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2016年07月28日

「無許可で医師、看護師が宿直勤務…県立病院が労基法違反」

またまた発覚! 公立病院の労働基準法違反の開き直り。

クリップしておきます。

無許可で医師、看護師が宿直勤務…県立病院が労基法違反


無許可で医師、看護師が宿直勤務…県立病院が労基法違反

2016年7月26日(読売)

埼玉県病院局は25日、県立循環器・呼吸器病センター(熊谷市)で、労働基準監督署の許可がないまま、医師や看護師の宿直勤務が行われていると発表した。人員不足が原因で、労働基準法違反の状態が続いている。

 労基法では、夜間の宿直や休日の日直勤務を行う際は、労基署の許可が必要と定めている。宿日直勤務の職員は、病室の巡回などの軽度な業務しか従事できない。

 同センターは1994年5月の開院当初に許可を得たものの、許可書を紛失。2014年2月に再申請したが、熊谷労基署が不許可とした。理由として、医師や看護師が足りず、通常勤務と宿日直勤務の境目が不明確で、心臓へのカテーテル治療などの高度な医療行為を宿日直職員が常態的に行っていると指摘された。

 同局は「許可がないのは好ましい状況ではないが、医療サービスの質は低下させない。許可を受けられるよう、勤務条件の整備や、医師の増員に努めたい」としている。

 同様の労基法違反が千葉県の6病院で今月判明したことを受け、同局が県立4病院の状況を調べた。



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2016年07月24日

日本一タチの悪いブラック企業といえば、やっぱり病院。【千葉県立病院無許可当直】

日本一タチの悪いブラック企業といえば、やっぱり病院、でしょうね。



「労働基準監督署に当直業務の許可申請をしたけど、許可されなかったから、無許可でやってました」というこのニュース。6つの千葉県立病院がすべて、というのだからびっくりですよね。つまり公務員が業務命令で違法な労働をさせられていた、ということです。

病棟勤務の看護師さんはあまり意識していないかもしれませんが、夜勤と当直は違います。

ここで問題になっているのは、当直です。

当直は、ちょっとした見回りなどの軽微な業務で、基本的には寝ていて良い業務です。週40時間の法定労働時間にはカウントされません。ですから当直業務の翌日、つまり当直明けはふつうに日勤業務となります。

夜勤は、昼間のかわりに夜に勤務するわけですから、朝、定時を超えれば、明けとなって家に帰れますよね?

それとは違う、一般的には医師に適応されている勤務体系です。

小さい病院だと看護師でも病棟勤務の人も当直扱いのところもあるらしいですが、2交代とか3交代とかの大病院では基本は「夜勤」のはずです。ただ、大病院でも手術室では当直制のところも多いとは思います。


この当直業務、翌日もふつうに日勤になるってことは、寝られるのが前提。

ですから、

「常態としてほとんど労働する必要のない勤務であり、原則として、通常の労働の継続は許可しない」

という条件が満たされていない限り認可はされない、ということになっています。(医師・看護師向けにはもう少し細かい規則がありますが…)

今回の千葉県の場合、こういった労働者を守る条件が担保されていなかったので許可されなかったわけです。つまり、業務形態からしたら当直ではなく、夜勤として勤務させるべきなのですが、そうしなかった。無許可当直という横暴な手に出たわけですね。

さらに、今回の立入検査で指摘されて、是正するのかと思えば、記事によれば、「千葉県は『当直勤務が認められないと翌日の勤務ができないため、医師などの数が足りなくなる』としており、労働基準監督署と引き続き協議を続けたい」ということです。

つまり、「ムリなんだもん、しょうがないじゃん。大目に見てよ〜」と堂々と言っているわけで、、、


ふつうだったら、それなりに処分がでてもいいところを、病院の公益性ゆえに許されるんでしょうかね。

一般企業だって、労働基準を守って残業代を出してたら、仕事が回らない。潰れてしまう、ってよく言ってますよね。でも病院だとそれが許されるのか?

