◆ タニケットとエスマルヒ
まず手術自体の流れです。骨折は四肢の場合が多いですが、ふつうは出血を押えるためにターニケット tourniquet と呼ばれる止血帯を使います。上腕もしくは大腿といった骨が一本だけの部位に巻くのが基本です。血圧計のマンシェットみたいなもので、手術室壁面に配管されている圧縮空気を使って250mmHg〜350mmHg程度の一定圧力で腕や足を締め付けます。ふつうに締め付けると鬱血してしまいますので、そのまえにエスマルヒ駆血帯というゴムバンドを末梢側から強く巻き付けて、血液を中枢側に送り込んで末梢を虚血状態にしてから、タニケットのスイッチを入れます。タニケットは決して安全な機器ではありません。末梢を虚血状態にしますので、長い時間は使えません。オペが長時間に及ぶ場合は1時間〜1時間半の間でいったん圧を解除してやる必要があります。そのため、壁面にある手術時間もしくは麻酔時間のタイマーを使ってタニケット使用時間をきちんとカウントすることが重要になってきます。また神経麻痺が残る場合がありますので、タニケットを巻くのは医師が行なうのが原則です。
余談になりますが、先頃発表された救急蘇生に関する国際ガイドライン2005の中で、ターニケットについて言及されていました。これまで日本でも救急法のひとつとして「止血帯」が教えられていたのはご存じだと思います。四肢の切断等で圧迫止血が難しそうなときは三角巾などをひも状にして末梢をキツク締め上げるという止血方法ですが、これが2005年からは「不適切」ということで廃止になったんです。手術室のようなきちんと管理された下で使用するならともかく、救急現場で止血時間や止血圧がきちんとコントロールできない状況で使うには危険というのがその趣旨。オペ室にいるとタニケットは日常的なモノですが、「危険なもの」という認識もあった方がいいかも知れません。実際、タニケットの影響で痺れがずいぶん後まで残ったという話、よく聞きますよね。
◆ 皮切〜レポまで
No.15メスあたりで皮切をしたら、ペアンやメッツェン(シグマ剪刀)、エレバラスパ等で術野展開していきます。骨折部位まで辿り着いて、周辺を十分に剥離展開したら、いよいよ整復の開始。ここで使うのが、骨把持鉗子やレトラクター。レトラクターでぐいっと骨折部を持ち上げつつ、骨把持鉗子で骨を噛んで、骨折線を合わせて正しい位置に修復します。これを通称「レポする」と呼んでいます。(repositionの略でしょう、きっと)◆ プレートの選択+ベンディング
うまく整復できたら、次は固定に入ります。固定に先立って最初にするのがプレートの選択です。場合によってはKワイヤーを打ったり、スクリューを入れて骨折部を仮固定する場合もあります。また骨折の種類によっては、K-wireだけで固定してしまうピンニングで終わらせたり、プレートを使わずスクリュー留めだけの場合もあります。プレート固定の場合、「プレート見せて」と言われたら準備されているプレートをドクターに見せて、選んでもらいます。プレートが決まったら、次にすることが ベンディング bending になります。bend というのは曲げるという意味の動詞。つまり骨の形に合わせてプレートを曲げてカーブを付けてやることです。そのために使う道具がベンダー(bender)と言います。
写真を載せましたが、2本の棒(これがベンダーです)の先の溝にプレートを挟んで、テコの原理でグイッと曲げるようになっています。これがもっともオーソドックスなベンダーですが、ペンチのような形をしていたり、いろいろな種類があります。
