2006年06月18日

看護師ならAED、使えますよね...?

最近は、町中でこんな看板をよく見かけるようになりました。

AED(自動体外式除細動器)設置の看板

AED、もう皆さんご存じですよね?

AED: Automated External Defibrillator = 自動体外式除細動器

デパートで見つけた自動体外式除細動器(AED)2004年7月に、非医療従事者でもAEDを使えば除細動が実施できるように法整備がされて以来、空港やデパート、競技場、コンサートホール、駅などに順次配備が進められています。都市部にお住まいの方なら、どこかしらでこんな看板やAEDの実物をみたことがあるんじゃないでしょうか?

愛地球博や市民マラソン大会などで実際にAEDによって命が救われたという事例がいくつも報告されており、新聞等の報道でも一度は耳にしたことがあると思います。

市民レベルでは急速に広まりつつあるAEDですが、意外なことに病院関係者の方にあまり知られていないという側面もあるようです。AEDは言ってみれば素人向けの器械です。病院には従来からの手動式の除細動器があり、心電図波形を医師が医学的に判断し、必要な出力(J ジュール数)を設定して除細動を実施しています。そうした医学的判断をコンピュータで自動化して無資格者でも安全に使えるように作られたのがAEDですので、医療者たるもの、AEDなどという簡略化された器械を使うものではないという風潮があるようです。

また、我々看護師からすると、これまで除細動は完全な医療行為で医師が行なうものという固定観念がありました。(実際のところ、包括的指示のもとナースでも手動式の除細動を使っても法的には問題はなかったのですが、、、)
ところがAEDの登場によって、除細動は二次救命処置(ACLS)ではなく、ナースを含め医師以外でも行なうべき一次救命処置(BLS)の一部という位置づけになりました。

医療者であれば全自動式ではないふつうの除細動器(DC)を使えるのだから、AEDなんて必要ないと言う人もいますが、はっきり言って間違いです。

逆に言えば、いまでは民間人でさえAEDが使えるのですから、その使い方を医療者が知らないというのはかなり恥ずかしいというご時世になっています。

腰の重い日本の厚生労働省と医師会が、無資格の民間人に除細動という高度な医療処置を解禁したというのには、十分な理由があります。簡単にいえば救命に関する国際ガイドラインが強く推奨したということなんですが、それには健常者の「突然の心停止」という症例が意外と多いという統計データが元になっています。

突発的に意識を失って倒れた人のほとんどが心室細動(VF)を起しており、そこから救命するには電気的除細動が唯一の方法となります。除細動は1分1秒でも早いに越したことはなく、発症から1分遅れる毎に救命率は7-10%減っていくと言われています。いま東京都の場合で、通報から救急車が到着するまでに平均6分かかっているそうです。ですので、救急車を呼んでいるだけの時間もない。だからこそ一般市民によるAED使用が認可され、推奨されたという事情があります。

突然の心停止が起きる確率は病院内においてもおんなじこと。むしろいろいろな疾患を抱えている人が多いから確率的には相当高いかも。手動の除細動器は高価な医療機器ですから、使用頻度の高い病棟にしか準備されていないかもしれません。そんなとき比較的安価なAEDであれば各フロアにひとつずつ配備できて、しかも医師を待たずに早期除細動が可能になります。

ここで看護師の皆さんに、伝えたいポイントが2点あります。
  1. 看護師たるやAEDを使えるのは常識。いまだに触ったことがないと言う人は速攻、AED使用講習を受けるべき!
  2. 民間人に解禁するくらいに除細動は緊急性がある処置なのだから、病院内で除細動が遅れることは許されない。ナースたるや緊急除細動適応の心電図波形(VFと無脈性VT)を判断して、すぐに除細動の準備を整えなくてはいけない。

1.医療者たるやAEDを使えなければ恥ずかしい!