社会的にみたら、地域で病院が機能することは必須なことですが、そのしわ寄せを一労働者である医療従事者が自分と家族を犠牲にしているとしたら、あまりに不健全な社会構造ですよね。


ただ、こういうことって全国のどこの病院でもあることで、恐らく実態とは違う申請でも、当直許可が降りているんじゃないかって気がします。だからこそ、千葉県も「そんな厳しいこと言わないでよ」と強気に出ているわけですが、逆にまっとうな判断をしてくれている千葉の労働基準監督署は拍手ものだなと思います。




千葉の県立病院 医師や看護師が無許可で当直勤務

7月22日 12時39分(NHKニュース)
千葉県にある6つの県立病院すべてで、労働基準監督署の許可がないまま、医師や看護師に深夜などの当直勤務をさせていることが分かりました。千葉県は、「これまでもたびたび許可を申請してきたが、認められなかった」として、労働基準監督署と引き続き協議を続けたいとしています。

病院で医師や看護師が深夜に待機や監視の軽い業務を行ったあと、翌日に通常の業務を行う「当直勤務」は特殊な勤務形態であるため労働基準監督署の許可を得る必要がありますが、千葉県がんセンターなど千葉県内にある6つの県立病院すべてで、許可を得ないまま、当直勤務をさせていることが分かりました。
千葉県によりますと、ことし5月、労働基準監督署から千葉県がんセンターの立ち入り検査を受け、勤務の現状について確認を求められたということです。千葉県は「これまでもたびたび許可を申請してきたが、『深夜の業務が軽い業務とは言えない』などという理由で当直勤務として認められなかった」としています。
千葉県は「当直勤務が認められないと翌日の勤務ができないため、医師などの数が足りなくなる」としており、労働基準監督署と引き続き協議を続けたいとしています。



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2016年07月20日

急性アル中で倒れた人にAEDを使おうとしたら怒られたのは、なぜ?【解説】

ここ数日、Twitter上でAEDに関する話題をよく目にします。

倒れた人にAEDを使ったら通りすがりの看護師に怒られた、という内容です。

ご本人が拡散希望と書いているので、そのまま引用しましたが、下記のような内容です。(今後、ご本人がTweetを消去することがあれば、こちらも削除します)


これ本当に拡散希望なんだけど、昨日横浜駅で急性アル中でぶっ倒れてる人がいたから助けに入ったんだけど、徐脈で意識レベル低下してたからとりあえずAED使ったら通りすがりのBBA看護師に「AEDなんか使うな??そんなの点滴すれば治るでしょ??すぐ剥がして??」って言われて(続く)リンク

(続き)「何も分かんないの?」的スタンスで言うだけ言って去っていったんだけど、別にAEDって貼ってもすぐ電気流れるわけじゃ無いし必要なかったらちゃんと「使わなくてOK」って言ってくれるから確認の為でも使った方がいいんだよ。こっちだって100%必要だと思って使ってねえよ(続く)リンク

(続き)急性アル中でもし吐物が詰まって気管閉塞してたら?それで心停止に繋がったら?AEDはそれをちゃんと「確認」してくれる機械なんです。むやみやたらに電気ショックしません。なのにただ見ただけで必要無いっていうのはおかしいんじゃないの?看護師なのに大丈夫?って思って(続く)リンク

(続き)道で倒れて専門的な機械が無い場所で、AEDは万が一の為の装置なんです。もしそれでその人が死んだらどうするの?死んだ人も点滴で治るの?違うだろ。本当に腹立ちました。みんなは今回のおばさんのこんな言葉に惑わされず、迷わずAED使ってほしい。ダラダラと失礼しました。リンク

H/N: 水玉みよこは柄まで通ってる
twitterアカウント:@mizutama345



これをもとに「まとめサイト」がいくつも立ち上がり、「正しい知識を持つ」ことが肝心ですね、とか、看護師なのに老害! などと多くの声が寄せられています。


文面を見るかぎり、この通りすがりの看護師というのが、言うだけ言って、何もしないで去っていったという点で、確かにひどいなという印象です。

でも、だからといって、言っていることが間違っているかといえば、あながち間違いではありません。特にAEDが必要ない、という部分は紛れもなく正解です。


先入観で「悪」と決めつけているのか、誰も気づいていないようです。Twitter世論では完全に抜けている部分なので、少々書かせていただきます。



結論からいうと、「徐脈で意識レベル低下」という状態の人にAEDを装着するべきではありません。AEDは心停止、つまり生命徴候がない人に装着するものだからです。

徐脈というのは脈拍が遅い状態のことを指します。つまり、このケースは脈は触れますので、少なくとも心停止ではありません。(原文で徐脈という言葉が使われていますが、Twitter投稿された筆者の方も実は新人の看護師さんだそうです。医療者以外は脈拍を確認することは推奨されてません)

AEDの添付文書(取扱説明書)にも「明らかに生きている人に使っちゃダメだよ」って書いてあります。

こちらは、旭化成が扱っているZollというメーカーのAEDの添付文書です。

AED添付文書:意識・呼吸+脈のない人にのみ装着する



【禁忌・禁止】
 <適用対象(患者)>
 対象患者が以下の状態の場合は、本品を使用しないでください。
 ・意識がある場合
 ・呼吸している場合
 ・脈拍を触知できる、又は血流を示す他の兆候がある場合