◆ スクリュー刺入の流れ
いよいよスクリューを打つわけですが、まず必要なのは、スクリューを入れるための穴を開けることです。ドリルの刃はプレートセットの中に入っていますが、使うスクリューの径によってドリルの太さも違いますので、間違えないように要注意です。ドリルの刃をエアドリルに取り付けてドクターに渡します。そのとき、ドリルガイドと呼ばれるアタッチメントを一緒に付けて渡す場合があります。要はドリルの刃先がぶれないようにするための道具です。ドリルで穴を開けたら、次にすることが穴の深さを測ること。これによって使うスクリューの長さが決まります。深さを測る道具はデプス・ゲージと呼ばれてます。depth gauge=直訳するなら「深さ計」。まさにそのまんまですね(笑)
使うスクリューが決まれば、あとはドライバーに付けて渡すだけ。
これを入れるスクリューの本数分だけ繰り返します。
以上が、観整固のスクリュー挿入(ソリッドスクリュー・セルフタップの場合)の基本的な流れになります。この他にキャニュレイテッド(中空)・スクリューを入れる場合など、若干使う器械の種類が違うこともありますが、いずれにしても、ドリルで穴を開けて深さを測ってネジ留めという流れは同じです。
でも最近はようやく頭の中が整理されてきたみたいです。ところで、スクリューの中にはいろいろな種類がありますが、コンプレッションスクリューとは一体何が他のものと違うのですか?ロッキングスクリューとも呼ばれていますが…。
果たして、どことどこがロッキングされているのですか?知識がなくてすいません(-_-;)
というか基礎を知らずに、これまでなんとなくやってきてしまったので、きちんと勉強しなくちゃと思い始めたところです(次回開催のAOコース受講を狙ってます)
ということで、スイマセン、コンプレッション・スクリューとかロッキング・プレートとか、言葉は何気なく使っているけど、私もよく意味が分かってません。
質問を受けてしまった以上、調べてみようと思ってますが、どなたかご存じの方、ご教授いただけると嬉しいです。
整形の器械がややこしいのはそのネーミングにもあるかもしれません。カタカナ用語が羅列。。。。
そこで個人的にお薦めは、ちょっと面倒でもカタカナ用語の語源を調べて英単語を覚えてしまうという方法。
Bender、retracter、depth gaugeなどなど。
根幹となる単語の意味さえ抑えてしまえばタダの無機質な音の響きとしてではなく、意味をもった言葉に聞こえてきますので、いろいろ応用性が出てきますよ。
略語なんかもそう。毛嫌いせずに一度正式な名称を調べておくと、それをきっかけに色々理解が拡がっておもしろい、と個人的には思っております。
この気持ちを維持しながら、これからもオペ看護について、勉強しつつ頑張りたいと思います!!
まあ、ありがちなところでは「マーゲン・チューブ」「ラパロの肺切」とかね。あまりに覚えることが多すぎて、先輩のマネをするのがまずは精一杯かもしれませんが、ちょこっと立ち止まってみるとおもしろいですよ。
OP室は嫌だなあって思うのはまだ当分続きそうですが、抑えるところは抑えておかないと自分自身納得できないので毎日少しずつ勉強は進めています…。管理人さんのブログも過去ログを少しずつ読んで知識を深めて行きたいと思います。
今日は整形の関節鏡について少し聞きたいことがあってコメントしました。
関節鏡手術の場合還流液で手術室の床が大洪水になってしまうことが多々あるのですが管理人さんの所ではどういう対策をとっていますか?
