2015年08月07日

手術中の音楽は事故発生率を上げる、という研究

興味深い報道がありましたので、クリップしておきます。

手術中の音楽、患者の安全を脅かす恐れ 研究




手術中の音楽、患者の安全を脅かす恐れ 研究
2015年08月07日 11:01 発信地:パリ/フランス

【8月7日 AFP】音楽をかけながらの手術は、手術チーム内で会話が聞き取れずに指示を繰り返す可能性が、音楽をかけていない場合と比べて5倍高いとの研究結果が、5日の専門誌「先進看護ジャーナル(Journal of Advanced Nursing)」に掲載された。音楽をかけながらの手術は一般化しているが、論文はこの習慣に疑問を投げかけている。

研究論文は「手術室での音楽は(手術)チームのコミュニケーションをさまたげる可能性があるが、安全を脅かす恐れのあることとしてはほとんど認識されていない」と警告している。

研究者によると、50%以上の手術が音楽をかけながら行われている。割合は国によって異なり、たとえば英国では音楽をかけながらの手術が72%に上っているという。

■音楽かけながらの手術、返事促す回数5倍に

手術室で音楽をかけるのは最近始まったことではない。100年前、英国の草分け的な外科医は、手術前に麻酔をかけた患者の気分を落ち着かせるために、音楽家を雇って演奏させていた。だがこの慣習はやがて、患者のためのものから、手術スタッフのためのものへと変化して行った。

外科医が音楽をかける理由は、ストレスの緩和、ホワイトノイズの遮断、集中力アップなどさまざまだ。しかし、その有効性や悪影響についてはこれまでほとんど検証されたことがなかった。

英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)の上席研究員、シャロンマリー・ウェルドン(Sharon-Marie Weldon)氏ら研究チームは、英国で6か月間に行われた音楽のかかっている手術、かかっていない手術、計20件を録画した。

結果、医師あるいはスタッフが、話し掛けた相手に応答を求める事例が5000回以上あった。そのような事例は、音楽がかかっている場合がそうでない場合の5倍だった。

「音楽に外科医の集中力を高める効果や外部の雑音を遮断する効果があるかどうかにかかわらず、チームのコミュニケーションを損なう恐れのあるものは何であれ、患者の安全を脅かす恐れがある」と、論文は結論付けた。(c)AFP





日本の手術現場で音楽なしというのはあまり考えにくい状況ですが、オペ中に音楽を、というのは世界共通事項だったんですね。

そこだけでも興味深いところですが、このような研究対象になるとは!

オペ室の看護師さん、職場の「看護研究」で、このネタ、いかがですか?

術者の音楽の趣味とBGMの相関を取ってみるとか(笑)





posted by Metzenbaum at 11:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 手術室の話 [ 雑談 ]
2015年08月01日

カテーテル300人に使い回し 神戸大学病院

またまた医療器具の使い回し事件が発覚しました。



今回は循環器内科。カテ室で使う約20万円のディスポーザブルのカテーテル(アブレーション用?)を再滅菌して、記録に残るかぎり過去5年の間に約300人に使いまわしていたということ。

健康被害は報告されていないものの、健康相談と検査に応じるそうです。

処分的には、「行政指導」だそうで、使い回しをしていた医師や滅菌処理やカテの機材準備をしていた看護師個々への処分はない模様。

記事を見ると4月に着任した滅菌担当者がこれまでの使い回しの慣習に疑問を感じて、院長に報告して、近畿厚生局と神戸市保健所に調査結果を報告し、今回の報道になったようです。

よく言えば自浄作用が働いた、ということなんですけど、まあ、不自然で、病院としては逃げられないところまで追い詰められたってことなんでしょうね。

そこまで追い詰めた滅菌担当者とぜひ話してみたいものです。

滅菌業務は最近は外部委託されるケースが多く、外部の業者としては病院の不正を指摘するような動きはしないでしょうから、きっと中央材料室の主任や師長が代わって今回の告発に及んだと思いますが、看護師からの発信だとしたら、頼もしいですね。