添付文書とは、薬事法に基づいて作成が義務付けられた公文書です。AEDのような医療機器の他、薬剤にも付いています。薬剤で言ったら用法・容量が定められている大元の書類で、どんな人には使ったらいけないという「禁忌」が明示されています。

AEDは家電とは違います。本来は医師しか使用が許されない高度管理医療機器ですから、薬と同じで、使用条件が厳密に定められています。先ほどは取扱説明書という言い方をしましたが、添付文書に書かれている条件は、家電の取扱説明書とは比較にならない厳しいものであるという点は、おわかり頂けますよね?

その添付文書で、AEDは、意識がある場合や呼吸をしている場合、脈拍がある場合は使用したらいけない、禁忌ですよ、と書かれているわけです。

メーカーと薬事法が定めるところでダメといってるわけですから、誰がなんといおうと、「脈がある人にAED装着してもいい」とは、私は言えません。

Twitter世論では、一部の医師も含めて「いいんじゃない?」と言っていますが、その根拠はどこにあるのでしょうか?

医師なら、医師免許の下に自分の裁量で添付文書を超越した適応をすることも許されますが、看護師の私にはそんな判断はできませんし、ましてや責任を負えない一般の方であれば、法律の範囲内で添付文書に従って使うのが正解と言わざるを得ません。


なんで、意識、呼吸、脈のある人にAEDを装着したらいけないのか、という点については 私のTwitterの過去ログ を辿ってみてください。7月19日〜18日あたりに連投しています。

簡単にいうと、AED設計上の「仕様」としてショック適応判断の限界があり、心電図波形によっては、心停止ではない人に装着した場合でも、誤ってショックが必要と判断してしまう危険性が否定できないからです。

AEDは心電図上での心室頻拍(VT)を検出できますが、それが心停止(つまり無脈性心室頻拍)であるかの判断はできません。だから、人間が生命徴候の有無を判定した上でないと、AEDを装着してはいけないと定めているのです。(最近は各メーカーが工夫して解析性能が上がってますので、過度に心配するほどの頻度ではないと思います。詳しく知りたい方は「AEDの心電図解析と無脈性心室頻拍の判断」(日本心臓財団ウェブ)も参考になります。


最近は一部マスコミも含めて、「人が倒れていたら迷わずAEDを!」といい加減なことを言うケースが目立ちます。以前はきちんと「人が倒れていて意識と呼吸がなければ迷わずAEDを!」だったのですが、いつ、どこから省略されるようになってしまったのか、、、

慌ててしまって、呼吸の確認を忘れた! というのはありだと思います。それは批難されるべきものではありませんし、過失や、責任追求されるものでもありません。それに誤作動の可能性としては決して高いものではないので過度に恐れる必要もありません。

ただ、AEDに興味をもってくれている人なら、ぜひAED装着前には、「反応と呼吸を確認する」ということは知っておいてほしいなと思います。(医療従事者は反応と呼吸に加えて脈拍の確認も求められています)

そこで大事なことを1点。

呼びかけて返事やうめき声、開眼などの反応がないことは確認したけど、呼吸は「よくわからない」という場合は、「ナシ」と判断してもらって大丈夫です。これは蘇生法のガイドラインでも書かれていることなので、ご安心を。

目安は10秒。

10秒間、胸からお腹のあたりの動きを見て、いつもどおりの呼吸をしている、と確信できない場合は、AEDを装着して構いません。

ただし、AEDを装着するということは、心臓マッサージ(胸骨圧迫)も必要な状況ですから、他の人がいれば胸を押してもらう、またAEDの解析後「触っても大丈夫」と言われたら、ただちに胸骨圧迫をするようにしてください。

ところで、公衆の面前で、他人の服を脱がすというのは、すごく勇気のいることだと思いませんか? だから、私だったら、服をはだける前に、きちんと胸から腹をよーく見ます。

わからなければ10秒で「いつもどおりの呼吸なし」と判断していいとガイドラインに書いてあるわけですから、10秒たったら堂々と服をはだけます。

もしなにかの間違えで、あとでトラブルになったとしても、その呼吸確認のプロセスさえしっかりしておけば、規定通りの正しい行動をしたと自信をもって説明ができます。

それに、AEDを装着すべき状況というのは、「心停止状態」ですから、AED手配は急ぐべきですが、AEDが到着するまでの間は胸骨圧迫が行われていなければなりません。

呼吸の有無が正しく判断できなくても、AED到着までの間に胸骨圧迫を行っていれば、もし心停止でなければ痛み刺激に対する反応があるはずですから、AED装着が不要であれば気づける可能性が高まります。