まず前半の部分、これはもうすでに書いたとおり、民間人でさえできる医療処置を医療のプロであるはずの看護婦ができないというのはあまりに恥ずかしいことです。実際のところ、AEDはスイッチさえ入れれば音声ガイダンスで操作方法を指示してくれますので、なんの知識がなくともとりあえず使えますが、町中などでバイスタンダー(by stander)として現場に立ち会った場合、医療従事者には主導的立場が期待されます。職業的に病院で使う使わないは別にして、医療人としてのプライドに掛けてAEDの使い方はマスターしているべきです。

これまで医療従事者にしか認められていなかった除細動という高度な医療処置が民間人に解禁されたとあって、意識の高い市民の間では我々医療者が思う以上にAEDへの注目が集まっています。特に災害ボランティアに携わる人たちや民間の救命蘇生教育に携わる人たちの中には、下手な医療者よりBLS(一次救命処置)能力に長けている人たちも多くいます。我々医療従事者は危機感を持たなければならない時代になっているといってもいいと思います。

病院内でAED講習会のようなものが開かれているなら、それは絶対に受けておくべきです。医療従事者であるなら世界標準のアメリカ心臓協会(AHA)の公式BLSコースを受講するのが理想ですが、手っ取り早くは、地元消防本部に問い合わせればきっと市民向け無料救命講習でAEDの使い方を教えていると思いますし、日本赤十字社の講習を受けるのも手です。

2.モニター心電図 ‥ 最低限VFだけは見つけられるように

ちょっと前に書きましたが、医療従事者からするとAEDは市民向けのツールというイメージが強く、院内に設置しているという病院はまだまだ少ないようです。本来であれば病院だからこそ各フロアにAEDを設置して、看護婦はもちろん、事務職員や清掃員も含めて必要であればすぐに対応できるように訓練しておくべきだと思うのですが、そういう環境はまだ少ないようです。

AEDがない場合、早期除細動を行なうために必要なのはなにかというと、モニター心電図によって早期に VF や pulsless VT を見つけることに尽きます。そのためにはベッドサイドにいる患者にとっていちばん身近な存在である看護師がモニター心電図を読めなければなりません。

以前、ナースたるやモニター心電図くらいは判断できるようになりたいよね、という話を書きました。

モニター心電図を装着する最大の目的は、「防ぎ得る突然死をなくすこと」。すなわち致死性不整脈である心室細動(VF)を早期発見し、適切な対応をする、これが最低限にして最大のモニター心電図装着の目的だと思っています。

ナースがはじめるACLS 今日からあなたもVFハンターicon看護婦向けの二次救命処置解説本に「ナースがはじめるACLS」という本がありますが、その副題が「今日からあなたもVFハンター」だったりします。とにかく病院内の救命の基本は心室細動=VFを素早く見つけること、それが重要なんですね。(余談になりますが、「ナースがはじめるACLS」という本、私はキライです。表紙を見てもらえばわかるとおり、中身がマンガ仕立てで子ども騙しっぽいから。看護婦向けの本には多いんですが、「マンガで覚える○○」って、なんだか恥ずかしいモノを感じてしまうんですよね。わかりやすければいいのかなぁ。なんだか専門職としてのプライドが、、と思ってしまうのですが)

心電図を読む、なんて大それたことでなくても、医療者であればとにかくVFだけは知っておかなければマズイです。心電図の勉強なんてことより、まずは心室細動波形をパターン認識として覚えること、それが先決。

そんなVFについて書こうと思ったのですが、ちょっと長くなりそうなので、詳しくはまたの機会に、、、、。

posted by Metzenbaum at 22:43 | Comment(10) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS)
この記事へのコメント
漫画でかいてあるのって そんな恥ずかしいことですか?
私は漫画とか挿絵がたくさんついている方がわかりやすくて いいと思ってたんですが・・・なんかバカにされた気分です・・・
Posted by かな at 2006年06月20日 02:36
かなさん、はじめまして。
御意見、ありがとうございます。
気分を悪くされたらごめんなさい。
私が単純に思うのは、医療は高度な専門職であるはずなのに、
それをマンガ仕立てで学ぶという姿勢が、とてもギャップが
あるように感じてしまうんです。

