何が違うのかというと、、、、
【ペアン鉗子】
手術や外科処置に用いる止血鉗子の一種で,フランスの外科医 Pean に由来する.主に体腔内組織の止血や組織把持に用いる.無鉤であるため,コッヘル鉗子 Kocher's forceps に比べて,把持力は弱いが,組織の損傷は少ない.直型と弯曲型がある.長さは11cmから18.5cmまであり,標準型は14.5cmである.また,呼称に混乱があり,ペアン止血鉗子をコッヘル無鉤鉗子と呼んでいたこともある.先端が麦粒状になった無鉤の腸管把持鉗子 gastrointestinal forceps もペアン鉗子といわれることがある(Jules Emile Pean はフランスの外科医,1830-1898).【コッヘル鉗子】
【英】Kocher's forceps(clamp)コッヘルが考案した外科手術用の止血鉗子artery forcepsで,先端部分が弯曲した曲型とまっすぐな直型があり,長さは11cmから18.5cmまで各種あり,標準型は14.5cmである.先端部分に滑り止めの鉤のある有鉤型(Kocher's forceps)とそれのない無鉤型(Kocher's clamp)がある.類似の鉗子にペアン止血鉗子があり,施設により呼称が異なるが,一般的には短型有鉤止血鉗子をさすことが多い(Emil Theodor Kocher,1841-1917はスイスベルン大学外科教授(1872〜1911).1909年度ノーベル医学・生理学賞受賞).(以上、南山堂医学大辞典より)
辞書の定義を出したらよけいややこしい話になってしまいましたが、要は14-5cmくらいの一般的な形の鉗子で「鉤」があるのがコッヘル、ないのがペアンと思ってしまって間違いありません。
「鉤」(こう)というのは、噛み合わせの先端についた引っかかりというか、カギ状の部分ををいいます。これがあると何がいいのかというと、がっちりと組織を掴むことができる、業界用語でいうならしっかり把持(はじ)できる、わけです。
そこで鉤があるコッヘルは主に、人体の丈夫な組織、つまり皮膚や筋肉、皮下脂肪層などをつまんで、手術創(術野)を拡げるのに使われたりします。私の知るかぎり、整形外科や脳神経外科などでは、鉗子といえばコッヘルが基本というくらいに多用されています。
ただ、がっちりつかめる=組織が傷つく、というわけで腸管など柔らかい組織にコッヘルは使いません。そういうときには鉤がないタイプの鉗子、ペアンを使います。外科の開腹手術などではペアンがメインに使われています。反対にいえば外科でコッヘルを出すことはほとんどありません。
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コッヘルもペアンも一般には止血鉗子のひとつといわれていますが、実際のところ、止血目的というよりは、手術における"指先替わり"としてなにかとよく使われます。言ってみれば万能鉗子ですね。
出血点をつまんで文字通り止血するのに使うこともありますが、ハサミの替わりにして、術野を展開していく「剥離」に使ったり、電気メスのコードをドレープ(清潔な手術野を確保するための布:覆布)に留めたり、ホントなんにでも使います。
ペアンやコッヘルでは対応できないような特殊な用途には他にもいろいろなタイプの鉗子が存在します。例えば柔らかい胆嚢を把持するためには専用の形状をした粘膜把持鉗子がありますし、腹膜を拡げる専用のミクリッツ腹膜把持鉗子があったり。
まあ、外科手術に使う鉗子にはいろいろありますが、とにかく基本は、ペアンとコッヘルです。鉤あり、鉤なしというのは今後手術の直接介助(器械出し)にはとても重要なポイントになりますので、よく覚えておいてください。
ぺアンがオペで出てきたので・・・コッヘルも覚えよう(笑い
関東医大ですから