AED使用は決して難しいものではありません。それは事実です。

ただ、イケイケGoGo! の根拠のない勢いだけで不正確な知識が広まるのは、私は問題だと思っています。

広めている人は、AEDの敷居を下げたい、みんなに使ってほしいという思いなのはわかります。

でも、医療器具の使用法なんですから、それなりに根拠をもっていなければいけないと思うのです。


すでに広まってしまっているものはどうしようもありませんので、せめて正しい情報を、と思い、これを書かせてもらいました。

最終的に何が正しいのかは読み手の皆さんに判断していただけたらと思います。

反応確認と呼吸確認を市民に求めるのは酷。誤作動のリスクが低いなら、具合悪そうな人がいたらとりあえずパッドを貼ればいいじゃん、というのもひとつの考え方です。

あえて、そう判断するならなにもいいませんが、少なくともメーカーと国が定めたAEDの使い方ではない、ということは知っておいてほしいです(さらに言えば国際的な使用基準からも外れてます)。知らずに、そう早合点しているとしたら、誰にとっても不本意なことではないでしょうか。



もし、なるほど、と思った人がいたら、ぜひこの記事の拡散をお願いします。




posted by Metzenbaum at 12:22| Comment(7) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月03日

人工呼吸はやっぱり重要ですよ、という報道とプレスリリース

看護職の皆さんは、人並み以上に救命スキル【BLS】に関心が強いと思いますが、皆さんは昨今における人工呼吸の位置づけをどのように理解していますか?

世間一般では、「最近の心肺蘇生法は人工呼吸をしなくてよくなったらしいよ!?」なんて、言われていますが、もしかしたら人様にCPRを教えることがあるかもしれない看護職にとっては、この点、いかがでしょうか?

先日、読売系で興味深い報道がありました。

救急車の到着遅れても…「心肺蘇生」で救命率2.7倍」



倒れるところを目撃された心停止のうち、何もされなかった群にくらべて、救急司令の指示で胸骨圧迫をすると生存退院率が1.5倍に増えて、さらには通りすがりの人が自発的に胸骨圧迫と人工呼吸がなされた場合は生存退院率が2.7倍だった、という内容。

金沢大学の研究者がヨーロッパ蘇生協議会(ERC)の機関誌、Resuscitationに発表したもので、なんで日本の新聞が取り上げたかというと、金沢大学が日本国内の報道機関に向けてプレスリリースを打ったからです。

そのプレスリリースがこちら。

金沢大学プレスリリース「救急車到着に時間を要する地区では人工呼吸を組み合わせて行う心肺蘇生の自発的実施が格段に優れた救命効果をもたらす!」


救急車到着に時間を要する地区では人工呼吸を組み合わせて行う心肺蘇生の自発的実施が格段に優れた救命効果をもたらす!」というタイトルで、PDF(680KB)で誰でも読めます。たった3ページですから、ぜみ皆さん、目を通してみてください。

このプレスリリースの冒頭では、私たち医療従事者に向けて、警鐘ともいうべきメッセージが載っています。

市民に対して蘇生教育を行う立場の医療従事者に人工呼吸の重要性を再認識させる(中略)必要性を示唆する結果となりました。

人工呼吸は、依然大事だから、それを啓蒙するのは医療者の役目だよ、というわけです。


一般の方たちは、NHK報道なんかで、人工呼吸は不要になったと言われれば、それを真に受けてしまいます。

しかし、人が生きるメカニズムと、命を落とすメカニズムをきちんと学んでいる私たち看護師は、細胞の酸素化を考えた時に、胸骨圧迫のみでいい場合と、ダメな場合があるということを理解しています。

そのことを踏まえて、適正に市民向けに健康教育(蘇生教育)を行う必要があるのです。

例えば、

・救急車が到着するまで数十分かかるような場所
・溺水など水難事故が想定される現場の職員
・呼吸原性心停止が多いとされる子どもの急変を想定しているような職業人

などに対して救命法を指導する上では、胸骨圧迫のみの蘇生法では万全とはいえないということです。


マスコミはセンセーショナルなものに飛びついて風評を流布していきますが、きちんと基礎から理解している私たちはその砦となる必要があると、金沢大学の研究は訴えているのです。