うちの手術室ではどうやって手術室浸水を防ぐか皆で頭悩ませています。何か良い方法があったら教えていただきたいなあと思います。
膝などの関節鏡であれば床用の吸引とボロ布でなんとか対処できるのですが、肩の関節鏡になると還流液を50パックとか使うので吸引がおいつかずすぐ浸水してしまいます。医師たちは長靴をはいて手術しているから良いのですが、ナースや業者の方は足元がすぐびしょぬれになってしまいます。他の施設ではどうしているんですかね?ちなみにこの間は100パック近い還流液を使ったため今まで見たことのない大洪水でした。
関節鏡手術、うちも結構件数はある方だと思いますが、水対策としては結構ズサンな方かもしれません。
基本的に垂れ流し。で、床にたまった水を吸うために床吸引というのを使っています。吸引チューブの先に円盤状になったプラスチックを取り付けて床においておく形。それを2〜3箇所くらいにおいてます。
水たまりが拡がっていった場合、外回りが円盤の位置を変えて水浸し範囲がなるべく拡がらないようにくい止める感じ。円盤でカバーしきれない場合は、四角布で土手を作ったりもします。
それでも、器械出しNs.の足元は濡れますね。ドクターは長靴です。
関節鏡で検索したら、辿り着きました
うちでは、医師の足元というか、コンプレッセンの下に、おおきなプラスチックの入れ物を置いてます。
入れ物というべきか・・・ビールケース2つ分の大きさで、高さもビールケースくらい・・・
私が手術室勤務になるかなり前からあったものなので出所は不明ですが^^;
関節鏡用のドレープが各病院共通なのかは分かりませんが、ドレープからじゃばらがでていて、そのじゃばらを大きな入れ物に入れ、水がその中に入るようにしてます。
そして吸引で量を測る・・・と。
TURみたいな感じかな・・・
なので、そんなに床が洪水になることもなく済んでます。
そんなに参考にならないコメントですみませんでした。。。
ドレープが袋状になっていて排水ドレインがついているタイプなんですね。うちは脳外の開頭用ドレープはそうなんですけど、なぜか関節鏡はただのドレープ+床吸引。考えてみれば関節鏡こそ袋状にすべきですよね。ただ膝とか術中に大きく曲げ伸ばしをするので、受ける袋の部分の形状が問題なのかなという気もします。今後、そのあたりを医師たちと検討していこうかなと思いました。
そのドレーンを吸引器につなげています。
そして、もう1本吸引を術野側にもセットしているので、ドレープの中にたまった還流液や周囲に漏れた還流液を吸ってもらい、床には多少水はこぼれますが大洪水ということはありません。
時々、ドレープからはみ出して水浸しになることがあるので、以前整形外科の医師から長靴を履きたいと言われたのですが、「手術室で長靴なんて。。。」とお断りしました。
でも、長靴愛用されている施設があるんですね。驚きました。
確かに、膝を大きく曲げ伸ばししますので、それに耐えうるドレープの大きさにしています。ドレープの上部分にワイヤーが入っているので、形を整えればドレープが土手になります。
肩関節鏡の時は、両側に大きな袋状のドレープがついた専用のショルダードレープを使用しています。
同じく、脳外科の開頭ドレープ、カイザ用ドレープ、外科開腹ドレープ全てそれに合わせた袋状のドレープがついています。
3M製品は性能的に良いのはわかっているのですが、少し高いので当院は外国製です。
コンプレッションとは…骨と骨を引き付けるということです。
たとえば、以前「管理人さん」が説明していたようにラグスクリューを打つ方法もあります。あと、大抵1/3円プレートを使用してプレーと固定しますが、プレートの穴を見てみるとひょうたん型をしていると思います。まず、一番先に骨折部に近いところへスクリューを打ち、二本眼を反対側の骨折部近くに打ち込む時、ひょうたん型の端(骨折部に遠い方)にスクリューを打ち込みます。すると、スクリューがプレートをすべり、骨折線が引き寄せられる。というのもコンプレッションといいます。
ロッキングスクリューとは…「ロックするスクリュー」でプレートとスクリューとをロック、つまり固定してしまうスクリューのことです。これだと従来のプレート固定に比べ、骨との密着が強くなり、さらに強固な固定ができます。創外固定の、内固定版のようなかんじです。
そのため、ロッキングスクリューには
同じスモール・ラージなどの規格がありますが、挿入方法が普通のプレーと固定とは違います。まず、ロッキングプレートと呼ばれる専用のプレートが要ります。そのプレートに
煙突型のガイドを差し込みます。スクリューでドリリングしたのち、デプスゲージで計測
・煙突型の小窓からスクリューの長さを読み取り、スクリューを挿入します。挿入するドライバーもロッキングタイプのドライバーを使用し、最後に「カチカチ」っと音がするまで締めることによってロックがかかるようになっています。
ロッキングプレート・スクリューの場合、単品包装になっていて、指示されて使用するという流れになると思います。
≪適応症例≫
コンプレッション・ラグスクリュー:螺旋骨折・裂離骨折など骨把持で持っても整復・安定しないもの。骨を引き寄せたいとき。
ロッキングスクリュー:粉砕骨折・最近では骨折に対し殆どの症例に使われています。前腕骨折に多いかな!?