小学生向けの学習参考書には、マンガで学ぶ○○みたいな本はたくさんありました。
でも中学、高校、大学と進むにつれて自然となくなっていくものです。
ところが看護領域に関しては、なぜか爆発的に多くなるマンガ仕立ての本。
不思議だなぁと思うだけなんですよ。

他のコメディカルの参考書に関してはどうなんでしょう?

わかりやすいということがいちばんかもしれませんが、
マンガというとどうも小学生の学習法を連想してしまうんです。。

まあ、私の勝手な思い込みなので、年寄りの戯れ言と思って聞き流してください。
Posted by 管理人 at 2006年06月20日 07:36
こんばんわ
学習の仕方って人それぞれですよね?漫画仕立て=小学生の学習方法
字がたくさんあっていかにも難しそうな本=大人って考えおかしいですよね?

思い込みと言われますが、ナースとしてそういう先入観はよくないんじゃないかと・・・
管理人さんの、文章は時折、人をこばかにしたような言い方も見られますよ。

ナースとして、患者さまと接する時に知らぬ間に出ていないことを願います。
年をとっていくと、注意してくれる先輩ナースもいなくなりますからね
Posted by やよい at 2006年06月20日 23:45
思い込みと言われますが、ナースとしてそういう先入観はよくないんじゃないかと・・・
管理人さんの、文章は時折、人をこばかにしたような言い方も見られますよ。

ナースとして、患者さまと接する時に知らぬ間に出ていないことを願います。
年をとっていくと、注意してくれる先輩ナースもいなくなりますからね
Posted by やよい at 2006年06月20日 23:47
何度も失礼いたしました。
送信ミスです↑・・・・
Posted by やよい at 2006年06月20日 23:59
やよいさん、コメントありがとうございました。
なんだかこの話題で物議を醸してしまったようで恐縮です。

議論となると話は尽きないのですが、まあここはひとつ論点を整理することとしまして、、、、

> 思い込みと言われますが、ナースとしてそういう先入観はよくないんじゃないかと・・・
> ナースとして、患者さまと接する時に知らぬ間に出ていないことを願います。

苦言はありがたく頂戴したく思いますが、ここは私個人のキャラクターを披露するような場ではありませんので、そういったことまでは踏み込んで憂慮頂かなくて結構です。

看護学校でもそういう過保護な風潮があって「看護職たるもの云々」と私生活のことまでよくいわれたものですけど、はっきり言って余計なお世話です。過去に存在した「修道女上がりの看護婦」の時代じゃあるまいし、看護師は私生活や個人的なキャラクターまで縛られる聖職者ではありません。

事実として内容に間違いがあるとか、そういったご指摘でしたら私としても不本意でありますので、それなりに調査のうえ修正・削除を行ないます。ただ思想的な部分ばかりは、議論することはできても、お互いあまり実を結ぶ結果とはならないと思いますので、できれば避けたいところです。

以上、当ブログのスタンスをお話しさせていただきました。そういった理由で今回は具体的なお返事は控えました。もし純粋に「ナースの教育とマンガの活用」という点で話を深めたいということでしたら、考えますので、どうぞまたお気軽に書き込みください。
Posted by 管理人 at 2006年06月21日 02:19
うわっ なんか管理人さんて感じ悪い・・ナースならAED使えますよね?って=あたりまえじゃんっ そんなのも使えないで看護婦してるわけ?はぁ?って感じに聞こえるよ。ごめんなさい私 まだ研修うけてないから使えないんですが・・・・それに漫画で書いてる参考書好きですよ。