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2016年07月28日

「無許可で医師、看護師が宿直勤務…県立病院が労基法違反」

またまた発覚! 公立病院の労働基準法違反の開き直り。

クリップしておきます。

無許可で医師、看護師が宿直勤務…県立病院が労基法違反


無許可で医師、看護師が宿直勤務…県立病院が労基法違反

2016年7月26日(読売)

埼玉県病院局は25日、県立循環器・呼吸器病センター(熊谷市)で、労働基準監督署の許可がないまま、医師や看護師の宿直勤務が行われていると発表した。人員不足が原因で、労働基準法違反の状態が続いている。

 労基法では、夜間の宿直や休日の日直勤務を行う際は、労基署の許可が必要と定めている。宿日直勤務の職員は、病室の巡回などの軽度な業務しか従事できない。

 同センターは1994年5月の開院当初に許可を得たものの、許可書を紛失。2014年2月に再申請したが、熊谷労基署が不許可とした。理由として、医師や看護師が足りず、通常勤務と宿日直勤務の境目が不明確で、心臓へのカテーテル治療などの高度な医療行為を宿日直職員が常態的に行っていると指摘された。

 同局は「許可がないのは好ましい状況ではないが、医療サービスの質は低下させない。許可を受けられるよう、勤務条件の整備や、医師の増員に努めたい」としている。

 同様の労基法違反が千葉県の6病院で今月判明したことを受け、同局が県立4病院の状況を調べた。



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2016年07月24日

日本一タチの悪いブラック企業といえば、やっぱり病院。【千葉県立病院無許可当直】

日本一タチの悪いブラック企業といえば、やっぱり病院、でしょうね。



「労働基準監督署に当直業務の許可申請をしたけど、許可されなかったから、無許可でやってました」というこのニュース。6つの千葉県立病院がすべて、というのだからびっくりですよね。つまり公務員が業務命令で違法な労働をさせられていた、ということです。

病棟勤務の看護師さんはあまり意識していないかもしれませんが、夜勤と当直は違います。

ここで問題になっているのは、当直です。

当直は、ちょっとした見回りなどの軽微な業務で、基本的には寝ていて良い業務です。週40時間の法定労働時間にはカウントされません。ですから当直業務の翌日、つまり当直明けはふつうに日勤業務となります。

夜勤は、昼間のかわりに夜に勤務するわけですから、朝、定時を超えれば、明けとなって家に帰れますよね?

それとは違う、一般的には医師に適応されている勤務体系です。

小さい病院だと看護師でも病棟勤務の人も当直扱いのところもあるらしいですが、2交代とか3交代とかの大病院では基本は「夜勤」のはずです。ただ、大病院でも手術室では当直制のところも多いとは思います。


この当直業務、翌日もふつうに日勤になるってことは、寝られるのが前提。

ですから、

「常態としてほとんど労働する必要のない勤務であり、原則として、通常の労働の継続は許可しない」

という条件が満たされていない限り認可はされない、ということになっています。(医師・看護師向けにはもう少し細かい規則がありますが…)

今回の千葉県の場合、こういった労働者を守る条件が担保されていなかったので許可されなかったわけです。つまり、業務形態からしたら当直ではなく、夜勤として勤務させるべきなのですが、そうしなかった。無許可当直という横暴な手に出たわけですね。

さらに、今回の立入検査で指摘されて、是正するのかと思えば、記事によれば、「千葉県は『当直勤務が認められないと翌日の勤務ができないため、医師などの数が足りなくなる』としており、労働基準監督署と引き続き協議を続けたい」ということです。

つまり、「ムリなんだもん、しょうがないじゃん。大目に見てよ〜」と堂々と言っているわけで、、、


ふつうだったら、それなりに処分がでてもいいところを、病院の公益性ゆえに許されるんでしょうかね。

一般企業だって、労働基準を守って残業代を出してたら、仕事が回らない。潰れてしまう、ってよく言ってますよね。でも病院だとそれが許されるのか?

社会的にみたら、地域で病院が機能することは必須なことですが、そのしわ寄せを一労働者である医療従事者が自分と家族を犠牲にしているとしたら、あまりに不健全な社会構造ですよね。


ただ、こういうことって全国のどこの病院でもあることで、恐らく実態とは違う申請でも、当直許可が降りているんじゃないかって気がします。だからこそ、千葉県も「そんな厳しいこと言わないでよ」と強気に出ているわけですが、逆にまっとうな判断をしてくれている千葉の労働基準監督署は拍手ものだなと思います。