と、こんな感じでしょうか?
間違っていたら、すみません…。
整形は手術につくと、よく医師に質問されるのでオリエンの段階で後輩に説明するようになっています。
また、医師からの勉強会が多く、知らないと怖い目にあいます(++;)
このあたりの話は、なんとなく伝え聞いたり、自分で考えてみてこんな感じかなぁという理解だったので、とっても参考になりました。ニガテとする骨折関係の手術を克服するためにAOコースの参加を考えていましたが、今年は遠方過ぎて断念。
さくらさん、スクリューとかプレートを解説した本ってなにかご存じありませんか? 知っていたら教えていただけるとうれしいです。
あと、大きな書店で販売していますが、整形の新人医師の手術本(正式な名前は忘れました)がお手頃?な価格で基本から載っています。それは、ものすごく基礎から載っていたのでよかったです。アバウトな情報ですみません。
私は、ほとんど院内で勉強会した資料が多いです。整形の医師がわかりやすく作成しているので本を見るより簡単なので…。
外科はいろいろな本が出ていますが、整形は基本から載っている本というのは中々ないですよね…。ただ、看護師用より新人医師用で探したほうが色々あるようです。
AOコースですが、次回から看護協会を通さずに「シンセス」のみで募集をかけるようです。
また、来年は神戸開催がありますが、医師のみのコースは決定していますが、看護師のコースは実施するか未定のようです。
応募用紙も病院に入ってるシンセスから貰うか、整形医師から情報を貰うかしないと、申し込み開始から、半日で一杯になるようです。先着順なのでかなりの競争率ですよ。
もし、働かれている施設の整形医師がAOコースに行ったことがあり、インストラクターなどしていれば、優先的に行ける場合もありますよ。
去年まではAOインストラクターのDr.がいて、コネはあったのですが、会場が北海道と遠方のため断念。数年以内には受講したいのですが、今度は競争にうち勝たなくては、ですね。それまで自分がオペ室にいられるかなぁ。
あの空気で膨らませるヤツですか??
床に吸収パッドを敷くというような発想はありましたが、
プールとは、参りました!
実用的な気がするのですが、最初の導入時にイメージ的な問題で各方面から反発されそうな予感、、、
その点、いかがでしたか?
はじめて投稿します。
うちの病院では膝や肘の関節鏡のときは床が水浸しになります。床の吸引で対応しています。手術時間の長いACL再建などでも30〜40本使用しますが床の吸引でなんとか対応できています。
この前肩の関節鏡下の関節形成があったときはHOGYの肩関節用のドレープをDr.が手配していたので床はほとんど汚れませんでした。
3Mのパウチよりももっと大きなものがついており一番下には蛇腹がついています。吸引をつなげるもよし、蛇腹をバケツに突っ込んでおくもよしの優れものでした。
サイズも全身を覆えるサイズでしたよ。
円盤状のやつを2つ、3つ使っていて、
外回りは水の広がりを見ながら円盤の一を調整していきます。
後は四角布で土手を作って堰き止めたり、気分は子どもの頃やったダム遊び感覚!?
整形が苦手なオペナースです
転職し今のオペ室に来て半年くらいですが、今までと違い業者が立会いに来ないことも多く、いまさらながら勉強しなければと思っています
新しく来たDrに言われたことで質問です
鎖骨骨折でベストのプレートを入れたんですが、Dr指示で2.7のスクリューも発注していました
「2.7のドリルつけて」といわれ、2.7スクリュー用の2.1のドリルもきていたので確認のために「2.7のドリルですね」と確認して径2.7のドリルをつけ渡しました
スクリューを「2.7の○○ちょうだい」と言われたときに間違いに気づき、その一本は3.5を入れました
謝ったときに「ドリル径なんて業者ごとに違うんだし、ドリル径で言う人なんかいない」
と言われました、Drは皆スクリューの径で指示を出すんでしょうか?