民間資格ながら、滅菌技師という認定制度があります。

中央材料室で働く人がよく取得しており、うちの中材の主任ナースも1級をもってましたが、使い回しに関していちいち声を上げる人ではなかったですね。


シングルユースの医療器具は、添付文書にある通り、1回で捨てるべきです。

これは正論としてどう転んでも正しい。

しかし、今回の事件のように医療保険制度では、規定数以上を使うと病院の持ち出しとなり、病院経営的に厳しいのも事実。最近は手術で使うドレープや材料の多くがディスポーザブル化されて、より衛生的に手間なく手術が進められるようになっていますが、それこそすべてをディスポーザブル製品で行ったら、手術代の元がとれないというのも事実。

だからこそ、堂々と使い回しできる不便な古い機器を使ったりしているわけですが、その流れからすると、単回使用品も洗って滅菌して使えばいいじゃん、という発想は理解できなくはありません。

今回も滅菌しているからいいじゃんという意見がありますが、実際のところ下記の2点で問題です。

・洗える構造になっていない
・滅菌や再利用に耐える強度では設計されていない

カテーテルのような長い細い内腔がある製品、どうやって洗ったらいいんでしょうね?
内腔に付着した血液をブラシのようなもので洗うことはできません。

血液を分解する酵素が入った液体につけて、水通しするのがせいぜいです。

それで洗浄したといえるのか?

また滅菌工程を考えても、カテーテルのようなプラスチック製品はEOG滅菌かプラズマ滅菌ですが、狭い内腔にきちんとガスが浸透するのかという点も問題です。内腔に関してインジケーターでチェックをすることもできません。

強度という点では、再利用は想定されていませんから、カテーテルが血管内で破損する可能性があります。血管内で先端部が欠損して遊離してしまったら、、、、コワイですね。

こういうことは、事件が起きた時に検証されて初めてバレるもので、通常は患者にはわかりません。

ただ、場合によっては、再生品を使っていたにも関わらず、患者には新品を使ったことにして材料費を請求するということもあり、これは完全に診療費の不正請求、つまり詐欺です。

今回の場合は、診療費の不正請求という指摘はされていないので、そこまで悪質ではなかった(まだバレてないだけ?)のだと思いますが、私が告発した使い回し事件は、この診療費の不正請求という観点で厚生局と地元行政に報告をしています。


正直なところ、この程度の使い回し、大半の医療者は、「ふーん、、、バレちゃったんだ。運が悪かったね。」程度の認識だと思います。

珍しくないってこと。

今回の事件がきっかけで、いま使い回しを常態的にやっている全国の病院が、自ら襟を正してくれることを願うばかりです。


「カテーテル300人に再使用、滅菌は実施 神大病院5年間に」(神戸新聞 7月30日)

医療用カテーテルを国の通知に違反して使い回していた問題で、神戸大医学部付属病院(神戸市中央区)は30日、使い回しは記録が残る2010年度からの約5年間に296人に実施し、41人にその疑いが否定できなかった、と発表した。保険診療で定められた本数を超えて治療する場合、診療報酬が受けられないため、担当医の判断で滅菌して使い回していた。10年度以前にも使い回しの可能性があり、同病院は調査を続ける。

 同病院によると、今年4月に着任した医療器具の滅菌担当者が使い回しを知り、院長に連絡。病院が調査した結果、循環器内科の不整脈治療を担当する医師らが使い回しを認めた。現時点で健康被害は確認されていない。

 カテーテルは1本約20万円。同病院循環器内科の平田健一診療科長は「国の通知に沿い、カテーテルの添付文書にある再使用禁止を守らなかったのは反省すべき」と謝罪した。

 同病院は6月に近畿厚生局と神戸市保健所に調査結果を報告。両者は7月13日に臨時の立ち入り検査を実施し、再発防止策を求める行政指導をしたという。10年度以前の患者も調査するため、同病院は緊急窓口を設けて問い合わせに応じ、必要な場合は感染症検査の費用を負担する。同病院医療相談室TEL078・382・6600(土日祝を除く午前9時〜午後5時)

(金井恒幸)