千葉の県立病院 医師や看護師が無許可で当直勤務

7月22日 12時39分(NHKニュース)
千葉県にある6つの県立病院すべてで、労働基準監督署の許可がないまま、医師や看護師に深夜などの当直勤務をさせていることが分かりました。千葉県は、「これまでもたびたび許可を申請してきたが、認められなかった」として、労働基準監督署と引き続き協議を続けたいとしています。

病院で医師や看護師が深夜に待機や監視の軽い業務を行ったあと、翌日に通常の業務を行う「当直勤務」は特殊な勤務形態であるため労働基準監督署の許可を得る必要がありますが、千葉県がんセンターなど千葉県内にある6つの県立病院すべてで、許可を得ないまま、当直勤務をさせていることが分かりました。
千葉県によりますと、ことし5月、労働基準監督署から千葉県がんセンターの立ち入り検査を受け、勤務の現状について確認を求められたということです。千葉県は「これまでもたびたび許可を申請してきたが、『深夜の業務が軽い業務とは言えない』などという理由で当直勤務として認められなかった」としています。
千葉県は「当直勤務が認められないと翌日の勤務ができないため、医師などの数が足りなくなる」としており、労働基準監督署と引き続き協議を続けたいとしています。



posted by Metzenbaum at 23:14 | Comment(2) | TrackBack(0) | 看護師の労働条件
2016年07月20日

急性アル中で倒れた人にAEDを使おうとしたら怒られたのは、なぜ?【解説】

ここ数日、Twitter上でAEDに関する話題をよく目にします。

倒れた人にAEDを使ったら通りすがりの看護師に怒られた、という内容です。

ご本人が拡散希望と書いているので、そのまま引用しましたが、下記のような内容です。(今後、ご本人がTweetを消去することがあれば、こちらも削除します)


これ本当に拡散希望なんだけど、昨日横浜駅で急性アル中でぶっ倒れてる人がいたから助けに入ったんだけど、徐脈で意識レベル低下してたからとりあえずAED使ったら通りすがりのBBA看護師に「AEDなんか使うな??そんなの点滴すれば治るでしょ??すぐ剥がして??」って言われて(続く)リンク

(続き)「何も分かんないの?」的スタンスで言うだけ言って去っていったんだけど、別にAEDって貼ってもすぐ電気流れるわけじゃ無いし必要なかったらちゃんと「使わなくてOK」って言ってくれるから確認の為でも使った方がいいんだよ。こっちだって100%必要だと思って使ってねえよ(続く)リンク

(続き)急性アル中でもし吐物が詰まって気管閉塞してたら?それで心停止に繋がったら?AEDはそれをちゃんと「確認」してくれる機械なんです。むやみやたらに電気ショックしません。なのにただ見ただけで必要無いっていうのはおかしいんじゃないの?看護師なのに大丈夫?って思って(続く)リンク

(続き)道で倒れて専門的な機械が無い場所で、AEDは万が一の為の装置なんです。もしそれでその人が死んだらどうするの?死んだ人も点滴で治るの?違うだろ。本当に腹立ちました。みんなは今回のおばさんのこんな言葉に惑わされず、迷わずAED使ってほしい。ダラダラと失礼しました。リンク

H/N: 水玉みよこは柄まで通ってる
twitterアカウント:@mizutama345



これをもとに「まとめサイト」がいくつも立ち上がり、「正しい知識を持つ」ことが肝心ですね、とか、看護師なのに老害! などと多くの声が寄せられています。


文面を見るかぎり、この通りすがりの看護師というのが、言うだけ言って、何もしないで去っていったという点で、確かにひどいなという印象です。

でも、だからといって、言っていることが間違っているかといえば、あながち間違いではありません。特にAEDが必要ない、という部分は紛れもなく正解です。


先入観で「悪」と決めつけているのか、誰も気づいていないようです。Twitter世論では完全に抜けている部分なので、少々書かせていただきます。



結論からいうと、「徐脈で意識レベル低下」という状態の人にAEDを装着するべきではありません。AEDは心停止、つまり生命徴候がない人に装着するものだからです。

徐脈というのは脈拍が遅い状態のことを指します。つまり、このケースは脈は触れますので、少なくとも心停止ではありません。(原文で徐脈という言葉が使われていますが、Twitter投稿された筆者の方も実は新人の看護師さんだそうです。医療者以外は脈拍を確認することは推奨されてません)

AEDの添付文書(取扱説明書)にも「明らかに生きている人に使っちゃダメだよ」って書いてあります。

こちらは、旭化成が扱っているZollというメーカーのAEDの添付文書です。

AED添付文書:意識・呼吸+脈のない人にのみ装着する



【禁忌・禁止】
 <適用対象(患者)>
 対象患者が以下の状態の場合は、本品を使用しないでください。
 ・意識がある場合
 ・呼吸している場合
 ・脈拍を触知できる、又は血流を示す他の兆候がある場合