それにですね、ちょっと カチンとくる内容のコメントに対して、不快に感じさせる言い方おおいですね。

修道女上がりの看護婦じゃあるまいし・・・って言葉 驚きました。
いやなこととか書かれるのってブログは色々な方が読むから仕方がないと思いますが、管理人としては読んでる人に不快に思わせないように配慮してほしいと思いました。
Posted by 1年生 at 2006年06月22日 22:07
例えば手術室看護学会かなにかで、どこかの知らない看護婦が「『マンガで覚える○○』って、なんだか恥ずかしい‥‥」みたいな立ち話をしているのを聞いたとします。そんなとき、第三者がいきなり面と向かって「そんな思い込みでいうなんてあなた看護婦として失格ですよ」なんて言いますか?

マンガ仕立ての参考書をどう考えるのも個人の自由です。私の考えと相容れない人も多いでしょう。それを意見としていただくならともかく、人格否定に繋げて発言されるのはどうなのかなと思ってしまいます。

見ず知らずの人に投げかけるふつうの会話としては、明らかにケンカを売ってますよね。

それに対して、やや感情的に反応してしまった私が悪いんでしょうか?

ここは日常生活の場ではなく、インターネットの世界なのだから、誹謗中傷なんてあたりまえ、世間一般の常識で考えてはいけないというのでしたら、私のインターネットへの認識が甘かったということですけど。

きちんとした御意見であれば、それなりに私も対応していきますが、単に「気に入らない」とか「考えの相違」というだけの攻撃的な書き込みは今後ご遠慮下さい。私自身がイヤな思いをしてまで、このブログを続けていくモチベーションはありませんので。
Posted by 管理人 at 2006年06月24日 09:31
1年生さん、前半部分だけお返事させていただきますね。表現が悪く、不快に感じさせてしまったらごめんなさい。本文中でも強調して書いたつもりですが、AEDに関しては医療の世界より非医療従事者の世界のほうが関心が強い傾向があり、社会の動きに対して病院内の方が遅れを取っている部分もあります。そんな危機感を伝えたく、強めのあのような書き方をさせてもらいました。

医療者たるやAEDを使えなければならない、と私ははっきり書きましたが、これは私の個人的な意見ではありませんので、念のため。2000年に発表されて以来、日本でも標準となっている「心肺蘇生と救急心血管治療のための国際 ガイドライン2000」のなかで、医療従事者はAEDの施行について「習熟し専門的知識を持ち、実施の資格を認可されているべきである」(エビデンスレベル:クラスIIa)と強く勧告されていることに基づいています。あとhttp://www.city.funabashi.chiba.jp/kenkoseisaku/sinpo/2005/sinpo3.htm
あたりも参考にどうぞ。

すべてのナースが常識としてAEDを使えるべきですが、それは長期目標であって、日本ではまだまだ追いついていません。そんな現実は私も承知しています。現実は一年生さんのように未受講の人の方が多いかもしれません。そんな事情をわかった上であえてあのような書き方をしているのは強調のためとご理解ください。別にイヤミのつもりじゃないです。

本文中でも書きましたが、病院としてAED使用への取り組みは遅れていますので、院内研修がないなら積極的に市中のAED講習を受講されることをお薦めします。
Posted by 管理人 at 2006年06月24日 09:57
いつも勉強の参考に読ませていただいてます!
ありがとうございます。
管理人さんに色々とご意見が出ているようですが、正直私は漫画の参考書も嫌いですし(エビデンズがろくに書いてないものが多いので…)、このサイトも、教えてもらっておいて、言い方が気に入らないと文句を言うなんて意味がわかりません!強制されてるわけじゃないんだから読まなければいいと感じてます。

嫌な思いをすれば、続けるのも嫌になってしまうと思いますが、私は今のままの管理人さんの意見が聞きたいと感じています。
どうかこれからも頑張って下さいね!
Posted by 佐藤 at 2011年11月23日 01:13
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