での勉強会で私に与えられたテーマが輸液だったので色々勉強しましたが、知れば知るほど奥深いです。
まだまだ私も勉強中です。続き楽しみにしていますね
Posted by ぶっこ at 2006年12月23日 11:43
こんにちは。
ちょっと前からこのページに興味があり、楽しく読ませてもらってます。
生食についての話ですが、体液と同じ様な液体ということは、傷口をきれいにするために生食をかけても痛みは感じないということですか?(普通の水はいたいですよね!?)

続きのお話楽しみにしています!
Posted by たれまゆ at 2006年12月24日 13:06
ぶっこさん。きちんと勉強されたぶっこさんから見ると、あまりにお粗末なことしか書けないかもしれませんが、「一緒に勉強していく」というスタンスで、どうぞお気づきの点はドシドシと書き込み、御意見ください。お願いします。年の瀬も押し迫り、なにかと忙しくなってきました。29日からの正月休みに入ったら、まとめて更新に入っていきたいと思います。

たれまゆさん、はじめまして。生食が傷に滲みるか? という疑問。思わず、うーんと唸ってしまいました。オペ室では意識がない人しか相手にしていないせいで、言われてみるとわからないんですよね。細胞への障害性があまりない、言ってみれば血液で傷を洗うようなものですから痛くないような気がするし、でも塩水ってことで、イメージ的には痛そうな気もするし。。。

どなたか経験ある人、います??

私自身、自分がケガしたときは水道水で傷を洗っています。これでも特に傷に滲みたという記憶はありません。今度機会があったら水道水と生食で比べてみようと思います。ちなみに最近言われている「新しい創傷治療」では、消毒薬が有害無益で、傷は水で洗浄すべきとされています。その際、あえて生理食塩水とは言われていません。水道水など清潔な水ならなんでも良いということになっています。
Posted by 管理人 at 2006年12月25日 11:00
はじめまして。楽しく拝見しています。
とりあえず、生食はしみません!
お風呂に入るとき、擦り傷がしみた事ありませんかー?そういうのがありませんよー。
目を洗うとき、生食もしくは、ちょっと食塩を入れた水道水だといたくないです。。。
ごみが入ったときや、花粉症の方、試してみてください。すーっきりしますよ。
Posted by とも at 2006年12月26日 00:24
すいません。付け足しです。詳しくはわかりませんが、非等張液がしみるのは、細胞内液との浸透圧が異なるので細胞が破壊され、細胞内の何とか物質がでてきて、痛みを感じるとむかーし本で読みましたよ。
Posted by とも at 2006年12月26日 00:37
ともさん、はじめまして。生食の情報、ありがとうございました。やっぱり細胞障害性がないから痛くない、んですね。目の洗浄の話も含めて自分自身のためにも覚えておこうと思いました。
Posted by 管理人 at 2006年12月28日 07:48
この程度のこと自慢げに話されてもね?
何がブーだか(笑

お子様の勉強会じゃないんだからさ。
人の命預かる職の人が、この程度の認識
なのかよ。
お先真っ暗だな。
Posted by a at 2007年01月14日 18:38
aさんの書き込みに対しては特にお返事するつもりはありません。

1週間ほど時間をおいてから削除させてもらうつもりですが、貴方のIPアドレス等、サーバーの情報(OCNからの接続ですよね?)を記録保全させていただいた点、申し添えておきます。「ahoですか?」さんと同一人物であることも確認済みです。
Posted by 管理人 at 2007年01月14日 21:54
生理食塩水というのはなにも特別な薬品ではありません。簡単に言えば1リットルの水に0.9gの食塩を溶かしただけのものです。→9gです。養成講座と題して間違いは許されません!!2重3重チェックを!
Posted by k.y at 2010年07月03日 17:14
K.yさん、ご指摘ありがとうございました。

確かに書き間違いです。

0.9%と1000mlに対して9gを間違えています。

Posted by 管理人 at 2010年09月17日 00:32
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