添付文書とは、薬事法に基づいて作成が義務付けられた公文書です。AEDのような医療機器の他、薬剤にも付いています。薬剤で言ったら用法・容量が定められている大元の書類で、どんな人には使ったらいけないという「禁忌」が明示されています。

AEDは家電とは違います。本来は医師しか使用が許されない高度管理医療機器ですから、薬と同じで、使用条件が厳密に定められています。先ほどは取扱説明書という言い方をしましたが、添付文書に書かれている条件は、家電の取扱説明書とは比較にならない厳しいものであるという点は、おわかり頂けますよね?

その添付文書で、AEDは、意識がある場合や呼吸をしている場合、脈拍がある場合は使用したらいけない、禁忌ですよ、と書かれているわけです。

メーカーと薬事法が定めるところでダメといってるわけですから、誰がなんといおうと、「脈がある人にAED装着してもいい」とは、私は言えません。

Twitter世論では、一部の医師も含めて「いいんじゃない?」と言っていますが、その根拠はどこにあるのでしょうか?

医師なら、医師免許の下に自分の裁量で添付文書を超越した適応をすることも許されますが、看護師の私にはそんな判断はできませんし、ましてや責任を負えない一般の方であれば、法律の範囲内で添付文書に従って使うのが正解と言わざるを得ません。


なんで、意識、呼吸、脈のある人にAEDを装着したらいけないのか、という点については 私のTwitterの過去ログ を辿ってみてください。7月19日〜18日あたりに連投しています。

簡単にいうと、AED設計上の「仕様」としてショック適応判断の限界があり、心電図波形によっては、心停止ではない人に装着した場合でも、誤ってショックが必要と判断してしまう危険性が否定できないからです。

AEDは心電図上での心室頻拍(VT)を検出できますが、それが心停止(つまり無脈性心室頻拍)であるかの判断はできません。だから、人間が生命徴候の有無を判定した上でないと、AEDを装着してはいけないと定めているのです。(最近は各メーカーが工夫して解析性能が上がってますので、過度に心配するほどの頻度ではないと思います。詳しく知りたい方は「AEDの心電図解析と無脈性心室頻拍の判断」(日本心臓財団ウェブ)も参考になります。


最近は一部マスコミも含めて、「人が倒れていたら迷わずAEDを!」といい加減なことを言うケースが目立ちます。以前はきちんと「人が倒れていて意識と呼吸がなければ迷わずAEDを!」だったのですが、いつ、どこから省略されるようになってしまったのか、、、

慌ててしまって、呼吸の確認を忘れた! というのはありだと思います。それは批難されるべきものではありませんし、過失や、責任追求されるものでもありません。それに誤作動の可能性としては決して高いものではないので過度に恐れる必要もありません。

ただ、AEDに興味をもってくれている人なら、ぜひAED装着前には、「反応と呼吸を確認する」ということは知っておいてほしいなと思います。(医療従事者は反応と呼吸に加えて脈拍の確認も求められています)

そこで大事なことを1点。

呼びかけて返事やうめき声、開眼などの反応がないことは確認したけど、呼吸は「よくわからない」という場合は、「ナシ」と判断してもらって大丈夫です。これは蘇生法のガイドラインでも書かれていることなので、ご安心を。

目安は10秒。

10秒間、胸からお腹のあたりの動きを見て、いつもどおりの呼吸をしている、と確信できない場合は、AEDを装着して構いません。

ただし、AEDを装着するということは、心臓マッサージ(胸骨圧迫)も必要な状況ですから、他の人がいれば胸を押してもらう、またAEDの解析後「触っても大丈夫」と言われたら、ただちに胸骨圧迫をするようにしてください。

ところで、公衆の面前で、他人の服を脱がすというのは、すごく勇気のいることだと思いませんか? だから、私だったら、服をはだける前に、きちんと胸から腹をよーく見ます。

わからなければ10秒で「いつもどおりの呼吸なし」と判断していいとガイドラインに書いてあるわけですから、10秒たったら堂々と服をはだけます。

もしなにかの間違えで、あとでトラブルになったとしても、その呼吸確認のプロセスさえしっかりしておけば、規定通りの正しい行動をしたと自信をもって説明ができます。

それに、AEDを装着すべき状況というのは、「心停止状態」ですから、AED手配は急ぐべきですが、AEDが到着するまでの間は胸骨圧迫が行われていなければなりません。

呼吸の有無が正しく判断できなくても、AED到着までの間に胸骨圧迫を行っていれば、もし心停止でなければ痛み刺激に対する反応があるはずですから、AED装着が不要であれば気づける可能性が高まります。



AED使用は決して難しいものではありません。それは事実です。

ただ、イケイケGoGo! の根拠のない勢いだけで不正確な知識が広まるのは、私は問題だと思っています。

広めている人は、AEDの敷居を下げたい、みんなに使ってほしいという思いなのはわかります。

でも、医療器具の使用法なんですから、それなりに根拠をもっていなければいけないと思うのです。


すでに広まってしまっているものはどうしようもありませんので、せめて正しい情報を、と思い、これを書かせてもらいました。

最終的に何が正しいのかは読み手の皆さんに判断していただけたらと思います。

反応確認と呼吸確認を市民に求めるのは酷。誤作動のリスクが低いなら、具合悪そうな人がいたらとりあえずパッドを貼ればいいじゃん、というのもひとつの考え方です。

あえて、そう判断するならなにもいいませんが、少なくともメーカーと国が定めたAEDの使い方ではない、ということは知っておいてほしいです(さらに言えば国際的な使用基準からも外れてます)。知らずに、そう早合点しているとしたら、誰にとっても不本意なことではないでしょうか。



もし、なるほど、と思った人がいたら、ぜひこの記事の拡散をお願いします。




posted by Metzenbaum at 12:22 | Comment(7) | TrackBack(0) | 救急蘇生 (BLS、ACLS)
2016年07月03日

人工呼吸はやっぱり重要ですよ、という報道とプレスリリース

看護職の皆さんは、人並み以上に救命スキル【BLS】に関心が強いと思いますが、皆さんは昨今における人工呼吸の位置づけをどのように理解していますか?

世間一般では、「最近の心肺蘇生法は人工呼吸をしなくてよくなったらしいよ!?」なんて、言われていますが、もしかしたら人様にCPRを教えることがあるかもしれない看護職にとっては、この点、いかがでしょうか?

先日、読売系で興味深い報道がありました。

救急車の到着遅れても…「心肺蘇生」で救命率2.7倍」



倒れるところを目撃された心停止のうち、何もされなかった群にくらべて、救急司令の指示で胸骨圧迫をすると生存退院率が1.5倍に増えて、さらには通りすがりの人が自発的に胸骨圧迫と人工呼吸がなされた場合は生存退院率が2.7倍だった、という内容。

金沢大学の研究者がヨーロッパ蘇生協議会(ERC)の機関誌、Resuscitationに発表したもので、なんで日本の新聞が取り上げたかというと、金沢大学が日本国内の報道機関に向けてプレスリリースを打ったからです。

そのプレスリリースがこちら。

金沢大学プレスリリース「救急車到着に時間を要する地区では人工呼吸を組み合わせて行う心肺蘇生の自発的実施が格段に優れた救命効果をもたらす!」


救急車到着に時間を要する地区では人工呼吸を組み合わせて行う心肺蘇生の自発的実施が格段に優れた救命効果をもたらす!」というタイトルで、PDF(680KB)で誰でも読めます。たった3ページですから、ぜみ皆さん、目を通してみてください。

このプレスリリースの冒頭では、私たち医療従事者に向けて、警鐘ともいうべきメッセージが載っています。

市民に対して蘇生教育を行う立場の医療従事者に人工呼吸の重要性を再認識させる(中略)必要性を示唆する結果となりました。

人工呼吸は、依然大事だから、それを啓蒙するのは医療者の役目だよ、というわけです。


一般の方たちは、NHK報道なんかで、人工呼吸は不要になったと言われれば、それを真に受けてしまいます。

しかし、人が生きるメカニズムと、命を落とすメカニズムをきちんと学んでいる私たち看護師は、細胞の酸素化を考えた時に、胸骨圧迫のみでいい場合と、ダメな場合があるということを理解しています。

そのことを踏まえて、適正に市民向けに健康教育(蘇生教育)を行う必要があるのです。

例えば、

・救急車が到着するまで数十分かかるような場所
・溺水など水難事故が想定される現場の職員
・呼吸原性心停止が多いとされる子どもの急変を想定しているような職業人

などに対して救命法を指導する上では、胸骨圧迫のみの蘇生法では万全とはいえないということです。


マスコミはセンセーショナルなものに飛びついて風評を流布していきますが、きちんと基礎から理解している私たちはその砦となる必要があると、金沢大学の研究は訴えているのです。





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